Admiral of Roughneck~From black to white~   作:八意 颯人

165 / 168
第104話「(勇人)に飼い慣らされている猛犬(忠実)

三笠元帥達が『勇人対策』に対しての会議を始めてから数時間後 1630 呉鎮守府 執務室にて……

 

「……もうそろそろ来るな。あの女新兵が……グフフフ……」

 

「……」

 

執務室に備え付けられている高級感のあるアンティーク調のソファーに座って寛いでいる壮年の男こと『現 呉鎮守府総司令官 海軍少将 楠木 一雄(以後 『楠木』)』が忠実の履歴書を見て気味の悪い笑みを溢しながら『新たに建造された涼月』の尻を鷲掴みをし、擦りながらセクハラをしながら忠実を待ち続け、涼月は自身の大人しい性格が災いし、反抗出来ず、自身の嫌悪感に耐え、顔を顰めながら黙り続けていると……

 

 

コンコンコン……

 

 

「佐世保鎮守府から研修に参りました大岡と叢雲です。入室許可を御願いします」

 

「ッ!?」

 

「チッ……意外と早く来たんだな……良い所だったのに……」

 

楠木の行き過ぎた行為をタイミング良く止めるかの様に忠実と叢雲が執務室の前に来たのだ。

 

涼月は安堵し、楠木は悪いタイミングで扉を叩いた忠実に恨めしそうに顔を顰め、涼月の尻から手を離し、忠実と叢雲に命令した。

 

「……許可する」

 

「「……入ります」」

 

忠実は今の呉に嫌な予感を感じ取り、叢雲は自身の司令官である忠実より上の階級である楠木に対して緊張し、2人は真剣な表情で入室すると楠木は忠実の身体を舐め回す様に見て、呟いた。

 

「フム……外見は『上の中』だな……後は、どう調理するかだ……」

 

「……チッ、早速セクハラ紛いな事を……」

 

(おいぃぃぃ!?楠木少将にセクハラされたからって何、舌打ちしてんのよぉぉぉぉ!!仮にも上官よ!!もう嫌……セクハラ上官に傍若無人な司令官に……ゔぅ……胃がキリキリと痛む……)

 

忠実は楠木の下心丸出しの視線を感じ、自身の嫌悪感を表す様に顔を顰めながら舌打ちをし、叢雲は楠木に舌打ちをした忠実に内心、驚愕し、今現在の状況に悪態を溢すのと同時にストレスによる胃痙攣を起こし、顔を顰めながら腹部を押さえると楠木は顔を顰めた忠実に鼻で笑いながら答えた。

 

「……この『上官に対しての反骨精神』は君の『教官』兼『上官』である『上城大将の教え』かな?大岡君?」

 

楠木は忠実の上官である勇人に対して貶しながら聞くと忠実は……

 

「………それがどうかしたのですか?此方も貴方の無粋な視線に嫌気を差しているのですよ。それ『セクハラ』ですよ」

 

「ッ!?」

 

(ちょ!?此処で大本営の二の舞いを起こす気なの!?しかも今の悪行を上城総司令官に擦り付けた!?ってか助けて上城総司令官!!この馬鹿を何とかして欲しいわ!!でないと私が胃潰瘍になってしまうわ!!)

 

……楠木を見下しながらも呆気羅漢に肯定したのだ。

 

叢雲は今現在、佐世保鎮守府で業務中の勇人に助けを乞いつつも忠実の反抗的な態度に『この世の終わり』と言わんばかりに顔面蒼白になり、冷や汗を滝の様に流しながら腹部を押さえ続けていると楠木は一瞬、顔を顰めたが、自身の劣情を忠実に悟られない様に陽気な微笑みを溢しながら答えた。

 

「……フフフ。いや〜済まないね。君が『フェミニスト(女権拡張論者)』だったとは知らなかったんだ。以後、気を付けよう……それに今日は遅い、明日からビシバシと調ky……ゴホン!教導していくから、そのつもりで」

 

楠木は微笑みながら忠実達に言うと忠実は楠木を睨み付けながら「分かりました。明日から宜しく御願いします」と一言捨て、忠実の無礼な態度のせいで疲労困憊になっている叢雲と共に執務室を後にすると楠木はニタァと気持ち悪い笑みを溢し、再度、涼月をセクハラし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして場所は変わり艦娘寮の一室にて……

 

「うわぁ……まるで『女版の大将』みたいな人すね」

 

