Admiral of Roughneck~From black to white~   作:八意 颯人

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第64話「闇に堕ちた幼き龍」

勇人が舞鶴で悲惨な目に逢っている頃 佐世保鎮守府では……

 

間宮「はぁ~……提督……優花さん……」

 

伊良湖「何で私達を連れて行かなかったのかな……」

 

鳳翔「……少し寂しいですね」

 

龍飛「……貴女達が行ったら『この子達』の御飯は誰が作るの?気持ちは分かるが……」

 

大和「提督……」

 

摩耶「はぁ~……」

 

那智「提督と飲みたかったのに……」

 

羽黒「……」

 

金剛「……I need you back admiral(提督、戻ってきて)……」

 

比叡「優花さん……」

 

佐世保鎮守府……言わば勇人側の艦娘達が『勇人と優花が居ない鎮守府』に寂しさが混み上がっているのか、少し落ち込んだ表情で呟いていると提督代理であるコンゴウやメンタルモデル達そして慧音が鎮守府の様子を見て、溜め息を出し、答えた

 

コンゴウ「艦長達が居ないだけで……こんなにも士気が下がるなんて……」

 

慧音「全くだ……情けない……」

 

マヤ「それほど二人の存在が『大きい』からじゃない?」

 

伊400「……そうだね」

 

伊402「……しかも、こんな『葬式みたいな雰囲気』が1週間以上も続くなんて……」

 

メンタルモデル全員「泣けるわ……そして、艦長に優花さん……早く帰ってきて……こんな状況、耐えきれない……」

 

慧音「……お前らもか……」

 

メンタルモデル達が勇人の口癖で嘆き、舞鶴に居る勇人と優花に助けを求める様に呟き、慧音もまた、そんな佐世保鎮守府に頭を抱えたのは言うまでもなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻 舞鶴鎮守府 食堂にて

 

間宮「あら?三笠さんって……意外と呑みますね」

 

間宮は三笠の飲みっぷりに圧巻しつつ、聞くと、三笠は首を傾げながら答えた

 

三笠「そう?これでも少ない方よ……貴女は勇人の所の間宮と比べて呑まないわね?お茶ばかり飲んでいるが?」

 

三笠もまた、勇人側の間宮と比べて、全く呑んでいない間宮に聞くと、間宮は申し訳なさそうに俯き、答えた

 

間宮「すみません……お酒苦手なので……」

 

三笠「苦手なら仕方無いわね……烏龍茶のお代わり、いる?」

 

間宮「あ……ありがとうございます」

 

未来「うわぁ……三笠さん、何時も『どれ位呑まれる』のですか?」

 

トイレから戻った未来は日本酒のビンを半分飲んだ三笠に驚きつつ、オレンジジュースを飲みながら質問すると、勇人の夕飯の分まで食べている赤城が答えた

 

赤城「もっもっ……ゴクン!そうですね……何時もなら焼酎ビンを1つ空ける程『呑みますね』からね」

 

未来「へ?嘘でしょ!?」

 

三笠「……『焼酎ビン』1本じゃ『足りないわ』……家では『ウイスキーボトル』6本は空けているわ……勿論、旦那や帰省した子供達(勇人達)と一緒にね」

 

赤城「流石、提督の母親ですね」

 

未来「うわぁ……何この『飲兵衛一家』は……」

 

間宮「飲めて羨ましいですね……」

 

三笠「飲兵衛一家って……ってか、赤城……それ勇人の……」

 

赤城「おっと!つい旨すぎて……」

 

三笠「わざとらしい態度を取るな」

 

赤城「バレました?」

 

三笠「泣けるわね……」

 

三笠は勇人の夕飯を食べていた赤城に一喝し、呆れると間宮は赤城に苦笑しつつ、三笠に『とある話』を持ち掛けてきた

 

間宮「あはは……ところで三笠さん、二人の教育の為に御聞きしたいのですが、上城大将は『どんな幼少時代』を過ごしていたのですか?」

 

未来「あ!?それ私も聞きたい!勇人さんの幼少期は『どんな子供』だったの?」

 

三笠 赤城「……」

 

間宮は今後の二人の為の参考程度に、未来は興味本意で勇人の『幼少時代』について聞くと三笠と赤城は顔を俯いた

 

間宮(まさか……)

 

未来(地雷……踏んじゃった?)

