今回はいよいよμ'sが志郎たちの秘密に迫る第一歩が刻まれる―――
それではどうぞお楽しみください。
志郎がにこたちの協力を無事に得て学校へ戻るために疾走している頃、音ノ木坂学院では様々な場所で生徒たちがそれぞれの営みに励んでいた。中庭や空き教室で友人たちと談笑する者や図書館で勉強や読書に打ち込む者、そして校庭や体育館などで部活の練習に身を入れる者・・・。
「―――――。」
弓道場で弓を構え精神を集中させている海未もまた、そんな生徒の1人と言えるだろう。彼女は、アイドル研究部の活動が休止になってからは、スクールアイドルを始める前のように毎日弓道部に顔を出して練習に打ち込んでいた。
「―――――ッ!!」
精神を集中させ始めてから数秒が経ち、海未は矢を放った。放たれた矢はストンと音を立てて的に刺さる。だが、矢は的の中心から5センチほどずれた場所に刺さっていた。
(私たちはただスクールアイドルを始める前の状態に戻っただけのはずなのに、胸の底に何かが引っかかってるような気がします。まるで、あの的の中心からずれた矢のように・・・。)
海未は的に刺さっている自分が放った矢を見ながら心の中でどこか煮え切らない自分の気持ちを呟いていた。
「私たちは、これでいいのでしょうか・・・。」
海未が軽いため息と共にそうひとりごちると、
「園田さん!今大丈夫!?」
と、1人の女子部員が慌てた様子で射場に駆け込んできた。
「はい、大丈夫ですが・・・。どうしたんですか?そんなに慌てて。」
海未は女子部員の慌てた様子に首を傾げながら用件をたずねた。
「それが諏訪部さんって男子生徒が凄い勢いで弓道場まで走って来て『園田さんはいるか!?』って凄い形相で言うもんだから・・・。園田さんは何か心当たりある?」
「いえ、特にそれほど重要な用件はありませんが・・・。志郎がそれほど言うのであれば何かあったのかもしれませんね。」
海未はそう言って弓を片付けて弓道場の入り口に向かおうとすると、
「園田さん!大変大変!!」
そこにもう一人の女子部員が駆け込んできた。こちらの方は心なしか顔が青ざめていた。
「どうしたんですか!?」
海未はそんな彼女の顔を見てよほどの事があったのかと思い、食い気味に彼女に何があったのかを聞いた。
「弓道場の入り口で待っていた諏訪部さんが・・・、倒れちゃったんです!!」
「そんな、志郎が!?」
志郎の身体能力の高さや余りあるスタミナとガッツをよく知っている海未は、志郎が倒れたというμ'sのメンバーでは誰もが予想できない出来事に動揺し、志郎の元へ走っていった――――。
―――その一方で時は少し遡り、志郎がまだ学校に戻るために疾走していた頃、放課後の音楽室で真姫がただ一人ピアノを演奏していた。
「ふぅ・・・。」
一曲弾き終わった後、真姫は一つため息をついた。もちろんその表情は晴れやかなものとは言えない。
(変な気分ね。音楽室でひとりぼっちで演奏なんてμ'sに入る前なら何回もやってたのに、なんかモヤモヤする・・・。)
真姫もまた、海未と同じようにどこか煮え切らない気持ちを持て余していた。
「・・・考えていてもしょうがないわよね。」
そう言って彼女がピアノの鍵盤の蓋を下ろそうとしたその時――――
「んん~、やっぱいつ聞いても真姫のピアノはいいもんだねぇ~・・・。」
いつの間にか音楽室の扉の前で幸雄が軽く拍手をしながら立っていたのだ。
「いつの間に入って来たのよ。」
真姫は顔をしかめながら幸雄にたずねる。
「ついさっきね。まあ気付かないのも無理はねえよ、ピアノを弾いてる時のお前さんは誰よりも真剣なんだからさ。」
「ヴェエ!?と、当然でしょ。小さい頃からやってたんだから!で、何しに来たのよ。」
真姫は幸雄のお世辞に動揺するがなんとか冷静に切り返し、幸雄がこの場所にやってきた理由を聞く。
「何しに来たって?ちょっと真姫と2人っきりで話がしたくってな。」
幸雄はそう言うとピアノから一番近い場所にある机の上に腰かけた。
「なによ話って?」
「別に込み入ったものじゃねえよ。ただちょっとこれからの俺たちの運命を分ける話を・・・ね。」
