ラブライブ! 若虎と女神たちの物語   作:截流

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どうも、截流です。

今回からは合宿編です!!


それではどうぞお楽しみください!!


29話 合宿へ行こう!

志郎と幸雄が他の転生者たちと出会ったオフ会があった日からまたしばらく経った8月の中頃、今日もμ'sの練習が始まる…はずだったのだが・・・。

 

「あっつい゛~・・・。」

 

「そうだね~・・・。」

 

学校の屋上に激しく照り付ける日光を浴びたにこと穂乃果が今にも干上がりそうな声でぼやいていた。

 

「ていうか馬鹿じゃないの!?この暑さの中で練習とか!」

 

「そんな事言ってないで早くレッスンするわよ!」

 

「は、はい・・・。」

 

暑さに耐えかねてにこが文句を言い出したが、絵里はそれに構わず練習を始めるように促す。すると花陽は絵里の厳しい口調に驚いてしまったのか凛の後ろに隠れてしまった。

 

「あ・・・。花陽、これからは先輩も後輩もないんだから。ね?」

 

「・・・はい。」

 

それを見た絵里が花陽に優しく語り掛けると、花陽は安心したのか凛の後ろから顔を出して返事をした。

 

(やはりどうにも学年の壁があるっぽいな志郎。)

 

(ああ、これからスムーズにやってくにはもう少しフランクな関係になって円滑なコミュニケーションを取れるようになっておきたいんだが、希先輩はともかく絵里先輩は今までの印象がまだ残ってるせいか一年生組、特に花陽がまだ慣れてないようだな。どうしたものか・・・。)

 

志郎と幸雄はその様子を見て二人で対策を練るために話していた。

 

 

「そうだ!合宿行こうよ!!あ~、何でこんないい事早く思いつかなかったんだろ~!」

 

「はあ?何を急に言い出すのよ。」

 

いきなり穂乃果が合宿に行こうという提案を出したが、にこはその突拍子の無い提案に呆れた様子だった。

 

「合宿かぁ・・・。面白そうにゃ!」

 

「そうやね!こう連日炎天下で練習だと体もきついし。」

 

「でもどこに?」

 

凛と希は乗り気な様子だった。そして花陽がどこに行くのかをたずねると、

 

「海だよ!!夏だもの!」

 

と穂乃果は答えるが、

 

「費用はどうするのですか?」

 

「海未の言う通りだ。合宿に行くとなればまず宿泊費を確保しなければいかんだろ。」

 

と海未と志郎に予算はどこから出すのかを聞かれると、

 

「それは・・・。」

 

と言って考え込んだが、何かを思いついたのかことりの腕を引っ張って皆から離れ、小声でことりにたずねた。

 

「ことりちゃん、バイト代いつ入るの?」

 

「ええ~!?」

 

そんな二人の様子を見た海未が呆れたように

 

「ことりをあてにするつもりだったんですか?」

 

と言ったが、

 

「違うよ!ちょっと借りるだけだよ!」

 

と穂乃果は反論した。

 

「それちょっとだけじゃ済まさない奴じゃないか・・・。人としてどうなんだそれ。」

 

「どっからどう見てもろくでなしの発想なんだよなぁ・・・。」

 

それを聞いた志郎と幸雄はドン引きしていた。

 

「そうだ!真姫ちゃんちなら別荘とかあるんじゃない!?」

 

穂乃果はまたアイデアを思いついたのか真姫に別荘があるかを聞いた。

 

「あるけど・・・。」

 

と真姫がそっけなく答えると、

 

「ほんと!?真姫ちゃんお願~い!!」

 

と穂乃果は目にも止まらぬ速さで真姫に飛びつき、自分の頬を真姫の頬に擦り付けほおずりしながらおねだりしだした。

 

「ちょっと待って!どうしてそうなるのよ!!」

 

「そうよ。いきなり押し掛けるわけにもいかないわ。」

 

真姫と絵里の反対にあった穂乃果は、

 

「そう、だよね・・・。ははは・・・。」

 

と涙目で残念そうに笑った。そして真姫が周りを見渡してみると他のメンバーも少し期待している表情だったのでため息をついて、

 

「仕方ないわねぇ。聞いてみるわ。」

 

と言った。

 

「ほんと!?やったぁ!!」

 

すると穂乃果は全身で喜びを表現するかのように、両手を挙げてくるくると回った。

 

(真姫って実はちょろい?)

