Admiral of Roughneck~From black to white~ 作:八意 颯人
美奈とのトラブルから数時間後 0830 舞鶴鎮守府 食堂にて
勇次「ふわぁ~……おはよう……」
美奈「おはようございます、勇次さん」
千川「よぉ……弟さん」
勇次「千川、それを言うの止めてくれないか」
瑞鶴「おはよう……あれ?ユージン、提督さんは?」
瑞鶴は、まだ食堂に来ていない勇人について聞くと、勇次は「知らねぇ、起きたら居なかった」と答え、勇人の不在に違和感を感じつつ席に着くと、先に食事を終わらせ、コーヒータイムに洒落こんでいる千川、蘭、照月、初月が瑞鶴の質問に答えた
蘭「兄さんなら父さんとコンゴウを連れて、舞鶴の軍刑務所に向かっている」
初月「昨日の事で何かあったのかな?」
照月「……大将と元帥の事だ、あの防空棲姫について上坂さんに聞きに行ったのじゃないのかな?」
照月と初月はコーヒー……というよりカフェオレを飲み干し、勇人の行動を憶測で答えると昨夜の出来事で少し俯いた美奈が蘭に質問した
美奈「……少佐、何故大将は……わざわざ刑務所に?」
美奈は蘭に質問すると、蘭は昨夜の出来事を聞いていたのか、少し怒りながら答えた
蘭「……貴様に関係無い事だ」
美奈「……」
勇次「ちょ!?蘭!今の言い草は無ぇだろ!!防空棲姫……未来ちゃんは間宮ちゃんの娘分だろうが!!母親が娘の事を思うのは至極当然だろうが!」
瑞鶴「そうだよ!!いくら何でも今のは酷すぎるよ!」
千川「少佐、君には母親の気持ちが分からないのか!」
勇次と瑞鶴、千川は蘭の態度に気に食わなかったのか、少し怒りながら言うと、蘭は静かに答えた
蘭「三人は知らないんだな……昨夜の出来事を……」
勇次「……昨夜、何かあった?」
蘭「ああ……昨夜、見回りをした時にな……」
蘭は勇次と瑞鶴、千川、照月そして初月に昨夜のトラブルについて未来の正体を伏せながら説明した
蘭「……という訳だ」
勇次「……」
瑞鶴「……間宮さん、いくら未来の事で混乱していたからって、助けて貰った提督さんに、この『仕打ち』は酷すぎるよ……」
美奈「……私も軽率な発言だど思い、反省しています……すみませんでした」
千川「部下が軽率な発言をしてしまい、すみませんでした」
瑞鶴は軽率な発言をした美奈に静かに叱ると美奈は反省しているのか、千川と共に頭を下げ、答えると、勇次は静かに美奈に聞いた
勇次「……『すみません』……ねぇ……なぁ間宮ちゃん、兄貴が入隊してからの経緯を知らないのか?」
美奈「……いいえ、知りません……勇次さんに提督は知っているのですか?」
美奈は勇次の質問に頭を横に振り、答えると、勇次と千川は美奈に
勇次「ああ……一応言っておくが、学生時代よりも酷い内容だ……さっきの謝罪ですら軽率に思える位にな……それでも良いか?」
千川「僕はアイツの『提督研修過程』の時しか知らないが……それでも酷い内容だ……」
美奈「……お願いします」
美奈は二人の警告を承諾し、御願いすると、勇次は勇人の『軍医過程時代』の内容を言い始めた
勇次「兄貴は18……いや19になる時に軍に入隊……いや姉貴を治す為に自ら『日本海軍付属医学学校』に首席で入学したんだ」
美奈「医学学校って……『医大』!?しかも『首席』で!?」
瑞鶴「うるさい、少し黙って」
美奈「……すみません」
美奈(……学生時代の境遇をバネに『此処まで這い上がる』なんて……私は何て
美奈は瑞鶴の冷たい言葉に俯きつつ、勇人の強さと美奈自身の弱さと比べ、『今の自分』に情けなく思ったのか、拳を強く握り、悔やんでいると、勇次は再び説明を続けた
勇次「そして兄貴は様々な研究結果や論文、難病に効く新薬の製造、そして更に医学生としては異例の『大学2年生』の時に医師免許を取得し、階級も『中尉』に上がり、教官達からの信頼も得ていた位の
千川「なっ!?僅か2年で!?しかも『中尉』!?あり得ねぇだろ!!普通なら医師免許を取得するだけでも4年以上はかかるのに……」
瑞鶴「……改めて聞くと、提督さんのチートっぷりは、此処から『始まった』んだね……」
二人は勇人の化け物並の頭脳に驚愕すると、勇次は「全くだ、双子なのにな」と同意しつつ、これからの説明に悔しく思っているのか、少し怒りが入った口調で説明を再開した
勇次「そして……学校を
美奈 千川 瑞鶴「た……退学!?」
照月 初月「じょ……除隊!?大将は一度、軍を辞めたのですか!?」
初月と照月は勇次に勇人が除隊した理由を聞くと、勇次の代わりに蘭が重い口を開け、説明した
蘭「……姉さん絡みの件で除隊されたのだ」
千川「蘭花さん絡み?」
美奈「ま……まさか……」
蘭の簡潔な説明に千川は首を傾げ、美奈は昨夜、蘭花の生い立ちを聞いており、勇人の退学との関係性が結び付いたのか、神妙な表情で聞くと、勇次は美奈の憶測が合っているかの様に頷き、答えた
