3話ぐらい既に投稿していると思ってましたが全部投稿が来年という……、やってしまいました。とりあえず本話は繋ぎの様なものなので短いです。
次の話はもう一度見直してみるとちょっと薄かったので書き直し中です。もう少しお待ちください(´・ω・`)
7/17
誤字脱字を修正しました。
園遊会が無事に終わり講和交渉が本格的に始まった頃、悪所のロンディバルト軍活動拠点に思わぬ訪問者が現れた。
悪所の各地にいくつか点在しているロンディバルト軍のセーフハウス、その一つには悪所に住む住民たちからの信頼獲得と現地の衛生状態の悪さを改善するため、診療所が設置されている。
そこでは第三偵察隊で看護兵を務めている黒川が看護師として度々訪れる住民たちの診療と、完治が容易な怪我や病気には直接治療も行っていた。
一日が終わり、黒川自身も交代時間になりかけた頃、突如扉が叩かれた。
これまでこんな夜中に住民が来たことはない。黒川はすぐ横で警備をしていた兵士に目配せし、自身も9mm拳銃を取り出して扉の横に張り付いた。
「どちら様ですか?」
普段と同じような落ち着いた優しい声で黒川は尋ねた。
「黒川かい?ミザリィだ。ちょっと話があるんだ」
扉を叩いたのは今朝診療所にやってきた翼人種の娼婦、ミザリィだった。
念のため、外に設置してある監視カメラで確認すると確かにそこにはミザリィの姿があった。しかし一人ではなくその後ろにはハーピィやヴォーリアバニーといった他の亜種の娼婦が大を大勢連れていた。黒川は静かに扉を開けて彼女たちを中に入れると一度外を確認して扉を閉めた。
「……で、テュワルさんと言ったか?どういうことかね」
やけに落ち着きがない様子の彼女たちを何とか落ち着かせると、騒ぎを聞きつけて来た大隊指揮官のアヴロフがミザリィから”話がある”というハーピィ族の少女に話を聞いた。
「あ、あたしの故郷には火山があって、噴火の前に地揺れがあるんだ。今日は朝からその時と同じ予感がして、震えが止まらないんだ……」
「地揺れ……?こっちの世界にも”地震”って奴があるのか」
テュワルの言葉にアヴロフは顎を掻きながら”なるほどなるほど”と呟いた。
「ん?新田原少佐、何かあるのか?」
一人彼女たちを見つめている副隊長の新田原にアヴロフが問いかけた。
「はっ、実は……以前の勤務地の時に鳥や動物が激しく騒ぎ出すことがありました」
「以前の勤務地とは?」
「……関西です」
「関西……南海トラフか!!?」
新田原の言葉でアヴロフは察知した。関西と言えばつい8年前、南海トラフ地震により大きな被害を受けた地域である。そしてそれ以前に起きた震災のその多くに発生直前に動物たちが騒ぎ出していたという事を震災復興に参加していたアヴロフ自身も思い出したのだ。
「帝都各班及びアルヌスに緊急連絡!!間もなく大規模な地震が発生する危険性あり!!我々も帝都外に避難する。各自5分で装備を纏めろ!!」
「「「了解!!」」」
突然大きな声を出したアヴロフにミザリィ達は驚くが、黒川の説明に更に驚いた。そしてすぐに皆に知らせなければとミザリィ達は大急ぎで診療所を出て行った。
一方、アルヌスにも帝都からの報告が伝わり、緊急避難命令が発令されていた。
その中でアルヌス協働組合の代表者としてテュカ、レレイ、ロゥリィの3人も住民の避難誘導を行っていた。
「ふぁ~……なんなのぉ、こんな夜中にぃ」
「地揺れだって。昔お父さんが話してくれたような」
「古い文献にも記載がある」
「住民の皆さん!!地震・地揺れが発生する恐れがあります!!直ちに火を消し、速やかに野原に避難してください!!繰り返します――」
町の大通りでは警務用の軽装甲機動車による放送が行われ、それを聞いた住民達は松明などの火を消して野原へ急ぐ。
「何だというのだこんな時間に!?大地が揺れる訳なかろう!?」
「いえ、その可能性が高いだけで……。それに事実我々の世界では度々起きてるんですよ」
突然夜中に起こされ、広場まで連れてこられたピニャはどういうことかとペルシャールに詰め寄った。
「(クソ、交渉の大事なタイミングでっ)……っ、シェーンコップ」
「えぇ、揺れてますなぁ。本当に」
ペルシャールの心を読んでいたかの様にご愁傷様ですとでも言わん顔で答えるシェーンコップ。その間にも揺れは強くなっていき、ピニャもそれに気が付いた。初めての体験に理解できていない様であった。
そして――――――
「来るぞ!!!」
その夜、帝都は地震に見舞われた。