 

(そりゃ今さらだぜ志郎。ろくでもない男に引っかからなきゃいいんだがな・・・。)

 

志郎と幸雄がその様子を見て、また2人でひそひそと話していた。

 

「そうだ、これを機にやってしまった方がいいかもね。」

 

絵里は何かを思い出したかのようにそう言った。

 

『?』

 

凛と花陽がそれを聞いて不思議そうな顔をすると、絵里は2人の顔を見て何も言わずに微笑んだ。

 

(さ~て、生徒会長どのは何をする気なのかねえ・・・。)

 

幸雄もまた、絵里が何かしようとしてるのを察して口元をニヤリとさせた。

 

 

 

 

 

 

 

そして合宿当日、μ'sのメンバーと志郎と幸雄は集合場所の東京駅にやって来た。

 

「さて。みんな揃ったことだし、合宿に行く前にみんなにやって欲しいことがあるんだけどいいかしら。」

 

メンバーが全員集合すると、絵里がそれを確認してからそう言った。

 

「?」

 

それに対して穂乃果たちは頭に?マークを浮かべたような表情をしている。

 

「やって欲しい事ってなんですか?」

 

志郎がみんなを代表するように絵里にたずねると絵里は、

 

「ええ、実は『先輩禁止』をしようと思ってるの。」

 

と言った。すると穂乃果は

 

「えええ!?先輩・・・禁止!?」

 

と驚いた。普通の高校生ならば、先輩からいきなりそう言われて驚くのも無理のない話である。

 

「先輩禁止か・・・。しかし突然だな。」

 

「ああ。絵里先輩、それは一体どういう事なんですか?」

 

志郎が絵里に理由をたずねると、

 

「前からちょっと気になってたの。先輩後輩はもちろん大事だけど、踊ってる時にそう言うの気にしちゃだめだからね。」

 

と絵里は説明した。

 

「確かにそうですね。私も3年生に合わせてしまう所がありますし・・・。」

 

海未が絵里の言葉に同意すると、

 

「そんな気遣い全く感じないんだけど。」

 

とにこが不満げな顔で海未の言葉にかみつく。

 

「それはにこ先輩が上級生って感じがしないからにゃ。」

 

「上級生じゃなきゃ何なのよ!」

 

にこが凛の言葉に反発すると、凛は少し考え込んでから、

 

「う~ん、後輩?」

 

と言うと、

 

「ていうか子ども?」

 

「マスコットかと思ってたけど。」

 

「くそっ!先に全部言われちまった!」

 

穂乃果と希はそれに便乗し、幸雄は悔しそうに指を鳴らした。

 

「どういう扱いよ!というか幸雄も悪ノリしてんじゃないわよ!!」

 

とそれに対してにこはキレのあるツッコミを入れる。

 

「じゃあ早速今から始めるわよ、穂乃果。」

 

「あ、はい!いいと思います!え・・・え・・・絵里ちゃん!!」

 

始まると同時に指名された穂乃果は少し戸惑った様子を見せたが、思い切って呼んでみて絵里の反応を伺ったが、

 

「うん!」

 

と絵里がにこやかに返事をすると、安堵のため息をついた。

 

「はぁ~、なんか緊張~!」

 

「じゃあ凛も~!!」

 

次は凛が名乗り出た。

 

「ことり・・・ちゃん?」

 

凛は緊張をほぐすために深呼吸をしてからことりを呼んだ。

 

「はい、よろしくね凛ちゃん。真姫ちゃんも!」

 

ことりは凛に対していつものように笑顔で応え、こんどは真姫を指名した。

 

「え?」

 

まさかここで指名を受けるとは思ってなかった真姫が周りを見回すとこの前のように、

 

『じ~~~。』

 

とみんなから期待の眼差しを受けてることに気付いた。

 

「へいへい、早く早くぅ。」

 

しかも志郎と幸雄も加わっており、幸雄に至ってはニヤニヤ笑いながら急かす有り様であった。

 

