YT-3の種子保管庫。   作:YT-3

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——制作経緯——
①他に類を見ないオリ主を考えてみる
②クロス以外の執筆の経験を得る
③原作前でも原作開始時でもなく、あえて原作途中からのスタートを書いてみる

——執筆実験——
①オリキャラに一貫性を持たせられるか
②世界観設定を変えずにどこまで変化させられるか


005個目『澄んだ少年のIS学園生活』

コツコツと硬質な靴音を奏でながら歩く女性に続き、廊下を進む。

朝の学級会前だというのに廊下には人一人としていないのは、よっぽど生徒が真面目なのか。……この女性を遠目に入れるや否や教室に飛び込んでいくので、恐怖で染み込まれた反射的な行動の可能性もある。

そんなことを考えていると、女性が目だけを後ろに向けて問いかけてきた。

 

「お前はこれからここに通うわけだが、どうだ?」

「そうですね、前に通ってた学校と違って楽しそうです!」

「そうか」

 

それだけ言うと、再び視線を前に戻す。

それから二、三分無言で進み、一つの教室の前で立ち止まった。扉の上の札には『1-1』と書かれている。

 

「ではお前はここで待っていろ。あとで呼ぶ」

「はい、分かりました」

 

ガラリと扉を開けて、女性は教室へと入っていった。

残り一分足らずで学級会が始まるとはいえ手持ち無沙汰だなぁ、などと考えていたら、今歩いてきた廊下から轟音が響いてきた。

 

「ん、なんだろ?」

「うおぉぉお!?」

 

意識をそちらに向ける。ちょうどその時、階段から音の持ち主が飛び出してきたところだった。

その羽根の生えた影は見事な旋回を決め、こちらへグングンと近づいてくる。どうやらその影は、金髪の少女(たぶん)だったらしい。足と背に纏っているオレンジ色の機械が翼のように見えていたようだ。

ちなみに、叫び声の持ち主はその少女ではなく、彼女に手を掴まれ引っ張られている少年の方だった。

 

「到着っ!」

「おう、ご苦労なことだ」

 

二人は直前で減速して着地すると、扉を開けて教室へと飛び込んだ。

ただ、その先で仁王立ちしていたのは、先ほどの女性。その背後には、まるで般若の顔が浮かんでいるのが見えるようである。

 

「本学園はISの操縦者育成のために設立された教育機関だ。そのためどこの国にも属さず、故にあらゆる外的権力の影響を受けない。がしかし——」

 

ズパァンと凄まじい音を響かせて、二人の頭に出席簿が振り落とされた。

 

「敷地内でも許可されていないIS展開は禁止されている。意味はわかるな?」

「は、はい……。すみません……」

 

アレはいったそうだなぁ、と眺めていると二人に罰として教室掃除を指示して、着席を促した。それとほぼ同時、キーンコーンカーンコーンという音が学校中を駆け巡る。

 

「さて。来週の校外特別実習機関前でその諸注意もしないといけないが、それよりも先に伝えておくことがある。転校生だ」

 

ざわざわと教室内にどよめきが起こる。中には「また〜?」とか「デュノアさん達が来たばかりだよね」とかいう声が多い。少し空いた扉の隙間から見える先ほどの二人は、何か腑に落ちないように首を捻っていた。

 

「織斑先生!その子は代表候補生ですか!?それとも男子ですか!?」

「男、と言えばそうなるのか?まあ男だ」

 

一瞬、黄色い声が湧きかけたが、それはすぐに収まった。煮え切らない回答に、得も言われぬ不審感を感じ取ったのかもしれない。

 

「ああ、デュノアのように男装というわけではない……見れば貰えばわかるか。三河、入ってこい!」

「ハイ!」

 

一抹の不安と期待を込めて、扉を抜けた。

視線が集中する、だというのに反応はない。まるで、理解を超えた状況に思考が停止しているようだ。担任の女性、織斑千冬教諭も「無理もない」といった表情である。

 

黒板に名前が映し出されたので、笑顔を意識して、僕は元気に挨拶をする!

