Admiral of Roughneck~From black to white~   作:八意 颯人

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第70話「未来の正体 part 1」

2040 軍艦『金剛』内の医務室にて

 

未来「ウグッ……は……勇人さんに朱里さん……」

 

医務室のベッドで横たわっている未来が勇人達を見て、少し安堵すると、勇人は未来の身体を見て、力強い口調で未来を励ました

 

勇人「大丈夫だ、()()()()()()()なら一晩も要らねぇ……俺達に任せろ」

 

未来「うっ……本当?」

 

未来は勇人の発言に少し驚愕すると、勇人は未来の頭を優しく撫でながら答えた

 

勇人「俺を()()と思っているんだ?お前の()()()でもあり()()()()()()()()()()()()()()()だぞ……だから安心しな」

 

未来「……うん!!」

 

勇人は未来を安心させる様に、力強く、優しい口調で答えると、未来は勇人を信用し、完全に安心したのか、笑顔で答えると、コンゴウは勇人の言葉に呆れ、恥ずかしそうに呟いた

 

コンゴウ「艦長、自分で言わないで下さい……(家族)として、恥ずかしいです」

 

朱里「気持ちはわかるが、それ()()()()よ……んで、容態は?」

 

朱里は勇人の発言に呆れつつ、未来の容態について聞くと、勇人は神妙な表情で答えた

 

勇人「左右の肋骨に二本ずつ、座骨、肩甲骨に『不全骨折』そして太股の骨が『完全骨折』しかも折れている全ての骨が『閉鎖骨折』……更に腹部、両腕、両足に中度の火傷そして腹部の軽度の『内蔵損傷』……正直言って()()()()()()()()()()()()()()()……いや、艦娘として轟沈判定……言わば()()()()だ」

 

コンゴウ「ッ!?嘘だろ……」

 

コンゴウは勇人の診察結果を聞き、驚愕し、絶望しきった表情で俯くと、朱里は俯いているコンゴウとは()()に余裕綽々な表情で勇人に聞いた

 

朱里「……だけど、勇人(アンタ)の腕なら、こんな怪我位、()()()()()()治せるのでしょ?」

 

勇人「()()()()()()()を言うんじゃねぇよ」

 

勇人もまた、朱里の発言に呆れつつも、内心、美奈と同じく、未来達を()()()()()()()()()()()()()()()や、その()()に強い怒りを抑え込んでいるのか、はたまた未来を()()()()()()に執念を燃やしているのか、ドスの効いた確りとした口調で答え、手術用の医者服(スクラブ)を着込み、マスクを付け、薄手のゴム手袋を付け、未来の手術の準備を始めた

 

勇人「……さぁ!術式(治療)開始だ!母さんは未来に全身麻酔(全麻)を、コンゴウは俺の補助を頼む」

 

朱里「ええ!」

 

コンゴウ「はい!」

 

勇人は気合いの入った口調で言うと、朱里とコンゴウも手術用の医者服(スクラブ)を着込み、マスクと薄手のゴム手袋を付け、未来の治療に取りかかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方 美奈達は……

 

美奈「……」

 

美奈(……私も朱里さんや大将、大尉と同じ艦娘なのに、どうして戦う力……いえ()()()()()()()()()()()()が無いの……そうすれば未来や、みんなを守れるのに……)

 

美奈はベンチに座り、勇人や朱里、優花みたいに『大切な人』いや『大事な娘達(未来達)を守る力』が無い事に悔やみながら未来の無事を祈り続けていると、未来達の受け入れ準備が終わった一馬と優花、蘭花は美奈に近付き、聞いた

 

一馬「隣、良いか?」

 

優花「……」

 

蘭花「美奈さん、少し良いかな?」

 

美奈「元帥に桜花大尉そして蘭花さん……」

 

美奈は三人がベンチに座れる様に端に移動すると、三人はベンチに座ると蘭花は美奈の心境を察していたのか、美奈に質問した

 

蘭花「……美奈さん、貴女は今『自分も勇人と同じ()()()があれば』と思っているでしょ?」

 

美奈「ッ!?どうして()()を!?」

 

美奈は蘭花の言葉に驚愕していると、蘭花は「やっぱり……」と呟き、少し膨らんだ腹部を擦りながら答えた

 

蘭花「私も貴女と同じ、()()()の母親よ……」

 

美奈「蘭花さん……やはり貴女も()()()()()()()()が欲しかったのですか?」

 

美奈は蘭花に聞くと、蘭花は俯きながら答えた

 

