YT-3の種子保管庫。   作:YT-3

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——制作経緯——

ビッキー可愛い

漢女(オトメ)」とか「おっぱいのついた漢」とか言われてるの可哀想

ならもっと濃い「漢」を放り込めば、相対的に女の子らしくなるんじゃね?


001個目『気合根性シンフォギア』

現代に転生した先史文明期の巫女、フィーネが行おうとしたルナアタックを阻止してから、二ヶ月と少し。

 

その立役者たる立花響と風鳴翼、そして雪音クリスの三人は、今日も平和に学校に……行ってなかった。

 

今日が日曜だから、というわけではない。前提となる、"平和に"の部分から間違えているのだから。

 

 

 

 

「新たにノイズ反応、五百……千……さらに増えます!」

「戦闘開始から三十分!響ちゃんたちの体力も限界です!」

 

コンソールと向き合う部下たちが声を張り上げて伝える状況を聞きながら、特異災害対策起動部一課課長、風鳴弦十郎は、ギリと歯嚙みをした。

ただでさえ、まだまだ未来のある少女たちを戦場に送りつけて、自分たちOTONAは安全な場所から指示を出すだけ。そんな耐え難い状況だというのにもかかわらず、ピンチになっても打開策の一つも見出せない自分に対して、この上ない自己嫌悪を抱いていた。

 

「……やはり、ノイズを呼び出していると思われる、暴走状態の聖遺物を破壊するしかない、か」

 

今回のノイズの出現は、ある特殊な状況下で起きた。

 

人体に触れれば炭化させ、また、物理攻撃の効き目がない認定得意災害「ノイズ」を唯一倒すことのできる武器。それが、聖遺物と特殊な波長を持つ歌を共鳴させることで展開される「シンフォギア」だ。シンフォギアはノイズの狂った位相を「調律」し、ノイズに対して攻撃を届かせることができる。

そして、聖遺物に共鳴する歌が歌え、シンフォギアの使い手となれる存在を「奏者」と呼ぶ。立花響、風鳴翼、雪音クリスの三人が、現在日本政府が抱えている全ての奏者たちだ。

 

さて。ノイズとシンフォギアについて説明したところで、本題に戻ろう。

シンフォギアシステムの核となる聖遺物は、各地の伝承に残っているような武器や道具、もしくはその欠片のことを指す。風鳴翼なら「天羽々斬」、立花響なら「ガングニール」、雪音クリスなら「イチイバル」を使っている。

これら聖遺物は、現代では再現不可能な(ブラ)(ック)(・ア)(ート)の塊だ。当然万が一紛失や破損などをしては困ったことになるため、起動できていない聖遺物も多くは国、強いて言うなら特異災害対策起動部一課が保有・管理している。

しかし、伝承に出てくるような道具、ということは、物によっては御神体や儀式の道具としても使われている物もある。そういった伝統を途絶えさせるわけにもいかず、行事の時などは一時的に返却しているのだ。

 

今回の事件の発端も、その一つ。

聖遺物の形状は銅鏡。とある神社の神具として、代々伝わってきたものだ。

珍しく全体像がそのまま残っている完全聖遺物だったが、適合者がいないために半ば放置かれていたものでもあった。

 

今までもやってきたことであり、今回も何事もなく終わるだろう。

そんな考えがあったのは否定できないが、それを責めるのは酷なことだろう。

 

偶々休日とオフが重なり、三人揃って見学に来てた一課の奏者たちの前で、儀式は順調に進んでいった。

壮厳な神主が祝詞を捧げ、うら若き巫女たちが舞を踊る。どこにでもある、ごくありふれた神社の儀式だ。

 

しかし、その状況は一変する。

儀式も佳境に入り、巫女たちが舞の唄を口ずさみ始めた瞬間、その場にいた全員が、聖遺物から背筋が凍るような怖気を感じ取ったのだ。

……否。たった一人、舞に参加していた中でも1番若い巫女だけが、まるでトランス状態に陥ったかのように、一心不乱に踊り、歌い続けていた。

事ここに至り、奏者たちと、一課から監視の名目で派遣された緒川慎次は状況を理解した。

 

