Admiral of Roughneck~From black to white~   作:八意 颯人

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私です。

今回も18禁の方を健全化した状態で送りしますので、宜しく御願い致します。

そして、しつこい様ですが『グロテスク注意』です。


第106話「隙間越しの大手術 後編」

「……此処まで育っているとは……予想外だ。しかも出血が激しい……」

 

「ええ……」

 

勇人と優花は内心、焦っているのか、表情を曇らせながら呟くとセレニアは二人が発言した日本語が分からないものの、今の現状を察した上で勇人が喋った日本語を出来る限り翻訳し、焦りながら言った。

 

と……どうすれば良いんだ!?このままだとレベッカが……

 

セレニアは焦りながら聞くと勇人は顔を顰めながら舌打ちをし、強い口調で優花に命令した。

 

「チッ……仕方無え……優花!!今から隙間による『帝王切開』に移行する!!異物の全摘出は終わっているか?」

 

「終わっているわ!」

 

「ならレベッカの頭を此方に入れてくれ!隙間を縮小させる!!」

 

「了解!!」

 

勇人は物凄く強い口調で優花に指示を出すと優花は隙間を介して頭部だけ出ているレベッカの頭を『隙間の向こう側の世界』である『デプラビアの世界』に押し出し、勇人に負けない位の物凄く強い口調で勇人に言った。

 

「……押し出したわ!!早く隙間を!!」

 

「……隙間縮小!!そして隙間大展開!!」

 

勇人はレベッカの頭部が此方側に来た事を確認すると、すぐに隙間の広さを麻酔用のチューブ程の小ささに縮小し、もう1つの隙間をレベッカの腹部の真上に展開し、そして……

 

「フン!!」

 

ネチョ……

 

隙間に両手を入れ、レベッカの体内を掻き出す様に不愉快極まりない粘り気と水気のある音を発しながら胎児を掴み……

 

「ッ!?オラァ!!」

 

バシャッ!!

 

ポタ……

 

ポタ……

 

……そのまま強引に胎児を引き上げたのだ。

 

そして引き上げた胎児は勇人に引き上げられた事に……

 

 

オギャー!オギャー!

 

「……素直に喜べないな。今から行う事を考えれば……」

 

「……そうだね」

 

「………」

 

勇人に抗うかの様に背中の蝙蝠みたいな翼を激しく羽撃かせ、そして勇人を威嚇するかの様な悪魔らしい汚い産声を上げたのだ。

 

勇人は過度の能力使用による疲労困憊になりながらセレニアと優花に命令した。

 

……セレニア、ナイフを……出来れば『聖力(天使の力)』が宿っているヤツを……そして優花、吸引用のキュレットを……」

 

「……うん」

 

………分かった

 

二人は勇人の命令を聞き、優花は隙間の空いた小さな空間に吸引用のキュレットを通しながら哀しそうに渡し、セレニアは腰に残ったナイフの一つを取り出し、取り出したナイフに念を送ると、ナイフは薄い白色に発光し、そのナイフを勇人に差し出し、自身が思っている『勇人が行う行動』に哀しく俯きながら聞いた。

 

……悪魔とは言え、このナイフで赤子を殺すのか?

 

セレニアは哀しく俯きながら聞くと勇人は左腕で胎児を抱え込みつつ右手でセレニアのナイフを受け取りながら哀しく答えた。

 

……んな残酷な事をする訳、無ぇだろ。今から胎児を『幽体離脱』言わば『魂を肉体から剥がす』んだよ。その為にはレベッカに繋がっている『臍帯(せいたい)』俗に言う『へその緒』を切り落とすんだよ

 

……結局、殺す事には変わり無いか

 

「……それしか方法が無いのヨ。この子の為にもネ

 

「……さぁ、手術再開だ」

 

セレニアと優花は内心、勇人がナイフで胎児を殺さない事に安堵したものの、胎児の魂を取り出せ、生命活動を止める……結局『殺す事』に変わり無い事に俯きながら言うと勇人は右手に掴んでいるナイフで臍帯(へその緒)を切り落とし、吸引用のキュレットに持ち替え、慣れた手付きでレベッカの体内を清掃していると勇人に抱え込まれている胎児が母親であるレベッカを守るかの様に……

 

 

ガブッ!!

