ラブライブ! 若虎と女神たちの物語   作:截流

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どうも、左京大夫です。


今回は穂乃果の誕生日記念の番外編です!

昨日仕上げて更新するはずが、うっかり寝過ごしてしまったので1日遅れの誕生日祝いです!


穂乃果ちゃん!お誕生日おめでとう!!


※番外編の時系列は本編とは関係ありません。



それではどうぞお楽しみください!!


番外編 リーダーの在り方

八月某日、穂乃果の家にある彼女の部屋で志郎と穂乃果が向き合って座っていた。穂乃果はいつになく真剣な表情で正座をしており、志郎の方は怪訝な表情で胡坐をかいていた。その雰囲気はかつて戦国大名だった頃の風貌を思い出させるほど厳かなものであった。

 

そしてその二人を海未、ことり、幸雄の三人が見守っていた。

 

「志郎くん!お願いがあるの!!」

 

「お、おう・・・。」

 

「リーダーとしての在り方というものを教えてください!!」

 

穂乃果はそう言って深々と土下座した。志郎の返答は・・・。

 

 

 

 

「・・・あ?」

 

少し怒声の混じったそっけない返事だった。

 

(なあ、海未さんよ。今更だけど穂乃果ってああも人の地雷を踏むのが得意なのか?)

 

幸雄はヒソヒソと海未に意見を聞いた。

 

(ええ、穂乃果は真っ直ぐで表裏が無く、気さくでおおらかのが長所なのですが、逆に言ってしまえば人の気にしているところにもズバッと切り込んでしまう無神経さが少し玉にキズですね・・・。)

 

海未は呆れながら幸雄に返す。

 

(ひょっとして志郎くん、怒ってたりする・・・?)

 

ことりが苦笑いしながら小声で志郎に聞くと、

 

(ひょっとしなくてもだな。穂乃果の奴め、ちゃんと志郎のこと教えたはずなのに地雷を見事に踏み抜きやがった。)

 

幸雄はため息をついた。

 

(穂乃果は小難しいことは苦手ですから。)

 

(ああ、そうだったな。)

 

海未と幸雄はその言葉で話題を終わらせた。

 

 

 

 

「・・・穂乃果、それは俺が相手だと分かって聞いてるのか?」

 

志郎は気分を落ち着かせるために深呼吸してから穂乃果にたずねた。

 

「うん、志郎くんしかぴったりな人はいないよ!」

 

穂乃果は志郎のあまりにも複雑すぎる心境など全く気にもしてない様子で無邪気に答える。彼女の名誉のために補足するが、彼女に悪気なんてものは一切存在しない。

 

「俺の正体はちゃんと教えたはずだったよな・・・?」

 

志郎は顔を引きつらせながら再度質問する。

 

「志郎くんって昔はお殿様だったんだよね!?お殿様だったらリーダーがどういう風にしてればいいのか分かるかなーって思って・・・いひゃひゃひゃ!」

 

 

「ああ、確かに俺はかつては殿様だったよ!だが殿様は殿様でも『人心をまとめきれずにお家を滅ぼした』リーダー失格のお殿様であるこの俺によりにもよってそんな質問するか貴様あああああああ!!!」

 

志郎はそう叫んで穂乃果の両方の頬をつまんで引っ張る。

 

「いひゃい!いひゃいほひほうふん!!(痛い!痛いよ志郎くん!!)」

 

「そんなんが簡単に分かるなら俺の方が知りたいわちくしょおおおおおおおお!!!」

 

志郎が半泣きになってた気がした幸雄はめんどくさくなると思って志郎を適当に宥めすかして穂乃果から引き離した。

 

 

 

 

「全く、せっかく昼寝してるところに電話をガンガン掛けてきやがって。大事な話があるっつうから来てみたら半分嫌味のような質問を喜々として聞かれるとは思いもしなかったぞ・・・。」

 

「大事な話だもん!」

 

穂乃果が納得いかない様子で志郎に抗議する。

 

「で、結局呼び出した理由はなんだよ?」

 

幸雄が聞くと、

 

「ほら、昨日私の誕生日だったでしょ?だからこれを機に心機一転しようと思って!!」

 

穂乃果はドヤ顔で答えた。穂乃果のその様子を見た二人は、

 

「なんだ、いつもの突拍子もない思いつきか。」

 

「このくそ暑い中来て損したぜ。俺達ゃ中身は甲州人と信州人で暑いとこは苦手なんだよ。早く帰ってクーラー天国を堪能しよう。」

 