——あの少女と聖遺物が奇跡的に適合し、なおかつ力を制御できていないために呑み込まれている——

 

慌てて力尽くで抑えようとしたが、時すでに遅し。

完全に起動してしまった聖遺物が暴走し周囲の空間を捻じ曲げて、大量とも言えるノイズを吐き出してしまったのだから。

 

「……仕方がないか」

 

そして、時は戻って現在。

弦十郎は、始末書を覚悟に入れて、それでも未来ある少女たちを助けるために、マイクに声を張り上げた。

 

「聞こえるか三人とも! まずは元となってる聖遺物を狙え!最悪破壊しても構わん!」

『つってもよぉ! こうもワラワラ湧かれたら、抑えるだけで精一杯だっつー、のっ!』

 

しかし返ってきたのは、否定的なクリスの声だった。

軽い調子で、いつものように話しているつもりなのかもしれないが、その息遣いは荒れているのが伝わってきた。本来後衛よりの彼女がここまで体力を消耗している時点で、この戦闘がどれだけ激戦なのかがよく分かる。

 

『でも、このままじゃジリ貧だよ! ……こうなったら絶唱で!』

 

響が提案した「絶唱」とは、シンフォギアの最終兵器。絶大な威力と引き換えに、大きなフィードバックを背負う事になる、全身全霊の一撃だ。

また、響のシンフォギアの特徴であるエネルギーの増幅によって、フィードバックを少なくする事が可能である。それ故に、選択肢の候補としては間違っていないのだが……

 

『くっ!ダメだ立花!こうも攻め手が絶え間ないと、集中する時間すら与えてくれそうにない! それに……』

『あんな近くで踊られてたら、巻き込まないようにってのは無理だっての!』

 

そう。二人の言う通り、その手段は使えそうにない。

 

まず理由の一つが、少ないフィードバックで絶唱を放つためには、響と二人が手をつないで集中する時間が必要であるという事。延々とノイズが出現し続けている現状では、そのわずかな時間も取れそうにはない。

 

二つ目の理由が、聖遺物を起動させた少女が、未だその側ちいる事だ。かつて、たった一人分で圧倒的な防御能力を誇る聖遺物「ネフシュタンの鎧」を半壊させたほどの威力がある絶唱を、増幅させた上三人分も放てば、同調はしてても展開までは行っていない少女がどうなるかなど、軽く想像がつくだろう。

 

『じゃあどうしろ、って、うわわわわ!?』

『立花!?大丈夫か!?』

『平気です!ちょっと不意を突かれて驚いただけ!』

「……くそっ!」

 

ドン、と握った拳を机に叩きつける。バキバキという音とともに割れたが、その程度は些細な事だ。

 

絶唱を撃たなければキリがない。

しかし撃つ隙も与えてくれなければ、撃ったら一人の少女が犠牲になる。

 

この矛盾を解決する手段は、何一つとしてない……はずだった。

 

「?! これは……」

「どうした!?」

「戦いの余波からか、ノイズを生み出していると思われる空間の歪みに、極端な偏りができてます! それも二箇所!」

「偏り? それはつまり、大物が出てくるという事か?!」

「……いえ、他のパターンとは違うというか……。! 何か来る!モニターに出します!」

 

モニターに映し出されたのは、ノイズの集団の中央付近。直前にクリスの攻撃で穴が空けられた空白地帯だった。確かにそこにある空間が歪んでいるかのように、背景がねじ曲がっている。

 

そして、加速度的に大きくなる歪みが最大に達し、闇と光が混じり合ったナニカになった瞬間、まるで何事もなかったかのように消えた。

 

……二つの置き土産を残して。

 

「生体反応あり!どちらも人間です!」

『そんなっ!』

 

響の悲鳴がこだまする。

彼女たち戦える存在は、自分に向かってくるノイズの対処で精一杯。

まるで、どこからか呼び出されたばかりのようにキョロキョロと辺りを見回す少年と男性を、ノイズの集団の中央にいる彼らを助ける手段は、彼女たちにはなかった。

 

