正直、戦闘シーンを描くのは苦手ですが、頑張っていくのでよろしくお願いします。
ヒーローとの出会い-負思念体ベムラー登場-
「また落ちた……」
履歴書と不採用通知を片手に、青年はため息をついた。
「やっぱり、今じゃ資格として役には立たないのかなぁ……」
青年のもう片手にはGUYSライセンスカードと呼ばれるものがあった。
青年はベッドに横になるとすぐに眠りに入った。
夢の中、子供の頃の青年は、子供たちに囲まれ虐められていた。
殴り、蹴られ、髪を引っ張られている。
「助けて!!ウルトラマン!!」
助けを呼ぶと、大きな巨人、ウルトラマンメビウスがやってきた。
メビウスはいじめっ子たちをその手で払うと少年を手に乗せる。
『大丈夫だったかい?』
夢の中のメビウスは少年へそう語りかけた。
「うん!ありがとうウルトラマンメビウス!」
少年の笑顔には曇りはなかった。
そこで青年の夢が覚めた。
「はぁ……嫌な夢だな……、助けになんて来ないのにな……」
ウルトラマンメビウスが最後に地球に来たのは30年前、
この時、青年はまだ生まれてすらいなかった。
ウルトラマンメビウスを生まれた後、テレビで知り、一度会ってみたい。
ウルトラマンのようにヒーローになってみたい……。
子供の時、この青年は思っていた。
しかし、その30年で人々の意識は変わっていた。
ウルトラマンみたいなヒーローになるのが夢です、と小学校の自己紹介で言った途端、そのクラスの男の子たちは彼を虐めたのである。
『まだウルトラマンなんて言ってるよ』
最初のうちは言葉で、そのうち言葉からただの暴力に変わった。
何度も助けてほしいと願った。
一番好きなウルトラマン、ウルトラマンメビウスに……。
しかし、ウルトラマンは現れなかった。
時は流れ、少年は大人になった。
青年は諦めきれず、大人になってもウルトラマンの様なヒーローになる夢は捨てられなかった。
その夢を叶える為に、必死にGUYSのライセンスは取っていたが、
30年前からGUYSのライセンスのみではGUYSに入ることは難しくなっていた。
今となっては、アルバイトをしながら就職先を探している毎日である。
「ヒーローなんて……もう、要らないのかなぁ」
コップの水を飲み干して、ため息をついた時だった。
凄まじい爆音が外から響き、机に置いたコップが床に落ち、割れる。
「な、なんだよ!!」
地震の揺れとは違うことを察した青年は、窓の外を見る。
そこには一体どこから現れたのか、怪獣が居た。
「ベ、ベムラー!?なんでこんな所に!!……違う!!逃げなきゃ!!」
青年は防災バックとスマートフォンを持って外に飛び出す。
アパートの階段を必死に降りようとするが、街の惨状に足が止まった。街の道路は逃げ惑う人々で一杯だったのだ。
悲鳴が飛び交う中、青年はベムラーを見る。
ベムラーは逃げる人々に反応してか、向かって歩き出していた。
「不味くないかこれ!!」
ベムラーが自分達に狙いを定めていることを知った青年は、急いで逃げようとしたが、不意に目がある場所で止まった。
それはベムラーが歩いている近くの公園、そこには泣いてうずくまってる子供が居た。
「だ、誰も近くにいないのか!?なんで!?」
必死に公園の周りを見る青年だが、青年の周りにいる人達は子供に気づくことなく逃げている。
「お、俺しか気づいてないのか……?畜生……!!」
全力で階段を下りる、最後の段を踏み外し転げまわるが、痛みを無視し、公園に急ぐ。
ベムラーから逃げてくる人たちの流れに逆らい走る青年は、色んな人たちとぶつかりながら前に進む。
何とか公園にたどり着いた青年は、子供に駆け寄った。
「大丈夫か!!早く逃げるよ!!」
しかし、その子供は青年の声に反応しない。
「どうしたんだ!!早くいかないと!!あいつが!!」
しゃがんで、その子の顔を見ると……、その子の顔が黒い靄で覆われていることが分かった。
驚いて後ろに倒れこむ青年。
「お兄ちゃんも私の顔を変って言うの?」
その黒い靄が掛かった女の子は青年に近づく。
青年はおかしくなりそうだった、すぐそばには怪獣ベムラーが、目の前には黒い靄がかかった女の子。
どうすれば良いか分からず、声を掛ける。
「君には見えないのか!!あの怪獣が!!」
「怪獣?あれはウルトラマンだよ!私を虐める子を倒してくれるの」
「何言って……あれは怪獣ベムラーだ!!君はなんなんだ!!なんで顔が見えないんだ!!」
女の子は今度は答えず、その場でまたうずくまってしまった。
「あぁ!!もう!!」
青年は女の子を抱えると、人々が逃げる方向とは違う方へ逃げ出す。
しかし、それに気付いたのか、ベムラーが何故か大勢の人々ではなく、青年が走っていく方向に進路を向けた。
青年もそれに気付き、逃げる足を早める。
その時、ベムラーは青年に向けて口を開くと、光が集まる。
光線が来る……、青年はそのことに気付き、逃げられないと悟った。
そして、女の子を庇うように身を屈め叫んだ。
「ウルトラマン!!」
爆発音が響き、死を悟った青年だったが、いつまでも痛みが来ないことを不思議に思い、ベムラーの居た方を見る。
そこには子供の頃、呼んでも来なかったウルトラマンが……、青い巨人が居た。
