本編をどうぞ。
八重桜中学校にインペライザーが出現してから1週間が経った。
当初、GUYSが居ながらもインペライザー出現を予期出来なかったのは何故と、
ダークエフェクトの特性を理解出来ていない一部のメディアが騒ぎ立てていたが、それも静まりを見せていた。
しかし、それは表面上だけの話だった。
インペライザーがヒーローに倒された後、すぐに教職員である松山が篠崎達に駆け寄ってきた。
松山は篠崎達をダークエフェクトの影響を受けた因幡という少年の元へ連れて行った。
インペライザーがウルトラマンヒーローに倒されたにも拘わらず、
因幡という少年はいまだダークエフェクトの影響下にさらされていた。
GUYSはかつて、ダークエフェクトの影響を受けた愛という少女と同じ現象と考え、
因幡少年をGUYS専用の病院へと運び込んだ。
当然GUYSは、報道や因幡少年を目撃した学校生徒たちにも規制の働きを掛けた。
しかし、報道に関してはどうにかできても、目の前で因幡少年を見てしまった生徒たちに関しては、
恐怖や不安と言った負の感情は抑えきれず、噂は広がっていった。
2日連続で怪獣が現れ、臨時休業していた八重桜中学校も、
1週間が経過した為、経営を再開した。
祐少年や因幡少年が所属しているクラスでは、入院している因幡少年への誹謗や中傷が行われていた。
誰であろうと、心を傷つける言葉を望む者はいない……。
しかし、この世はそんな心を傷つける言葉と負の感情に溢れている。
その言葉と感情を望むもの……それは彼らがもっと深い負の感情になるべく待っていた。
祐少年は、因幡少年がGUYSに連れ攫われたという、噂を聞き、事情を聴いた担任の松山と共に、
因幡少年のいる、GUYSの特別病院へと向かった。
そこにはGUYSの研究員と共に護、ヒロ、坂牧が病室をショーウィンドウ越しに因幡少年を見つめていた。
「護さん!!」
祐少年が護の名を呼び駆け寄ると、護は振り返り、少し困った顔を見せた。
「祐君……それに松山さん……すみません。
まだ因幡君がダークエフェクトの影響を受けている原因がわかっていません」
護が頭を下げ、そう言うと松山も頭を下げ、原因究明に努めている事に礼を送った。
ショーウィンドウ越しに祐少年は、顔に黒い霧の掛かった因幡少年を見つめた。
その様子を見つめていたヒロが祐少年に話しかけた。
「君の……友人?」
恐る恐る聞いたヒロに、祐少年は目を因幡少年から離さず、答えた。
「幼馴染で……大切な友達……だった」
「大切な友達……だった?」
ヒロは祐少年が友達だったと過去形で答えた事を不思議に思った。
祐少年が言った言葉に、護や松山、坂牧も祐少年の方を見た。
「中学生になってから、クラスの奴等に脅されて俺の事をいじめ始めたんだ。
友達なもんか……」
祐少年はそれだけ言い、病室を出ていった。
それを追い、松山も礼をし病室を出る。
2人が病室を出た後、ヒロは顎に手を当て、考えを口に出した。
「護さん!!もしかしたら因幡君はただの前準備かもしれません!!」
「え?前準備……?」
「恐らく、今までのダークエフェクトは、
地球では1人の負の感情を対象に怪獣を生み出していました。
けど、ダークエフェクトは複数の負の感情を対象にできるとしたら!!」
「てことは、狙いは因幡君じゃなくて他に……!?」
「でも負思念体が発生する直前ならわかりますけど、その前だと私も探しようがないです。」
坂牧が申し訳なさそうにそう言う、これに関しては護やヒロも検討がつかなかった。
怪獣や侵略宇宙人などに恐怖する人間はどこにでもいる。
ヒロの言うように特定の誰かを狙うことなど可能なのか?