 

 

「痛ッ!コイツ……もう自我が……それに強い咬合力(こうごうりょく)だ……肉が食い千切れそうだ……」

 

ハヤト!?

 

「大丈夫、勇人君!?」

 

……勇人の左腕に噛み付いてきたのだ。

 

セレニアと優花は悪魔の胎児に噛み付かれた勇人を見て驚愕しながら勇人の安否を確認すると勇人は痛みに耐えているのか、顔を顰めながら答えた。

 

「クッ……だ……大丈夫だ……後処理が終わったぞ。後は『1000倍に希釈した高速修復材』と『コットン』を……早く……」

 

「分かった!!ちょっと待ってて!!」

 

勇人は痛みに耐えながら優花に命令すると優花は慌てながら了承し、艤装(装置)に備え付けてあるであろう棚を漁り始め、『高速修復材』と書かれた容器を見つけ、高速修復材を手に取り、高速修復材からスポイドで一滴だけ取り出し、その一滴に色んな薬品と混ぜ込み、『1000倍に希釈した高速修復材』が入った霧吹きとコットンを小さな隙間に捻り込み……

 

「ぐぬぬぬ……」

 

スポン!!

 

「ふぅ……漸く通った……はい。高速修復材とコットン」

 

……空気が抜けた様な軽快な音を発しながらも、霧吹きとコットンを彼方の世界に送ったのだ。

 

「相変わらず無茶するな……ありがとう」

 

勇人は希釈した高速修復材が入った霧吹きと消毒用のコットンを受け取り、胎児の噛み付きによる激痛に耐えながらレベッカの体内に高速修復材が入った霧吹きを使い、隈なく霧吹きを吹き掛けると傷だらけになった体内が逆再生するかの様に傷口が塞がり始めるとセレニアはレベッカが徐々に治って行く様子に驚愕しながらも胎児の噛み付きで出血多量によって顔を青ざめている勇人を気遣いながら言った。

 

なッ!?水を掛けただけで……傷口が……まるで聖水だな……その『コーソクシューフクザイ』って言うのは……ハヤト、本当に大丈夫か?顔色が、どんどん悪くなってきているぞ

 

だ……大丈夫だ………こ……これでレベッカが死ならずに済んだ事だし……つ……次の段階に移行する……オラァ!!」

 

ブチッ!!

 

勇人はレベッカの口に着けている全身麻酔用のチューブをレベッカから取り外すと共に隙間を閉じさせ、激痛を紛らわすかの様に悪態を溢し、勇人の左腕に噛み付いている胎児を自身の噛み付かれた部分だけではあるが皮膚ごと引き剥がし、彼の皮膚をしゃぶっている胎児の口に強引に全身麻酔用のチューブを通すと、胎児は勇人の『大量の血』と『引き千切った皮膚』を食した事で満足したのか、満足そうに麻酔の力で眠ると勇人は()()()()()()()()()()()()()のか、左腕の動脈が顕になり、其処から勢い良くあふれる出血を止める為に霧吹きに残った高速修復材を豪快に掛け、顔を顰めながらセレニアに言った。

 

「チッ……筋肉(にく)と動脈まで持ってかれたか……セレニア、左腕に何か布を巻き付けてくれ。出来ればキツくな

 

あ……ああ……

 

セレニアは勇人の指示に従い、ジルが穿いているロングスカートの一部を切り取り、その切り取ったスカートの一部を使って勇人の左腕を縛る様に巻き付け、不安そうに作業が終わった事を伝えた。

 

こ……これで良いか?

