今回もオリジナル回です。少し長めです。
「いい加減アニメ本編に入れよ!!」と言いたい方もおりますでしょうがもう少し待ってください!今回は重要な話なんです!!
志郎と幸雄がああしてこうしてアッー♂なんてことにはなりませんが、二人の関係が深まる話です。
ではどうぞご覧ください!
土曜日の12時過ぎ頃の秋葉原駅から二人の男子高校生が出てきた。片方はとても上機嫌でもう片方は特にこれといって浮かれた様子は見せてない。
「かぁ~!ここが電機街とサブカルの聖地秋葉原かあ!!すげえ人が多いな。お、外国人もいるな!」
「そりゃあ、世界的にも有名だからな。」
「志郎はえらくリアクションが薄くねえか?」
「そりゃあ近場に住んでるからな。暇なときは散歩がてらに行くからな。」
「はぁー!都内に住んでるやつはいいねえ!田舎もんじゃあこんなとこには滅多に来れんからな。」
「おまえだってもう都内に住んでるじゃねえか。」
「そう!だからこれからは目いっぱい楽しめるぜ!ありがとう親父!今年の父の日は盛大に祝ってやるからな!!」
「今年の、ねえ。」
志郎は苦笑しながら、幸雄と歩を進める。歩いていくと駅前の大きなビルに差し掛かった。
「ほう、これが噂に聞くUTX学院だな?すげえとこだよな、群馬じゃぜってえ見れないぜこんなもん。」
「ああ、話を聞くにこのUTX学院が出来たことで音ノ木坂学院の生徒がさらに減るようになっていったらしいな。」
「まあ、こんなもんが近くに建っちまったらそりゃこっちに人が流れるよな。自然の摂理だわ。」
そう言って志郎たちはUTX学院を後にした。
「いやあ、アキバはいいねえ。何度来ても飽きませんわこいつぁ!」
「楽しんでもらえたようで何よりだよ。」
「何言ってんだよ!むしろここに来て楽しめない奴は絶対人生の何割かを損してるぜきっと。」
「はは、よっぽど気に入ったんだな・・・ってうん?」
「ん?どしたよ志郎。なんか面白いもんでも見っけた?」
「いや、あれ。あの路地裏見ろよ・・・。」
「んん?うげ、やなもん見た。」
志郎と幸雄の目の先の路地裏にはいったい何がいるのかというと・・・。
「あの・・・、私たちこれから用事があるので・・・。」
「ええ~?そんなつれない事言わないでよ~。俺たちと遊ぼうぜ?」
「そうそう、用事なんてほっといてさ、いいだろ?」
「かよちんのいう通りです!凛たちはこれから用事があるんです!だからそこをどいてください!」
「へえ、凛ちゃんとかよちんって言うんだ~。二人ともかわいいじゃん。」
「かよちんを気安くかよちんって呼ばないで欲しいにゃ!」
「にゃってwこいつ今語尾ににゃってつけてたぞwイタいな~w」
「やめろよ笑ってやるなよw凛ちゃんが怒っちゃうだろw」
路地裏では〝かよちん″と呼ばれている丸みがかった髪をした気弱そうな少女、小泉花陽と〝凛ちゃん″と呼ばれている活発そうなショートヘアの少女、星空凛が二人の大学生くらいの男に絡まれていたのだ
「はあ、ベタなナンパだねぇ。都会って物騒だねえ。」
「いやいや、あんなの滅多にいないからな。さりげない都会に対する風評被害はやめろ。むしろ田舎の方がああやって粋がってる奴がいそうなんだが・・・。」
「あっ志郎てめえ、風評被害やめろって言いつつ田舎に対しての偏見丸出しじゃねえか!だいたいうちの地元でもそんな奴はいねえっての!」
「じゃあ、お互いさまってところだな。ちょっと行ってくる。」
「助けにか?気持ちはわかるがむやみに突っ込むのは・・・って、ああ行っちまった。」
路地裏にて・・・。
「もう行こう、かよちん。こんな人たちに構う必要なんてないにゃ!」
「おいおい、ずいぶんな言い方じゃないの凛ちゃん。」
