大統領 彼の地にて 斯く戦えり   作:騎士猫

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3月2日
あとがきにて質問していた”きじょうへい”の事ですが、メールにて助言をいただきました。どうやら騎乗兵で合っていたようです。
作者自身騎乗兵自体は知っていたのですが、出兵式などで旗を持っていたため、てっきりそれ専門で騎乗兵とは別の”きじょうへい”なるものが存在しているのかと思っていました。
この場を借りて今一度御礼申し上げます<m(__)m>

上記のように申し上げましたが、どうやらこれも間違っていたようです。詳しく調べて下さったことはとても感謝しております。

作者自身”きじょうへい”にとらわれすぎて”ぎじょうへい”の事をすっかり忘れておりました。観兵でもなく騎乗兵でもなく儀仗兵だったようです。感想にて教えて下さった方、、誠にありがとうございます。


第三話 諸王国軍敗退ス

諸王国軍の先鋒であったアルグナ、モゥドワン、リィグゥの3か国軍が壊滅した後、諸王国軍の約7割を動員した第二次攻撃が行われた。が、ロンディバルト軍のアウトレンジ攻撃によって、ただいたずらに兵力を消耗するだけに終わった。

 

第二次攻撃後、諸王国軍の会議テントには、当初21人いた将軍はすでに8人となっていた。

「始めは16万もいた諸王国軍は、すでにその半数が存在せぬっ。何故このような事態にっ・・・。」

「帝国軍はどこで何をしているんだっ!」

「いや、帝国軍とて敵う相手ではない。ここはもう退くしかないのではっ!?」

結集当初は皆争うように先鋒を取り合っていたが、すでに全員圧倒的な武力の前に戦意を喪失し、撤退案すら出つつあった。

「このまま逃げて帰るわけにはいかん。・・・せめて、一矢報いてやらねば。」

終始腕を組み沈黙を保っていたデュランが、亡き戦友リィグゥの兜を見つめながら初めて口を開いた。

「しかし、デュラン殿っ。我々の力ではっ・・・。」

数秒思案を巡らせると、デュランは思いついたように言った。

 

「夜襲ならば、あるいは・・・。」

 

 

「今夜は新月、この闇夜に乗じて丘の裏手より仕掛ければ気づかれることなく、敵陣に迫れるはず・・・。」

第二次攻撃が行われたその夜、諸王国軍はもてるすべての兵力を動員して最後の攻撃を仕掛けようとしていた。

通常の戦いであれば、デュランの策は成功していただろう。しかし、相手が悪すぎた。

 

「な、なんだ!?」

「火矢かっ!?」

物音立てずに進軍していた諸王国軍の上空に、照明弾が打ち出された。

「な、この明るさはっ!」

突然の出来事に、諸王国軍は足を止め、隊列を乱した。

「い、いかん!全軍突撃っ!馬は駆けよ!人は走れぇ!走れ!走れ走れ!!」

デュランはすぐに自ら突撃しつつ、全軍に突撃命令を下したが、突然のことに混乱していた諸王国軍は足並みそろわずバラバラに突撃していった。

 

デュランが大声で命令しながら敵陣めがけて突進していると、丘から砲弾が放たれ、後ろにいた味方の悲鳴が聞こえた。もはや諸王国軍は指揮統制を失いばらばらであった。

「なっ!」

敵陣に迫ったデュランであったが、ロンディバルト軍が設置していた有刺鉄線に馬が引っ掛かり、デュラン自身が放り投げられてしまった。

「デュラン殿っ、今お助けします!」

「盾を前へっ。」

追いかけてきた兵士たちがデュランを救出するために有刺鉄線を越えた。

「逃げろ!みんな逃げるんだっ!」

助け起こされたデュランは、すぐに兵士たちに逃げるように言うが、時すでに遅し、丘から機関銃と砲弾の雨が降り注いだ。

 

PAPAPAPAPA!!

BAMBAMBAM!!

 

「うわぁあああ!!」

盾を構え横陣を敷いていたが、機関銃の前には無力であった。盾はたやすく貫通され、その持ち主を穴だらけにした。

 

そんな中、デュランはただ一人愕然と丘を見つめていた。

「くっ・・・おのれぇぇえっ。」

デュランは足元にあった弓を放った。まさに一矢報いたのであった。

 

「何故だ・・・、何故、こんなことに・・・。」

そこでデュランは初めてモルトの真意がわかった。

 