「それってだいぶ込み入った話だと思うんだけど・・・。」
幸雄の言葉を聞いた真姫は面倒なことになったと言わんばかりに嫌そうな表情をしていたが、
「なあ、お前さんはμ'sを復活させたいか?」
という幸雄の言葉を聞いた瞬間、驚いたように目を見開いた。
「そ、それは私だって出来るならもう一度・・・ううん、もっとあの9人で歌って踊りたいわよ。でも、ことりは留学で、穂乃果はスクールアイドルを辞めた・・・。それなのにμ'sを復活させるなんて本当にできるの?」
真姫は期待に胸をときめかせると同時に、それは叶う事のない夢物語であるとも分かっていたため、半信半疑な様子だったが、
「本当にできるかどうかなんて問題にもならねえよ。ただ俺たちはお前らがうじうじ悩んでる間にそれを成し遂げる事ができるようにコソコソ動き回ってるだけだからな!」
幸雄はそう言って笑っていた。言葉ではどこか投げやりな雰囲気こそあったが、その眼と表情には朝に語り合った志郎と同じように諦めの感情はなく、ただそれを成し遂げてみせるという強い意志の炎が燃えていた。
「とにかく、志郎の持つ不撓不屈の意志と俺さまの知略が合わされば不可能なことはほとんどないと言ってもいいだろう。だが、この計画を成し遂げるためにはまず穂乃果とことり以外の7人の意志が必要なんだ。μ'sを復活させたいという意志がな・・・。それが無ければこの計画は成り立たねえんだ。」
幸雄はそう言って拳を強く握ると、
「なあ真姫、俺たちに協力してくれるか?いや、μ'sを復活させたいという意志はあるか!?あるなら是非とも協力してほしい・・・!」
今まで彼女たちの前で見せたことのない真剣な表情で真姫に協力を頼んだ。
「ねえ、その前に1つ聞いてもいいかしら・・・。」
「なんだ?」
「あんたの目的は一体なんなの?」
「!?」
幸雄は予想もしなかった真姫の問いに言葉のない驚きを見せた。
「何が目的かって?変な事を聞くんだな。俺の今の目的は志郎と同じμ'sの復活、ただそれだけさ。」
幸雄はいつものように軽く笑いながらそう言ってみせるが、
「嘘。本当は何か別の目的があるんじゃないの?」
と真姫は意志を曲げる様子はなかった。流石の幸雄も今の彼女に対して誤魔化しは効かないと考えたのか、いつもの笑顔をやめて真顔で彼女の真意を問いただすことにした。
「なぜ今この時にそんな話をする?」
「正直に言わせてもらうと、あんたの事を信用してないからよ。他のみんなは信用してるみたいだけどね。」
「やれやれ。俺は人から疑われることには慣れてるはずだったが、流石にここまで打ち解け合った仲間にそう言われちゃあ少し傷つくね。」
幸雄は少しずつ余裕を取り戻しているのか表情を和らげ、芝居がかった様子で真姫に語り掛ける。
「そんな事を言うからには何かしらの根拠はあるんだろうな?」
幸雄は垂れ目の三白眼で真姫を鋭く睨みながら少しばかり低めの声で彼女にたずねる。
「根拠ならあるわ。それはあんたのその目よ。」
真姫は幸雄の眼力に気圧されることなく、堂々と幸雄の目を指差しながら幸雄の問いに対する答えを言い放った。
「俺の目・・・か。どんな根拠があるか聞こうじゃねえか。」
幸雄は真姫の言葉に口元を綻ばせ、彼女に続けるように言った。
「私が病院の院長の娘だって事は知ってるわよね?」
「ああ。」
「私は病院を継ぐことになってるから小さい頃から父の仕事を見るために病院に行くことが多かったの。それに加えてたくさんの大人が集まる場所にも連れてって貰ったこともあるから、私はいろんな人を見る機会に恵まれていたのよね。」
「ほう。」
「そう、色々な人を見て来たわ。老若男女問わず誠実な人、傲慢な人、不器用だけど愛嬌のあった人、何か腹に一物を抱えた人、突出したもののない平凡な人・・・。本当に色々な人を見て来たわ。」
「へえ、お前さん人付き合いは上手くないくせに意外なところもあるもんだね。」
「別に人付き合いの上手さなんて関係ないわよ。」
途中で幸雄に茶々を入れられるも、真姫は気にする素振りも見せずに語り続ける。