「アヤヤヤ……あのモグラ(新兵)を『二重スパイ』として使うなんて……しかも大将まで『変な能力』を持っていたなんて驚きますよ……」

 

執務室に備え付けられた盗聴機を介して艦娘寮の一室こと『青葉の私室』で今の会話を盗聴していた『緑色の和服を着た艦娘』であり、嘗て柏木の秘書艦である『龍鳳』とカメラを持った艦娘『青葉』が『気味の悪い空間を介して地面から上半身だけ出した男』こと『勇人』にドン引きしながら聞くと、勇人は『自身が考えた作戦』が順序良く進んでいる事に口角を少し上げ、2人の反応に苦笑しながら言った。

 

「まぁ、この能力の御蔭で柏木を治したんだから引くなよ二人共。それに地味に傷付く」

 

勇人は苦笑しながら2人に言うと2人は頭の中では理解はしているが、やはり……

 

「それは分かっていますけど……やはり……」

 

「……『床から上半身だけ出した大将』もそうですが、その床に出した『隙間自体』が()()()()()んですよ!如何にも闇堕ちしそうな紫一色な空間なんで絶対に入りたく無いし、そもそも見たくも無いんですよ!何とかならないんですか?」

 

……今現在の『勇人の姿』及び『隙間』に対して未だに生理的嫌悪感を抱えていたのだ。

 

2人は上半身のみ出している勇人もそうだが、彼が出した隙間に「生理的に無理ィ!!」と言わんばかりに気味悪そうに伝えると勇人は「そう言われてもなぁ……『慣れろ』としか言えんな」と小さく(ボヤ)きながらも続けて言った。

 

「まぁ、この能力については他言無用で頼むし、その話は置いといて本題に入るが……2人は『楠木の証拠』を持っているよな?」

 

「はい。持っていますが……それを今から大岡軍曹に渡せば良いのですか?」

 

「すぐに処しますか?」

 

2人は勇人の質問に答えながらも、自身の考えを勇人に促すと勇人は真剣な表情で2人の質問に答えた。

 

「渡すのは合っているが()()()()()。だから更に証拠を掴む為に今から楠木に『罠』を仕掛ける」

 

「「へ?『罠』……ですか?」」

 

青葉と龍鳳は勇人が発言した『罠』と言う言葉に首を傾げながら聞くと勇人は「まぁ見てなって……」と一言添えながら懐からスマホを操作し、誰かに電話を掛け始めた。

 

その『通話相手』とは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻 場所は変わり『旧 柏木の私室』であり『現 来客専用宿泊部屋』にて……

 

プルル!プルル!

 

「……電話(スマホ)鳴っているわよ司令官」

 

「ああ……ッ!?上城勇人からだ……」

 

「だから総司令官の事を呼び捨てで言うんじゃないの!!」

 

……勇人が二重スパイとして呉に送り込んだ忠実だったのだ。

 

叢雲は忠実の呼び捨て発言に一喝したが、忠実は叢雲の一喝を無視し、顔を顰めながら勇人からの電話に出た。

 

「……何の用だ『汚職軍人』?」

 

(しょ)(ぱな)から何喧嘩売ってんのよアンタは!!総司令官に怒られるわよ!!スミマセン総司令官!!後でキツくッ!!キツゥゥゥく言っておきますので!!」

 

忠実は勇人に啖呵を切る様に喧嘩口調で電話に出て、叢雲は相当焦りながら忠実に一喝しながら謝罪すると勇人は忠実の発言に、あまり気にして無いのか叢雲の謝罪に冗談を交えながら返答した。

 

「気にして無ぇよ。佐世保(ウチ)は『家族の様なアットホームな職場』を売りにしているからな」

 

「ホッ……それ『ブラック企業』の『謳い文句(キャッチフレーズ)』ですよ総司令官」

 

「……え?マジで?ヤベェな……だから配属希望者が集まらなかったんだな……後で謳い文句を変えるか」

 

「……知らなかったんかい。まぁ良い意味で『アットホームな職場』は事実なんで、そのままで良いと思いますよ……良かった。直属の上官が陽気で相当器のデカい人で……」

 

叢雲は勇人の発言に物凄く安堵しながらも佐世保鎮守府の謳い文句に軽い指摘(ツッコミ)を入れると忠実は勇人と叢雲の発言を汲み取り、悪態を交えながら聞いた。

 

「フン!その、お前自身が『汚職に塗れた最低野郎(ブラック企業の頭)』の癖に、良く平然と言えたモンだな……んで、何の用だ?コッチは、あの変態に苛ついているんだ。簡潔に……」

 

忠実は上官(勇人)相手に高圧的な態度で要件を聞こうとした途端……

 

ゴン(ゲンコツ)!!