 

ああ。本当は綺麗な布を使って『圧迫止血』したいが仕方無い……そろそろ始めるぞ……はぁぁぁ……『解』ッ!!」

 

 

ボッ!!

 

 

ッ!?あの炎が……あの赤子の『魂』か……私が知っている魂の色が違うんだが……どうしてなんだ?

 

勇人は胎児をレベッカの腹の上に置き、右手で胎児の頭を優しく触れ、一喝した途端、胎児が優しく発光し、胎児と魂が分離していくかの様に『青白い光を発した炎』こと『人魂』が現れ、その人魂が蛇の様に勇人の右腕に巻き付いて来たのだ。

 

セレニアは『自身が知っている魂の色の違い』に戸惑いを見せると勇人は応急処置したとは言え、重傷の身体に鞭を打つかの様に険しい表情になりながら右腕に巻き付いている人魂を右の掌に集めながら答えた。

 

……青白い光を発する事は、この人魂は『敵意が無い事』を示しているんだ。遺体を退かしてくれないか?今から行う術に支障が出る

 

勇人は険しい表情になりながらセレニアに命令すると、セレニアは「わ……分かった」と戸惑いながら生命活動が止まった胎児を優しく抱え、別の所に安置すると勇人は目を瞑り、呪文を唱え始めた。

 

「……元柱固真(がんちゅうこしん)八隅八気(はちぐうはつき)五陽五神(ごようごしん)陽動二衝厳神(おんみょうにしょうげんしん)、害気を攘払し、四柱神を鎮護し、五神開衢、悪鬼を逐い、奇動霊光四隅に衝徹し、元柱固具、安鎮を得んことを、慎みて『第十六代目 博霊頭首 博霊(はくれい) 飛龍(ひりゅう)』こと『上城 勇人』の名の元に五陽霊神に願い奉る……」

 

勇人は険しい表情になりながら陰陽師が唱える呪文を淡々と唱えると彼の身体が太陽の様に薄い橙色に発光し、それと同時にレベッカの下腹部に『小さい陰陽玉』を模した痣が現れ、それを間近に見てたセレニアと優花は普段の豪快果敢で陽気な勇人からは想像着かない静粛さと厳格な雰囲気が合わさった神々しい空気に圧倒しながら呟いた。

 

「凄い……これが『霊媒師(博霊一族)』としての勇人君の……」

 

ゴクッ……これがハヤトの……

 

二人は勇人から醸し出す神々しい雰囲気に只々、圧倒されると勇人は優しく目を開き、右の掌に収まっている人魂に俯きながら言った。

 

……すまんな。驚かして……君には酷な事を言うかも知れないが……

 

勇人は人魂に申し訳無さそうに言うと、人魂は少女の様な透き通った声を発しながら勇人に言った。

 

……分かっています。私は貴方の手によって殺された事を……ですが、それは仕方無い事です。悪魔である私が産まれれば貴方だけでは無く母さんまでもが……私を『あの世』に送り返すのですか?

 

人魂は不安そうに聞くと勇人は優しく首を横に振りながら答えた。

 

……違う。俺は君を『あの世』に()()()()()()()()()()

 

「ッ!?除霊しないの勇人君!?」

 

ホッ……良かった。なら何か方法があるのか?私に出来る事があれば()()()()()()()()

 

優花とセレニアは勇人の発言を聞き、優花は狼狽え、セレニアは『自身の口癖』であり『天使兵としての理念』である『人の子の魂の安息の為に』……守るべき対象や規模は異なるが勇人と同じ『平和の為に戦う事』を信念にしており、勇人が除霊しない事に安堵しながら聞くと勇人は二人の質問に簡潔に纏め、答えた。

 

それじゃ、セレニアは聖力を常に俺に注いでくれ。今から行う術は相当『霊力』を使うからな……それに優花、この人魂も『被害者の1人』だ。それに折角、産まれて来たのに、そのまま『あの世』に送り返すのは『この子』にとって酷な話だ。だから、この子をレベッカの子宮に『禁忌憑依』させ、この子の来世を『レベッカの子供』として転生させるんだよ」