ヒロ自身もその可能性を考えていたとき、病院内に怪獣出現の警報が鳴る。
護たちは素早く病院の外に待機させていたナンダに乗車した。
GUYS基地にいない護たちは基地からの報告をナンダで受けた。
恐れていたことが起きてしまったのだ……
八重桜中学校にて、28名がダークエフェクトの影響を受けてしまった。
ダークエフェクトが狙っていたのは祐少年や因幡少年のクラス全員だったのだ。
八重桜中学校につくと、そこには一体の人型の巨大ロボットがいた。
体表は黒く、銀のラインが入り、顔は一面レンズで覆われており、
時折黄色の電流がほとばしる。
腕は肘から手にあたる部分にかけ、大きな砲塔になっていた。
頭部にある角やその風格から、その姿は一体の怪獣を彷彿とさせた。
その怪獣は宇宙恐竜ゼットン。
かつてウルトラマンを倒した最強の怪獣だ。
目の前にいるロボットは機械のゼットンというべき姿をしていた。
名付けるなら、Zの代わりであったG、終わりの文字としてEND。
負思念機械生命体ジー・エンドが現れてしまった。
「護さん!!僕が行きます!!校舎内に残ってる人たちの避難を!!」
「わかった!!」
ゼットンの脅威を知っているヒロは護にそう伝え、ウルトラマンヒーローへと変身した。
ヒロはジー・エンドの背後の空中からエフェクト・スラッシュを牽制として放った。
しかし、ジー・エンドは腰部を反対に回転させると、
エフェクト・スラッシュを腕の砲塔で叩き潰してしまった。
牽制のつもりで放ったとはいえ、ダメージを期待したヒロの頭に不安がよぎる。
電子音を鳴き声代わりに響かせ、ジー・エンドは砲塔から火球をヒロに放つ。
すぐさまエフェクト・シールドで火球を防ぐと、
着地と同時にシールドをエフェクト・スラッガーに変形させて放った。
しかし、この攻撃もジー・エンドは真正面からスラッガーを叩き、はじき返した。
弾かれたスラッガーを跳躍しキャッチすると、そのまま回転し、ジー・エンドに切りつけた。
スラッガーが肘の関節部を完全に捉え、切り裂いた。
ヒロはどれだけのダメージを与えられたかを確かめるために切った腕を見るが、
ヒロの目の前には、ジェット噴射をしながら肘から切り離されていた腕がヒロ目掛け飛んできていた。
飛んできていた腕に突っ込まれ、ヒロは腕もろとも吹き飛ばされた。
「ヒロッ!!」
その様子を他の教職員とダークエフェクトの影響を受けた生徒を運んでいた護が見た。
「すみません!!あとはお願いします!!」
護はその場にいる教職員に後を任せ、物陰へと駆け出す。
懐からβフュージョミッションを取り出すと、護もウルトラマンヒーローへと変身した。
変身するとすぐさま、ジー・エンドにスワローキックを繰り出すが、
顔から発射された光弾を食らい、地面に落とされる。
ヒロに放った腕が、ジー・エンドの肘に再び合体し、ジー・エンドは護に構えた。
護は焦りから、レッドパワー・シュートを放とうとするが、相手がゼットンの様な能力を持っていた場合、
放った光線が自分への致命傷になることを思い出した。
護は考えを変え、ためたパワーをレッドパワー・バーチカルギロチンに変えて繰り出した。
赤い光の刃がジー・エンドにあたる直前、ジー・エンドは両腕を上に構え、バリアーを張った。
バリアーと刃が競り合い、光の刃は粒子となって砕け散った。
『これは……!!ライトニングになるしかない、ヒロ!!』
倒れていたヒロの方を護が見ると、ようやくダメージから復帰したヒロが頷いた。
二人がライトニングへとなる為、近付こうと駆け出した。
ジー・エンドはそんな二人の首にそれぞれ腕を発射した。
あと一歩……ともいえない距離で、
二人のウルトラマンは発射された腕……その砲塔の中の手に首をつかまれた。
空中へと持ち上げられ、もがく護とヒロ。
首を掴む力はとても強く、離れそうにない。
護は赤い光の力を体に走らせ、力づくで腕を振りほどこうとするが、
その様子を見ていたジー・エンドは護の体に何度も光弾を放つ。
10発を超えると、護を包んでいた赤い光は消え、力なく体をぶら下げていた。
そこへ、止めと言わんばかりに砲塔から火球が発射され、二人は吹き飛ばされてしまった。
カラータイマーは二人とも点滅しており、護は動く気配すらない。
「篠崎さん!!到着はまだですか!!」
心の目で、その様子を見ていた坂牧はいまだ来ない篠崎達に救援を呼ぶ。
しかし、篠崎たちからの返信はなく、
メモリーディスプレイのコンピュータ音声報告では戦闘中との報告だけがなっていた。
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