 

「ッ〜!!!!」

 

「折角、総司令官がアンタの無礼を快く許してくれたのに、何また火を着ける様な真似をしてんのよ!!本当にスミマセン総司令官!!今、秘書艦権限で処した所なんで許して下さい!!」

 

……忠実の数々の無礼にストレス耐性が限界に達した叢雲が激怒し、忠実に(拳骨)を入れたのだ。

 

叢雲はストレス性胃痙攣による腹痛に耐えながらも忠実が起こした『勇人に対しての数々の無礼』に今にも土下座をしそうな気迫と申し訳無さが籠もった強く重い口調で勇人に謝罪すると勇人は忠実絡みで苦労が絶えない叢雲を同情し、只々「あははは……」と苦笑しなざるを得なかった。

 

勿論、青葉の私室で一部始終を聞いていた龍鳳と青葉もまた……

 

「叢雲ちゃん……何も知らないとは言え……」

 

「そうですね……しかも彼女、一昨日『横須賀』で建造され、何も聞かされず秘書艦に着きましたからね……」

 

「「……叢雲ちゃん(さん)『ドンマイ』です」」

 

……『忠実の正体やら目的』そして『勇人が警察や敵対している裏組織(回天組と龍光会)に目を付けられている事』等、()()()()()()()()()()()に同情し、小さく静かに合掌した。

 

場所は戻るが忠実は叢雲による鉄拳制裁を食らい、相当痛かったのか、頭を抱えながら悶絶し、涙目になりながら叢雲に怒鳴った。

 

「ッ〜〜……上官に向かって何『暴力』を振るっていんだ叢雲!!暴行罪で逮捕するぞ!!」

 

総司令官(直属の上官)相手に『言葉の暴力』を振るったアンタに言われたく無いわ!!それを止める秘書艦(ワタシ)の気持ちを考えなさいよ!!この箱入り不良娘が!!」

 

「ッ!?んだと!!」

 

ワーワー!!

 

叢雲の反論を皮切りに2人は喧嘩を始めると勇人は苦笑しながら何時もの口癖である「……泣けるぜ」と忠実の反骨精神に『過去(新兵時代)の自分』を重ね、悪い意味で懐かしさを覚えるかの様に溢しながらも喧嘩を始めている2人を優しく窘めた。

 

「まぁまぁ、俺は本当に気にして無いから喧嘩は其処までにしてくれないか?それに大岡、お前に『やって貰いたい事』があるんだ」

 

「ハァ……ハァ……(あて)に『やって貰いたい事』?」

 

忠実は叢雲との喧嘩に少し疲労困憊になりながらも勇人に話の意図を聞くと勇人は自身の考えである『楠木に対しての罠』を簡潔に指示を出した。

 

「ああ。大岡には楠木との会話内容をスマホで録音して欲しいんだ」

 

「……まさか、(あて)を呉に出向させた本当の目的は、呉の艦娘達を含む女性隊員達を助ける為に囮操作員(スパイ)として潜入させたんだな?」

 

忠実は『勇人の考え』であり『忠実を呉に行かせた本当の目的』である『艦娘達を含む女性隊員全員を助ける為に楠木を逮捕する事』を完全に察し、それを勇人に聞くと彼は微笑みながら答えた。

 

「そうだ。勿論、楠木に関する証拠は既に龍鳳と青葉が持っているんだ。だが……」

 

「どれも『決定的な証拠』には至らない……と言う訳だな?それなら『乗ってやる』が質問がある。もし『(あて)が持っている権限』を使った場合、被害者である『呉の連中』は大丈夫なのか?あの権限は状況に寄っては最悪、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が……」

 

忠実は勇人の目的に同意し、自身の正義感が静かに燃え上がるかの様に少しづつ躍起になりながらも自身が持っている権限である『勅令解体権』と『委託外部逮捕権』を施行した場合の最悪の結末である『呉の艦娘達を含む全ての隊員達を露頭に迷わせてしまう可能性』を遠回しな表現で懸念すると、勇人は忠実の不安を一掃するかの様に微笑みながら答えた。

 

「それなら心配無ぇよ。それも手を打ってあるから問題無ぇよ。だから思う存分、暴れて来い。そして何か遭ったら龍鳳に頼め。彼女は呉鎮守府の古株だからな」

 

