Admiral of Roughneck~From black to white~   作:八意 颯人

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第71話「美奈の後悔 後編」

0830 舞鶴鎮守府 食堂にて

 

勇次「……では話すぞ」

 

勇次は重い口を、ゆっくり開く様に美奈達に『あの事件(大本営襲撃事件)』の全貌を説明した

 

勇次「あれは今から一年近く前に遡るが、事件の前夜……兄貴は当時、初期の秘書艦『吹雪』が佐世保の……今の兄貴の前任である『堤下督郎』の陰謀により()()()()にされた事にショックを受け、自棄酒になっていたんだ……それについてはカーチャンと千川は知っているだろ?」

 

朱里「……ええ」

 

千川「上城が酒に酔って上官達を病院送りにした時か……成程、だからアイツは……」

 

千川は事件の前夜、勇人が酒に溺れ、暴れた原因を知り、納得すると、勇次は再び説明を再開した

 

勇次「そうだ……そして事件当日、兄貴達(第一研修部隊)は艦娘達の陣営指導の為、横須賀の海域内で訓練をした時に……」

 

優花「……大型勢力を持った深海棲艦達が大本営に攻めてきたのよ」

 

勇次「そうだ……って、何故知っているんだ?」

 

勇次は説明中に優花が入って来た事に驚き、質問すると優花は事件により両親を亡くした悲しみが蘇ったのか、俯きながら答えた

 

優花「……私も『あの事件』の時……パパとママを亡くしているから……」

 

勇次「……そうか、なら部屋に戻るか?辛くなるぞ」

 

勇次は優花を気遣う様に優しく言うと、優花は「大丈夫、そこまで弱くないから」と気丈に振る舞いながら言うと、勇次は説明を続けた

 

勇次「無理するなよ……そして当時、兄貴の同期達……()()()()()()()()()の事だが、そいつらは兄貴とカーチャン含む艦娘達を置いて一目散に逃げたんだ」

 

美奈「……だから提督は()()()()()()である大将達に『謝罪』していたのですか……」

 

勇次「そういう事だ……だから、あまり千川を責めないでやってくれ……アイツは、この事件に関わっていない(無関係)とは言え、結構気にしていたからな」

 

美奈「分かっています」

 

千川「そう言って貰えると有難いよ……弟さん」

 

千川は勇次に感謝すると勇次は「だから『弟さん』と言うのは止めろ」とツッコミをし、説明を続けた

 

勇次「……んで、話を戻すが、当時、()()()()()()()カーチャン達(艦娘達)は大型勢力を持った深海棲艦の軍団に勝ったんだが、カーチャンは瀕死の重傷になり、兄貴に至っては片腕が無くなっていた……いや駆逐艦イ級だっけか?そいつに()()()()()()()んだ」

 

美奈「片腕!?で……ですが……今の大将の腕は……」

 

美奈は()()()()()()()()()が深海棲艦に片腕を取られた事に驚愕しつつも、今の勇人と当時の勇人の矛盾点である片腕の有無について聞くと、勇次は俯きながら答えた

 

勇次「ああ、それに関しては、この前の事件である『蒼霧事変』の時に兄貴の腕を食い千切ったイ級が見つかり、イ級を解剖、食い千切られた腕を取り出し、再生手術をしたんだ……おっと、話が逸れたな……兄貴は天さん(天龍)の刀を使って、深海棲艦達を壊滅させ、当時『深海棲艦』だった赤城ちゃんを元に戻したんだが……戦いの時に『D-cell』というウイルスに感染したんだ」

 

千川「D-cellだって!?」

 

美奈「提督、D-cellって?」

 

美奈はD-cellについて聞くと、千川は動揺を隠せないまま、美奈に説明した

 

千川「深海棲艦しか持っていないウイルスで、普通の人間が感染すると……拒絶反応を起こし……死ぬんだ」

 

優花「そして、その治療法は瀕死の艦娘と一時的に()()させ、感染者の自然治癒力を使って、瀕死の艦娘を回復、自然治癒力をつけさせ、感染者自身を()()()にし、感染者の体内にD-cellの抗体が作られ、治療する方法よ……ただし、融合した感染者は完治し、艦娘と分離しても……一生、人間(元の生活)()()()()()()過ごさないといけない……」