 

「……霊媒師になっても相変わらず神様に喧嘩を吹っ掛ける様な真似を……この子を再び『レベッカさんの子供』として転生させるのは良いけど、本来『産まれる筈の子供』はどうするの?」

 

優花は人魂をレベッカの子供として転生させる事による弊害である『転生した"もう1つの新たな魂"の行方』について聞くと勇人は呆気羅漢に答えた。

 

「その点については大丈夫だ。2つの人魂を受け入れる様に術と軽い遺伝子操作をして、一度きりだけど『双子』として産まれる様に弄るつもりだ……さぁ始めるぞ」

 

「術と遺伝子操作の同時進行だなんて……本当に無茶苦茶な事をするわね……本当に出来るの?」

 

「……俺を誰だと思ってんだ?」

 

「……そうだったわね。日本軍が生んだ『チート軍人』だもんね。これ位『朝飯前』だもんね」

 

優花は勇人が今から行う『2つの作業』である『幽体離脱した人魂をレベッカの子供として再転生させる事』と『別の新たに転生した人魂の為にレベッカの体質を弄る事』に苦笑しながら呟くとセレニアは二人の日本語による会話の内容が分からず、不安そうに狼狽えながら聞いた。

 

お……おい、私を除け者にするな。せめて今から行う内容を簡潔に説明してくれないか?日本(ジパング)の言葉が分からないんだ

 

そうだったな。簡潔に言うと、この子の来世を再び『レベッカの子供』にする為に色々と術を掛けるんだ。勿論、後でジルにも同じ術を掛けるつもりだ

 

セレニアは勇人の説明に驚愕し、神しか出来無い事を霊媒師の能力を持った勇人が行う事に狼狽えながらも強い口調で異議を唱えた。

 

ッ!?お前、正気か!?神しか許されない禁忌を……

 

ああ。だから不足分の霊力を、お前の聖力で補おうとしてんだ……それに、お前は俺に『何でもやる』と言ったよな?なら、今から行う『(禁忌)』に加担しろよ

 

勇人は険しい表情をセレニアに見せない様に冷や汗を掻きながらも無理矢理、作り笑顔をしながら言うとセレニアは呆れたかの様に軽い溜め息を溢し、仕方無しに勇人の命令に従った。

 

ハァ〜……分かった。それじゃ今から聖力を送るぞ

 

セレニアは内心「とんでも無い奴を仲間にしてしまったな……」と思いながら少し後悔しつつも、少し恥ずかしそうに勇人の背後に移動し……

 

 

ギュッ……

 

 

……へ?セレニア?何故『抱き着く必要』があるんだ?

 

「ちょ!?セレニアさん!!こんな時に何『誘惑』しているの!!」

 

……そのまま背後から勇人に抱き着いたのだ。

 

勇人はセレニアの『奇怪過ぎる行動(抱き着き)』に呆気を取られ、優花は血相を変えながら日本語で一喝するとセレニアは日本語は分からないが優花が激怒している様子を察し、何故『抱き着いた理由』について簡潔に言った。

 

私みたいな一般の天使兵の場合、こうしないと聖力が送れないからだ。私だって本当は血塗れになったハヤトに抱き着きたく無いし、こんな『不埒な行為』はしたくないんだ。許してくれ、ユウカ

 

……分かったワ。今回だけは目を瞑ってアゲルワ……但し、勇人君は全て終わったら『お説教』ね」

 

「何で俺だけが!!ゴホン!まぁ良い……始めるぞ」

 

勇人は優花の『厳しい発言(冗談?)』に一喝(ツッコミ)を入れつつも気合いを入れ直すかの様に咳払いをし、懐から2枚のスペルカードを取り出し、両手を使いながら呪文を唱えつつ、セレニアに気合いを入れる様に喝を入れた。

 

「……(りん)(びょう)(とう)(しゃ)(かい)(じん)(れつ)(ざい)(ぜん)!博霊飛龍の名の元に、この者の安息と生命を与え、この者の忌々しい輪廻から開放せよ……気合い入れろよ!ガッツリ持ってかれるからな!!