「気が付けば私は人の目を見るようになっていたの。目は口程に物を言うって言うでしょ?どんな言葉で取り繕っても目は嘘をつくことはできない。だから私はいつもまず人の目を見るようにしてるの。」
「なるほど、確かにお前さんの言う通りだわ。俺も人の目を見てそいつの人間性を予測し、それと交流することで知った性格を合わせてそいつとどう接するべきかを判断している。うんうん、ほんの少しの乱れもない正論だわ。」
幸雄は彼女の言葉に合点がいったのか笑顔で何度もうなずいてみせた。だが・・・、
「・・・じゃあ、お前は俺の目に何を見た?西木野真姫よ。」
一転、幸雄は冷徹な表情かつ、自慢の三白眼で睨み付けながらさらに問いかける。
「何を見たか、それは・・・。」
真姫はそんな幸雄の表情に一瞬だけ気圧されるも呼吸を整え、言葉を紡ぎ出す。
「
真姫から出た言葉は『無』、ただそれだけであった。
「おいおい、そりゃねえだろ真姫さんよ。無って、何も見えなかったってそりゃ何の根拠にもなりゃしねえだろうがよ。」
幸雄は拍子抜けしたかのように笑いながら真姫の答えを嘲った。
「そういう意味じゃないわ。あんたみたいに腹に一物抱えてて胡散臭い人は何人も見て来たけどどんな奴でもその目には感情があった。でもあんたの目にはそんな感情さえも宿ってないような気さえするくらい淡白な目をしてるのよね。透き通っているって言うより白く澱んでいるような感じね・・・。なんて言うか、とても高校生がするような目じゃないって思った。」
「・・・。」
真姫の言葉に幸雄の顔から再び表情が消え、口をつぐむ。
「そしてここ数ヶ月の間あんたと過ごしてて思ったけど、あんたは口振り、身振り、手振りの全てが胡散臭いのよね。胡散臭さで言えば希も大概だけど、あんたは希なんか比べ物にならないくらい胡散臭いのよ。」
「・・・。」
幸雄は真姫の自身に対するあまりにも辛辣な指摘を浴びせられながらも表情をピクリと変えることなく耳を傾け続けていた。寧ろその表情には余裕さえ見え隠れしていた。
真姫はそんな不気味な幸雄の様子に少し怖気づくも、さらに言葉を絞り出す。
「そして極めつけはあの一連の出来事でのあんたの言動ね。なんていうか、あの時のあんたは他人事だった。あの一件はあんたを含めたあたしたち11人全員の問題だったって言うのにあんたはまるで自分が当事者じゃないみたいな雰囲気をしてた・・・。」
真姫の言葉は途中から震えていた。それは本心を出さず仲間たちの心を欺いていた幸雄へのやるせない思いか、それともいくら胡散臭くとも仲間である幸雄に疑いを向けた自分自身への怒りか、幸雄の炯眼を以てしてもそれを知ることはできない。
「志郎が私たちに真正面から全力で向き合っていた・・・。それに対してあんたは何事に対しても俯瞰的で、まるでジオラマを見下ろしているようにしか見えなかった。だから私にはあんたの心が分からない・・・。あんたが何をしたくて、何を目的にあたし達の為にそこまでしようとするのかが分からないのよ・・・。」
「・・・。」
真姫の目にはうっすらと涙が見えていた。それでも幸雄の表情は動かなかった。
「ま、あんたにはあたしの言葉さえ些末なものにしか聞こえないんでしょうけどね。ただ、私はあんたの事が知りたいだけ。ただそれを教えてくれればそれでいいわ。」
真姫はふぅ、と息を吐くと幸雄に背を向けながらそう言った。
すると―――
「ふふっ、ふっふっふっふ・・・。はっはっはっはっはっはっはっはははははは・・・!!!」
突如幸雄が大声で笑い始めた。
「ヴェエ!?」
突然すぎる幸雄の行動に真姫は驚くあまり尻もちをついてしまった。
「いや~ははは・・・。実に辛辣にして良い考察だったぜ
幸雄はそんな真姫を気に掛けることなく楽しげな雰囲気で語りだす。
「いやはや、まさかこの俺の炯眼を以てしてもお前さんの疑いの眼差しにも気づかずその上ここまで俺の核心に近いところを突かれるとは俺も衰えたものよ・・・。希にばかりを警戒しておったがとんだ計算違いだったわ。はははは・・・!」
(小娘・・・?衰えた・・・?幸雄は何を言ってるの・・・?)