「べ、別にわざわざ呼んだりするもんじゃないでしょ!?」

 

真姫は少し顔を赤くしてそう言った。

 

「それと諏訪部くんと武藤くんにも協力してもらいたいんだけどいいかしら。」

 

絵里が志郎と幸雄にそう言うと、

 

「まあ俺たちもアイドル研究部の部員だしな。これに乗らない手は無いよな、絵里。」

 

「そんじゃあ絵里たちも俺らの事はフレンドリーに呼んでくれよな!」

 

と2人は快諾した。

 

「ええ、よろしくね。志郎に幸雄!」

 

絵里もまた2人に応えて呼び捨てで呼ぶ。

 

「志郎くんと幸雄くんすごい!私緊張したのによくあっさり呼べたね!」

 

穂乃果は志郎と幸雄の『先輩禁止』に対する適応の早さに舌を巻いた。

 

「そうか?」

 

「それほどでもねえさ。」

 

志郎と幸雄は軽く返事をするが、

 

((そりゃあ俺たちは少なくともお前らの三倍は長く生きてるからなあ・・・。))

 

と内心では苦笑いしながらそう思っていた。

 

「では改めて、これから合宿に出発します。部長の矢澤さんから一言。」

 

「え゛ぇ!?にこ・・・??」

 

にこはまさか自分に矛先が向くとは思っていなかったのか素っ頓狂な声を出して驚いた。

 

『じ~~~・・・。』

 

全員からの期待がこもった眼差しを受けたにこは覚悟を決めたのか、みんなで作っていた円の中に入る。

 

「しゅ・・・しゅ・・・しゅっぱ~~~~つ!!」

 

「・・・それだけ?」

 

「考えてなかったのよ!!」

 

あまりにも捻りの無い言葉だったので穂乃果が唖然としながら言うも、にこは抗議した。

 

「まあ、何はともあれ出発しよう!」

 

『おお~!!』

 

それを仕切り直すかのように、にこに代わって志郎が音頭を取った。

 

「ちょっと!あたしの役取らないでよ~!!」

 

 

 

 

 

 

―――そして真姫の別荘にて。

 

『おおおおお・・・!』

 

「すごいよ真姫ちゃん!!」

 

「さっすがお金持ちにゃ~!!」

 

真姫の別荘を見た志郎たちはその威容に度肝を抜かれ、穂乃果と凛は真姫に賞賛の言葉を贈る。

 

「そう?普通でしょ?」

 

真姫がさも当然であるかのように答えると、

 

「ぐぬぬぬぬぬぬ・・・!」

 

と、にこが悔しそうに唸っていた。

 

「なんでにこは唸ってるんだ?」

 

「さあな。まあ、大方嫉妬の類だろ。」

 

志郎と幸雄は、別荘に入っていく穂乃果たちに着いて行きながら、後ろで唸っているにこの方を向きながら話していた。

 

 

 

『おおおお~!!』

 

「ここと~った!」

 

穂乃果と海未、凛、そして志郎の4人は別荘の2階の寝室に来ており、穂乃果は我先にとベッドに飛び込み、その柔らかさを堪能するかのように転がりまわる。

 

「おお!ふっかふか~!!それに広ーい!!」

 

そして穂乃果に続くように凛もベッドに陣取った。

 

「凛はこっち~!海未先輩と志郎先輩も、すごく気持ちいいよ!・・・あ。」

 

「やり直しですね。」

 

「だな。まあ、ゆっくり慣らしていけばいいさ。」

 

凛が思わず海未と志郎を先輩呼びしたが、2人は優しく微笑みながら言うと、

 

「うん!海未ちゃん、志郎くん、穂乃果ちゃん。」

 

と穂乃果を含めた3人を先輩無しで呼んだ。

 

「・・・ぐ~。」

 

それに呼応するかのように穂乃果はいびきをかいた。

 

「寝てる!?」

 

「そんなあやとりと射撃だけが取り柄の落ちこぼれじゃあるまいし・・・。まあしばらくほっとけ。」

 

海未は穂乃果の寝るまでの早さに驚き、志郎は苦笑いしながら呆れていた。

 

