2ヶ月ほど期間が開いてしまいましたが、ようやく最新話更新です!!
それではどうぞお楽しみください!!
「ではとりあえず~!にっこにっこにー!!みんな~グラスは持ったかな~!?」
音ノ木坂学院の存続が決まった翌日、μ'sが所属するアイドル研究部の部室では学校が存続したことを祝うパーティーが開かれていた。黒板には色とりどりに『学校存続』と大きく書かれ、部室は華やかに飾り付けられ、それぞれお菓子やジュース、サンドイッチやからあげといったみんなでつまめる軽いごちそうまで持ち寄るほど本格的なものであった。
そして部長のにこはジュースを片手にみんなの前に立って語り始める。
「学校の存続が決まったって事で部長のにこに―から一言、あいさつさせていただきたいと思いまーす!!」
『おおー!!』
「やれやれ。ずいぶんと盛り上がってらっしゃるなぁ、部長殿は。」
「まあいいじゃないか、学校の存続がめでたいのは事実なんだからな。」
「まあ、それもそうなんだがねえ・・・。」
盛り上がるにこ、穂乃果、凛、花陽の4人を尻目に幸雄が皮肉るように笑っているのを志郎がたしなめた。幸雄も彼の言葉に頷きはしたものの、窓際に沈んだ表情で座っている海未とことりを横目でちらりと見た。
「思えばこのμ'sが結成され、私が部長に選ばれた時からどれくらいの月日が流れたのであろうか・・・!たった一人のアイドル研究部で耐えに耐えぬき、今こうしてメンバーの前で思いを語ることが」
『かんぱーい!!!』
「ちょっと待ちなさーい!!人の挨拶ぐらいちゃんと聞きなさいよ!!」
挨拶を途中で打ち切られたにこがみんなに抗議するも、
「そりゃあんたの挨拶が長すぎっからだよ、おっさんじゃあるまいし。」
「うっさいわね!!合宿の時みたいなことにならないようにしっかり考えたんだからね!?」
「まあまあ、そう怒るなにこ。にこの万感の思いはちゃんと理解してるから・・・。」
「ふんっ!」
といった具合に幸雄と志郎に慰められていた。
「うわあ~!お腹すいた~!!」
小さなテーブルに広げられたお菓子やご馳走を前に穂乃果は目を輝かせ、
「にこちゃん、早くしないと無くなるよ!」
とサンドイッチを頬張りながら言うも、
「卑しいわねぇ。」
とにこに呆れられていた。
「みんな~!ご飯炊けたよー!!」
今度はいつの間に持ち込んできたのか炊飯ジャーで炊かれていたたっぷりの炊き立てご飯を花陽がみんなに勧めた。
「何故に米!?てかいつの間に持ってきた!?ちくしょうツッコミが追い付かねえ!!」
「はっはっは!花陽らしいな。どれ、ひとつ山盛りによそってくれ。」
幸雄は花陽へのツッコミが追い付かずに頭を抱え、それを尻目に志郎は笑いながら花陽に山盛りご飯を頼み、
「はい!どんどん食べてくださいね!」
と、花陽も志郎の申し出ににこやかに応えてお椀にご飯を山盛りによそって志郎に渡した。
「ほっとした様子ね、えりちも。」
みんなが盛り上がっている一方で、希が絵里に語り掛けた。
「まあね。肩の荷が下りたって言うか・・・。」
「μ's、やってよかったでしょ?」
「どうかしらね。正直私が入らなくても結果は同じだった気もするけど・・・。」
絵里は希の問いにはぐらかすように答え、はしゃいでる穂乃果たちの方を見ながらそう言った。
「いや、そんな事はないと思うぞ。ここにいる9人は集うべくして集ったんだ、誰か1人でも欠けてたらこの結果には至らなかっただろうよ。」
喧騒から抜けて来た志郎が絵里にそう言った。
「そうそう、志郎の言う通りだぜ。一部のメンバー勧誘に関して裏で暗躍したもんだが俺の目に狂いは無かったぜ?」
幸雄も自分の目を指差しながら誇らしげに語った。
「ゆっきーくんの目は確かやからね。それにμ'sは9人、それ以上でも以下でもダメやってカードも言うてるよ。」
希は幸雄の目敏さに加え、9人であるのはいつも愛用しているカードの導きでもあることを絵里に教えた。
「そうかな?」
「こうやって廃校も無くなったんだ・・・!気を取り直して頑張ろう!」
「おお、その意気だ穂乃果!俺たちの夢と野望はまだまだこれからなんだからな!」
「ん?」
志郎と共に決意を新たにする穂乃果だったが・・・。
「ことり・・・。」
「でも、今は・・・。」
穂乃果たちが盛り上がっている一方で、海未はことりに留学の事を話すべきだと言外に促していたが、今の雰囲気を壊したくないことりはまだ踏ん切りがつかない様子であった。
「・・・。」
海未は、これ以上引き延ばすのはみんなの為にならないと意を決して立ち上がった。
「ごめんなさい。みんなにちょっと話があるんです。」
『ん?』
今まで輪に加わっていなかった海未が遂に口を開いたことで穂乃果たちメンバーの視線は一斉に海未の元に集まった。
「聞いてる?」
「ううん。」
絵里と希も何のことか分からない様子だった。
(言うのか・・・。さて、どうなる・・・!?)