突如豹変した幸雄の様子に困惑する真姫だったが、ふと喉元に登ってきた言葉をゆっくり口にする。
「ねえ、
その言葉が真姫の口から言い放たれた後、元々何の音も奏でられてない音楽室が更にしんと静まり返った。
幸雄はその言葉を耳にした瞬間動きを止め、目をカッと見開いて真姫を凝視していたが、まるで「その言葉を待っていた」と言わんばかりに顔をほころばせた。
「ふふふ、何者かって言われても俺は
「待ってたってどういう事よ。」
動揺するどころか、むしろ嬉しそうな様子の幸雄に真姫は戸惑いを隠せず、訝しみながら彼の真意を問い詰める。
「なぁに。此度の俺たちの策はメンバー全員が心の奥底から協力し結束しなければ実らないものでな、だが今はこんな有り様だろ?それに志郎には言っておらなんだがそろそろ音ノ木坂に何の所縁もない俺たち2人がここまでするのに疑念を持つ者も出るだろうと俺は考えていた。」
「それが私ってこと?」
「そう。お前さんのように俺たちに対する疑念を持つ者がいるとなると策を円滑に進めにくいし、団結にも綻びが出てしまう・・・。だから俺たちにはそれをどうにかしなくてはならないという課題があったのだが、俺たちには上手く行けばそれを覆すことのできる
「はぁ、つまり私はあんたが自分たちの秘密を明かしやすくするように誘導されてたって事?なんか癪に障るわね。」
真姫は幸雄の狙いに気が付き、深くため息をつくと同時にどうあがいても幸雄を出し抜けそうにない事を実感した。
「流石は真姫、理解が早くて助かるぜ。まあもっとも俺とサシで話をしてる時点でお前さんはもう俺の術中にはまりこんでたわけなんだがな。」
「それで、その秘密って何よ?志郎も同じ秘密を持ってるみたいだけどあんたが勝手にバラしちゃっていいの?」
「志郎は時期尚早だと渋ってたが俺は今が潮時だと思ってるし、2人の間でいつかお前ら9人にバラすことは既に取り決め済みだ。ま、あいつもそこまで頭が固いわけでもないから言い訳はいくらでも立つさ。」
幸雄はニヤリと笑いながら真姫にそう語った。
「それに俺たちが語らずとも、希はもうなんとなく勘づいてると思うしな。」
「希?希はあんた達の秘密を知ってるの?」
「さあね。いくら希でも俺たち2人には何かがある程度の事しか気づいてないだろ。もし全貌がバレてたら合宿の段階でとっくに尋問されてるよ。」
「・・・。」
「さってと!長々しい前置きはこれまでにして、いよいよカミングアウトと行きましょうかね!!」
「・・・!」
幸雄はまるで演劇の役者のように大仰で芝居がかった振る舞いをしながら真姫の前に立つと、彼女は緊迫した表情で息を呑む。
「実は俺たちは―――」
「大変よ真姫!!!」
幸雄が語り始めようとしたその瞬間、絵里が慌てた様子で音楽室の扉を開けた。
「な!?どうしたんだお前ら?」
「どうしたのよ絵里も希もそんなに慌てて・・・。」
幸雄と真姫は思わぬ来客に驚きつつも何事もなかったかのような冷静さで絵里とその後ろにいる希に用件をたずねた。
「幸雄くんもいるんやね、よかった。」
「ええ、ちょうどいいわ。探す手間が省けてよかった・・・。」
「おいおい、探す手間が省けたってなんだよ。そんなに大事な話なのか?」
「志郎が・・・、倒れたのよ・・・!」
『何(ですって)!?』
絵里の口から放たれたその衝撃の事実に幸雄と真姫は愕然とした。
「弓道場の入り口で倒れたみたいなのよね・・・。」