 

ッ!?分かった!

 

セレニアは勇人に喝を入れられた事に更に強く抱き着き、勇人は『禁忌呪文(タブースペル)』である『霊媒師としての自身の禁忌奥義(ラストスペル)』を強く唱えた。

 

「行くぜぇ……禁忌奥義(ラストスペル)!『無想転生 禁忌転生』そして更に『無想転生 黄金体験(ゴールドエクスペリエンス)』!!」

 

勇人は自身の禁忌奥義(ラストスペル)を強く唱え、手に持っていた2枚のスペルカードを地面にメンコを打ち当てるかの様にレベッカの腹部に打ち当てるとレベッカの身体が薄い橙色から黄金に輝き出し、その発光の源である『レベッカの腹部に張り付いた2枚のスペルカード』の真上で人魂が『本来の姿である赤毛が入った黒髪の赤子』になり、赤子特有の愛くるしい笑みを溢しながら勇人に感謝の意を示した。

 

私と母さんの為に禁忌まで犯してまで……本当にありがとうございます。ハヤトさん……これで私と母さんは救われました

 

気にすんな。今度は、ちゃんとした人間に産まれて来いよ。こんな恥ずかしい呪文を再び唱えるのは、もう沢山だからな

 

勇人は人魂の感謝の言葉に安堵し、茶化すかの様に微笑みながら言うと人魂は勇人に釣られて微笑んだが、何かを忘れていたのか、少し慌てながら『その事』を勇人に言った。

 

フフフ……あ!?あの……大変、厚かましい事ですが、もう一つ『願い』があります。もし私が産まれた時『私の名付け親』になって欲しいんですけど……駄目でしょうか?

 

人魂は今にも少女が泣き出しそうな雰囲気のある涙声になりながら勇人に御願いすると、勇人は微笑みながら『人魂の名前』を考え始めた。

 

フッ……なら(ついで)に今、此処で決めてやる……そうだな……ヘレナやシェリー、アシュリー……イヤイヤ、流石に『バイ○キャラ』で命名するのは、幾ら何でも()()()()()()()……ん!待てよ……確か……『あの名前』なら……よし!決めた!

 

え!?早っ!?もう決めたのですか!?是非、教えて下さい!

 

そ……そんな事よりも早く終わらしてくれ!!聖力が底を着くッ!!

 

勇人は思考を重ね、人魂の名前を決めると人魂は勇人の声に驚き、セレニアは『聖力切れ』を起こしかけているのか、艦娘で言う『中破状態』に陥り、相当切羽詰った表情で勇人に言うと勇人は微笑みながら人魂に『名前』を着けた。

 

その『名前』は……

 

「……今日から君の名前は『Lucia(ルシア)』だ。この名前はラテン語で『Lux()』という意味を捩った名前でもあり『聖女 ルチア』の様に『困った人を助ける優しい人間』になって欲しいから、そう名付けた。もし君が男として生きたいのなら『Lucio(ルシオ)』と名乗れば良い。意味も一緒だからな

 

……ラテン語で『光』という意味を捩った名前であり、四世紀初めに『ディオクレティアヌス帝』の迫害で殉教した『シチリア島シラクサの聖女』こと『聖女 ルチア』みたいに『困った人を救済する優しい人間に成長して欲しい』という願いを込めて、人魂に『ルシア』として名を与えたのだ。

 

勇人は『人魂』こと『ルシア』に名前を与え、更にルシアに分かり易く説明した途端、2枚のスペルカードが更に色濃く金色に発光し、粒子になりながら消え、粒子になったスペルカードはレベッカの下腹部に出来た陰陽玉に似た痣の下に小さく筆記体で『Lucia』と刻み、そのまま風に乗って消えるとルシアは感極まって、嬉し涙を流しながら勇人に礼を言った。

 

『光』そして『救済の聖女様』……『ルシア』……これが『私』の『名前』……ハヤトさん!こんなに素晴らしい名前を与えて下さって、ありがとうございます!この御恩は一生、忘れません!!そして……母さんとジル叔母さんの事を宜しく御願いします!

