熱中症からの夏風邪コンボを食らいました。
皆様も水分と塩分補給、適度な休憩をお忘れなく!
うん。
正直すまんかった。
ダークエルフのヤオが社に特地式の祈りを捧げているのを見つつ、月を背に鳥居の上で足をぷらぷらさせながらの感想である。
ちなみにこのヤオ、自衛隊に断られた絶望から奮起した直後から、自殺しようとしたところまでの記憶を失っている。 いや、失い続けていると言った方が正しいところか。
毎日毎日、色々な手を使って故郷を救ってもらえるよう努力し。
眠りにつき、目を覚ますと自衛隊に断られた絶望から奮起したところまで記憶が巻き戻っているようなのだ。
なので毎日毎日、多少の違いはあれど前日と同じようなことをし、前日と同じ人間に同じように頼み込んで回り、せめてもの信頼を得ようと街のあちこちで手伝いに励んでいるのだ。
前日と同じような失敗をし、前日話した相手に初めましてと挨拶をし、テュカとミューティとロゥリィを認識できない。
そのことを誰かが指摘しても、聞き取ることができない。
うん、壊れてますねこれ。
流石にアルヌスの街中を普通に亡霊が歩き回っているのはいかんかったかな?
それとも祟り神に昇神しても気軽にあちこちふらふら歩き回ってたやつかな?
境内の中限定だけど、日本からのお客に人形を貸し与えていたやつもかな?
伊丹とミューティが日本からきたTさんにスパルタ方式で教えられているのを見つつ、参拝しにきた狭間陸将にお艦で御酌する。
えらく恐縮してるけど、自衛隊の活躍は英霊さん達も大満足なんだから胸張っても良いのよ?
イーグルパイロットも海鷲を初めとした空の英霊に夢の中で一杯奢られたからか、参拝に来てるから人形軍団で歓迎してる。
その人形に英霊さんや神様が入ってるって知ったらどんな反応するのやら。
それと狭間陸将が言うところによれば、なんでも上の方の一部がなんとかして特地に来ようとしてるんだそうな。
神秘に満ちた特地ならできることも多いから、こうして英霊や神様の分霊を人形に宿らせたりもできるからね。 神様と直接会話ができるとか考えたんじゃないかなぁ。
まぁ、それに答えるかどうかは英霊さん達や神様達次第なんだけどねー。
自分には強制力なんてありません。 ただ、こうして協力してもらっているだけ。 ただの亡霊だった頃からずっと続くスタンスですな。
テューレがダウンしているのを横目で見つつ、朱塗りの大杯を回して中身を揺らす。
呪い(しゅ)を酒(しゅ)に変え、祟り神を酔わせる神酒にする。 テューレに連なる恨みやらなにやらが膨大だったため、ちょっと工夫してみたら祟り神にとって最高のお酒ができたのは予想外の収穫だったね。
まぁ、ただのヒトには香りだけでアウトな代物っぽいけども。
テューレにはその未来と引き替えに、縁とその内容を僅かだけ読みとる力をあげた。
ちなみに僅かだけなのは、それ以上読みとろうとすると発狂しかねないから。 帝都で手に入れた材料で実験したから確かだね。
その力で自身の境遇の原因とか色んなことがわかったみたいで、結構色んなものを吹っ切れたみたい。
帝国を滅ぼす力が欲しいって言い出したから、神酒飲み干せば大魔縁に成れる代わりに君は全て終わるよーっていいながら神酒を瓢箪から杯に注いだらその時点でダウンしちゃった。
仕方ないから神酒は瓢箪に戻しとこう。大杯から零れた神酒が不自然に瓢箪へ吸い込まれていくのを見つつ、角付きの頭を傾げる。
それにしても日本の神様は愉快なのが多いと思う。
お酒で瓢箪といったら鬼だよね! なノリで丁度奉納された人形もあったことだし酒呑童子様に許可を貰いに行ったところ、人形に分霊宿すならOK(分霊通して見るだけで手は出さないそうな)と快く許可をもらったしね。
てか最近のサブカル信仰の影響が大きいのか、女体化してたのは吹いたけど。
外見だけだし、自分で切り替えられるし、楽しめるのが増えたと笑ってたのは流石の鬼だなぁ。 ……周りの部下っぽい鬼がやつれてたのは気にしないでおこう。
ちなみに東のと月のがひとつずつ人形が奉納されてたけど、東のは角が大きすぎて大変だったので月のにしました。
そして触手で襲いつつ、襲われて悶えさせつつ思う。 自分何やってんだろうと。
なにやら大興奮で舐め回すように片手でビデオ撮影しつつ、同時進行で携帯に人形制作に必要なものを注文してる梨紗をみる。
なんかやたらサブカル人形が、それも動かしやすい球体関節のが大量に奉納されたのでなんぞやと調べてみれば、そこには梨紗の名前が!
なんでもあの夜(人形ポージング劇場)が忘れられず、かといってまた人形劇場やってくれと神になった相手に言うわけにもいかず。 一人考えた挙げ句、とりあえず奉納してみることに決めたらしい。
で、尋ねてみた自分にそんなことを涙ながらに力説されたので、こちらの欲しい人形の用意と引き替えに撮影会の開催をすることに。
まさか漢の人形を触手責めする羽目になるとは思わなかったが。
そして次は外宇宙変形ロボット同士の絡みが待っているということまで思い出してしまい憂鬱になった。
それにしてもと修復され、炎龍の血に塗れた服を仕立て直された帯を締める市松人形が安置される本殿で一人(いや、もう一柱か?)思う。
こうして複数の場所で、別に存在して行動する自分達とかいう状態にも慣れてきた。
分霊を作るというのは自分を薄める代わりに広げるという感覚だったけど、信仰や畏敬なんかがそれを補ってくれている感じがする。
案外、信仰が薄れるのを神様が恐れるのは広がっている自分が薄くなっていくのが恐ろしいからじゃないかな。
薄まり、消えていくなんてのはかつて経験したあの終わりの感覚に近いかもしれない。
だからわかるつもりですよ。 その恐怖は。
でもね。
あなたのやりかたは許さないし、協力するつもりもございません。
お引き取り下さいな、『 』様。