勇次「ああ……兄貴の功績に気に食わなかった医学界の重鎮達は、姉貴の
千川「……酷い」
瑞鶴「そんな……あんまりだよ……」
勇次は勇人が
美奈「私は……そんな大将に……」
勇次「……幸いにも医師免許だけは盗られなかったが……そして、姉貴の死から立ち上がった兄貴が行った事は生前、姉貴が提督業をしていて、兄貴は、そんな姉貴の
瑞鶴「ユージン……大丈夫?」
勇次「なんとか……」
勇次は今にも暴れそうな身体を震え、抑え付けながら言うと、瑞鶴は勇次の
千川「勇次君……あまり無理するなよ……」
勇次「大丈夫だ……ありがとうズイチャンに千川……」
瑞鶴「……本当に無理しないでね」
千川「ヤバくなったら言ってくれよ」
勇次「……ああ」
勇次は落ち着いたのか、溜め息を付き、瑞鶴と千川に御礼を言い、水を一気飲みをし、千川は落ち着いた勇次を心配しながら説明を再開した
千川「さて……今度はアイツが『提督研修過程』の時に過ごしてきた内容だ……まぁ軍医時代と比べれば生易しいかも知れないが……僕とアイツは同じ時期に入隊した同期だと言うのはご存知だよね?」
美奈「……はい」
千川「僕は『艦娘は家族でもあり兄弟姉妹だ』というモットーの研修部隊『横須賀第二研修部隊』、上城は『艦娘は奴隷』という『ふざけた事』を言っている研修部隊『横須賀第一研修部隊』に配属されたんだ……第一研修部隊に配属された上城の待遇は……正直言って
美奈「ッ!?そんな……提督!何故、研修時代の時に大将を……勇人さんを救わなかったのですか!」
千川「そ……それは……」
美奈は勇人の学生時代、軍医時代そして提督の研修時代の不遇さに今にも泣き出しそうな位の声で千川に訴えると、蘭が美奈の訴えに『何かが切れた』のか、キツく、そして冷たい口調で言った
蘭「貴様が言える
美奈「ッ!?」
美奈は蘭の一喝で必死に堪えてきた涙腺が崩壊し、泣き崩れると、瑞鶴は蘭の発言に顔を引き釣り、小声で勇次に呟いた
瑞鶴「うわ……流石、提督さんの妹だわ……口悪ッ……よくユージンは提督さん譲りの口の悪さが出ないわね」
勇次「まぁ……蘭は兄貴……いや親父の影響を物凄く受けて育ったからな……」
瑞鶴「あの元帥まで!?想像出来ないわ……」
勇次「更に細かく言えば二人はジッチャン似の口の悪さだ」
瑞鶴「……マジかい」
瑞鶴は普段の
千川「大丈夫かい?無理なら部屋に戻るかい?」
美奈「グスッ……う……
千川「……蘭君、少し言い過ぎでは無いのか?」
千川は蘭に少し強い口調で言うと、蘭は怒りが収まらないのか、怒鳴りながら言った
蘭「御言葉ですが千川少佐、彼女は私の兄であり、貴方の同期……いえ
千川「それは分かっているのだが……」
勇次「落ち着け蘭、お前の気持ちは……蘭「兄さんは黙って!私は納得出来ないの!」」
蘭は勇次の説得を無視し、美奈と千川に吠える様に昨日の出来事について罵声を浴びせ続けると、勇次は少し苛ついたのか、
勇次「
ギロッ!
蘭「ッ!?……分かったよ……」
瑞鶴「ヒッ!?」
勇次は暴走した蘭に殺気を込めた一喝をすると、瑞鶴は怯え、蘭は先程までの狂犬染みた暴走から一転、怯えた子犬の様に黙り混み、勇次の説得に渋々、承諾した
千川「流石、上城の弟だ……殺気がアイツ
勇次「そりゃ双子だからな……それに、このままだと間宮ちゃん……自殺しかねんからな……後、妹がすまなかったな」
千川「……僕達は蘭君に侮辱されて当然な事を行ったんだ……気にしていない」
勇次は蘭の暴走について、千川に謝罪すると、千川は蘭の訴えに
勇次「……間宮ちゃんが、この『状態』じゃ、話が進まないな……続きは後日で良いか?」
美奈「……大丈夫です、続けて下さい……」
美奈は無理をしているのか、勇次の気遣いを拒否し、少し涙声になりながら言うと、勇次は美奈に優しく問い掛けた
勇次「……本当に大丈夫なのか?この後の話は
美奈「……覚悟は出来ています」
勇次「分かった……と言いたいが、カーチャンに優花ちゃん、大和ちゃん、隠れてないで出てくれば?」
勇次は廊下で盗み聞きをしている朱里、優花そして大和に言うと、朱里は電子煙草を吹かしながら、優花は少し苛つきを抑えながら、そして大和に至っては昨夜のトラブルを聞いて完全に
大和「……間宮さん、貴女……よくも私達の提督を……覚悟出来てますよね?」
優花「まぁまぁ……美n……間宮さんは勇人君の過去を知らなかっただけだから……ここは落ち着こうよ……ね?」
大和「し……しかし……」
朱里「大和、落ち着きなさい……彼女が勇人の
大和「……分かりました」
大和は二人の説得に応じ、艤装を解除し、苛つきながら席に座った
勇次「それじゃ……始めようか、兄貴が人間から半艦息になった『
勇次は神妙な表情で説明を始めた
勇人が龍として目覚めた切欠である『