「ふ・・ふは・・ふあっはっはっはっは!あぁあっはっはっはっはっはッッ!!」

デュランは狂ったように笑い始めた。そこにロンディバルト軍の砲弾が直撃し、デュランはそこで生き途絶えた。

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

「敵の死者、概算で10万だそうです。」

「・・・銀座で6万、到着時の遭遇戦で6万、合わせて22万か・・・。」

夜が明けた後、ペルシャールとハイドリヒは、戦場を見て回っていた。

「ほう、敵の心配ですかな?」

シェーンコップが倒れた兵士を見ながら言った。

「うちの世界じゃ、22万なんて死にまくってるが・・・中世ということを考えたら・・・。っ!我々の敵、どんな敵なんだよっ!」

ペルシャールは拾った弓を思わず放り投げた。

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

「皇帝陛下、連合諸王国軍の被害は、死者負傷者を合わせますと20万を超える見込みです。敗残兵は統率を失い、散り散りに故郷への帰途に就いた模様です。」

帝都ではマルクス議員が皇帝モルトに諸王国軍大敗の報を知らせていた。

「うむ、予定通りといえよう。これで近隣諸国がわが帝国を脅かす不安は消滅した。アルヌスより帝都に至るまでの全ての街、村を焼き払い、井戸には毒を投げ入れ食糧家畜は運び出せ。さすればいかなる軍隊とて立ち往生し、付け入る隙が現れるであろう。」

「焦土作戦ですか。」

臣下はモルトの作戦に賛成するようにうなずいた。最も、賛成しなければ忠誠に疑いありと言われかねないからであったが。

「しかし、税収の低下と内部の離反が心配です。」

「離反とは。」

「カーゼル候が中心となり、元老院で陛下の罷免を企てる動きがみられまする。」

「うはははっ、一網打尽に元老院を整理する良い機会だ。枢密院に調べさせておくがよかろう。」

臣下が下がろうとすると、若い声が大広間に響いた。

 

入ってきたのは帝国の第三皇女ピニャ・コ・ラーダであった。皇女とは言いながら甲冑を身にまとい白いマントを羽織っていた。

「わが娘よ、何用だ。」

「無論、アルヌスの丘についてです。」

「連合諸王国軍が無残にも敗走し、帝国の聖地たるアルヌスの丘に、敵軍が居座っていると聞きましたっ。この事態に、陛下は何をなされているのですかっ!」

「我々はこの期間に兵を集め、必ずや丘を・・・。」

マルクスが代わりに弁解するが、”悠長な!”の一言に遮られた。

「それでは敵の侵入を防ぐことはできぬっ!」

マルクスが困り果てていると、モルトが落ち着いた口調で言った。

「ピニャよ、そなたの言葉の通りだ。だが、我らはアルヌスの丘に屯する敵兵についてあまりにもよく知らぬ。・・・ちょうどよい、そなたの騎士団で偵察に言ってもらえんか。」

モルトはいわゆるゲス顔で実の娘に頼んだ。ピニャには帝国の指揮外れた独自の薔薇騎士団という部隊がおり、構成員のほとんどが若い貴族の娘である。実戦経験はなく、訓練してるとはいえその実力がいかほど出せるかもまだわからない状態である。そんな彼女たちに16万もの帝国兵の屍を築いたアルヌスの丘に偵察に行けというのである。死んで来いというのとほぼ同義語であった。

「わらわが?我が騎士団とともに?」

しかし、今まで所詮儀仗兵としか扱われなかったピニャにとっては、いや、騎士団にとってはありがたい命令であった。

「そうだ、もしそなたのしていることが兵隊ごっこでなければ、の話だがな。」

モルトの言葉にピニャは半ば意地でそれを承諾した。

 

しかし、この選択が後に大きな転換点となることなど、今のピニャは思いもしなかった。

 

 




※下記疑問は解決いたしました。
アニメでは”きじょうへい”と聞こえましたが、きじょうへいがなんなのか、アニメを見れば大体わかるのですが、現実での役割や、きじょうへいの漢字がわからなかったため、それに近い観兵と書かせていただいております。もし、”きじょうへい”の役割と漢字がわかる方がいらっしゃいましたら、感想かメールにて言っていただければ幸いです。
アニメをよく見た結果、設定に矛盾があるような気がしたので、独自解釈しました。

異世界到着時に10数万の軍隊というのが、恐らく連合諸王国軍の事だと思われるのですが、あれはゲート警備のゴダセンが破れた後の事なので時系列的に一致しない。というかゴダセン議員の警備部隊がこの10数万の事だと思うのですが、6万の損失で6割と言っているので帝国の残存兵力は4万しかいないはず。加えて諸王国軍はまだ動員されていないので、この10数万という数はおかしい。なので、前回のあとがきで書きました通り、帝国は23万、諸王国軍は16万に増やさせていただいたわけです。
この作品では

銀座事件で6万人全滅

異世界到着時に警備部隊及び第二次侵攻軍6万数千人を残して壊滅

諸王国軍16万、帝国軍9万(結局諸王国軍を消耗させるためなので実際には出陣せず)結果諸王国軍数千人を残して壊滅。

帝国損失   12万 残存兵力11万
諸王国軍損失 16万 残存兵力領地治安部隊の少数(合わせても3万程度)


もし、これ違くね?という意見がありましたら、ご指摘ください。あくまでこれは作者の疑問から独自に解釈し設定をしたものなので、そこのところはご理解ください<m(__)m>

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