亡霊、彼の地にて斯く祟れり   作:餓龍

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MARDER さん、誤字報告ありがとうございます!
ただ誤字報告のを確かめる前に修正更新をしてしまったため、どこが修正箇所なのかわからなくなってしまいました。
直ってるとは思うのですが……。

前話において、天使を告知と堕から座に改めました。
流石に告知はあかんでしたね。

それとまたもやイラストを頂きました!
昭和日本の、まだ悪霊やってた頃のオトナリ様だそうで。


【挿絵表示】


実にイメージぴったりな感じですw
パッカルディ 様、ありがとうございました!


帝都滞在邦人救出作戦開始

 

 帝都上空、第一空挺団を投下した5機のC-1輸送機の後部ハッチが開く。

 機体が大きく旋回し落下傘の群と帝都が後部ハッチより見えるようになった頃、後部ハッチより姿を見せる影が一つ。

 

  第一次攻撃隊 発艦はじめ

 

 一機に付き一体の赤、青、黄、緑の人形が弓を引き、放つと同時に後部ハッチよりコンテナのような何かが投下される。

 それらは空中でばらけると機体とほぼ同じ大きな円筒を懸下した模型飛行機の群となり、降下中の落下傘の隙間を縫うようにして一直線に帝都の各所へと編隊を組み降下を始めた。

 

  各編隊目標捕捉 投下はじめ

 

  投下 投下 投下

 

 編隊はそれぞれ目標である帝都各所の兵舎や本部に伝令中継地、集結を始めた帝国軍兵士達を捕捉。

 大幅な積載量オーバーで自由落下に近いとはいえ軌道修正をおこない。

 2Lペットボトルを改造し、カプサイシン粉末を満載した催涙爆弾を投下した。

 

  効果大と認む 被害及び損失なし トラ トラ トラ

 

  新たな敵軍集結を確認 第二次攻撃要請

 

 眼が! 鼻が! 喉が!!

 阿鼻叫喚と化した眼下を睥睨し、戦果確認を行う。

 そして赤い霧がかかった地獄絵図を回避するように集結する帝国軍を一部の編隊が発見した。

 

  第二次攻撃の要を認めます 第二次攻撃隊発艦はじめ

 

  これより一航戦は当初の予定通り帰還 以降一航戦航空隊は五航戦の指揮下にて地上自衛隊の援護偵察任務に入れ

 

  了解 これより一航戦航空隊は五航戦指揮下にて自衛隊の偵察直援任務へ移行します

 

 さらにだめ押しの赤い粉塵が散布され、混乱にたたき込まれた帝国軍は大規模な組織的行動の大半を封じられることとなった。

 以降の帝国軍には、ビィインという飛翔音を耳にするたびに恐慌状態に陥る兵士が続出したという。

 

 

 

 

 

 帝都の西側、城壁に面する形で存在するバスーン監獄の周辺一帯は濃密な霧に覆われていた。

 まるで緞帳のように広がる濃霧はバスーン監獄周辺とその外側を完全に隔離してしまっている。

 牢獄から解放された講和派貴族達が迎えの荷馬車に乗り込んでいくのを自衛隊員達が周囲を固め、さらに外側を腰ほどの高さの旧日本陸軍兵士人形と金髪二つくくり少女人形が警戒哨戒をしていた。

 

「なぁ、この霧は八眼童が展開してるってことでいいんだよな? あの人形達じゃないよな?」

「ええ、そう聞いてるけど。 え? 人形になんかあんの?」

「いや、勘違いならいいんだけどな? たしかあの金髪の人形、霧の中の撤退で有名な艦をモチーフにしたやつだったような……」

「それがなんか関係あんの?」

「えぇー……?」

 

 彼等は要救助者を全員馬車へと収容すると、別働隊が確保している門へと移動を始める。

 そしてその様子を物陰からうかがっていた影がまた一つ、霧に飲まれて姿を消した。

 

 

 

 

 

 翡翠宮を巡る攻防を繰り広げている両軍にも何かが起こっているということは伝わっていた。

 しかし翡翠宮を守護する側であるボーゼス達が、これが日本の自衛隊による要人救出作戦であるということを知っていたことに対し。

 翡翠宮を攻略しようとしていた帝国軍にとっては、敵国の軍隊が唐突に出現して帝都へ攻撃を仕掛けてきているという知らせに混乱に陥っていた。

 そこへ、これまで送り込んだ偵察兵が一人も帰ってこなかった翡翠宮の森から出現した自衛隊の攻撃により。 兵士達を翡翠宮攻略へとせき立てていた帝権擁護委員達が的確に排除されたことで指揮系統に一時的に致命的な混乱が発生してしまう。

 

「いまです、突撃! 蹴散らしなさい!!」

「それそれいくぜぇっ!!」

 