花陽の手を引いてその場から離れようとした凛の腕を男の片割れが捕まえた。
「凛ちゃんに乱暴しないで!」
そういって彼女は凛の腕を掴んだ男を突き飛ばした。気弱そうな彼女は友達を守るために勇気を振り絞って抵抗する意思を明確に示した。
「いってえ・・・!てめえ、女だからって優しくしてやったらつけあがりやがって・・・!」
「これはちょっとお仕置きが必要みたいだな。」
そういうともう一人の男が花陽を殴ろうと拳を振り上げた。
「かよちん逃げて!!」
凛の悲痛な叫びも空しく男の拳が花陽に向かって飛んだ。花陽は恐怖のあまりか、せめて少しでも身を守ろうとしたのか身を縮めた。
「ひうっ・・・!・・・あれ?」
花陽に拳が当たることはなかった。なぜなら・・・。
「女の子の顔を殴ろうだなんて感心しないな。」
志郎が拳を受け止めていたからだ。
「なんだよてめえ。てめえには関係ないだろ。」
「義を見てせざるは勇無きなりって言葉を知らんのか。あんたらみたいなのに絡まれてる奴を見たら助けようとするのが人ってもんだろ。」
「はあ?ガキが粋がってんじゃねえぞ!!」
「お前も痛い目を見たいらしいな・・・!」
「来いよ。遠慮はいらんぞ。」
「ハイハーイ!御三方ともそこまでー!盛り上がってるところ申し訳ありませんがストップしてくださーい!」
なんと志郎と男たちの間に割って入ったのは幸雄だった。
「幸雄!?どういうつもりだ。俺はこんな奴らには引けはとらんぞ。」
「落ち着け志郎、よく考えてみろよ。こんなとこでケンカ騒ぎなんて起こしたら停学待ったなしだぜ?俺たちは研究生なんだ。あまり悪目立ちはしない方がいい。」
「しかし・・・。」
「まあ、ここは俺に任せてくれ。」
幸雄はそう志郎に告げて男たちのもとに歩いて行った。
「いやあ、うちの友人が迷惑をおかけしました!ナンパを邪魔されたら怒りたくもなりますよねえ。ですから・・・。」
幸雄がそう言ってポケットを漁って取り出したのは二枚の一万円札だった。
「お詫びといってはなんですが、こいつでその子たちを見逃してあげてください。悪くない金額だと思いますよ?ね?」
そう言って幸雄は男たちのズボンのポケットにお札を一枚づつねじ込んだ。
「はっ、物分かりがいいじゃねえかよ。」
「いいぜ、見逃してやるよ。行こうぜ。」
思いがけない収入を手に入れた男たちは上機嫌で去っていった。
「ふう、行ったか。危ないところだったね君たち。」
「あ、あの・・・、助けてくださってありがとうございました!」
「いやあ、俺は別に礼を言われるようなことはしとらんよ。礼ならこっちの俺の友人に言ってやってよ。」
「か、かよちんを守ってくれてありがとうございました!でも私たちのためにお兄さんのお金が・・・。」
「そうだ幸雄。いくらこの子らを守るためとはいえ、二万円もの大金を・・・。」
「ににににに、二万円!??そんな大金を・・・!?どうしよう、あっ、これ全然足りませんが・・・。」
「かよちん、いいの!?それ今日発売のA-RISEのCDを買うために貯めてたお金でしょ!?」
「でもお返ししないと・・・!」
「ああ、その必要はないよ。」
「へ?」
「で、でも・・・。」
幸雄の一言に凛と花陽は困惑するが、それを気にも留めずに幸雄は話を続ける。
「どういうことだ?」
「いやいや、俺があんなドぐされ野郎どもに二万円もの大金なんて払うかよ。ありゃニセもんさ。」
「ニセもん・・・?お前ニセ札を持ってたのか!」
「流石にそんな犯罪に片足突っ込むような真似するわけないじゃん!ありゃ子供銀行券さ。」
「こ、子供銀行券?」
「あのおもちゃのお札かにゃ?」
「そうそう、ショートのお嬢さんご明察!奴らにはおもちゃをくれてやったわけさ。」
「よくばれなかったな・・・。」