「……噂以上に『手の早い男』だ……分かった。今回だけは貴様の命令に従わせて貰おう……」

 

「吉報を期待しているぞ大岡。それと叢雲にあまり苦労を掛けさ……」

 

Pi♪

 

「……さて!アイツを、どう調理していこうかな……」

 

「オイィィィ!!何、最後の所だけ無視してんのよォォォ!!」

 

忠実は勇人の用意周到なアフターケアに呆れながらも、その眼光は『勇人みたいに殺意に染まった軍人』としては無く『正義を貫く警官』として強く、そして何事にも屈さない不屈の精神が宿った『全てを裁く断罪人の目』になりながら勇人の言葉を遮る様に電話を切り、そのままベットに寝転がりながら作戦を練り始めた。

 

叢雲がベットの中で今後、忠実が起こすであろう『規律違反』に頭を抱え、泣いている様子を尻目に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして青葉の私室では……

 

「あ、切れた。叢雲、大丈夫かな……ストレスで禿げなきゃ良いんだが……」

 

「そうですね……しかし大将、これは完全に……」

 

「『オーバーキル』ですね……まぁ楠木少将(あの野郎)には地獄に行ってもらいますが……」

 

勇人、龍鳳そして青葉は今後の叢雲に同情しつつも、龍鳳と青葉は『勇人が仕掛けた作戦()』である『忠実と楠木との会話を録音する事』によって『楠木が罪から逃げる為の口実を作らせない様』にし、二重スパイと化した忠実が持っている権限を使って徹底的に陥れる作戦に苦笑しながら呟くと龍鳳は『この作戦』に少なからず疑問が沸き、首を傾げながら勇人に聞いた。

 

「ですが、この作戦は大岡軍曹じゃなくても大将自身が行えば万事解決するのに何故、敢えて彼女にさせたのですか?」

 

龍鳳は何故『勇人』では無く『忠実』を使った事に少なからず疑問が沸き、それを勇人に聞くと、勇人は龍鳳の質問に少し困惑しながら理由を答えた。

 

「本来なら俺自ら出向くべきなんだが……そうなると大岡が『()()()()()()()()()()()()()()()が逮捕される口実(証拠)』になってしまう可能性があるのと、楠木が『龍光会』と『回天組』の『回し者(スパイ)』から『警察のスパイ』である大岡を使って『2つの組織の関係性』を見極める為に大岡を呉に出向させたんだ」

 

「大将が楠木少将に対して過激な制裁……あ!?お得意の『無駄無駄ラッシュ(拳によるリンチ)』ですね……」

 

「……そして私刑(リンチ)を行った場合、楠木少将は『上官からパワハラされた』と口実が出来、大将は『名誉毀損罪』を始め『侮辱罪』『脅迫罪』『暴行罪』『傷害罪』そして最悪、楠木少将を手違いで殺してしまったら『殺人罪』も付与されて、尚かつ『隠蔽した数多くの必要悪(賄賂罪や入管法やら、その他諸共)』が見つかった上での罰則は……うわぁ……」

 

「青葉さん。大将が逮捕されると、判決はどうなるのですか?」

 

青葉は興味本位ではあるが、試しに自身が覚えてる限りの勇人が犯した罪を計算している所を龍鳳が恐る恐る聞くと、青葉は顔を引き釣りながら勇人が犯した罪による『判決内容』を狼狽えながら伝えた。

 

何故、青葉が其処まで狼狽える理由が……

 

「し……ししし……『死刑』ですよ!!艦娘(青葉達)で言う『解体』ですよ!!これは流石にヤバ過ぎますって!!そもそも必要悪とは言え『犯した罪』が()()()()()()()()!!」

 

「嘘ッ!?死刑!?それで良く逮捕されませんでしたね………」

 

……勇人が逮捕されたと仮定し、必要悪とは言え、彼が起した数多くの余罪が原因で『無慈悲な判決』を言い渡されるからである。

 

龍鳳は青葉の結論を聞き、驚愕しつつも未だに警察(世間)にバレず、のうのうと過ごしている勇人に呆れていると勇人は苦笑しながら『自身の罪を揉み消した関係者』に感謝しながら答えた。

 

それは……

 

「これに関しては『総理大臣』と『柏木』に感謝しないとな。でなかったら……」

 

「「……うん。佐世保ところが国自体が『物凄く悲惨な状態』になっていますね」」

 

……国の長である『総理大臣』と現在、ドイツで入院中の『柏木』に対してだった。

 