 

 

一方1階では・・・。

 

「料理人!?」

 

「そんなに驚くこと?」

 

にこが驚きの声を上げると、真姫はそれに対して首を傾げていた。

 

「驚くよぉ。そんな人が家にいるなんて、すごいよね?」

 

ことりがその場にいた幸雄とにこに同意を求めた。

 

「まあ少なくとも世間一般の家庭にゃあ、料理人なんていねえわな。」

 

(金持ちって奴ぁ、どうも感覚がズレてんだなぁ・・・。)

 

と幸雄は心の奥で乾いた笑いを浮かべながら皮肉っぽく、ことりの言葉に答える。

 

「ぐっ。へ、へえ~、真姫ちゃんちもそうだったんだぁ。にこんちも専属の料理人がいるのよね~!だからにこぉ、全然料理なんかやったことなくってぇ・・・。」

 

にこは真姫に対抗するかのようにふんぞり返り、ドヤ顔で答えていたが、

 

(嘘乙。声と顔でバレバレだっちゅうに・・・。)

 

声が若干震えてるのと、少し目が泳いでるのを見て、幸雄はそれを一発で嘘だと見破ったがあえて黙っていた。

 

「へ~!にこ先輩もそうだったなんて・・・!」

 

ことりはにこの言葉を本当だと思ってるのかそう言うが、

 

「にこにーでしょ。にこ先輩じゃなくてにこにー。」

 

にこはことりの言葉を遮るように彼女をたしなめた。

 

「了解、にこにー(笑)。」

 

ことりの代わりに幸雄が返事をすると、

 

「ちょっとあんたはなんで語尾に(笑)付けてるみたいに言うのよ!!」

 

とにこは幸雄に抗議してみせた。

 

 

 

「ここなら練習も出来そうね。」

 

絵里が広いリビングを見回しながらそう言うと、

 

「そうやね。でもせっかくなんやし、外の方がええんやない?」

 

と希は絵里の言葉に答えながら、ふと疑問に思ったことを絵里にたずねた。

 

「海に来たとはいえ、あまり大きな音を出すのも迷惑でしょ?」

 

「もしかして歌の練習もするつもりなのか?」

 

2階から降りてきた志郎が、話を聞いていたのか絵里の言葉に反応した。

 

「もちろん、ラブライブの出場枠が決まるまであと1ヶ月無いんだもの。」

 

絵里は不敵に笑いながら志郎に対してそう返した。

 

「ほう、やる気だな。」

 

「えりち、気合入っとるねえ。ところで花陽ちゃんはどうしてそんな端にいるん?」

 

希は絵里の様子を見て嬉しそうに笑うと、後ろを向いて、階段の側にある観葉植物の陰に隠れている花陽に声を掛けた。

 

「なんか広いと落ち着かなくって・・・。」

 

花陽は希にそう言うと、恥ずかしそうに身を潜めた。

 

「ははは・・・。花陽らしいな。」

 

志郎はそんな花陽の様子を微笑ましそうに見て言った。

 

 

 

 

そして、荷物の片づけを済ませて練習着に着替えた後・・・。

 

「これが合宿での練習メニューになります!」

 

海未はそう言って窓に貼り付けた練習メニューが書かれた紙を指さした。

 

「おお~。」

 

「すごい・・・。こんなにびっしり・・・。」

 

希とことりは圧倒されるように声を出した。それもそのはず、一日目は遠泳10㎞、ランニング10㎞、腕立て腹筋20セット、精神統一、発声、ダンスレッスン。2日目は遠泳15㎞、ランニング15㎞、腕立て腹筋20セット、発声、ダンスレッスン、精神統一・・・と円グラフ状に書かれていたからだ。

 

「なあ、志郎的にはこれってどうなのさ・・・。」

 

幸雄は顔を引きつらせながら志郎にたずねた。

 

「う~ん。まあ俺なら出来ないことは無いが、他のメンバーはなあ・・・。」

 

と志郎は海未以外のメンバーの顔を見回して言った。

 

「・・・って海は!?」

 

穂乃果が不満げな声で海未にたずねた。

 

「私ですが?」

 