「ウルトラマン……ヒーローが、来てくれた……のか!!」
安心と感動も束の間、現状を理解した青年は女の子を抱え、走り出す。
『ティアッ!!』
青いウルトラマンと怪獣ベムラーが対峙する。
ベムラーが口から光線を放つと、ウルトラマンはそれを素早い動きで避けた。
当然、光線はウルトラマンの後ろにある建物……。
青年の走っている直ぐ横のビルに命中してしまった。
光線により破壊されたビルの破片が、走っていた青年と女の子を襲う。
「ああああああッ!!」
叫び声と共に、破片が地面に落ち、砕けちった。
破片が落ち切り、奇跡的に自分が無傷であること、
抱えていた女の子も無傷であることに安堵した青年。
青年の背後で戦っていたウルトラマンを見ると、ベムラーの攻撃を避け続けている。
避ける度に、建物が壊れていき、人々の悲鳴も聞こえた。
「クソ……何がウルトラマンだ!!何がヒーローだ!!」
青年は叫んだ。
「ふざけんなよ!!お前はヒーローなんだろ!!だったらヒーローらしく人を救えよ!!」
不意に、ウルトラマンが青年の方へ振り返った。
目が合う理由はないはずだが、青年とウルトラマンはお互いを見つ合っていた。
まるで時間が止まったかの様な静寂の中、ウルトラマンの右手が青年へ伸びてくる。
すると、ウルトラマンは青年を右手でつかんだ。
不可解な行動に、その場に女の子を置いてしまった青年だったが、
自分の置かれた状況に気付き、声を上げる。
「何すんだよ!!放せぇ!!」
ジタバタと暴れる青年だったが、その力は人と巨人ではあまりにも弱かった。
胸の光り輝く球体へと、青年を掴んだ右手を押し付けると、ウルトラマンは光り輝いた。
『な、なんだ?何が?』
青年が目を開けると、目の前に自分と同じサイズのベムラーが現れていた。
『なんだよこれ!?うわ高っ!?』
下を見ると、先程の公園が足元にあった。
青年は周りの物が小さく、いや自身の体が大きくなったことに気付いた。
そして、ビルに反射した自身の姿が、先程のウルトラマンが赤く変わった姿をしていることに気付いた。
『戦え……人々のために、私を知るものとして……』
『た、戦え?』
青年の頭で、誰かの声が響く。
その言葉の意味に疑問を思っていると、ベムラーが青年へ向かい、走って来ていた。
『わ、わかったよ!!俺が!!ヒーローになってやる!!俺が守ってやる!!』
青年は、向かってくるベムラーに向けて構えをとった。
右手を握りしめ、左手を平手に開き、高々にあげた。
それは自然に取った構えであった、青年が子供の頃、テレビで見て真似たウルトラマンメビウスの構えである。
『サァーーッ!!』
激しい格闘戦が繰り広げられる。
その光景は30年前、ウルトラマンメビウスの戦いを思わせる戦いだった。
赤く光る右手をベムラーに叩き込み、終始圧倒を続けるが、1分持たずに胸のカラータイマーが赤く点滅する。
『なんでだ!?まだ3分も経ってないはずじゃ!?』
青年は過去に地球に現れたウルトラマンが、戦える時間が短いということを知っていた。
しかし、あまりに短すぎる。
その動揺の隙をベムラーが見逃さず、頭突きをする仕掛けて来る。
頭突きで後ろによろめくが、その後も、何度も頭突きをしてくるベムラー。
青年が何かに気付き後ろを見ると、あの女の子が、ウルトラマンとなった青年を見つめ、立っていた。
もう顔にはあの靄はなく、その顔には目の前の現実に恐怖した表情があった。
その表情を見た青年はベムラーへと視線を戻すと、自分を鼓舞した。
『負けられるか!!あの日から夢見たヒーローに!!』
右手が一際煌きを起こす。
その拳をベムラーの体へ叩きつけると、その巨体を大きく吹き飛ばした。
『憧れのヒーローになったんだ!!負けるもんか!!』
腰の両側に握り拳を引き、その後、右腕だけ右に伸ばした。
右拳に赤い光の渦が小さく溜まっていくと、そこから過去現れたウルトラマン達が取ったスペシウム光線の形に構えを取った。
赤い光線が右手から迸り、ベムラーの胴体を貫く。
ベムラーはビルの間へと、体を横に倒し、爆発した。
『倒した……やったんだ俺、俺……!!』
青年が感動していると、意識が朦朧になってくる。
遂にはその場に倒れる感覚の後、青年の意識は途切れた。
目が覚めるといつものベットに寝ていた青年。
「夢……?」
ぽつりとつぶやくが、青年はその身の震えが歓喜に満ちていたことに気付く。
「そうだ!!」
青年は外に出た、既に日が落ち、少ない街灯と救助隊の物だろうサーチライトで照らされた被害の現場が残っていた。
ベムラーを倒した歓喜の気持ちと、この光景が、先程のことが夢ではないことの何よりの証拠であった。
「あ……」
改めて外の状況に悲しみを覚えたが、それ以上に自分が人々を守ったこと、
人々を守ったことに喜びが青年の中にはあった。
青年は自分のズボンのポケットをあさり、中にあるものを取り出した
「夢は、叶えられるんだ!!」
日野 護(ひのまもる)青年の名前の書かれたGUYSライセンスカードを月の光にかざして。
こうしたほうがいいよといったご指摘があったらうれしいです。
これからもよろしくお願いします