 

ルチアは勇人の粋な計らいに感極まったかの様に嬉し涙を溢し、全身全霊を掛けて礼を言いながらレベッカの下腹部に表した小さな陰陽玉に吸い込まれて行くと勇人はルチアの嬉しい表情を見て、北叟微笑みながら優花に言った。

 

「一生って……まだ始まって無ぇだろ……まぁルシアが喜んでくれて何よりだな。なぁ優花……」

 

「うん。後はレベッカさん次第だね。勿論、結果は?」

 

「分かり切っているだろ?成功だ。現時刻を以て『中絶手術(オペ)』並びに『除霊』終了だ……あー疲れた……」

 

「フフフ……お疲れ様」

 

二人は少し疲労感を顕にしながらもルシアが救われた事に満足そうに笑顔で和気藹々に会話すると、聖力切れを起こし、いつの間にか艦娘で言う『大破状態』になっており、勇人に獅噛(しが)みついているセレニアが相当窶れた表情になり、かなり疲労しているのか今にも倒れそうな身体を支えるかの様に勇人に縋り、勇人に言った。

 

は……ハヤト……良い雰囲気になっている所を悪いが……お前の『残った霊力(ちから)』……分けてくれないか……防具(アーマー)が維持出来無いし、お前の身体に獅噛みつくだけで『やっと』だ……

 

……あ!?スマン、忘れてた……ほほぅ……しかし『愛宕』に負けず劣らす『デカい』な……」

 

「………勇人君?」

 

「ッ!?ン"ン"ッ!!スマン、俺とした事が……では始めるぞ」

 

優花は『不可抵抗』ではあるがセレニアが密着し続けた事により『健全な男のサガ』に負けそうな勇人に「セクハラ駄目ゼッタイ!!!」と言わんばかりにドスの効いた声で優しく一喝すると勇人は先程の失言及び失態を撤回するかの様に咳払いをし、霊力をセレニアに送ると、セレニアは勇人から霊力を受け取ったのか、元の『西洋の甲冑』を身に纏い、安堵しつつも甲冑に違和感を感じ取り、その事を勇人に言った。

 

ふぅ……これで……ん?甲冑が服の様に『軽い』な……

 

セレニアは普段、着ている甲冑が『軽い』言わば『装甲性能が低下している事』を勇人に言うと、勇人は疲労感を漂わせながら答えた。

 

当たり前だ。俺もセレニアと同じ『霊力切れ(ガス欠)』を起こしているんだ。完全に戻る訳、無いだろ

 

……スマン。お前の事を考えずに……

 

セレニアは勇人もまた『霊力切れ』を起こしているにも関わらず、ほんの僅かに残った霊力を絞ってまで、完全とは言えないが自身の甲冑を復元して貰った事に少なからず罪悪感に見舞われ、謝罪すると勇人は自身の疲労感を誤魔化す様に肩を軽く回し、セレニアと優花に言った。

 

気にして無ぇよ。半日休めば回復するからな……優花も手伝ってくれて、ありがとうな。また何かあったら連絡するから」

 

「……うん。無茶しないでね」

 

優花は心配そうに答え、隙間に通している麻酔用のチューブ等を自身の世界に片付けると、勇人は自身の世界に繋がっている隙間を閉じ、それを確認すると伊勢型の2人と伊良湖は安堵を溢し、会話し始めた。

 

「「しかし二人を助けるだけでは無く……」」

 

