Admiral of Roughneck~From black to white~ 作:八意 颯人
堤下達が連行されて2時間後 1830 食堂にて
勇次「……ったく……何で俺が乾杯の音頭をしなくちゃならんのだ……」
勇次は愚痴りながらマイクを掴むと横から既に出来上がっている瑞鶴が勇次に抱き着き、マイクを奪った
瑞鶴「まぁ良いじゃないユージン……ではカンパーイ!」
艦娘達 優花 沙耶 蘭「カンパーイ!」
勇次「ズイちゃん!?……まぁいっか」
勇次達は勇人の任務成功を祝い、食堂で宴会を開いていた
蘭側の武蔵「関係の無い私まで……本当にありがとうございます」
武蔵「気にするな、同じ『武蔵』同士、仲良くいこうじゃないか……ってかまたビビっているのか?」
蘭側の武蔵「……ああ、上城中将の暴れっぷりを見ればな……」
武蔵「……それに関しては秘書艦として謝る……すまない」
蘭「まぁ私は久々に見たんだけど……『北陸の龍』は健在だな……」
W武蔵「北陸の龍?」
蘭「……ああ、兄さんが地元にいたときの昔の異名だ……今は『神城の救済龍』として通っているが……」
武蔵(どれだけ荒れくれ者だったんだ……提督よ……)
蘭側の武蔵「……まさか紋々が入ってたりしてないよな?」
蘭 武蔵「………」
蘭側の武蔵が二人に質問すると二人は目を反らし、黙り、蘭側の武蔵は二人の様子を察した
蘭側の武蔵「………マジかよ」
武蔵「まぁ……紋々に関しては半年前の事件の関係で『入れなざるを得なかった』からな……」
蘭側の武蔵「……これ以上深追いは止めておこう……何か嫌な予感がするからな」
蘭「賢明だな、武蔵……」
武蔵「フッ……話は変わるが……えーっと……あった!」
ドン!
蘭「これは……魔王?」
武蔵「少尉、あっちの私よ……どうぞ」
蘭「ありがとう……おっとと……何故『魔王』を持っているんだ?」
武蔵は勇人の部屋から持ってきた焼酎『魔王』の蓋を開け、蘭と蘭側の武蔵のコップに注いだ
武蔵「これか?これは提督の私物を無許可で持ってきた……」
蘭「銀蠅かよ……まぁ良いか……頂こう」
蘭側の武蔵「ありがとう……ん?この焼酎……日本酒みたいに飲みやすい……」
武蔵「だろ?焼酎の中でも上物だ!全く……提督は、こんな『上物』を持っているなんて……う~ん、旨い!」
蘭「……旨いが、飲み過ぎてしまうな……こんなに飲み易いと……」
蘭側の武蔵「そうだな……何時も飲んでいるのは『黒霧島』だもんな……提督よ……」
蘭「……ボーナス入ったら奮発してあげるわよ」
二人は勇人の酒を舌包みをしていると……
沙耶「あーーー!蘭姉ぇ!!狡いィィ!!何で魔王を飲んでいる訳!?」
那珂「サヤ様!御供します!」
沙耶「程々にね」
勇次「お!?兄貴がジッチャンから貰ったヤツだな!ズイちゃん、飲もうぜ!」
瑞鶴「うん!」
翔鶴「ちょっ……瑞鶴ったら、早速勇次さんの腕に抱き着いて……もう……勇次さん、すみません……妹が……」
葛城「パルパルパルパルパルパル………」
勇次「いやいや、気にしていませんよ……ささっ『御姉さん』に葛城ちゃんも一口……」
翔鶴「それじゃ……頂きます」
葛城「……お言葉に甘えて」
瑞鶴「ユージン!?翔鶴姉ぇに飲ませたら……」
勇次は魔王を取り、五航戦のコップに入れると翔鶴は注がれた焼酎を一口飲み、気に入ったのか、そのまま一気飲みをした
翔鶴「……」
瑞鶴「翔鶴……姉ぇ?」
葛城「翔鶴……先輩?」
翔鶴「……んは?」
武蔵「んは?お……おい!大丈夫か!?」
ガシッ!!
