ラブライブ! 若虎と女神たちの物語   作:截流

67 / 75
どうも、左京大夫です。

今日はにこちゃんの誕生日という事で、にこちゃんの誕生日記念の番外編となります!!今回登場するのはにこと志郎の二人だけ、果たしてこの二人はどのような物語を見せるのだろうか・・・。



※番外編の時系列は本編とは関係ありません。


番外編 笑顔の魔法使いと猛勇の若虎

「悪いわねえ、買い物に付き合ってもらっちゃって。」

 

「いや、別に俺は特に何か用事があるってわけじゃなかったし、この程度の荷物は軽いもんさ。」

 

太陽が西に傾きだした昼と夕方の境い目の時間に、二人歩いていたのは志郎とにこだった。にこは買い物帰りなのか、両手に買ったものが大量に入っているのであろうレジ袋を持っており、志郎は米の袋を抱えていた。

 

「ほんと、まさか福引でお米が当たったのはいいけど重くて動けなかったところにあんたが来てくれて助かったわ。」

 

志郎が抱えていた米の袋はにこが福引で手に入れた物らしい。いくら妹弟の世話をこなして少したくましくなっているとはいえ、一袋10キロの米を3つ持つというのは彼女の体格や腕力を見る限り、無理なものであった。そんなわけでどうしたものかと途方に暮れていたところに偶然志郎が通りかかって現在に至るというわけだ。

 

 

「ねえ、あんたが力持ちなのは知ってるし、頼んだあたしが言うのもなんだけどそんなに持ってて重くないの?」

 

にこが志郎に聞くと、

 

「ああ、確かにこれは重いな。」

 

志郎はそう答えた。普通の高校生に比べると驚異的ともいえる身体能力を持つ志郎でも、30キロの荷物を持つのは一苦労なようだ。

 

「そうよね。じゃあちょっとそこの公園で休憩しましょ。」

 

「そうだな、そうしてもらえるとありがたい。」

 

そう言って二人は公園に立ち寄った。

 

 

 

 

「ほら、これ飲みなさい。手伝ってくれてるお礼よ。」

 

にこが自販機で買ってきたジュースを志郎に差し出した。

 

「ああ、すまんな。それいくらだ?」

 

と志郎はにこにお金を払うためにポケットから財布を出そうとすると、

 

「別に要らないわよそんなもの。せっかくのおごりなんだからありがたく受け取っておきなさいよ。」

 

とにこが志郎の顔にジュースを押し付けた。

 

「相変わらずプライドが高いな、あんたは。」

 

志郎がジュースを受け取りながら皮肉っぽく笑って言うと、

 

「意地を張りすぎて命を捨てたあんたには言われたかないわね。」

 

にこもまた笑ってそう言い返した。

 

「そう言われては返す言葉もないな。」

 

志郎は苦笑いした。

 

「別に馬鹿にして言ったつもりはないわよ。私はあんたの『前』の生き様っていうの?結構嫌いじゃないわよ。自分の誇りを最後まで貫いたってのは尊敬できるところね。」

 

にこがそう言うと、

 

「いやいや、そんな褒められたもんじゃないさ。俺はただ現実を認められなくて悪あがきしていたに過ぎなかっただけだよ。いくら意地を貫き通しても全てを失くしてしまっては意味がないからな。」

 

と志郎が返すが、

 

「でもいいんじゃない?そのおかげでこの時代に生まれ変わって、大銀河宇宙ナンバーワンアイドルであるにこ達μ'sに出会えたんだから儲けもんでしょ!」

 

とにこが笑って言った。

 

「おいおい、俺はμ'sが結成した時からいたんだぞ?寧ろあんたの方にあいつらと出会ったことを感謝してほしいもんだな。まあ、俺じゃなくて幸雄にだけどな。」

 

「ふん!嫌よ、あいつ何考えてるのか分かんないから下手なことしようものなら希並みに厄介なことになりそうじゃない!いや、寧ろあんたと同じくあたし達より長く生きてる分だけあって希以上にめんどくさくなりそうじゃない!」

 

「ははは!伊達にあいつは天下人を2度にわたっておちょくってたわけじゃないからな!!にこが言いたいことも分からんでもないな。」

 