「まあ、数字が書いてある部分しか見せてないからね。頭の弱いアホしか引っかからないと思ってたが、見事にかかってくれたみたいだな。」
「失敗したらどうするつもりだったんだよ・・・。」
「それはその時考えるさ。」
「ええ・・・。」
「まあ、そんなわけで君たちはそんな気を使う必要はないってこと。だからその金は自分のために使いな。」
「はい・・・!ありがとうございます!あ、私小泉花陽って言います・・・。」
「星空凛です!」
「俺は武藤幸雄だ。こちらこそよろしくな。」
「諏訪部志郎だ。よろしく。」
「あっ、かよちんそろそろ行かないとCD売り切れちゃうよ?」
「えっ?あっ!すいません!私たちは用事があるのでこれで失礼します!」
「今度はあんなのに捕まるなよー。」
「何とか一件落着だな。ていうか子供銀行券なんてよく持っていたな。」
「ああ、カツアゲ対策でダミーの財布と一緒に持ち歩いていてな・・・。」
「用意周到な奴め・・・。」
「志郎の方こそ後先考えずに突っ込むじゃねえか。」
「うぐう・・・。気を付けるようにしてるんだが、すまんな。」
「いやいや、果断に富むのもあんたのいいところだ。本当に昔と変わらないな。」
「ん?ちょっと待て、昔だと?お前とはこの前初めて会ったばかりじゃないか。」
「そうだな。『幸雄』と『志郎』の初対面はあの時だな。しかしあんた、いや・・・、あなたなら気づくと思っていたのですがまさか今の今まで気づかれていなかったとは、私もなかなかうまく馴染めたということでしょうな。」
「この口ぶり・・・、貴様何者だ・・・?」
先ほどまでの飄々とした態度から一変して慇懃な口ぶりで話し始めた幸雄に志郎はとある確信を抱きながらも問いかける。
「幸雄、お前ももしかして俺と・・・いや、わしと『同じ』なのか?」
幸雄は志郎の問いにニヤリと笑い、そして跪いて答えた。
「お久しゅうございます、『四郎』さま。いや・・・、武田四郎勝頼様。それがしは真田安房守昌幸でございます。四百と数十年ぶりにお目にかかることができ、恐悦至極にございます・・・!」
「昌幸・・・。久しぶりだな・・・。まさかお主もこの時代に生まれ変わっていたとは・・・!わしもうれしいぞ・・・!」
武藤幸雄、その正体はかつて武田信玄と勝頼の二代に仕え、武田家の滅亡後は織田、北条、徳川、上杉、豊臣と次々と主家を変え、変幻自在の策を以て徳川の大軍を二度にわたって翻弄し徳川家康に恐れられた『表裏比興の者』、真田昌幸が現代に再び生まれ変わった姿だったのだ。
「勝頼様。積もる話もたくさんありますがひとまずここを早急に離れましょう。」
「なぜだ?」
「先ほどの連中もそろそろ金が偽物だったと気づく頃でしょう。さすれば我らを血眼になって探しているはず・・・。とにかく話は場所を変えてからにしましょう。」
「なるほど、確かにそうだな。」
そして志郎と幸雄は路地裏から立ち去って行った。
それからしばらく経って公園にて・・・。
「しかしお前はすごいな昌幸。織田、上杉、徳川、北条に囲まれながら生き延びただけでなく大名になったのだからな。しかもあの家康を二度にわたってコテンパンにしたというのは痛快だな!」
「ははは・・・。それがしもあそこまで行けたのは本当に天に助けられたものですから。一歩間違えば即滅亡だったわけございますからな。」
「天の助けか。わしもあの時お主のいう通り岩櫃に行っておれば変わっていたかもしれんのにな。いや、過ぎたことを言ってもしょうがないのだがな。」
そう言って勝頼は苦笑した。
「勝頼様・・・。」
「すまんな、せっかくの再開の時に暗い話をしてしまったな。」
「いえいえ。お気になさる必要は・・・。」