(しびれを切らしたな海未め。ここで言うのは悪手な気もするが、全員が集まってるって意味じゃある意味ここが最大のチャンスだって踏むのも無理はねえか・・・。)
事情を知っている志郎と幸雄は表情を強張らせ、成り行きを見守ろうとしている。
「実は・・・。突然ことりが留学することになりました。」
海未の口からことりの留学が告げられた時、部室は時が止まったかのように数秒ばかり沈黙した。
「2週間後に日本を発ちます。」
「・・・。」
海未が努めて平静に事実を告げる中、ことりは俯くことしかできなかった。
「なに?」
「嘘・・・。」
「ちょっと、どう言う事?」
志郎と幸雄に海未と、当事者であることり以外のメンバーは突然の事に戸惑いを隠せない様子だった。
「前から服飾の勉強がしたいって思ってて、そしたらお母さんの知り合いの学校の人が来てみないかって・・・。」
そんな中、ことりはぽつぽつとどうして留学することになったのかをみんなに説明した。
「ごめんね、もっと早く話そうと思ってたんだけど・・・。」
「学園祭のライブでまとまっている時にいうのはよくないと、ことりは気を遣っていたのです。」
「それで最近・・・。」
ことりと海未の話を聞いて、事情を知らないメンバーの中で最も早くことりの異変に気付いていた希は合点がいったように呟いた。
「行ったきり、戻ってこないのね?」
「高校を卒業するまでは多分・・・。」
ことりは絵里の問いに無言で頷くと、そう弱々しく答えた。
「・・・どうして、言ってくれなかったの?」
穂乃果はゆっくり立ち上がると、ことりのもとに歩み寄りながら彼女に詰問するように語り掛ける。
「だから、学園祭があったから・・・。」
「海未ちゃんは知ってたんだ。」
ことりの弁解をする海未に対して、穂乃果は今まで聞いたことのないような冷たい声でそう言った。
「それは・・・。」
海未はそんな穂乃果に対して反論することができず、俯いてしまった。
「穂乃果・・・。」
「やめとけ志郎、こいつは俺たちが思ってる以上にかなりデリケートな問題だ。下手にしゃしゃり出れば余計に拗れるぞ。」
志郎が仲裁に入ろうとするも、幸雄に色々な意味で部外者である自分たちが口を出すべきではないと諫められた。そして志郎もそれを分かっていたので、悔しげな表情でその場に座り込んだ。
「どうして言ってくれなかったの?ライブがあったからって言うのは分かるよ!?でも私と海未ちゃんとことりちゃんはずっと・・・!」
しゃがみ込んでことりの手を握り、穂乃果は何故留学の事を自分に教えてくれなかったのかをことりに問い詰めた。
「穂乃果。」
「ことりちゃんの気持ちも分かってあげないと・・・。」
「分かんないよ!!だっていなくなっちゃうんだよ!?ずっと一緒だったのに、離れ離れになっちゃうんだよ!?なのに・・・!」
ことりの気持ちを汲むように絵里と希が穂乃果に促すも、それは逆効果でしかなく、穂乃果は激昂するように自分の気持ちをさらけ出した。
「・・・何度も言おうとしたよ?」
「えっ・・・!?」
「でも、穂乃果ちゃんライブやるのに夢中で、ラブライブに夢中で、だからライブが終わったらすぐに言おうと思ってた・・・!相談に乗ってもらおうと思ってた・・・!」
ことりも穂乃果のように激しいものではなかったが、自分の想いをさらけ出した。
「でも、あんなことになって・・・。聞いてほしかったよ穂乃果ちゃんには!一番に相談したかった!だって穂乃果ちゃんは、初めてできた友達だよ!?ずっとそばにいた友達だよ!?」
ことりの口から出る言葉が感情的になっていくにつれて彼女の目からはぽろぽろと涙が零れ落ちていった。そんなことりの強い悲しみと、わずかばかりの穂乃果にその気持ちに気付いてもらえなかったことに対する憤りのこもった表情を見た穂乃果は言葉を失っていた。
「そんなの・・・。そんなの、当たり前だよ!!」
ことりは叫ぶようにそう言うと、穂乃果を押しのけて部室から出て行ってしまった。
「あっ!ことりちゃん!!」
穂乃果はことりを追おうとするも、走り出すことができなかった。
「ずっと、行くか迷ってたみたいです。いえ、寧ろ行きたがって無かったようにも見えました。ずっと穂乃果を気にしてて、穂乃果に相談したらなんて言うかそればかり・・・。黙っているつもりはなかったんです、本当にライブが終わったらすぐ相談するつもりでいたんです。分かってあげてください・・・。」
海未は穂乃果に対してことりが今日までどれだけ想いを抱え込んでいたことを伝えるが、穂乃果はただ茫然とそれを聞くことしかできなかった。