「まさか幽霊まで救うとは……『馬鹿』が付く程の『お人好し』ですね……司令は……」

 

3人は勇人の性格を知った上で悪態を零す様に褒め称えると大鯨もまた勇人を褒めるかの様に微笑みながら言った。

 

「そうですね……ですけど、これが『あの人』の『良い所』でもあり、私達が提督に『惚れた部分』でもありますが……」

 

大鯨は微笑みながら伊良湖と伊勢型の2人に言うと、3人は口角を少し上げ、大鯨の言葉に同意した。

 

「……はい」

 

「そうね」

 

「……だな」

 

3人は大鯨の言葉に微笑みながら同意すると優花は手をパンパンと叩き、気合いが入った声を出し、4人に命令した。

 

「さぁ、無駄口を叩かずに、この艤装を片付けるわよ!!」

 

「「……そうだった。また、あの艤装の片付けが残っているんだった……泣けますね」」

 

「……」

 

「……まぁ、そうなるな」

 

4人は優花の命令を聞き『完全に忘れていた』のか、はたまた『思い出したくなかった』のか、勇人の艤装を見て、嫌そうに顔を顰めながらも優花と共に艤装を『勇人の私室』に戻したのは言うまでも無かった……

 

 

 

 

 

 

 

優花が勇人の艤装を片付けている頃、東京内の大学『東京大学』の『とある研究室』にて……

 

「……藤岡様、此方が当時、上城勇人が軍医大に在学してた時に削除した『例のヤツのコピー』です」

 

「……ほう、これが……」

 

『優花に似た若き男性研究員』がパソコンを開きながら先程『サリエルと手を組んでいたインテリ風の若い男』であり今回の大異変の黒幕の1人である『藤岡 春(以後 『藤岡』)』に『勇人が軍医大学生時代に削除した』とされる『復元された"とある論文データ"の内容』を見せると藤岡は興味深く内容を黙読しているとパソコンを操作している研究員が北叟笑(ほくそほほえ)みながら行った。

 

「完全とは言えませんが、此処まで『復元』には苦労しましたよ……今も尚『医学界(我々)の権威を脅かす脅威』となっている上城が自身の姉を治す為に新薬を制作及び研究してた時に偶然発見した『副産物』があったとは……」

 

「まさか皮肉な事に論文(データ)上ではあるが治療薬を作るつもりが偶然にも『人類史上類を見ない地上最悪の細胞兵器』を作ってしまうなんてな……あの男が『愚行』に走る訳だ……私も『あの男の立場』なら『このデータ』を『別の発想』で遺憾無く発揮させるのにな……」

 

藤岡は口では当時の勇人に対して同情する発言をしたものの、表情は研究員と同じく勇人に並々ならぬ恨みを持っているのか、勇人に対して『切札(奥の手)』を手に入れたかの様に北叟笑みながら言うと研究員もまた新たな研究材料が増えて『研究者』として、そして『その男性研究員の個人的な目的』に近付けた事に興奮し、北叟笑みながらも勇人が嘗て『削除したデータ』の『復元作業』に取り掛かりながら。

 

「……全くです。この新種の細胞が艦娘や深海棲艦を含め、こんな愚行を起こした罪人達に鉄槌を下せる『良い細胞の論文(データ)』を削除するなんて……狂気の沙汰しか思えません」

 

「そうか……つまらない事を聞くが何故君は、其処まで艦娘や深海棲艦……いや軍人達を恨むんだ?」

 

藤岡は研究員の発言を聞き、興味を湧き、微笑みながら聞くと、その研究員は先程迄の北叟笑んでいた表情が消え、顔を歪ませ、如何にも『この世の全てを恨んでいる』かの様な強い憎悪感を藤岡にぶつける様に強い口調で『自身の素性』を交えて答えた。

 