武蔵は目が座り、呟いた翔鶴の様子を見ると翔鶴は武蔵の肩を掴み喋った
翔鶴「……ハヤチャンは何処にいるの?」
武蔵「な!?」
瑞鶴「あーあ……」
葛城「え!?えぇぇぇぇ!?」
勇次「まさか……翔鶴さんって……」
瑞鶴「うん……翔鶴姉ぇはお酒が弱いのよ……しかも違う意味で酒癖が悪いというオマケ付きで……」
蘭側の武蔵「ブーーーー!え!?ちょ!?ハヤチャン!?あの『戦場の狂龍』を……愛称で!?」
瑞鶴のカミングアウトに、みんな驚き、焦りだした
蘭「……こんな時に限って兄さんが居ないなんて……」
葛城「ちょ!?勇次さん!?元々は貴方が飲ませたからでしょ!?何とかしてください!」
勇次「俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇぇぇぇ!!」
葛城「貴方はどこぞの親善大使ですか!?」
瑞鶴「……宴会が始まる前に言っとけば良かった……沙耶さん!提督さんは?」
沙耶「……長門、金剛、ブッキー、ビス子、不知火、第6駆逐隊そして赤城ちゃんを連れて海辺の方に向かっていたわよ」
武蔵(……提督……)
武蔵は何故、勇人が宴会に参加していない理由を察したのか、悲しい表情で俯き魔王を飲み、暴走している翔鶴を止めにかかった
沙耶達は暴れている翔鶴を止めている頃 佐世保鎮守府内の岬付近にて
勇人「ふぅ……ようやく出来た」
勇人は電動ノコギリ等、土木現場に使う機材が散らばっている中、岬付近に『ある物』が出来て安堵した
不知火「それでは司令官、私と暁は機材を片付けてきますので後はお願いします」
勇人「……ありがとうな、気を付けてな」
暁「フン!………おーもーいー!!長門さん!!!響!!!」
勇人「……長門に響、行ってやれ」
長門「ああ……さぁ、持っていくぞ」
響「仕方無いな……」
不知火、響、長門そして暁は金剛、赤城、雷、電、吹雪そして勇人を残して機材を持ちつつ、岬を後にした
電「……これなら『死んでいった人達』も喜んでくれるのです」
吹雪「……そうだと良いですね……」
赤城「まぁ提督の突貫工事ではありますが『慰霊碑』と『墓』が無事完成して良かったです」
勇人「まぁ外見は不恰好だけどな……」
勇人は岬付近で作られた『ある物』の出来に納得していないのか少し不機嫌に答えた、そして『ある物』の隣には、石材を洋式の墓みたいに加工されて作られた『物』……いや慰霊碑には、こう彫られていた
『佐世保鎮守府 強者ノ戦乙女達ココニ眠ル』と……
そう勇人達は堤下の悪行により轟沈や解体等で、この世を去った艦娘達の墓と慰霊碑の二つを造ったのだ
電「ふぇっ!?あれで……不恰好ですか!?」
雷「そんな事は無いよ!むしろ上出来過ぎるわ」
金剛「雷電の言う通りデース!」
雷 電「金剛さん!名前を纏めないで!」
電「なのです!」
ビスマルク「しかも、それを2時間足らずで完成させるなんて……admiral ……
金剛「Thank You……admiral……」
雷 電 吹雪「司令官!ありがとうございます……」
電「なのです……」
金剛達は短時間で慰霊碑と墓を作り上げた勇人に泣きながら感謝すると勇人は金剛達に微笑みながら言い返した
勇人「何を言っているんだ?お前達の補助があったから2時間で出来上がったんだ、礼が言いたいのは俺の方だ……ありがとう……赤城、柏木から貰った酒と『ドイツビール』を持ってきたか?」
赤城「はい、此方に……」
赤城は紙袋から柏木から貰った日本酒『大典赤菊』と空色のラベルが張られているドイツビール『ブリュードッグ』の『シンク・ザ・ビスマルク』を取り出し、封を開け、勇人に渡した