にこが幸雄の顔を思い浮かべながら苦々しそうに言うと、志郎は大笑いした。

 

「そういえばにこはあの時幸雄に一人のスクールアイドルとして動き出さないかと勧誘されてたらしいけど、結局それに関してはどう思っているんだ?」

 

「あんた、それどこで聞いたのよ・・・。まあ、大方察しはつくけど。」

 

「幸雄本人から聞いた。」

 

「やっぱりね。まあ、魅力的だとは思ったわよ。あいつのこと自体は希からたまに話を聞いていたし、あの時部室で二人っきりで話しててあいつがかなりのやり手だっていうのは大体察することは出来たわ。でもね、あいつにも言ったけどあたしは好きな事だからこそ誰かの手を借りて道を歩むんじゃなくて、自分の手で切り開いて行きたいって思ったからこそあいつの勧誘を断ったのよ。」

 

にこが自信満々な様子でその時を思い出しながら幸雄に話した心情を志郎に語った。

 

「やっぱあんたのそういうポジティブなプライドの高さは尊敬するよ。ほんとに。」

 

志郎は同じ境遇を経験していた絵里に対して敬意を抱いていたように、同じように誇りを胸に抱いて前に進んで言ったにこに対して尊敬の念を抱いていた。

 

「でもほんとの事を言わせてもらうとあいつの誘いに乗るのも悪くはなかったんじゃないかなーとも思ったりもしたのよね。」

 

「そうなのか?」

 

「ええ、μ'sのメンバーとして活動しながらあんた達の事も見てきたけど、あんたもなかなかの敏腕マネージャーっぷりを発揮してるけど、あいつもそれ以上にすごいとこ見せてくれてるしね。誰も考えもしないようなことを思いついてそれを実現させたりとかね。」

 

「ああ、そりゃああいつはそれほど頭の切れる男だからな!」

 

「だからあいつのそんなところを見てたら、あの時断ったけど勿体ないことしたかもなって思ったもん。」

 

「ほう。」

 

「でもね、それでもあたしたちがバラバラになった時に、幸雄が自分が嫌われ者になるかもしれないリスクを負ったり、あんたが無茶しすぎてぶっ倒れるぐらいまでして繋ぎとめてくれたμ'sってグループがあたしは大好きだし、それを守ってくれたあんた達には感謝してもしきれないのよ?」

 

にこはウインクをしながら志郎に言うと、

 

「部長さんにそう言ってもらえたなら、あの時は天目山の頃以来の全力を出して正解だったな。」

 

「ほんっと、あん時のあんたは本当に化け物かと思ったわよ。」

 

「伊達に戦国武将をやってきたわけではないからな。」

 

志郎がそう言うと、二人とも笑い出した。

 

 

 

 

「あ、いけない!もうこんな時間じゃない!!そろそろ帰らないとこころ達が心配しちゃうわね。志郎、悪いけどもう少し付き合ってもらうわよ!!」

 

公園の時計を見たにこは慌てて立ち上がって歩き出した。

 

「了解。ジュースも貰ったことだし給料分の働きはせんとだな。」

 

志郎も米の袋を抱えてにこの後を追って走った。

 

しばらく歩いていると、

 

「お姉さま~!!」

 

「お姉ちゃ~ん!!」

 

とにこの妹であるこころとここあ、そして虎太郎が前から歩いてきた。

 

「ちょっとあんた達!なんでこんなとこにいるのよ?」

 

「だってお姉ちゃんが帰ってくるのが遅いってこころが心配してたんだもん。あたしは別に平気だって言ったのにさ。」

 

「ここあこそお姉さまの事心配してたくせに!あら?お姉さま、そちらの方は確か・・・。」

 

「μ'sのお手伝いをしてくれてる諏訪部志郎さんよ。」

 

「ああ!お姉さまたちのマネージャーさんですね!でもどうしてここに?」

 

こころが首をかしげて志郎にたずねると、

 

「君たちのお姉さんが福引でたくさんお米を当ててね。俺はそれを運ぶのを手伝ってたんだ。」

 

と志郎は笑顔で答えた。

 

「まあ、そうなんですね!お姉さまのためにありがとうございます!!」

 

こころは志郎の言葉を聞いて、ぺこりとお辞儀をしてお礼を言った。

 

 