蘭花「ええ……そして、私は……もう()()()()()わ」

 

美奈「え!?持っている!?それ……どういう意味ですか!?」

 

蘭花「……」

 

美奈は蘭花の発言に驚き、狼狽えながら聞くと、蘭花は答えたく無いのか、俯いたまま黙り混むと、一馬と優花が蘭花の心境を察したのか、代わりに説明した

 

一馬「……蘭花は2ヶ月前までは戸籍か()()()()んだ」

 

美奈「戸籍が……無い……つまり蘭花さんは……」

 

一馬「……故人、言わば『死人』だったんだ」

 

美奈「……」

 

美奈は一馬の発言に驚愕し、言葉を無くすと、優花は美奈に聞いた

 

優花「……続けて良い?」

 

美奈「……お願いします」

 

美奈は冷静を取り戻し、答えると、優花と一馬は一呼吸を置き、説明し始めた

 

一馬「……蘭花は本来、子供も産めない位の病弱な身体だったんた……その身体が限界に達し、四年前に亡くなったんだ」

 

美奈「四年前に……ですか……」

 

優花「うん……そして私達が美奈さん達に助けてもらった事件『蒼霧事変』の時に龍光会が()()()()()()為に、四年前、蘭花さんの治療用に勇人君が()()()()()()()()()()()()()()()()()を盗んで、艦娘と人間、メンタルモデルのハイブリッドモデル『ミカサ』として()()()()()()()のよ」

 

美奈「ッ!?そんな……それじゃ……龍光会は大将を()()()()為に、未来の地球の住人であるコンゴウさんや大将の孫である群像君を呼び出し、そして蘭花さんを……」

 

蘭花「……」

 

美奈は蘭花が蘇生させられた本来の目的を聞き、驚愕し、龍光会の蛮行に強い怒りが込み上げてくる気持ちを抑えながら聞くと、蘭花は静かに頭を縦に振ると、美奈は怒りの含んだ口調で呟いた

 

美奈「……酷すぎる」

 

美奈は蘭花が蘇生させた経緯を聞き、血が出る位に強く拳を握り絞めていると、優花は美奈の気持ちに同意しつつ、美奈を安心させるかの様に優しく、事件の結末について簡潔に説明した

 

優花「……ええ、だけど蘭花さんやコンゴウさん、そして群像君達は龍光会を裏切り、勇人君と柏木大将と手を組み、龍光会を潰したの」

 

美奈「……そうだったのですか」

 

蘭花「……だから、私が持っている()は本来、()()()()()()()()()為に持たされた力なの……勿論、私としては『不要な力』よ、だけど勇人は、そんな()に言ったのよ」

 

美奈「……何て言ったのですか?」

 

美奈は勇人が蘭花に言った言葉について聞くと、蘭花は一呼吸を置き、答えた

 

蘭花「『俺の力も()()()()()()()()()()だ……だが、それは力の使い方を間違った奴がする愚行だ、力を使う本人が間違った使い方をしなければ、それは、()()()()()()()()にもなり、()()()()()()()にもなる……大丈夫や、姉貴は優しいから間違った使い方をしねぇし、もし使い方を間違っていたら、俺が本気で止めてやるから安心しな』……って」

 

蘭花は『蒼霧事変』の後、与えられた能力により、最愛の人や勇人達に危害を与えてしまう可能性がある事に悩んでいた時を思い出し、蘭花の悩みを治す為に勇人が蘭花に言った言葉を、そのまま美奈に伝えると、美奈達は勇人の言葉に重味を感じたのか、少し顔を伏せ、呟いた

 

美奈「……凄く説得力のある言葉ですね」

 

蘭花「……ええ」

 

優花「……私も」

 

一馬「……美奈の気持ちは痛い程分かるが、今はアイツが未来を救ってくれる事を願おう」

 

美奈「……そうですね」

 

美奈達は勇人が未来を救ってくれる事を願いながら、ベンチに座り、待機した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方 軍艦『金剛』内部の医務室改め『特設手術室』にて

 

未来「……」

 

勇人「……太股の骨の接続が終わった……コンゴウ、高速修復材が入った霧吹きを……」

 

コンゴウ「此方に……」

 

勇人は未来の太股を切り開け、骨をボルトで仮留めではあるが接続し、コンゴウから高速修復材が入った霧吹きを貰い、高速修復材を掛けながらボルトを外して行った

 

コンゴウ(凄い……たった()()()()()()で骨折している箇所()()を治しきるなんて……)

 