「幸い海未ちゃんたちが保健室に運んでくれたみたいやけどね。」
絵里と希は何とか呼吸を整えると状況を2人に教えた。
「それで保健室に行く道すがらに私たちを探してたってわけね。」
「そういうことや。」
「あの志郎が倒れるなんてよっぽどの事かもしれないからね。本当は穂乃果も探してたんだけどもうとっくに帰っちゃってたみたいなのよね・・・。」
「・・・。」
絵里たち3人の会話を幸雄は呆然としていた様子で聞いていた。
「じゃあとりあえず保健室に行くしかないわね。」
「ええ。希、2人とも行くわよ。」
真姫の言葉を受けて絵里は、希と真姫たちに付いて来るように促して保健室に向かって行った。真姫も希の後に続いて音楽室から出ようとしたが、立ち止まっている幸雄の方を見て、
「どうしたのよ幸雄、保健室に行かな―――」
と話しかけようとしたが、幸雄の顔を見て言葉を失った。
幸雄の表情が歪んでいた。不安、怒り、焦り、その他諸々の感情が入り混じった顔をしていた。真姫は今まで幸雄のそんな表情を今まで見たことが無かった。そもそもそんな表情を見せるような男だと彼女は思っていた。
圧倒的な運動神経と体力を持つ志郎が倒れるほどに何か無茶をしていたという事実を聞いたこともそうだが、大きな動揺を見せる事の無かった幸雄が狼狽えている事実に直面した真姫は、今がどれだけ切迫している状況なのかを否が応でも実感せざるを得なかった。
「志郎め・・・!確かにお前の働きにこの計画の成否が懸かっているとは言ったが、ぶっ倒れるまで無茶しろとは言ってねえだろ・・・!!ここで穂乃果の二の舞演じてどうすんだ馬鹿、お前がここで脱落したら全部おじゃんになるんだぞ、それを分かってんのかあのクソ脳筋が・・・!!」
幸雄は小声で志郎が倒れるほどに無茶をしたことに対する怨嗟の言葉を呟いていた。だが、志郎を口汚くののしるその言葉の陰には志郎を案ずる気持ちが見え隠れしていた。
「幸雄・・・。そんなに志郎が倒れたことが不安なの?」
「・・・!なんだ真姫、まだ行ってなかったのか。」
真姫に声を掛けられた幸雄は我に返り、務めて冷静に彼女の言葉に応える。
「不安じゃねえと言ったら嘘になるが、まああいつの猪突猛進ぶりには
幸雄は深呼吸を一つすると、いつも通りの笑顔で真姫に語った。
「・・・ちょっと待って、長年って言わなかった?あんた達、この学校で始めて知り合ったんじゃないの?」
真姫は今の幸雄の言葉に感じた違和感をそのまま幸雄にぶつけた。幸雄はその言葉を聞いてまたにやりと口角を上げる。
「そうだ。お前さんが今感じた違和感こそが俺の・・・、俺たちの正体に通じるカギだ。」
「あんた達は一体何者なの?」
真姫は、幸雄に詰問する前に投げかけた言葉をもう一度彼に投げかける。
「まあそう焦りなさんな、話だけなら歩きながらでもできる。あいつらにバラす前にお前さんにだけちょこっとだけ教えてやるよ。」
幸雄は不敵に笑いながらそう言って、真姫に手を差し伸べた。
いかがでしたでしょうか?
ようやく本編で幸雄の知略を発揮させることができた気がします・・・。ですがこれもまだ序の口、幸雄の本気を見せるのはもう少し先になると思いますw
いよいよ今年も残りわずかとなりましたね。そしてこの物語も1期編はクライマックスに差し掛かっています!一応『若虎と女神たちの物語』の今年の更新は次回でラストとなる予定です!
感想くださーーーーい!!!(切実)
それでは次回もまたお楽しみください!!