勇人、龍鳳そして青葉は2人の御蔭で警官(世間)にバレずに済んだ事に安堵しながらも龍鳳と青葉が先程、勇人が言った『忠実を出向させた"もう一つの理由"』について触れた。

 

「……話を戻しますが大将、先程『警察』と『龍光会』そして『回天組』との関係性を見極める為にと仰っていましたが……」

 

「あの新兵の様子を見る限り、無関係の様に見えますが……」

 

2人は忠実の様子を見て、警官は既に『同盟を組んだ回天組と龍光会』とは無関係だと主張しながら質問すると勇人は「それは少し違うぞ」と2人の主張を一部否定し、『もう一つの理由』である『3つの組織の関係性』について続けて言った。

 

「俺が言ってんのは『3つの組織』が『手を組んでいる事』を『警察版の大本営』こと『本庁』勤務だったとは言え『その末端にいた大岡』が、この事を『把握している』か『否か』を確認する為なんだ」

 

勇人は『警察が裏で手を組んだ組織の内容』を忠実が把握しているか否かを確認する為に送り込んだ事を簡潔に説明すると龍鳳は『組織絡みの問題』に「……またですか」と言わんばかりに呆れながら言った。

 

「……警察は既に手を組んでいたのですね。泣けますね……」

 

「まぁ、過去に石川県警(その末端)が裏で龍光会と勝手に手を組んでいた位だからな……しかも、もし警察が裏組織と繋がってた事がバレたとしても……」

 

「……『司法取引』で何とかなりますからね」

 

「「はぁ〜………泣けるぜ(ますね)」」

 

勇人は龍鳳の心情を察し、2人揃って呆れ返っていると青葉は勇人の考えを纏め、2人の心情を察し、呆れ返りながら聞いた。

 

「あははは……つまり大将は今回の事を利用し、大岡軍曹を完全に『海軍(コッチ)側の人間(スパイ)』と認識させる為に敢えて、この情報を警察に流す事で3つの組織の『今後の動向』及び『関係性』を見極める為に行う……で良いんですよね?」

 

青葉は勇人の考えを完全に察し、簡潔に纏めると勇人は微笑みながら答えた。

 

「それは『物のついで』だ。本当の目的は呉の連中(お前達)を助ける為に動いているだけだ。まぁ『救済方法(やり方)』は此方の都合上、俺らしく無い『陰険な救済方法(やり方)』になってしまうが……そこは勘弁してくれ」

 

勇人は最後、少し不満を零す様に顔を顰めながらも作戦の目的が『呉の連中を助ける事』を龍鳳達に伝えると、龍鳳達は勇人の言葉に微笑みながら答えた。

 

「いえいえ、提督だけでは無く、今こうして私達を助けてくれるだけでも感謝しているのに……」

 

「そうですよ。青葉達は感謝しているのですよ……だから後は青葉達に任せて下さい」

 

2人は勇人に微笑みながら感謝の意を表すと勇人は2人に釣られ、微笑みながらも、すぐに顔を曇らせ、2人に『もう一つの御願い』をした。

 

「助かる。後、もう一つ『御願い』があるんだが……」

 

勇人は申し訳無さそうに2人に言うと、2人は勇人の『もう一つの御願い』の『中身』を察し、先程までの微笑みから苦笑に変わり、勇人に言った。

 

「……分かっていますよ大将。『楠木少将から性被害を受けた艦娘達』及び『叢雲ちゃん』の『メンタルケア』ですね」

 

「それも青葉達に任せて下さい。まぁ叢雲さんに至っては彼女次第ですが……」

 

2人は苦笑しながら答えると勇人は「頼む」と苦笑しながら答えると、勇人の左手首に着けられている『腕時計型のスマホ』こと『Apple Watch』が反応し、それを逸早く気付いた龍鳳が苦笑したまま勇人に伝えた。

 

「そうですね……ん?大将、腕時計が何か反応してますよ。ってか何時の間に『OMEGA Speed master(高級腕時計)』から『Apple Watch』に変えたんですか」

 

「あ!?しかもそれ、最新式じゃないですか!?青葉にも見せて下さ………ん?『重桜(おもさくら)の俺』とは?」

 

2人は勇人が着けているApple Watchを見て、珍しそうに言うと勇人は青葉が『Apple Watchに表示されている相手の名前』を読み間違えた事を訂正しながら電話相手である『重桜の指揮官』こと『アズールレーンの世界の勇人(以後 『AL勇人』)』について物凄く簡潔に説明した。

 