 

 

 

 

 

「初めまして!三河(みかわ)(めぐる)です!享年14歳で、地縛霊を50年ほどやってました!今日から級友としてよろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

()()()()透き通った笑顔。視線を落とせば足がなく、フヨフヨと浮いている。

そんな少年を見て、クラスの全員が一斉に息を吸う。

 

直後、声だけで学校が揺れた。物理的に。

 

 

***

 

 

「何か質問はあるか? ないな? 良し、では今日は通常日程だった——」

「いやいやいや! ちょっと待ってくれよ千冬姉! 聞きたいことだらけだっ、テェ?!」

「織斑先生だ、馬鹿者」

 

スコーン、と頭から快音が鳴り響き、思わず抱えてしゃがみ込んだ。

これでも比較的優しめだと感じてしまったあたり、叩かれ慣れてきたなぁという気がして複雑だ。

 

「って、そうじゃなくて!? 軍人とか来た時点でアレだったけど、元地縛霊ってなんだよ!?」

「言葉の通りだが? 三河は50年前、正確には51年前の春に強盗殺人に巻き込まれて殺された当時14歳の少年の幽霊で、今日からお前達のクラスメイトだ、以上。それでは諸連絡だが——」

「待って!お願いだから待ってくれよ! まず幽霊の時点で付いて行けてないんだよ!?」

 

実際、クラス代表じゃなかったら立ち上がることもなかったと思う。箒たちみたいに固まっていたに違いない。

 

「はぁ……。いくら聞かれても、これ以上は答えられん。何せ本人もそれ以上知らないんだ、私が知ってるはずもないだろう。何か聞きたければ、本人に休み時間にでも質問してみろ。転校生の通過儀礼だろう」

「僕が覚えていることはなんでも答えるよ!」

 

いや、マジでどうなってんだよその透けてるの。というか強盗殺人の被害者なのに明るすぎないか?

 

「ほら、こう言っているんだ。この場はこれで終了、三河もいいな?」

「ハイ!分かりました織斑せんせー!」

「席は……ボーデヴィッヒの隣でいいだろう。右から二列目の最後列だ。代表候補生だから、何かあれば聞くといい」

「ハイ! よろしくお願いしますね、えーと、ぼーでびっひさん?」

「……きゅぅ」

 

あ、ラウラが倒れた。……ってええぇぇえ!?

 

「ラウラ!?どうしたんだ!?」

「ワタシ、オバケ、ダメ……ガクッ」

「ラ、ラウラーー?!?」

「だ、だれか救急車ーー!!」

衛生兵(メディッーク)衛生(メディ)へー(ーーー)ーい(ーック)!?」

「ダメだよ!幽霊が原因ならお祓いじゃないと効かないはず!!」

「そう言われて……ハッ!たしか篠ノ之さんって神社の娘さんだったよね!? 任せた!」

「はぁっ!?わ、私も怪談系は苦手で……」

「一夏ーーッ?! なにさっきの大声!? なにがあったの、ってオバケーーーッ!?!?」

 

カオスここに極まれり。

「幽霊はいる」という新たな発見と引き換えにしては、安いような高いような代金だった。




——ボツ理由——

澄んだ少年(物理的に)。
世にも珍しい幽霊系オリ主。しかも原作主人公のハーレムがほぼ固まってからの投入なので100%恋愛に発展しないという、テンプレブレイクの極致……のはず。
ただ、あまりに突飛すぎてうまく動かせる自信がなくなったのと、あと、100%ちょっかいかけてくるだろう天災兎をどうするのかが決まらず、お蔵入りに。

——(無駄に作り込んだ)主人公設定——
三河還。享年14歳(生きていれば65歳)。見た目は多少中性的だが、一目で男だと分かる程度には少年らしさがある。服装はいつも変わらずに白い貫頭衣だが、IS学園の制服に近づけようと赤と黒の柄を付けている。
一人称は僕。基本丁寧口調で話し、明るい性格。一種の放浪癖アリ。幽霊になって種の保存欲求がなくなったため、恋愛感情や羞恥心などは存在しない。盆はハイテンションになり、とにかく色んな人に絡んでいく(本人曰く「酔っている」)。
生前の親類縁者は皆、病や事故に倒れており、身寄りと呼べる人間は存命していない。なお、本人も知らないが、彼が成仏できなかったのは未練のせいではなく名前のせい(三河還=三途の川を引き返す)。
普段の住まいは寮の脇に設置された簡易的な小屋(木造・風呂トイレなし)。中身は全国各地のお札でびっしり埋め尽くされている(地縛霊をしている間に慣れてしまい、今ではないとムズムズするらしい)。