勇人「ありがとう」
ビスマルク「ッ!?それは……ドイツビールの最高傑作の一つ『シンク・ザ・ビスマルク』!?何故提督が!?」
ビスマルクは勇人が高級のドイツビールを持っていた事に驚くと勇人は微笑みながら答えた
勇人「……此処に眠っている『プリンツ・オイゲン』の為に『お前の名前が入ったドイツビール』を取り寄せたんだよ……結構高かったんだぞ」
ビスマルク「提督……グスッ………Danke……いえ……ありがとうございます……」
勇人「お前もプリンツ達も、よく頑張った……思いっきり泣いてこいよ……」
勇人は微笑みながらビスマルクに言った途端……
ヒュ~………
「そうですよビスマルク御姉様……もう耐えなくていいのですよ……提督、後はお願いします」
「……まぁ我輩としては甘味を供えて欲しいが……」
「利根姉さん……あまり提督に我が儘を言ってはダメですよ……」
「筑摩ぁ~たまには良いじゃろ……」
「あんな……私達の墓にしては、ちょっち、やり過ぎてへんか?」
「……流石に気分が高揚します!提督、ありがとうございます」
「……仲間達を泣かしたら呪うからね!糞提督!」
「提督……潜水艦の艦娘達を宜しくお願いします」
「……提督、ビスマルク御姉様達を宜しくお願いしますね……そして私達の為に……Danke……いえ、ありがとうございます!」
「……提督に新しい『私』、皆さんの事を宜しくお願いします」
勇人「フッ……」
ビスマルク「プリンツ……みんな……うわぁぁぁぁぁぁん!!」
勇人は墓と慰霊碑の間に『大典赤菊』を注いだコップと『シンク・ザ・ビスマルク』を置くと潮風に乗って死んだプリンツ・オイゲン達の言葉が聞こえると、ビスマルクは何かが吹っ切れたのか、その場で泣き崩れた
金剛(Wow!テートクの粋な計らいデスね!)
吹雪(そうですね、しかも、あの強気なビスマルクさんが泣いているなんて……)
雷(余程嬉しかったかも知れないわね)
電(暁ちゃんが居なくて良かったのです……)
?「良かったな……ビスマルク」
赤城「ん?誰ですか?」
赤城は声がした方向に声を変えると林の中からグラーフが、お供え物なのか、勇人達の晩飯なのか甘味や酒の摘まみのカキピー、押し寿司そしてフランクフルトが載せている大皿を持ってきたのだ
グラーフ「すまない……admiralは未だ晩飯を取っていないと思ってな……食べるか?」
勇人「いや……グラーフ、それを御供えしてくれないか?」
グラーフ「……分かった」
勇人「赤城、線香と蝋燭を……」
勇人はグラーフが持ってきた大皿を墓と慰霊碑の間に置き、線香と蝋燭に火を付け、墓と慰霊碑に供え、覚悟のある真剣な表情で言った
勇人「……プリンツ・オイゲン……利根……筑摩……龍譲……大鯨……加賀……曙……そして『先代の赤城』……お前達は、よく頑張った……だから後の事はお前達の意思を受け継いだ者達に任せて、ここでアイツらの事を見守ってくれないか……」
金剛「テートク……」
勇人「……そして『助けれなくて』……すまない……」
勇人は墓の前で頭を下げると蝋燭の火の暖かみなのか、残暑の暖かみなのか、暖かい潮風が勇人を包むように風が集まってきた
そう……まるで死んでいった艦娘達が勇人を優しく抱擁しているかの様に……
勇人「……お前ら、早くお参りして戻るぞ……雨が降ってきたぞ」
グラーフ「ん?admiral……雨なんか降っては……いや『降ってきてる』な」
吹雪「……そうですね」
金剛「では皆さん、早く御参りするのデース」
勇人達は墓前に手を合わせ、御参りし、墓を後にした
龍の感謝の涙を供えて……
第2章兼コラボストーリー『ケジメ』 完