 

美奈「ッ!?それじゃ大将は、そのウイルスのせいで朱里さんと……」

 

美奈は千川の説明に付け足した優花の説明で、昨日、朱里から勇人の幼少時代を聞いていたのか、勇人が朱里と融合した理由を察し、聞くと、勇次は美奈の予想が当たっているかの様に頷き、答えた

 

勇次「そうだ、兄貴とカーチャン……お互い救う為に一時的に融合し、兄貴は人間を辞め、()()()として行動し、深海棲艦だった赤城ちゃんを専属秘書艦として迎え入れ、今も尚、艦娘達や平和を願う『みんな』の為に兄貴自身が、みんなを守る『盾』として行動し続けている……という訳だ」

 

勇次は美奈達に大本営襲撃事件の内容そして勇人の今の信念を説明すると、美奈以外の舞鶴そしてショートランドの連中は俯き、黙り混んだ

 

照月「……酷い事件だったんだね」

 

初月「……うん、それに大将は、瀕死の重傷になっても自分を貫き通す事が出来るなんて……」

 

千川「……そんな事があったのか……」

 

美奈以外の連中は勇人が自身の信念を貫き通した事に圧巻しつつも、大本営襲撃事件の酷さを聞き、俯いていると、美奈は、そんな勇人に対して、()()()()()()()()()()()に見舞われ、そのまま泣き崩れ、懺悔をする様に朱里に言った

 

美奈「ウチ……大将に……酷い事を……」

 

大和「漸く気付いたのですか、貴女が行った『事の重大さ』を……」

 

美奈「はい……」

 

大和は美奈に追い討ちを掛ける様に冷たい目で美奈を睨み、言うと、美奈は泣きながら大和の言葉を肯定すると勇次は大和を窘めながら言った

 

勇次「まぁまぁ、大和ちゃんが怒りたい気持ちも分かるが、少しは大人になれよ」

 

大和「ッ!?勇次さんは悔しく無いのですか!?彼女は……提督を……」

 

大和は勇次の発言に悔し涙を流しながら言うと勇次は俯き、少しドスの効いた低い口調で答えた

 

勇次「……俺だって悔しいさ、だけどな……それは兄貴と間宮ちゃんの問題だ……俺達が横槍を入れる権利は無ぇよ……それに兄貴は自分自身を侮辱された事に怒ったんじゃ無ぇよ」

 

大和「……じゃ、提督は何故怒ったのですか?」

 

大和は勇人が怒った()()()()()を勇次に聞くと、勇次は目を据わり、一呼吸を置き大和達に答えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勇次「間宮ちゃんが()()()()()そして俺達()()を侮辱したからさ」

 

大和「え!?」

 

初月 照月「ッ!?」

 

蘭「な!?」

朱里 千川「……」

 

瑞鶴「提督さん……」

 

そう昨夜、勇人が怒ったのは仲間や家族を侮辱された事に怒ったのだ

そして美奈以外、全員が勇人が怒った理由を聞き、驚愕し、俯き、美奈に至っては勇人の信念が自身の信念と被り、美奈は同じ信念を持った勇人に()()()()()()()()に悔やんだのか、()()()()()()()()をした

 

美奈「……提督……今すぐ私を……()()してください……私は……人々を癒す為に造られた艦娘『間宮』として、()()()()()()()をしてしまったのです……どうか……お願いします……」

 

千川「馬鹿な事を言うな!出来る筈が無い!馬鹿な事を言うのは止めろ!」

 

美奈「これがウチ()なりの謝罪(ケジメ)や……ウチ()が居なくても()()()がいるから……」

 

勇次「ッ!?」

 

美奈は千川に自身を解体……言わば自決したいと言ったのだ

それを聞いた勇次は美奈の行動に美奈の胸ぐらを掴み、怒鳴り散らした

 

美奈「ッ!?勇次……さん……」

 