 

二人は三笠と赤城の表情を見て、少し青ざめると三笠と赤城は二人に重い口調で聞いた

 

三笠「……聞きたいの?勇人の子供の時の話を?」

 

赤城「あまり良い話では無いのですよ?それでも良いのですか?間宮さんに防空棲姫……いえ未来さん?」

 

未来「え!?いやいやいや!そんなに『辛く重い話』になるのなら言わなくて大丈夫ですよ赤城さんに三笠さん!折角の楽しい歓迎会ですから!ね!お母さん!」

 

未来は場の空気を壊したく無いのか、はたまた二人の雰囲気に臆したのか、二人の話を避けようと間宮に同意を求めたが……

 

間宮「いえ……三笠さんに赤城さん、大将の幼少時代の『お話』……御聞かせて下さい」

 

未来「ちょ!?お母さん!?空気呼んで!!」

 

間宮は未来の意見を拒否するかの様に二人の警告に同意すると三笠は「……分かったわ」と言い、答えた

 

三笠「それじゃ……と言いたいが未来ちゃん、席を外してくれない?」

 

赤城「子供には少々『刺激の強い内容』ですからね」

 

未来「……うん、そうする……勇人さんの事も心配だしね」

 

未来は二人の警告に従い、逃げる様に席を外し、トイレに籠っている勇人の様子を見に行った

 

間宮「では、話してくれませんか?大将の……勇人さんの幼少時代を……」

 

三笠「……分かった、あれは10年前……」

 

三笠は間宮に勇人の幼少時代について語り始めた

 

三笠「当時、私は艦娘でありながら、人間としての戸籍『三笠朱里』いえ『上城朱里』という名前を国から貰った時なんだけどね……一馬の薦めで一馬の子供達……勇人達に挨拶しにマンションに上がり込もうとした時、一馬の『元妻』で勇人達の実の母親『上坂優香里』が丁度、幼き頃の勇人を鈍器で頭や身体等に暴行を加えていたんだ……当時『転勤族』で年に一回は『帰れるかどうか』分からない一馬の目を盗んでね」

 

間宮「ッ!?それって、大将の実の母は大将達に……育児放棄(ネグレクト)……いえ『児童虐待(チャイルドアビュース)』を……」

 

三笠の冒頭の語りに間宮は驚き、三笠は頷き、悲しい目になりながら語り続けた

 

三笠「そう、しかも蘭花、勇次、蘭、沙耶は、そこまで酷くなかったが、当時の勇人は……『病弱だった蘭花』よりも酷く、全身に痣や打撲傷、酷い所では『骨まで変形』していたわね……当時の勇人の身長は電……美咲ちゃん位の大きさで、体重は『30キロ前後』そして顔や身体は()け、息をするだけでも精一杯な状態……完全に『栄養失調』いえ『危篤状態』になっていたわ……勿論、一馬も『知らなかった』のよ」

 

間宮「そんな……」

 

間宮は勇人の酷い幼少時代を聞き、驚愕すると三笠は間宮を安心させるかの様に、優しく語りかけた

 

三笠「勿論、直ぐ様、優香里と離婚し、五人を勇人の祖父……私の義理の父親が経営している財閥『上城財閥』のグループ内の病院に緊急入院させ、事なきを得たんだけどね……」

 

間宮「そうだったのですか……」

 

三笠「そうじゃ無かったら、勇人は『居ない』でしょ?」

 

間宮「それもそうですね……良かった……」

 

三笠「だけど……此処からが『厄介な事』になっていったのよ」

 

間宮「厄介な事?」

 

間宮は安心し、胸を撫で下ろすと三笠は俯き、完治後の勇人について語り始めた

 

三笠「蘭花、勇次、蘭、沙耶は後遺症が無かったが……勇人だけは児童虐待(チャイルドアビュース)による精神的な後遺症で『兄弟姉妹達』以外の人間や艦娘を信用しなくなった……いえ『兄弟姉妹達を守る為』に一馬や私を含む『艦娘達』そして世の中の人々を『敵視』していたのよ……そして、高校に上がる頃には堅気(一般人)相手に恐喝、暴行、窃盗……あらゆる悪事に手を染めて行ったわ……まぁ強姦と麻薬だけは『やらなかった』が……」

 

間宮「あの大将が……そこまで堕ちていたなんて……」

 