死去の原因は、家に帰った時に強盗と鉢合わせしてしまったこと。死因は「頸椎圧迫による窒息死」、首を絞められて殺された。そのため、普段は服の首元を伸ばして隠しているが、その下には痛々しい手形が残っている。
当初は純粋な呪い系悪霊として1年ほど殺人犯に取り憑いていたのだが、呪いで心臓発作を起こし殺しても心が晴れることはなく、その恨みが「もっと生きたかった」という事であると自覚したために地縛霊となった。当時の性格も性質も紛れもない悪霊だったので、50年の間に住民を何人もノイローゼに落とし、自殺未遂者も二人ほど出している(死者はいない)。
つい先日、地縛霊50年目の記念に昇格し、浮遊霊になった。その機に世界を見て回ろうとウロウロしていたら偶然にIS研究所に潜り込み、そこにあった打鉄となぜか合体。半実体化した。と言っても、壁はすり抜け、姿は注視しなくては見えづらい、いわゆる『幽霊』のイメージそのままといった感じである。
他人に気付いて貰えるようになったことで第二の人生(幽生?)を歩めることに気づき、恨みが晴れ、人に積極的に害を及ぼす事はなくなった。ただし、本質としては悪霊のままなので、近くにいると体が疲れやすくなったり運がなくなったりしてしまう。

専用機は打鉄・霊式。待機状態は自身の霊体のため、物理的に誰も手が出せない。
見た目は上半身だけの鎧兜。足がないため接続できない脚部パーツを排し、その分のリソースを上半身に注いだ形になっている。対刃、対弾性能は非常に高いが、対衝撃性は並か少し下。重装甲の部類だが、下半身がないため加速性能と最高速は第三世代機(パッケージなし)以上、白式以下。
もっとも、操縦者が幽霊ならではの高い飛行能力と空間認識能力を持つので、実際のスピードと機動制御の面で言えば国家代表クラス。ただし、本人に戦闘経験がなく、才能もないため攻め手に欠ける。
主武装は二振りの日本刀『無銘』。銃などの飛び道具はないが、単一能力として、自身に攻撃を当てた相手の胸部に空間を歪めて作った刃を突き刺すカウンター技『(デス)(・ペ)(ナル)(ティ)』がある。その名の通り、自身を殺害した殺人犯に対する呪いが変質して現れたもの。理由は不明。
単一能力の性能は第三世代のイメージインターフェイスとほぼ同じだが、元は自身の能力だったものを拡張しているだけなので非常に燃費が良く、対して意識を集中させなくても容易に発動できる。また、相手のゼロ距離に作り出すため距離や障害物を無視して当てられ、高確率で絶対防御を発動させられるため威力もバカにならない。
弱点としては、①無抵抗で受けた事実を再現するためにこちらが武器を持っていると発動できないこと。②彼がその攻撃を行った人物を把握し、「武器」または「武器による攻撃」と認識していないと発動しないこと。③カウンター技なので受け身に回らざるをえないこと。
総じて言えば、高速機動で高威力の技を避けつつ、相手の弱攻撃にわざと当たり単一能力でカウンターを決めるのが主な戦い方になる。逆に、「武器」と認識できない拳などを使って戦うタイプ、姿を隠して狙撃するようなタイプには非常に弱く、「盾」と認識しているところから放たれるパイルバンカー《灰色の鱗殻(グレー・スケール)》を使うシャルは地味に天敵中の天敵。また、絶対防御が発動しない全身装甲(フルスキン)タイプの相手にもジリ貧になる。

※注意事項
①語彙が古いため横文字は使わない(可能な限り)
②色恋に関する話や描写を自発的に出さない
③世間一般の常識に疎い(幽霊をやっているうちに抜け落ちたor変化したため)
④幽霊としての力は「ポルターガイスト」「憑依」「呪い」「厄招き」。普段は後者二つを使わない(必要となったら使っても良い)
⑤食事を取らず、排泄もしない。味を知りたいときは誰かに憑依する必要がある。浴室や水回りは基本は避ける(悪霊としての血が疼くため)

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