 

 

そして、にこの家までの帰り道を歩いてる人の数は5人に増えて賑やかなものになっていた。

 

「しかしいい妹弟に恵まれたもんだな・・・。少し羨ましいな。」

 

志郎がにこの前を歩くこころ、ここあ、虎太郎の3人を見てしみじみと呟いた。

 

「あんたには兄弟はいないの?」

 

とにこが聞くと、

 

「ああ、『今』はいないな。」

 

と志郎は答えた。

 

「その口ぶりだと『昔』はいたって感じね。そういえばお兄さんがいたんだっけ?」

 

「ああ、義信兄上に、信親兄上、俺が子供のころに死んでしまったけど信之という兄もいた。義信兄上は父上と対立して死んだが、信親兄上にはよく相談相手になってもらったもんだ。姉には梅という姉がいたが夫と引き離された後すぐに亡くなってしまった。」

 

「・・・弟とか妹は?」

 

「下には盛信、信貞、信清という弟たちと妹には松と菊がいた。」

 

「その人たちはどうなったの?」

 

「盛信は織田の武田征伐の際に高遠城という城に籠って玉砕、信貞は俺が死んだ後に自害したらしい。松は八王子に逃がしたが婚約者であった織田信忠とは結ばれなかった・・・。菊は上杉景勝のもとに嫁いでいたおかげで助かり、信清もその縁を頼って上杉家に逃げ延びたそうだ。・・・全く、弟を二人も死なせて、妹は家の都合で思い人と結ばれることができなかったりと、振り返ってみれば俺はろくでもない兄だったものだな・・・。」

 

志郎がそう言ってしんみりとした表情になると、にこは志郎にデコピンをお見舞いした。

 

「な、何をするんだ!」

 

と志郎が驚くと、

 

「ふん、今さら昔の事をうじうじ言ってんじゃないわよ!そりゃあ、あんたの『昔』の弟さんや妹さんのほとんどがろくでもない最期を迎えたのは事実だけど、少なくともその人たちはあんたを兄貴として尊敬していたからこそ自分から命を捨てるような真似をしたんだし、家の都合で思い人と結ばれなくなっても何の不満も言わなかったんじゃないの!?あんたのその態度はあんたの弟や妹たちへの侮辱だと思いなさい!!」

 

とにこは志郎に対して言い放った。

 

「・・・!確かにその通りかもしれないな。不快な思いをさせてしまってすまないな。」

 

「分かればいいのよ。あんたはそうやってうじうじしたら変な方向に向かってくんだからしっかりしなさい!」

 

「ははは。やっぱりあんたはいい姉であり、良い先輩だな。」

 

志郎がそういうと、

 

「当ー然でしょ!もっとこのにこにーを尊敬してくれていいのよ!!」

 

と胸をふんぞり返らせた。

 

「それについては考えさせてもらうよ。」

 

「ぬぁんでよぉ!!」

 

 

こうして、その日、7月21日の夕陽もまた暮れていく。

 

にこはこの翌日に、μ'sのメンバーや志郎と幸雄のコンビにバカ騒ぎしながら祝われることはまだ知らなかった。




いかがでしたでしょうか?


にこちゃんはプライドが高く、一人きりになってでも自分の信じた道を切り開こうとするところが志郎と重なって感じられます。あと、家族想いなのもそっくりな気がしますね。

ただ、違いを挙げるとするならば、その覚悟がポジティブなものであるか、ネガティブなものであるかの違いだけだとも考えています。

作中のにこと志郎のセリフに違和感を感じる人がいると思いますが、これらの誕生日記念の番外編は本編よりある程度先を進んだ時間軸になっているので、ある程度更新されたころに読み返すと違和感はなくなっていくと思います。また、セリフからのちの展開を予測してみるのもありだと思います。(筆が遅いことを棚に上げてくスタイル)

というか次の穂乃果ちゃんの誕生日は8月3日だから…、あれ?これひょっとしたら次も番外編になるんじゃないか…!?



今回はたまたま両方の自分の作品が書きあがっていたという事で、両方とも更新させていただきました。これからも『若虎と女神たちの物語』と『Aqoursの戦国太平記』を何とぞよろしくお願いします!

そしてにこちゃん、誕生日おめでとう!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。