『くそ!近づけないっ!』

『QUEEN's……って邪魔すんじゃねぇ!』

『逃げてくださいっ!!』

 

そしてついに、ノイズが二人に気がついた。形を持った実態なき絶望が、ゆっくりと足を向ける。

 

なんとか救おうと足掻く三人の少女の視線の先で、二人の男は、ゆっくりと()()()()()()()

 

 

 

「むぅ。状況がよく分からんが、とにかく根性の見せどころと見た!」

 

少年は、(オトコ)だった。

 

旭日旗柄のTシャツの上に白い学ランを肩掛けし、頭には白い鉢巻。まるで一昔前の番長スタイルを取り違えたかのような格好をしている。

それだけなら、ちょっとイタイ高校生に見えなくもなかった。

 

しかし、ほぼ全ての人間が抵抗できない絶望(ノイズ)を目の前にしても、その瞳から光が奪われない。むしろ、より一層爛々と、燃え上がる炎を幻視するかのような熱が伝わってくる。

 

この状況で笑みを浮かべられる闘争心。

それが、何よりの異常だった。

 

 

 

「なんか気持ちわりぃヤツらがうじゃうじゃいやがるが、まあ、気合いでなんとかなるだろ」

 

男性は、(オトコ)だった。

 

筋骨隆々という言葉が相応しい鍛え抜かれた肉体。それを見せつけるように上は前を開いたジャケットしか着ておらず、目線ギリギリまで下ろした頭のバンダナからは白い髪の毛が伸びている。

拳一本で戦場を生き抜いてきたと言われたら信じてしまいそうな、強者の雰囲気を纏っていた。

 

しかし、ノイズの前にはいくら鍛えた肉体を持とうと意味がない。にもかかわらず、全身から面倒臭そうな、気怠そうな、そんな雰囲気を醸し出している。

 

この状況で自然体でいられる余裕。

それが、何よりの異常だった。

 

 

 

そして、一部のノイズがその身を弾丸として(オトコ)たちを穿とうと変化した、その瞬間——

張り詰めていた糸が切られたかのように、(オトコ)たちの拳が突き出された。

 

 

「すごいパーンチ」

「ラカン適当に右ストレート」

 

 

両者とも、なんとも気の抜けた技名だ。もう少し考えろと言いたい。

 

しかし、それに反して、その威力は絶大だった。

『物理攻撃は無効?なにそれ美味しいの?』とでも言わんばかりに、視界を埋めつくさんとしていたノイズの集団が、たったの一撃で吹き飛んでいく。

 

地はめくれ、大気は震え、絶望(ノイズ)は粉々に粉砕される。

人体の限界と物理法則とその他諸々に喧嘩を売っているような、そんな正拳突きだった。

 

「ほぉ?お前、中々見所があるな。いい気合いだ」

「いや、貴方の方が素晴らしい根性。師匠と呼ばせてもらってもいいか?」

「いいぞ、お前みたいな弟子なら大歓迎だぜ!お前、名前は?」

 

感情のないはずのノイズが怯えてるかのようにたたらを踏み、目の前で起きた驚愕の現象に口を開けてポカンと固まる少女たちの目の前で、二人の漢は互いに名乗りを上げた。

 

 

 

「学園都市超能力者(レベル5)第7位、削板軍覇だ!」

 

「元紅き翼(アラ・ルブラ)、千の刃ジャックラカンだ。よろしくなボウズ」




——設定・ボツ理由——

時系列はG前。
この二人の参戦理由は、ビッキーとグレンラガンの兄貴とシモンを加えた五人で『超熱血戦隊キアイジャー』をやってる夢を見たから。あとは、生身で戦えて、「なんとなく」でノイズを倒しても違和感なさそうだったからです。

雰囲気ネタ系、内容シリアス気味を目指して書こうとしましたが、あまりに暑苦しくなりそうなので挫折。
そもそも、漢の中の漢二人を放り込んでも、ビッキーの漢化が加速するだけだと気付きました。

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