「当たり前だ!!俺の両親は一年前、横須賀で深海棲艦、艦娘そして海軍の人間に見殺しにされたんだ!!しかも、その当時の艦娘達の司令官でもあり、両親を見殺した全ての元凶である『上城勇人』によって俺の両親だけではなく『桜花連合(家族)』を解体させ、挙げ句の果てには『優花(愚妹)』が、あの男の娼婦になったと言わんばかりに喜んで入隊したんだ!!家族として『全ての軍人』……特に、アイツを許す訳にはいかねぇだろ!!」

 

「ッ!?まさか!?『大本営襲撃事件』の……すみません『(れん)博士』……貴女に辛い過去を思い出させる様な真似をして……」

 

藤岡は『優花似の若い男性研究員』であり『優花の双子の兄』である『桜花 (れん)(以後 『蓮』)』の辛い過去を軽々しく聞いた事により、軽い罪悪感が湧き、少し俯きながら謝罪すると蓮もまた先程の醜態を藤岡に晒してしまった事による罪悪感が湧き、慌てて謝罪した。

 

「ッ!?す……スミマセン藤岡様、私とした事が……」

 

「いえいえ、誰にだって本音を零したい時だってありますよ……ですが、これで博士が何故、私と『手を組みたがる理由』が分かりました……まさか()()()()()()()()だったとは……」

 

「……藤岡様も、あの男によって『回天組(家族)』を……そして身内が海軍に……」

 

蓮は藤岡の呟きを聞き、神妙な必要で消極的に聞くと、藤岡は只でさえ暗い部屋(研究室)なのに雰囲気までもが暗くなるのを阻止するかの様に苦笑しながら答えた。

 

「……はい。まぁ私の場合は『あの男』と『柏木』のせいで……ですが……博士、雑談は此処までにして、そろそろ……」

 

「……そうですね。『私達の復讐』の為に……そして『こんな愚かな軍人達に鉄槌を下す』為に……」

 

蓮は藤岡の言葉を聞き、気合いを入れ直すかの様に軽い溜め息を溢しながら勇人が削除した『論文(データ)』が入っている『新種の細胞の名前が記載されている題名(フォルダー)』をクリックし、復元に取り掛かった。

 

そして数分後、その題名(フォルダー)には、蓮花によって『削除された名前』と『細胞の効力のデータ』が復元され、藤岡は蓮の背後からデータを閲覧し、微笑みながら呟いた。

 

「これが上城が『消した細胞(人工ウイルス)』の『データ』か……」

 

藤岡は勇人が消したデータを見て北叟微笑んでいると蓮は興奮しながら『消した細胞(人工ウイルス)』の内容を藤岡に説明した。

 

「はい。まさか復元された題名に『罰』や『苦痛を与え続ける』という意味を持つ『名前』を付けるなんて、当時からイカれていたのですね……しかも、この効力は地球上にある物『全てを性質異常』させ『内側から破壊する性質』を持っており、常に『成長』そして『変異する性質』を持っていますね……この『地上最悪の新種の細胞(ウイルス)』を完全復元すれば……」

 

蓮は興奮しながら『勇人が削除したデータ』を復元していると藤岡もまた『削除したデータ』の名前を聞いて大変気に入りったのか、北叟微笑みながら『細胞(人工ウイルス)の名前』を呟いた。

 

その名は……

 

 

 

「『地球上"全て"に永遠の苦痛を与え続ける細胞』……『Punishing Virus(パニシング ウイルス)』……これを使えば……アイツは……クククッ……」

 

 

 

Punishing Virus(パニシング ウイルス)

 

 

それは軍医学校時代の勇人が治療薬を研究した際に作られた『偶然の副産物』である『核より恐ろしい性質を持った細胞兵器』だと知り、この世から『隠滅した細胞』であり、この世界だけでは無く、全ての平行世界や異世界に『最悪の終末(DEAD END)』を起こす『死神』ある。

 

今、正に二人の凶人の手によって細胞(死神)が蘇ろうとしている……


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