そう言って帰ろうとするが、

 

「帰らないでえええ!!」

 

と穂乃果は二人の足元に縋りついた。

 

「分かった分かった!話聞いてやるから!」

 

「暑苦しいからやめてくれ・・・!」

 

志郎たちは渋々穂乃果の部屋に引き返した。

 

 

 

 

「で、リーダーの在り方だっけか?話ってのは。」

 

「うん。」

 

「だったらさっき言った通り俺に聞くのはお門違いだな。正体を明かした時にも言ったが、俺は家臣や領民の心をまとめることのできなかったリーダーとしては落第クラスの男だったのだからな。」

 

「でも、志郎くんは・・・!」

 

ことりが志郎を弁護しようとするも、

 

「確かに生まれに恵まれなかったのは事実だったが、俺は自分の過ちをそれだけに押し付ける気は無い。実際にあの時の人生を振り返ってみれば自分の愚かさが招いた過ちも多かった。」

 

と、遠くを見るような目で寂しげに言った。

 

「そういえば幸雄も大名でしたよね?幸雄なら・・・。」

 

海未が幸雄に話を振るが、

 

「あー、俺はどっちかっていうとリーダーってタマじゃねえんだよな。リーダーってよりも俺はお屋形さまこと信玄公や志郎のような奴らの影で暗躍したりしてるのが合ってるんだよな・・・。」

 

と言って幸雄は唸った。

 

「確かに幸雄はリーダーというより参謀向きですよね。」

 

「じゃあ、どうすればいいかは自分で考えるしかないのかなあ。」

 

穂乃果がため息をついて言うと、

 

 

「いや。俺たちはリーダーにこそ向いて向いてはいないが、乱世とこの現代を生きている中でその背中や生き様を見てきたんだ。」

 

「そうそう、俺たちはお前らよりも長く生きてるんだ。その分経験だけじゃなくて知識なんかも豊富なんだぜ?」

 

志郎と幸雄はそう言って穂乃果を励ます。

 

「志郎くんと幸雄くんが知ってること・・・?」

 

「ああ、そうだな。経験豊富な俺たちが思うに・・・。」

 

「思うに?」

 

「お前さんは今のままで十分だと思うぞ。」

 

「ええええ!?何それ!?」

 

幸雄の答えに穂乃果は仰天した。

 

「いや言葉のまんまさ。お前さんはどっかの誰かさんみたいに気張らなくてもしっかりやれてるって事よ。海未とことりもそう思うだろ?」

 

幸雄はことりと海未に意見を求めた。

 

「はい。確かに穂乃果は見ててハラハラするところが多いですけど、私たちを引っ張ってくれているという意味ではその通りだと思います。」

 

「私もそう思うな。それに穂乃果ちゃんのおかげでμ'sは私たち9人だからこそ輝けるってことに気付くことが出来たんだもん。」

 

海未とことりは笑顔でそう答えた。

 

「海未ちゃん・・・、ことりちゃん・・・。」

 

「そう、お前は無理に変わろうとする必要はないんだ。」

 

「志郎くん・・・。」

 

「そりゃあ、変わろうとすることは大切なことだがお前には元から戦国大名であった俺でさえも凌駕するほどのリーダーの資質を持っているんだ。一つだけ言うことがあるとすれば、お前は自分らしさを捨てずに、自分が決めた道を諦めることなく進めばいい。ただそれだけさ。」

 

「自分・・・らしさ?」

 

「そうだ、お前はお前らしくあればいい。お前は甲斐武田家の最後の当主であるこの武田四郎勝頼が思わず嫉妬してしまうほどの器を持っているのだから。」

 

そう言って志郎は穂乃果の頭に優しく手を置いた。

 

「ねえ志郎くん。穂乃果らしさって何?私分かんないよ!」

 

と穂乃果が志郎に聞こうとすると、

 

「その答えはお前自身で見つけるんだ。恐らくこの場にいる中で幸雄を除けば俺のことを知っている海未ならばその答えを知ってるかもしれないが・・・、絶対に言うんじゃないぞ?」

 

とニヤリと笑って言った。

 

「ええ~!!海未ちゃん!答えが何なのかヒント教えて~!!」

 

志郎の言葉を聞いた穂乃果が答えのヒントを聞こうと海未に縋りつくが、

 

「ダメです!それに言うなと言われたばかりなのに言うわけがないでしょう!」

 

と海未に脳天に手刀を喰らわされた。

 

「ねえ、幸雄くん。志郎くんが言ってた答えってなあに?」

 