 それを見逃さず、好機ととらえたボーゼス達による騎馬突撃と上空を舞う模型飛行機からの弾着観測により正確に指揮官を排除する自衛隊の擲弾爆撃は帝国兵の志気を完全にくじき。

 翡翠宮周辺から敵対勢力を撤退させることに成功したのだった。

 

 

 

 

 

「ご報告いたします、赤い霧の消失を確認。 帝都各所との連絡ほぼ完全に回復いたしました! 現在連絡網の効率化のため再構築中です」

「ご報告いたします。 帝都へ侵攻中の敵軍はニホン軍のジエイタイです。 現在攻撃を受けているという報告があったのは主に翡翠宮、バスーン監獄です」

「報告いたします。 郊外の竜騎兵屯営地、そして帝権擁護委員部の本部が全滅。 生存者は絶望的、ルフルス次期法務官殿も行方不明です!」

「ご報告いたします。 翡翠宮を攻略中の帝権擁護委員部は敵の攻撃により一時的に指揮系統を喪失。 現在再編と翡翠宮の再包囲を実行中とのことです」

 

 大混乱に陥っていたゾルザルと側近達は、各所からの報告が届くようになると落ち着きを取り戻していった。

 ゾルザルの正面にある帝都の模型には、報告によって判明した敵味方の配置が赤と青の駒を並べてわかりやすく示されている。

 模型上では帝都のほぼ全土から膨大な帝国軍の青い駒が続々と皇宮へと集結し。 自衛隊の赤の駒は翡翠宮にバスーン監獄、そして西門付近と帝都の外にそれぞれ僅かな規模で展開していた。

 

「敵の戦力は本当にたったのこれだけか? 奴らは帝都全体の連絡網をほぼ同時に寸断し、全軍に混乱をもたらしたのだぞ?」

「おそらく敵には攪乱に特化した兵科が存在するのでしょう。 赤い霧もその兵科があらかじめ帝都に潜入し、空から兵を降らせることで注意をそちらへ向けた隙に展開したのでは?」

「いや、それにしては開けた練兵場に緊急集結中だった東門守備隊を赤い霧が襲った際は、周囲には不審な影や飛来物は目撃されていない。 もし敵に潜入特化の兵科があるとするなら、帝国軍内にすでに潜り込まれているということにはなるまいか?」

「それはさすがにありえないのでは? そのようなことがおきぬよう、帝権擁護委員部は……」

「しかし……」

 

 側近達の議論を聞き流し、ゾルザルは模型の赤い駒達を睨みつけていた。

 遠くから響いた唐突な轟音に、天空から降下する敵の軍隊。

 さらには窓から見える帝都の各要所より立ち上る赤い霧と、それによる帝都各所との連絡網の断絶。

 帝都各所の守備隊との連絡が取れなくなったとき、ゾルザルの思考を満たしたのは自分が狙われているのではないかという確信に近い考えだった。

 敵の狙いは連絡網を破壊することで帝都守備隊を実質的に無力化し、空からの兵達による皇宮への直接攻撃ではないか。 その考えが現実になる恐慌に襲われ、ゾルザルはあらゆる手段での連絡により帝都の帝国軍全軍を皇宮へ呼び寄せたのだが。

 蓋を開けてみればそれらは全くの杞憂であり。

 皇宮になど、ゾルザルになど全く興味はなく。 むしろ邪魔になるからと妨害するだけして後は放置されているという現状がそこにはわかりやすく示されていた。

 

「ただちに全軍を以って奴らを駆逐せよ! このまま帰せば恥ではすまん……!!」

「おまちください殿下、それは無理です。 守備隊の将兵は皇城へ向かって集結中であり、連絡網も未だ完全ではありません。 ここで新たな命令を出せば必ずや混乱が生じるでしょう」

「ではみすみす見逃すというのか!? 奴らを見逃せば帝国の威信は地に落ちるぞ!」

「いいえ見逃すのではありません。 バスーン監獄の敵は撤退を始めているという報告もあり、敵はこれ以降奇襲の効果が残っているうちに撤退していくのでしょう。 皇宮守備についている近衛兵であればすぐにでも動かせます。 精鋭の四千もあれば追撃には十分かと」

「ふむ、そうか。 よし、すぐにでも追撃を出せ! 奴らを帝都から叩き出すのだ!」

「はっ!」

 

 新たに下された指示に側近達が慌ただしく行動を始めるのを横目に、帝都模型の前に置かれた椅子に座りゾルザルは爪を噛む。

 バカにされたと断じ、目にもの見せてやると意気込み。

 帝都模型の上に並べられた駒達が動き、その背中をみていることにだれも気づかなかった。




次は半分くらい書けてるので少し早くなる……といいなぁ。

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