海未はそれに対してきょとんとしながら答えた。

 

「いやこの場合お前さんの事じゃないだろ。」

 

と幸雄がツッコミを入れると同時に、

 

「そうじゃなくて『海』だよ!海水浴だよぉ!!」

 

と穂乃果が海を指さしながら言った。

 

「ああ!それなら。」

 

海未は合点がいったのか手を打ち合わせると、笑顔で『遠泳10㎞』の部分を指さした。

 

「遠泳10㎞・・・!?」

 

「そのあとランニング10㎞ぉ・・・!?」

 

それを見た穂乃果とにこはドン引きしていた。

 

「最近、基礎体力をつける練習が減っています。せっかくの合宿ですし、ここでみっちりやっておいた方がいいかと!」

 

海未がそう力説すると、

 

「いやいや、お前さんトライアスロンでもやる気か?」

 

「それは重要だけど、みんな保つかしら・・・。」

 

幸雄はドン引きしながら、絵里は苦笑いしながら海未にそう言うが、

 

「大丈夫です!熱いハートがあれば!!」

 

海未は目を爛々と輝かせながら、どこぞの日本一熱い元テニス選手のような事を言っている。海で遊ぶ気満々だったのか水着を既に着ていた穂乃果、にこ、凛の三バカトリオはげんなりしていた。

 

「やる気スイッチがイタい方向に入ってるわよ。何とかしなさいよ!」

 

「にこ、あれはイタい方向に入ってるんじゃねえ。根元からへし折れてやがるんだ・・・。」

 

幸雄はにこに対して死んだ魚のような目をしながら言った。にこと幸雄の幼馴染に対する辛口評価に苦笑いしていた穂乃果も覚悟を決めたのか、

 

「う、うん。よし、凛ちゃん!」

 

と凛に合図を送った。

 

「分かったにゃ!」

 

凛は穂乃果に対して敬礼をすると、いきなり海未の手を取って明後日の方角に向かって走り出し、

 

「あ!海未ちゃんあそこ~!!」

 

と、何かを見たかのように何もない空の方を指さした。

 

「え?なんですか!?」

 

海未はそれを真に受けたのか真剣にいるはずのない何かを探しだした。すると、

 

「今だ~!!」

 

「行っけ~!!」

 

と、穂乃果とにこが海に向かって走り出した。さらにそれに続くように凛が花陽の手を引きながら、そしてそれに便乗するようにことりも海へと走っていった。

 

「あ、あなた達ちょっとー!!」

 

海未が大声で呼びかけるも、走っていった5人はそのまま走っていってしまった。

 

「まあ、仕方ないわね。」

 

「え?いいんですか絵里先輩?あ。」

 

「禁止、って言ったでしょ?」

 

絵里がいたずらっぽく笑いながら海未の先輩呼びを指摘すると、

 

「すみません。」

 

と海未は申し訳なさそうに口を押さえた。

 

「μ'sはこれまで部活の側面も強かったから、こんな風に遊んで先輩後輩の垣根を取るのも重要なことよ。」

 

と絵里は海未に対して優しく諭すように言った。

 

 

 

「そうそう、絵里の言う通りだぞ海未!!」

 

「ああ、厳しいだけでは人は付いてこないからな!」

 

と横から志郎と幸雄の声がするので、

 

「それはそうですが・・・。」

 

と海未が二人の方に振り向きながら言うと、

 

「!!!???」

 

海未は目の前に映っていた光景に声が出ないほどの衝撃を受けていた。何故なら・・・。

 

 

 

 

「ん?海未は何を驚いてるんだ?」

 

「あ?そりゃあ決まってんだろ。俺たちの肉体美に酔いしれてるんだろ。」

 

 

 

なんといつの間に着替えたのか志郎と幸雄は海パン一丁になっており、ボディービルダーのようなポージングをとっていた。ちなみに志郎はゴーグルを装備しており、片手には木刀、足元にはスイカといういでたちで、幸雄はシュノーケリング用のマスクとシュノーケル(口に着ける筒)、そして足ひれを装備していた。

 

「ふ、2人とも何やってるんですか!!」

 

海未が全力で目を逸らしながら突っ込むと、

 