「くそっ・・・!どうしてこんな事に・・・。」
「落ち着けって志郎、今さらどうのこうの言ってもどうにもならねえってば。それに、さっきも言ったが俺たちが出しゃばっても意味がねえって・・・。」
結局その後、気まずい状況になってパーティーをお開きにして解散したあとに、志郎と幸雄は公園でベンチに座りながらいつものように反省会のようなことをしていた。
「それは分かっている!!これは不幸に不幸が重なった上での穂乃果とことりのすれ違いだって事はな・・・。だが、あの時俺が血気に逸る穂乃果を諫めることが出来さえすればこんな事にはならなかったはずだ!!」
志郎はやりきれない感情を地面を殴ることで発散していた。
「そうなんだがなあ・・・。でも遅かれ早かれこの事態は避けられなかったと思うぜ?さっきのあいつらの言い分を聞くにはよ。」
「確かに、多少時期を早めたところで結局は穂乃果に黙っていたことは事実だからな・・・。」
「問題はこの後よ。この後どうするかがカギだぜ?やる事は山積みだ。」
幸雄は志郎にこれから直面する新たな問題を提起する。
「ああ。どうやってあの2人を和解させるか、そしてことりがいなくなった後のμ'sはどう動くべきなのか・・・。他にもまだまだあるだろうな。」
志郎は飲み終わったジュースの空き缶のごみ箱に投げ捨てながら、これから自分たちが何をすべきかについて思いを馳せた。
(それにしても、穂乃果の落ち込みようは尋常じゃなかったな・・・。俺には幼馴染がいなかったから分からないが、大きすぎる悲しみであることには変わりあるまい。)
それと同時に志郎は深く落ち込んでいた穂乃果の顔を思い浮かべていた。
「なんとか昨日のように立ち直れたらいいな。」
「そうだねえ・・・。」
志郎と幸雄は、穂乃果が早く立ち直れることを願いながら夕暮れ空を見上げた。
「・・・。」
その夜、穂乃果は暗い部屋の中、A-RISEの動画を再生しっぱなしな状態で床に座り込みながらことりに送ったメールを見ていた。そこには、
『私、全然気付いてなかった・・・。私が夢中すぎてみんなの気持ちとか全然みえなくて、だからことりちゃん、ごめんね。』
と書かれていた。
「謝ったって、もう・・・。」
そう呟いた穂乃果はケータイを置いて、A-RISEの動画に目を向けた。動画には今まで自分が参考にし、いつかはこんな風になりたいと憧れさえも抱いたA-RISEのパフォーマンスが流れていた。
(すごいなあ・・・。追いつけないよ、こんなの・・・。)
穂乃果は今までに何回も見ていたA-RISEの動画を見て自分の力量不足を実感していた。
(そういえば、学園祭の前に見た夢の中にいたお侍さんと私、よく考えてみたらすごくそっくりだ・・・。確か、名前は武田勝頼って言ったっけ・・・。)
穂乃果は学園祭前夜に見た夢の事を思い出した。勉強が不得意な穂乃果が勝頼の名前を出せたのは、学校を休んでいた時に、ふと夢の中に出てきた人物たちの口から出た名前を片っ端から調べていたからだ。
(勝頼さんは家来の人たちが止めるのを聞かずに無理やり戦いを挑んだせいでたくさんの家来を失くして、私は学園祭のライブとラブライブに夢中になりすぎて、目の前しか見えなくなって、ことりちゃんの気持ちに気付けなかったせいでこんなことになっちゃった・・・。なんだろう、変に親近感がわいてきちゃうな・・・。)
長篠の戦いで失策を犯した勝頼と、ライブで失敗しラブライブへの出場を辞退する羽目になったうえ、大事な幼馴染みであることりと仲違いしてしまった自分を重ねてみると、妙に親近感が湧いてきてしまったのかため息をついた。
(私、何やってたんだろう・・・。)
そう呟くと共に、穂乃果の中には彼女の明るい性格からは程遠い薄暗い感情が次々と芽生え始めていた。
そんなゆっくりと湧き上がってくる穂乃果の暗い感情のように、さらなる騒動の影が少しづつ、また少しずつ足音も立てずに11人に迫っている事はまだ誰も知らなかった・・・。
いかがでしたでしょうか?
今回もまーた中盤からどシリアスになりました。まあアニメの12話がシリアスだからしょうがありませんね!
いよいよ次回は遂に12話クライマックス!あのシーンがやって来ます・・・!そして志郎と幸雄がいることでさらにシリアス成分をつぎ込んで次回は一体どうなってしまうのか!?是非ともその目で確かめてください!!
感想があったらどしどし書いてくださると、本っっっ当に幸いです!!
それでは次回もまたお楽しみください!!