「『平行世界の俺』の事さ。ソイツと連絡する為にApple Watchに変えたんだ。それに『おもさくら』じゃなくて『重桜(じゅうおう)』だ」

 

勇人はApple Watchのタッチパネルを操作し、電話にでるとAL勇人が少し申し訳無さそうな控え目な口調で勇人に聞いた。

 

「もしもし博霊さん。僕です」

 

AL勇人は電話が繋がった事を確認し、勇人に聞くと勇人は『ドイツの件』で援助出来なかった事を謝罪した。

 

「『勇人』か……あの時はスマンな。此方も……」

 

「明石さんから聞いたよ。人命に関わる事をしていたのなら仕方無いよ。それに、あの『苦過ぎる薬(酔い止め薬)』が効いたから大事に至って無いよ。所で博霊さん、今此方の世界に来れる?」

 

AL勇人は既にAL明石から勇人が来れなかった経緯を聞いており、勇人の謝罪を快く許すかの様に温和な口調で彼の言葉を遮り、要件を簡潔に伝えると勇人は落ち着いた口調でAL勇人に聞いた。

 

「……急患か?」

 

「どちらかと言うとね」

 

AL勇人は勇人の言葉を簡潔に伝えると勇人は「ちょっと待ってろ」と言い残し、通話を切ると龍鳳と青葉は『AL勇人の中性的な声性と柔らかい口調』に物凄く驚愕しながら聞いた。

 

「この声の主が『平行世界の大将』なんですか!?何か村○歩みたいに声が高いですし……」

 

「……何て言うか……その……平行世界の大将に対して大変失礼な事を言いますが大将と比べて凄く貧弱そうですね……本当に『平行世界の大将』なんですか?」

 

2人はAL勇人の声と口調を聞き、普段から聞き慣れている勇人の『妖艶な低音ボイス(DI○似の低い声)』と『それに似合った荒々しい口調』とのギャップが大きく異なったせいで混乱状態に陥ると勇人は苦笑しながら答えた。

 

「そうだ。ちなみにアイツの階級は『少尉』だ……んじゃ、呼ばれたから行ってくる。後は宜しく」

 

勇人は後の事を2人に任せ、沈む様に隙間の中に隠れ、そのまま隙間を閉じると青葉は混沌と化した空気に任せる様に苦笑しながら会話した。

 

「司令官や青葉達そして日本を助けながら平行世界に行ったりと……相変わらずパワフルな人ですね……」

 

「……そうですね」

 

青葉は苦笑しながら多忙な勇人を労う様に呟き、龍鳳は『嫌な予感』を察したのか、俯きながら答えると青葉は俯いている龍鳳に首を傾げながら聞いた。

 

「ん?どうしたのですか龍鳳さん?さっきから気分が優れないですね……今だに、あの『隙間』に嫌悪感を抱いているのですか?」

 

青葉は憶測で龍鳳が俯いている理由を簡潔に聞くと龍鳳は「それもあるんですけど……」と肯定し、俯きながら続けて答えた。

 

「……大将に何か『嫌な予感』を感じたんです」

 

「『嫌な予感』……つまり『大将が警察に負ける』と予感しているのですね?」

 

青葉は龍鳳に彼女の『嫌な予感』の内容である『勇人が負ける事』を当てると龍鳳は心配そうに一言だけ溢し、頷いた。

 

「………はい」

 

龍鳳は俯きながら答えると青葉は龍鳳の不安を一掃するかの様に微笑みながら答えた。

 

「大丈夫ですよ。只でさえ『化け物(司令官)並』に強いのに、あの『気味悪い能力』を手に入れた大将が負ける事は絶対『あり得ませんよ』。今回の事も『あの時』みたいに勇猛果敢に、そして綺麗サッパリ解決してくれますって!何せ、あの大将ですよ!そんな()()()()()()()()()()()()()()()()()()は絶対起きませんよ」

 

青葉は勇人の強さに絶対的な信頼を寄せており、それを龍鳳に微笑みながら言うと、龍鳳は青葉の言葉に暗くなった表情が消え、何時もの柔らかい表情になりながら答えた。

 

「……そうですね。私とした事が……では私達も明日に備えて寝ましょうか?鎮守府『再建』の為にね」

 

「そうですね」

 

2人は勇人から任された『任務』を再確認しながら気合を入れ直し、そのまま就寝準備に取り掛かった。

 

しかし運命とは皮肉な事に『龍鳳の予感』を斜め上の『過酷で残酷な運命』に着実に進んでいようとは……


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。