間宮(前世の私より『酷く』そして『辛い過去』を……)

 

間宮は学生時代の勇人の様子を聞いて、ショックを受け、俯くと三笠は間宮の気持ちに共感するかの様に少し溜め息を付き、語りかけた

 

三笠「ああ……だが、私……いえ私達『艦娘達』が勇人の更正に力を注いだんだ……彼女と同じ人間に『させない』為に……」

 

間宮「そして更正に成功した……という訳ですね……」

 

間宮は三笠に聞くと、三笠は頭を横に振り、答えた

 

三笠「更正には成功したが、更正させたのは『私達』では無いのよ……勇人を更正したのは『とある人』の出逢いがあったから更正出来たのよ」

 

間宮「とある人?一体それは……」

 

間宮は三笠の言葉に疑問を抱き、質問すると三笠はコップに入った日本酒を飲み、答えた

 

三笠「……勇人の当時の高校の同級生……いえ元『交際相手』の『東風谷 早苗(こちや さなえ)』という女性の力によって更正出来たのよ」

 

間宮「東風谷……早苗さん……」

 

間宮は勇人の元交際相手である女性『東風谷早苗』について聞くと、三笠は先程の暗く、重い口調から一転、顔が綻び、思い出を思い返す様に懐かしく感傷しながら答えた

 

三笠「ええ、早苗ちゃんもまた、勇人と同じように『児童虐待(チャイルドアビュース)』の経験のある人よ……しかも彼女の両親は当時、酒に溺れ、ギャンブルにハマっていたの……だが彼女は当時の勇人……いえ今の私や勇人とは『違う物』を持つていたの……勇人以上に『不運な目に合った』のにも関わらず……ね」

 

間宮「違う物?それは一体……」

 

間宮は三笠の『違う物』について聞くと、三笠は一呼吸を置き、答えた

 

三笠「……あの子は全てを許す『寛大な心』を『持っていた』のよ……とてもじゃないが、普通の人には出来ない事よ」

 

間宮「なんか聖母みたいな人ですね……」

 

間宮は勇人の元交際相手である東風谷早苗の第一印象を『聖母』と喩え、三笠は微笑みながら答えた

 

三笠「ええ、彼女こそが『今の勇人』を作り上げた功労者(MPV)よ……そして勇人も彼女の人柄に惚れ、彼女もまた『勇人の根本的な本質』である『大切な者を守る信念』に惚れたのよ……そして更正した勇人が行った事が……」

 

間宮「今まで迷惑をかけた人達や三笠さん含む『艦娘達(人間達)』に『恩義』を返し、過去の自分と『決別(ケジメ)』を付ける為に海軍に……」

 

間宮は三笠の言葉の『答え』を予想し、答えると、三笠は頷き、答えた

 

三笠「そういう事……まぁ入隊する時に、二人共『お互いの将来』の為に別れたのよ」

 

間宮「……そうだったのですか」

 

間宮は『過去(前世)の自分』と重なっていたのか、勇人の幼少時代に共感しながらも、辛い過去を乗り越えた勇人に誉め称えるかの様に笑顔で言うと、三笠は少し恥ずかしながら間宮に御願いをした

 

三笠改め『朱里』「そういう事……後、これは私からの『御願い』なんだが……非番の時は私の事を三笠ではなく、『人間としての名前』である『朱里』って呼んでくれないかしら?流石に非番の時でも『艦娘(三笠)』と呼ばれると疲れるのよ……」

 

間宮改め『美奈』「分かりました三k……朱里さん、なら私の事を『間宮』ではなく『美奈』と呼んで下さい、そうすれば同艦(他の私)が居ても間違えないと思いますので……」

 

朱里「そうするわ、美奈さん」

 

美奈「だから『さん付け』しなくても良いですよ朱里さん!貴女の方が『上』ですから……」

 

朱里「なっ!?失礼な!まだ老い耄れて……美奈「年齢(とし)じゃなくて立場的な意味ですよ」……あ!?ごめんなさい、早合点していたわ」

 

美奈「フフッ、提督や大将そして未来達に恐れられている『戦場の母』も『女性らしい一面』があるのですね」

 

朱里「……あの時の勇人の気持ちが分かったわ、アンタ……相当『肝が据わっている』わね」

 

美奈「フフッ、それは『貴女も』でしょ……あ!?大将が戻ってきたみたいですね?」

 