「決まってるだろ!俺たちもこれから海で遊ぶんだよ!!」

 

「雲一つない晴天!照り付ける灼熱の太陽!白い砂浜!そして青々とサファイヤのように輝く海!!これだけ素晴らしい条件が整ってるというのに、海で遊ばないなんてもったいなさすぎるぞ!!」

 

志郎と幸雄はかつて見たことないようなドヤ顔で答えた。

 

「そ、それは見ればわかります!!ですが何故ポージングなんて取ってるんですか!幸雄のはともかく志郎のはなんか生々しすぎます!!」

 

海未は目をつぶって首を横に全力で振りながら言い返す。

 

「ちょっと海未さん!?志郎に比べて俺の筋肉がショボいのは分からんでもないけど傷つくよ俺さま!!」

 

「ははは、幸雄ももう少し鍛えることだな。」

 

志郎が腹筋をクネクネ動かしながら笑うと、

 

「いやああああ!!なんか破廉恥です!!」

 

と海未は頭を抱えながらそっぽを向いてしゃがみ込んでしまった。

 

「ハラショー・・・。志郎ってけっこう筋肉凄いのね・・・。」

 

絵里は志郎をまじまじと見ながら、

 

「志郎くんってけっこう着痩せする方なんやね。」

 

そして希は興味津々な様子で言うと、

 

「そうだな。着痩せしてるかどうかは分からないが、俺は小学生の頃からかなり鍛えてるからな。」

 

志郎は立派な力こぶを作りながら答えた。

 

「服を着てりゃあ、ただ体格が少しがっしりしてるように見えるだけだが、脱げば見ての通りの細マッチョとゴリマッチョの中間地点の瘦せゴリラだからな。」

 

と、幸雄が付け加える。

 

「幸雄は志郎と比べると身体能力じゃ一歩も二歩も譲るけど、筋肉はそれなりにあるのね。」

 

「俺は志郎と比べたら格落ちもいいとこだが、身体能力自体は平均的な男子高校生よりも若干高いからな。スポーツテストだと総合評価はだいたいBだったぜ。」

 

「それにしても、海に来ただけなのに2人ともはしゃぎすぎじゃない?」

 

真姫が2人の話に割って入ると、

 

「そりゃあ俺は海に来たことが無いからな。」

 

と、幸雄は当然のように言った。

 

「確か幸雄は群馬から来たんですよね。」

 

ようやく目が慣れてきたのか海未が戻って来てそう言った。

 

「おうともよ。」

 

「じゃあ志郎くんはどうしてそんなにテンションが高いん?たしか地元は神田だよね?」

 

今度は希が志郎にたずねた。

 

「ああ。俺は幸雄とは違って海に行ったこと自体はあるんだが、ここの海みたいな綺麗なところは初めてでさ。つい舞い上がってしまったわけさ!!」

 

ともう一度ポージングを取りながら答えた。

 

((まあ、俺たちは中身は内陸育ちだから海を見るとテンションが上がっちゃうんだよね・・・。))

 

と志郎と幸雄は内心では苦笑いしながらそう思っていた。そうやって話していると、

 

 

「お~い!」

 

「絵里ちゃ~ん!海未ちゃ~ん!!」

 

穂乃果と花陽が絵里たちを呼んでいた。花陽はまだ先輩無しで呼ぶのに慣れてないのか、若干声が上ずっているが、精一杯慣れようとしている様子が分かる。

 

「は~い!!」

 

と言って絵里は手を振ると、

 

「さぁ海未、行きましょ!」

 

と海未に手を差し伸べながら言った。

 

「はい!」

 

海未はそう言って差し伸べられた手を取る。

 

 

 

こうして、μ'sと、志郎と幸雄ら11人によるアイドル研究部の合宿が幕を開けた。




いかがでしたでしょうか?

今回は海にやって来たという事で、(中身が内陸出身の)志郎と幸雄にははっちゃけてもらいました。

完全に余談なんですが、志郎の筋肉に関しては『Angel Beats!』の高松くんみたいなのを、そして幸雄のはそれを4分の1くらいにマイルドにしたものを想像していただけると幸いですw

それでは次回もまたお楽しみください!!

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