亡霊、彼の地にて斯く祟れり   作:餓龍

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お待たせしましたー。
そしてかなり短いです。
なお、次は長め、の予定です。

黒祇式夜 さん、いつも誤字報告ありがとうございます!


亡霊と鎮守

 

 その日、銀座は空前規模の人だかりであふれかえった。

 

 人の群は路上にまであふれ、誰もが異世界からきた少女達を一目見ようと前へ進もうとする。

 しかし、献花台への一本道だけは誰も整理する人間がいないのに道があけられ、ロゥリィ達は余裕を持って通ることができていた。

 献花台で献花をすませると、ロゥリィの声に応えるように銀座の時計塔がチャイムを鳴らし始める。

 チャイムが鳴り終わるまでしばしの黙祷を捧げ、その後ゲートへと帰っていった。

 

 その裏では。

 

「うぁー……。 マジであせったー。 ホントもうだめかと思った」

「なによあれぇ、伊丹の世界ではあんなところにまで神がくるのぉ? あんなの反則よぉ」

「興味深い」

「うぅー……」

「こわいいやだこわいいやだこわいいやだこわいいやだ……」

 

 伊丹はゲートを通過すると同時に座り込み、ロゥリィは伊丹にすがりつき、レレイはSAN値直葬な眼でつぶやき、テュカはしゃがみ込み、ピニャは幼児退行を起こして壁に向かって体育座りでぶつぶつつぶやき始めた。

 そして自分も、ロゥリィ達が持ち込んだ荷物の上に人形を座り込ませると同時に思いっきり伸びをして寝転がりたい気分だった。 できないけど。

 群衆がすごいことになっていたので亡霊達の協力の下モーゼごっこをしようとしたら、献花台の横にTさんがスーツを着て立っていらした件について。

 作務衣のほうがお似合いですよっていうかぶっちゃけ前から人間にはあり得ない力を行使してたからもしかしたらとは考えてたけども。

 

 地球、というより日本を代表する御方達の全面バックアップとかなにそれこわい。

 

 本気で消滅を覚悟しましたとも。 いやまじで。

 視線を向けられたのは自分だけだったにも拘らず、余波だけで亜神ロゥリィがガチでビビってた。

 霊的存在を感知できる皆も一般人の見ている前だから取り繕っていたけど、ゲートを越えて支配領域からでた瞬間全員が崩れ落ちている。

 わからないはずの栗林達も冷や汗を拭っているところを見るに、やはりあの方達は本物だったのだろう。

 横を通り過ぎるときに自重しろとつぶやかれるだけですんだところを見るに、釘を刺しにこられたのだろう。

 亡霊の皆も余波で数人浄化される程度だったし、もう大丈夫かな。

 

 んなわけねぇだろ。

 

 どうすんのあれ!? ガチだよ? つまり次はないぞってことだよね!?

 うわぁぁあああぁあぁぁああぁああああ!!??

 いやだよもうあんなのやだぁー!!(幼児退行)

 おうちかえる! おうちないじゃん!(セルフつっこみ)

 やばい。 とにかくやばい。

 うぁー、たとえ大丈夫だとしてもしばらくは日本に行きたくないなぁ……。

 もう、ね、ね。

 

 うぼぁー。

 

 

 

 

 

「いいんですかい? 結構気合い入れて準備されてたんでしょう?」

「いいんですよ。 これでしばらくはこちら側にはこないでしょう」

 

 ゲートの向こう側へと去っていく異世界人達を見送る漢の背中に駒門が声をかけると、その姿に違わぬ渋い声で返答が返ってきた。

 横に並んでみれば。 優に180cmはある身長と鋼のように引き締まった肉体であるにもかかわらず、どこか安心感を感じさせるその姿は実に大きく感じる。

 あの国会討論の直後から、やんごとなき御方方面からの圧力と推薦を持ってやってきたこの男がいうところによれば。

 銀座事件を切っ掛けに、最近までおとなしくしていた亡霊が活発化しているというのだ。

 駒門にとってみれば正直言って眉唾物の話ではあったが、外国の工作員達が次々と不可思議な現象におそわれて病院送りにされているのをみれば納得せざるを得なかった。

 

「すまないが、これで失礼させていただこう」

「おう、ごくろうさん。 ……あぁ、そうそう。 聞き忘れてた。 亡霊って言ってたけど、名前はあるのかい? こう、将門公的な」

「ふむ……」

 

 ゲートの向こうへ完全に見えなくなったのを確認すると去っていこうとするのをふと呼び止めて聞いてみれば、男は立ち止まり首だけで振り返る。

 その眼光に背中に汗をかきつつ答えを待つと、再び前を向いて歩き出しつつぽつりとこぼすようにつぶやいた。

 

「名はない。 ……名を持っていれば今頃は社が一つ増えていたであろうよ」

「それはまた……。 難儀だねぇ」

 

 そのまま去っていく背中を見送り、駒門はふと思う。

 つまり、今回の騒動で誰かが付けた名前が一般化してしまった場合。

 名を得た亡霊は、新しく建立した社で鎮守する必要があるほどの存在になると言うことではなかろうかと。

 気づいてしまった事実に空を見上げつつ、駒門は白い息を吐いた。

 

「本当に、難儀だねぇ。 伊丹よぅ」




活動報告でアンケートというか、主人公の名前を募集しております。
うまい名前が思いつかないのでー。
必ず採用するとは限りませんが、ぜひともアイディアの欠片でもいただきたく。
今後ともよろしくお願いいたします!

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