朱里「あ、お帰り」

 

美奈は勇人の幼少時代や恋愛そして『入隊動機』を聞き、朱里と同じく顔を綻ぶと、トイレから戻った勇人、未来そして電が食堂に入ってきた

 

勇人「う~……漸く治まった……あ!?」

 

赤城「あ………テヘペロ」

 

勇人は自身のオカズ(主菜)が無い事に気が付き、赤城を見ると、赤城は勇人の鯵のフライを頬張りながら勇人と目が合い、勇人は笑って済ませようとした赤城に怒鳴りながら言った

 

勇人「……アーカーギー!!テメェ、(ヒト)の飯を食べやがって!!まだ一口も手ぇ付けてねぇんだぞ!!」

 

赤城「だって足りませんでしたので!」

 

勇人「ドヤ顔で言うな!」

 

赤城「ドヤァ……」

 

勇人「テメェ……ならお前の秘蔵の酒を飲んでやらぁ!!加賀ァ!!持ってこいま!!」

 

勇人は怒鳴りながら千川と千川側の一航戦と飲んでいた加賀に命令すると、加賀は微笑みながら未開封の日本酒『赤城山 特別本醸造』を持ってきた

 

加賀「既に持ってきてあります」

 

赤城「ッ!?それは……何故持ってきたのですか!?独りで飲みたかったのに!」

 

加賀「千川少佐の方の一航戦(私達)と飲みたかったので……」

 

勇人「相変わらず準備は速いなぁ……なら飲むぞぉ!!加賀に千川に千川の方の一航戦!付き合えや!!」

 

W加賀「提督(大将)と!?これは気分が高揚します」

 

千川「よし!!付き合おう!今度こそ酔い潰してやるぞ上城ォ!!」

 

千川側の赤城「是非!!御供します!!」

 

勇次「兄貴!!俺も入れてくれ!!」

 

瑞鶴「私も!!」

 

勇人「おう!!酒の代金『全額』此方の赤城持ちだ!!今日は宴や!!」

 

赤城「ッ!?それだけは止めて下さい!!新しく入ったFCのエアロパーツの代金が払えなくなります!!」

 

勇人「知るかぁ!!俺の飯を食った方がワリィんや!!」

 

ワーワー!

 

朱里「フフッ……さっきまでの『葬式染みた重い空気』が嘘の様に消えたわね」

 

美奈「これも今の大将の『人柄』……いえ『不幸や苦難を乗り越えた大将()』だからこそ『出来る事』だと思いますね……子育てに苦労した貴女や私と同じ様に」

 

朱里「そうかもね……では、私達も飲みますか?」

 

美奈「……ちなみに拒否権は?」

 

朱里「『無い(上官命令)』よ」

 

美奈「アハハ……程々に御願いします」

 

朱里と美奈はドンチャン騒ぎをしている勇人達を見て微笑みつつ、宴会を楽しむ様に笑い、騒いだりと一夜を過ごした

 

そして1時間後……

 

美奈「の……呑めへん……」

 

朱里「御屠蘇1杯で『そこまで』……弱すぎる」

 

勇人「つーか、苦手と分かってて飲ませんなま……完全にパワハラで訴えられるぞ」

 

朱里「……ごめんなさい」

 

勇人「泣けるぜ……はい、酔い止め薬に水だ」

 

美奈「あ……ありがとう……勇人君……」

 

勇人「君付けかよ……優花じゃあるまいし……まぁ良い、千川、間宮の部屋は?」

 

千川「それなら……未来「アンタは駄目だ!勇人さん!私が案内するよ!」」

 

勇人「ん?千川に聞いたが……まぁ良いか、んじゃ未来、案内してくれ」

 

未来「うん!」

 

朱里「私も着いて行くわ……」

 

千川「……この扱いの差……酷すぎない?」

 

千川側の赤城「……日頃の行いのせいです」

 

千川「……泣けるな」

 

勇人「それ俺の……まぁ良いか……よっこいしょ!」

 

ヒョイ!

 

勇人(ん?意外と軽いな)

 

戦艦女帝(意外って……御兄様、それ『ある意味』失礼な発言だよ)

 

勇人(……悪い)

 

泥酔した美奈を勇人が『お姫様抱っこ』をし、朱里と未来と共に部屋に戻った美奈であった……

 

 

 


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