勇次「ダラ!!お前が死んだら未来ちゃんや電ちゃん達はどうなるんや!!お前は艦娘『間宮』以前に、あの子達の()()やろ!!確かに『お前(間宮)』が死んでも代わりがいるが、あの子達(未来達)の母親は、()()しかおらんのや!!今度()()()()を言って見ろ!俺は……いや俺達()()はテメェを一生許さんぞ!!」

 

美奈「ッ!?」

 

瑞鶴「ユージン……」

 

勇次もまた、勇人同様『児童虐待(チャイルドアビュース)』の経験があったのか、無責任な発言をした美奈に激怒し、美奈に渇を入れると美奈は正気を取り戻し、勇次に謝罪した

 

美奈「……すみません勇次さん、私……」

 

美奈は勇次に謝罪すると、勇次は美奈の胸ぐらを掴んでいた手を放し、答えた

 

勇次「……謝る相手が間違っているぞ、謝るのなら兄貴に言ってくれ……俺達では無い」

 

美奈「しかし……私は……」

 

美奈は昨夜の勇人の様子を思い出し、不安になっていると、朱里が美奈に優しく言った

 

朱里「大丈夫、あの子は基本的に優しい子から許してくれる筈よ……そんなに不安なら私も付き添ってあげるから……ね」

 

優花「まぁ……このままだと間宮さん……本気で自殺しかけないからね……メンタルカウンセラーとして私も付き添うよ」

 

蘭「私は許さn……勇次「蘭」……チッ!次は無いからな……」

 

大和「……分かりました、間宮さんの処罰は私達の提督に任せます」

 

美奈「皆さん……本当にありがとうございます!」

 

千川「皆さん……寛大な処罰、ありがとうございます!」

 

美奈と千川は勇次達が昨夜のトラブルについて許すと二人は嬉しかったのか、泣きながら頭を下げた

 

 

そして、廊下では川内型と不知火が盗み聞きをし、昨夜の事について話していた

 

川内「成る程ね……みんな()()()()()よ……」

 

不知火「川内さん、それは不知火達も()()()いるのですか?」

 

川内「う~ん……そんな面倒臭い事を言ったつもりでは無いんだが……」

 

不知火は川内の発言に深読みをし、質問すると、川内は不知火の質問に思考を回らせているのか、黙り混み、代わりに神通と那珂が優しく答えた

 

神通「きっとそうですよ不知火さん……何せ姉さんは軽巡の艦娘の中で一番、()()()()()を受けているのですから……」

 

那珂「そうそう、何せ川内ちゃんは提督の事がs……川内「馬鹿ちゃん!これ以上言うな!」……()鹿()()()()()()を併せないで!」

 

川内は那珂が自身の秘密を暴露しかけた事に赤面し、止めると不知火と神通は笑みを浮かべながら言った

 

不知火「フフ……あの()()()()()()()()川内さんがね……」

 

神通「ええ、あの姉さんが提督に恋心を……ねぇ……」

 

川内「二人まで!?私ってイジられキャラなのかな?」

 

那珂「まぁ良いじゃん、昔と比べれば……あ!?」

 

神通「どうかs……ッ!?」

 

不知火「不味いですね……」

 

川内「ん?どうしたの?」

 

川内の悪態に神通、那珂そして不知火は微笑ましく笑うと川内の背後に『とある人』が、()()()()()()()で立っているのに気付き、川内以外の艦娘達は冷や汗を流した

その人物とは……

 

朱里「ほう……盗み聞きとは良くないわね……」

 

川内「ッ!?きょ……教官……何時から此処に?」

 

朱里「貴女の恋心の話を始めた辺りからね……んで、盗み聞きを計画した黒幕は?」

 

神通 那珂 不知火「……」

 

川内の背後に立っていた朱里が笑顔で川内達に問い詰めると神通、那珂そして不知火は川内を指差した

 

川内「え!?ちょ!?みんな!?」

 

朱里「フフ……川内には『特別な夜戦』を殺らせてあげるわ……逝くよ」

 

神通「……骨は拾ってあげます」

 

不知火「……南無」

 

那珂「……ごめん川内ちゃん」

 

川内「みんなの裏切り者ぉ……」

 

朱里は川内を引き摺りながら演習場に向かい、神通達は連行される川内に合掌をした

 

川内の悲痛な叫びと共に……

 

 


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