勇人「今から太股の縫合(ナート)を行う……コンゴウ、未来のバイタル(身体状態)は?」

 

コンゴウ「心拍、脈拍、血圧、呼吸数そして体温値『全て正常(オールクリア)』です」

 

勇人「上々……よし!後は腹部だ、コンゴウは引き続き未来のバイタル(身体状態)の監視を……」

 

コンゴウ「分かりました」

 

コンゴウは勇人の医者としての腕前を間近に見て驚愕しつつ、勇人の指示に従い、未来のバイタルチェック……言わば身体状態を確認し続け、勇人は未来の腹部内部の治療をするため、メスを使い、腹部を開帳させると、勇人は深海棲艦である未来の体内に『無い筈の()()()』を見つけ、驚愕し、呟いた

 

勇人「……おいおい、嘘だろ……」

 

朱里「どうしたの?」

 

朱里は勇人の反応すると、勇人は頭を抱えながら答えた

 

勇人「……未来の背骨付近に艦娘の艤装を付ける為の専用アタッチメント(接続部)が付いていた……しかも、酷い損傷だ……」

 

コンゴウ「何だと!?」

 

朱里「ッ!?未来ちゃんは元々()()だったの!?」

 

そう、勇人が見つけたのは、未来の体内に湾曲の金具や、何かを装着する部品……艦娘用の艤装用の接続アタッチメントだったのだ

 

朱里とコンゴウは未来が元艦娘だという事を知り、驚愕すると、勇人は溜め息をつき、答えた

 

勇人「……ああ、アタッチメントの形状から見て、十中八九『秋月』だ、しかも損傷具合を見る限り、未来の元提督は彼女を捨て艦……いや()()として扱っていたかも知れねぇな」

 

コンゴウ「……酷い」

 

朱里「ギリッ……んで、どうする?」

 

朱里とコンゴウは未来を奴隷扱いをした元提督を殴り飛ばしたい気持ちを抑えながら勇人に指示を仰ぐと勇人もまた朱里同様、強い怒りを抑えながら二人に指示を出した

 

勇人「……コンゴウ、至急、秋月の予備のアタッチメントを持ってきてくれ……交換する」

 

朱里「分かった」

 

コンゴウ「分かりました」

 

勇人は二人に指示を出し、直ぐ様、未来の体内にあるアタッチメントの交換作業に取り掛かった

 

そして数分後……

 

勇人「……縫合(ナート)完了、現時刻を持って手術を終了する……未来を入渠室に」

 

朱里「……流石ね、分かったわ」

 

コンゴウ「……お見事です、艦長」

 

勇人は疲労困憊とした表情で宣言すると、二人は勇人を誉め、三人は未来を舞鶴の入渠室に搬送し始めた

 

 

 

 

 

 

そして、舞鶴の出撃ドックにて……

 

勇人「……」

 

美奈「ッ!?」

 

勇人は軍艦から下りてくると、美奈は勇人に近付き、勇人の肩を掴み、揺らしながら聞いた

 

美奈「大将!未来は……あの子は!?」

 

美奈は疲れきった勇人の身体を揺らしながら聞くと、勇人は疲れているのか、苛ついた口調で答えた

 

勇人「揺らすんじゃねぇ!此方は疲れているんや!!」

 

勇人は美奈に怒鳴るが、美奈は未来の事で我を失っているのか、少し強い口調で聞いた

 

美奈「そんなの知りません!!早く答えて!!」

 

勇人「ちょ!?落ち着け!手術は()()したんや!!だから揺らすんじゃねぇ!」

 

美奈「ッ!?良かった……」

 

勇人「……泣けるぜ」

 

優花「流石ね♪」

 

蘭花「お疲れ様♪」

 

一馬「……」

 

勇人は美奈達に未来の治療が成功した事を報告すると美奈は膝から崩れる様に座り込み、胸を撫で下ろし、優花と蘭花は勇人を労い、一馬は疲れきった勇人の様子を見て、違和感を感じているのか、少し神妙な表情で見ていると、軍艦からベッドに乗せた未来を運搬しているコンゴウと朱里が美奈達に強い口調で言った

 

コンゴウ「安堵するのは良いが、防空棲姫を入渠室に運んでくれ!!」

 

朱里「はいはい退いて退いて!!急患よ!!」

 

美奈「ッ!?未来!」

 

美奈は運搬中の未来に寄り添い、そのまま入渠室に向かった

 

美奈(本当にありがとうございます……大将……)

 

未来(我が娘)を救ってくれた勇人()に感謝をしながら……

 

 


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