とことりが幸雄にたずねた。

 

「いやあ、流石に俺も言うわけにはいかねえよ・・・。それにお前さん、穂乃果にはうっかり言っちまいそうだし・・・。」

 

と幸雄が渋ると、

 

「言わないもん!だから・・・!」

 

「げっ!よせ、それはやめっ・・・!」

 

「おねがぁい!!」

 

ことりが目を潤ませて幸雄にお願い攻撃を繰り出した。

 

「うおお!!そんな目で俺を見るなあああ!!分かった教えるから!!いいか、あいつが言ってるのはゴニョゴニョゴニョ・・・。」

 

「ああ・・・、そうなんだ!ありがと、幸雄くん!」

 

ことりの必殺技とも言える渾身のお願い攻撃に屈した幸雄は答えをことりに耳打ちで教えた。

 

「ことりちゃーん!私にも教えてよー!!」

 

「だ~め~♪」

 

穂乃果とことりがじゃれ始めたが、それを尻目に志郎と幸雄は、

 

「さて、話は終わったし俺たちは帰るとするか幸雄。」

 

「おう、そだな。」

 

と言って穂乃果の部屋から出ていった。

 

 

 

 

「しっかし、今日は勝頼さまにしては珍しい物言いでしたな。」

 

「む、それはどういうことだ昌幸?」

 

志郎と幸雄は穂乃果の家から出るときに穂乃果の母親からもらった『ほむまん』を頬張りながら歩いていた。

 

「いや、いつもなら歯に衣着せぬ物言いで何事も真っ直ぐに伝える勝頼さまが今日は珍しく煙に巻くような物言いをされたのが不思議に思えましてな。」

 

「まあ、間違ってはいないな。」

 

「その真意は如何なるもので・・・?」

 

「大人げないと思うかもしれんが単なる意趣返しよ。」

 

「意趣返し・・・と。」

 

「うむ、あいつはどうやら自分が大器を持っていることを分かっておらんようだからな。」

 

「なるほど、それであの大人げなさ全開のキレっぷりを発揮したというわけですか。」

 

「まあそれは置いとくとして、俺があいつを認めている一方で嫉妬心を少なからず抱いていることも確かだ。『何故俺ではなくこのような能天気な小娘に大器が宿っているのか・・・。』と葛藤した時もあった。」

 

「勝頼さま・・・。」

 

「まあ、もっともあいつの場合は自分に大器が宿っていることが分かってない方があいつらしい道を歩んでいけるだろうと考えたうえであのようなはっきりとしない言い回しをしたわけだ。それに、あいつならそんな難しいことを考えるよりも前に進んだ方がいいとすぐに気づくであろう。」

 

「なるほど・・・、そういう事でしたか。しかし勝頼さまも意外と哲学的な事をお考えになるものなんですな。」

 

「おいおい、俺だって脳筋なわけじゃないんだぞ。色々考えもするさ。」

 

「箱を開ける鍵の無いプレゼントだなんて勝頼さまにしてはとんだ変化球の贈り物ですな。」

 

「誰が上手いことを言えって言ったよ。」

 

志郎と幸雄はお互いに笑い合った。

 

 

(高坂穂乃果よ。お前は俺のように小難しいことを思い悩んで気を迷わせるのではなく、お前は自分の思ったように自分の選んだ道を歩むのだ。お前にはかつての俺のように血や名、そして国といった数多のしがらみに囚われるのではなく、大空に舞う鳥のように美しく、そして楽しそうに羽ばたいていけ。今のお前にはこのような難しいことは分からぬであろうがいずれ先ほどお前に言った言葉の真意が分かるときが来るであろう・・・。)

 

 

そして志郎はふと空を見上げ、

 

 

「『諏訪部志郎』と同じ時代に生まれてくれてありがとう、穂乃果。」

 

と呟いた。

 

 

志郎が見上げる先には、白い鳥が志郎が胸の内で呟いた言葉を表すかのように雲一つない晴天を舞っていた。




いかがでしたでしょうか?


今回はネタがいい感じに浮かんでこなかったので突貫工事で迅速かつ丁寧に仕上げました。穂乃果以上に志郎が目立ちすぎてる感がある気がするかもしれませんが気にしないでください!!(気にするべき)


そしてなんと今作のUAが6000を突破しましたのでここで感謝させていただきます!皆さん、いつもこの『若虎と女神たちの物語』を読んでいただき、誠にありがとうございます!

そしてこれからも応援していただけると幸いです!



それでは次回もまたお楽しみください!!

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