東方末妹録   作:えんどう豆TW

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初投稿です。感想等いただけたら幸いです。


リリィ・スカーレットという吸血鬼
望まれぬ生


 私の名はレミリア・スカーレット、スカーレット家の長女だ。今日10歳の誕生日を迎える私に、もう一人家族が増えようとしていた。

 「お姉さま!早く早く~!」

 私の部屋のドアをたたく音と少女の声。私には5つ下の妹がいる、名をフランドール・スカーレットという。彼女も家族が増えるのはうれしいのだろう、待ちきれないといった感じで私の部屋のドアを壊す勢いでたたいている。

 「はいはい、今行くわよ」

 待ちきれないのは私も同じだ。私はフランと合流するとお母様の部屋へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 どうやらもう出産は終わっていたようだ、お母様は手に赤子を抱いて微笑んでいる。

 「あらレミリア、フラン、元気な女の子だそうよ」

 そう言って微笑むお母様とは対照的にお父様の顔は浮かないものだった。いったい何故彼は娘の出産を前にして俯いているのだろうか。

 「本当は跡継ぎの長男が欲しかったのよ、仕方のないことだけれど」

 顔に出ていたのだろうか、お母様は耳元で小声で教えてくれた。

 なるほど、私もフランも女なのだ、至極当然といったところだ。悲しそうな顔で言うお母様を見て私も少し悲しい気分になった。せっかく娘が生まれたのだから喜んでもいいだろうに...。

 「この子の名前はリリィ、リリィ・スカーレットよ。頑張ってね、お姉ちゃん。」

 「うん!リリィ、あたしはフランドールよ、フランお姉さまって呼んでね!」

 フランは満面の笑みでリリィに話しかける。まだ言葉も理解できないだろうに、余程妹ができたことが嬉しいのだろう。もちろん私も嬉しいがギリギリで抑える。もっともお母様の瞳にはにやける私の姿が映っていたのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 基本的にリリィの面倒は私たちが見ることになった。お父様からの押しつけだろうけど、フランは大喜びで引き受けた。私たちができることは一緒に遊んでやることくらいで、ミルクやトイレなどはすべてお母様に任せっきりだった。フランはもどかしいのかやたらと「お母様の勉強をするわ!」と言っていた。

 リリィの世話は苦労しなかった、というよりも彼女は大人しすぎたのだ。泣き声ひとつあげずにいつも目をぱちくりとさせている彼女は私たちにもあまり反応してくれなかった。フランは時折泣きそうになっていたくらいだし私もそれに近い。いったい彼女の眼には私たちが映っているのか、はたまた何も映っていないのか。不安な日々をしばらく過ごすことになった。

 

 

 

 

 

 

 リリィの誕生日の日にもお父様は顔を見せなかった。お母様と私とフランの3人で祝うことになった誕生日にも彼女はいつも通り目を瞬かせるだけで反応ひとつ見せてくれない。それでも今は目が見えないからというお母様の言葉で私たちも納得することにした、だからといってリリィの世話をやめる気はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふらん、おねえさま?」

 「そう!フランお姉さま!こっちがレミリアお姉さま!」

 「れみりあ、おねえさま?」

 2歳になってから彼女は声を発し、私たちの名前を呼んでくれた。

 「ええそうよ、私がレミリア、よろしくねリリィ」

 そういって微笑みかけると彼女は満面の笑みを返してくれた。私とフランは顔を合わせた。たった2年、この2年がとてつもなく長かった。ようやく報われたような気がして私たちは笑い合った。

 「ふらんおねえさま、れみりあおねえさま」

 何度も嬉しそうに私たちの名前を呼ぶ彼女を幸せをかみしめるように二人で抱きしめた。やっと姉妹になれた、そんな気がした。しかしその幸せは長く続かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 3歳になってから彼女は私たちの声にあまり反応を示さなくなった。原因はわからない、だがそれは突然のことだった。

 「リリィ、絵本読んであげよっか?」

 フランの言葉にも首を向けるだけでしばらくすると虚空をぼーっと眺める。そんな日が何日も続いた。

 「お姉さま、あたし嫌われたのかな?リリィにひどいことしちゃったのかな?わかんないよ...。」

 「そんなことないわよ、あなたが一番あの子と一緒にいようとしたじゃない。それはリリィだってわかってるはずよ?」

 「でも、でもぉ...。」

 2週間それが続いてフランはついに泣き出してしまった、お母様にも相談したが原因はわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 お父様がリリィに用意したのは私たちとは違って地下室のひとつだった。流石に私もフランもお母様も反対したがお父様は曲げなかった。リリィ自身はいつも通り何も言わなかった。そんな生活が1月続いて私は限界だった。

 「リリィ、あなたはいったい何を考えているの?私たちのことをどう思ってるの?」

 リリィは地下室から出ようともしなかった。私たちがたずねても特に反応しない。一体なんだというのだ。あの嬉しそうな笑顔が嘘だとはとても思えない、だからこそ余計この女に教えてほしかった。どうして無反応なのか。どうして無視するのか。どうして...。

 「...ごめんなさい」

 彼女は申し訳なさそうに呟いた。違う、謝罪が聞きたいわけじゃない、私が聞きたいのはどうして――――――

 「お姉さま!リリィ!お母様が病気で倒れたって...」

 

 

 

 

 




原作と食い違うところが多々あるかと思いますがこれで続けていこうと思います。

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