「そうだ昌幸、お主少し口調が堅苦しいな。せっかく今は同い年の学友なのだから少し口調を軽くしてみたらどうだ。」
「はっ・・・、そうおっしゃるならお言葉に甘えさせてもらいます。」
「うむ。そういえばお主はこの時代を満喫しておるか?まあ、聞くまでもないと思うが・・・。」
「ええ、今の時代は面白うございますな。ただ人が昔よりだいぶ腑抜けたのは玉にキズですがな。」
「ははは。確かにそれは言えてるな。まあ、わしらは戦乱に生きていたのだ。泰平の世のど真ん中に生きている者にそう思ってしまうのも無理はない。」
「勝頼様はどうですかな?」
「わしか。わしはそうだな・・・。わしは何より武田と諏訪の相容れぬ血の呪縛から解放されただけで十分心が晴れやかになったな。なんせもう父を超えることを強いられることなどないのだからな。おっと、また暗い話をしてしまったな。」
「それだけ勝頼様は重きを背負ってきたということでしょう。」
「そうか。それより今の話をしよう。音ノ木坂学院についてだが、どう思う?」
「学校自体は悪くはありませんな。校舎、設備、立地・・・、どれも問題ないしかし・・・。」
「良くも悪くも普通すぎる・・・か。」
「左様です。今の音ノ木には決定打が足りない。共学化も悪くないがあれもその場しのぎにすぎないでしょう。」
「そうだろうな。どうしたものか・・・。」
「いた!あいつらだ!!」
「見つけたぞ!!よくもおもちゃで騙してくれやがったなコルァ!」
なんと先ほどのナンパ男たちがやってきた。まさに怒髪天を衝くといった様子だったが志郎と幸雄は動揺は見せず、むしろその態度は余裕に満ちていた。
それもそのはずである。彼らは今こそただの高校生だが、中身は数多くの戦を経験した乱世の英雄なのだから二人のナンパ男がいくら凄もうがそれは子供の癇癪にしか見えなかった。
「どうする?悪目立ちは避けた方がいいと言ったのはお主だぞ?」
「まあ、この場には俺たち4人しかいませんし平気でしょう。しかし・・・。」
「わかってる。短期決戦だろう?」
「流石は『志郎』、物分かりが早くて助かる。」
「てめえらさっきからなにごちゃごちゃ話してんだよ!死ねやオラア!!!」
「あまりにも単純すぎて欠伸が出るわい。」
ナンパ男の一人は幸雄に殴りかかるが、幸雄はそれをあっさりとかわし、腕を掴んで見事な一本背負いを決めた。
「ほう、『幸雄』もなかなかやるな。」
「よそ見してんじゃねえぞマヌケェ!!」
もう一人のナンパ男が志郎に回し蹴りを入れるが
「お前の蹴りなんぞ見なくても防げるわ。」
そう言って足を掴み、もう片方の足に足払いをかけて倒れたところを腹のど真ん中に肘の一撃をぶち込んだ。
「まあこんなもんか。」
二人のナンパ男は二人の一撃をくらいあっさり気絶してしまった。
「全く今どきの者は弱いもんだな。」
「いや、流石にエルボードロップはえげつなさすぎでしょう・・・。」
物足りない様子の志郎とそれをドン引きしながらたしなめる幸雄は何事もなかったかのように公園を去った。
志郎と幸雄。武田勝頼と真田昌幸の生まれ変わりである二人の男は、これから音ノ木坂学院でどのように過ごしていくのか、そして二人は廃校を阻止するためにどのような動きを見せるのか・・・。それはまだ誰も知らない。
いかがでしたでしょうか?
なんと武藤くんも転生した戦国武将だったのです!しかもその正体は今年の大河ドラマの主人公(の父親)の真田昌幸です!!
えっ?知ってた?
とにかくここで前座は終わりです!いよいよ次回からアニメ本編に入ります!
果断に富む勇敢な志郎と知力に富む策士の幸雄がμ'sのメンバーとどのように関わっていくのかに注目です!(というか上手くμ'sのメンバーを描写できるか不安ですが・・・。)
とにかく次回もお楽しみください!!