ラブライブ! 若虎と女神たちの物語   作:截流

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どうも、截流です。

今回は主人公が初めて音ノ木坂学院に行く話です。


完全に私的な話なんですが、ファイナルライブのチケットが両日分当たりました!!!

ライブビューイングのやつですがね!

ライブ当日は地元の映画館で楽しむことにします!!



長々と話をしてしまいましたが、それでは本編をどうぞ!


1話 若虎、音ノ木坂に立つ

武田勝頼改め、諏訪部志郎がこの世に生を受けてから17年が経とうとしている3月の終わりごろ、彼は神田を彷徨っていた。

 

「このあたりのはずなんだがなあ・・・。」

 

彼は地図とにらめっこをしながら目的地までの道のりをゆっくりと進んでいた。

 

「ここを曲がってまっすぐ進めばようやく音ノ木坂学院に着くか・・・。」

 

彼が目指していたのは、秋葉原・神田・神保町に挟まれた地域にある『音ノ木坂学院』という学校であった。

 

「廃校が噂されているとはいえ、流石は名門校だな。校舎も見事だし、なくなってしまうのが惜しいくらいだ。」

 

彼はそう言いながら校舎や校門の内側を見て回っていた。しかし、なかなか入ろうとする素振りを見せない。

 

(くそっ・・・、春休みで人が全然いないとはいえ、これでは完全に不審者ではないか・・・。)

 

そう思い、校門に足を踏み入れようとするが、足を踏み出すことができないのだ。今ではただの高校生だが曲がりなりにも前世は猛将として名を馳せた志郎(勝頼)がたかが校門をくぐるのに四苦八苦しているのはなんともシュールな絵面だが、それには訳があった。それは・・・。

 

 

「この学校が女子高でさえなければ悠々と入れるものを・・・!」

 

そう、この音ノ木坂学院は女子高なのだ。ではなぜ男である志郎がここに来たのか・・・。

 

その理由は2週間ほど前に遡る・・・。

 

 

 

2週間前、ある高校の校長室にて。

 

「失礼します、1年2組の諏訪部志郎です。」

 

「ああ、そこに座ってくれ。」

 

志郎は校長である還暦を迎えた白髪交じりの男性に促され、席に座った。

 

「さて、諏訪部君。話というのは・・・。」

 

「俺の処分についてですよね?」

 

「・・・話が早くて助かるよ。」

 

「俺が先生方に呼ばれる理由なんて、大方そんなものでしょう。」

 

志郎は自嘲的に笑いながら校長に言葉を返した。

 

彼はいったい何をしてこのような状況に至ったのか、それは3学期が始まったころに遡る。

 

彼のクラス、1年2組には一つ問題があったのだ。それはいじめである。いつ始まったのかは定かではない。クラス内カースト上位に位置する生徒のグループが自分たちよりも弱いと見た生徒を「いじる」と称してからかったりするのは、1学期の中ごろからよくあった話だった。志郎はこれに関して、

 

(くだらんな。己より弱き者には尊大に振る舞い、強き者には媚びへつらう。400年経とうとも人の性は変わらないものか。それにしてもこのような箱庭の中の狭い世界の中で奴らはよくもまあ、我こそが天下人であるかのように振る舞えるのだ?)

 

と、呆れながら我関せずの姿勢を貫いていた。しかし、そんな志郎でも徐々に彼らの振る舞いに対して批判的な立場をとるようになっていき、10月に差し掛かるころには対立していくようになっていった。

 

志郎はある一人の男子生徒を気にかけていた。その生徒は秋山といい、気弱であったが心優しい少年だった。彼とはたまたま体育の授業でペアになったことをきっかけに交流を深めており、親友ともいえる間柄だった。しかし、カースト上位のグループは秋山に目を付けたのだ。志郎が彼らと明確に対立するようになったのは、友人である秋山を守るためだったのだ。

 

事件が起きたのは三学期の始まり頃のある日の放課後のこと。志郎は秋山と帰宅しようとしたが、彼はそそくさと教室を出て行った。怪しく思った志郎は秋山の後を追い、誰も寄り付かない旧部室棟の裏につき、物陰からのぞいた時に彼は目を見張った。

 

秋山はカースト上位のグループに暴力を振るわれていたのだ。この時グループの女子が話していたのを盗み聞きし、三か月前から定期的に金を貢ぐように脅されており、払えない時には制裁として暴力を振るわれていた。

 

志郎は親友でありながら秋山の苦しみを知ることが出来なかった自分の不甲斐なさと、卑劣な行為を笑いながら行う上位グループに対する怒りで胸がいっぱいになった。

 

そして、志郎は物陰から飛び出し、秋山に暴力をふるっていた生徒に飛びかかり、その顔面を思い切り拳で殴りつけた。志郎はその場にいた上位グループの生徒を男女問わずに殴りつけたのだ。

 

その翌日に上位グループの生徒の親が学校に抗議しに来たのだ。親たちを落ち着けるために、教師陣は志郎を2週間の停学処分にするも怒りは収まらず、「志郎を退学させろ、さもなくば裁判所に訴え出る。」という訴えに出たのだった。これを知った秋山はその両親と共に処分を軽減させるように訴え出たのだ。そして、上位グループを快く思っていない生徒たちも秋山に協力し、判断に困った教師陣は何日も議論を重ねた。その議論の結果を、志郎に直接伝えるために校長は彼を呼び出したのだ。

 

 

「それで、俺はいったいどのような処分を受ければいいんですか?」

 

「うむ、本来ならば向こうの要求を呑んで君を退学にしなければいけないのだが、向こう側にも非があり、何より秋山君とそのご両親があそこまで強く君を擁護しているものだからなかなか決まらなかったが・・・。」

 

「・・・。」

 

「諏訪部志郎君。君には、別の学校へ行ってもらうことになった。」

 

「は?」

 

「君には転校してもらうと言ったんだよ。」

 

「ふざけないでください!俺はどのような処分も甘んじて受けるつもりでしたが、俺を追い出した後、秋山はどうなるんですか!?」

 

志郎にとって気がかりだったのは親友である秋山のことだった。秋山の唯一の友人である彼がいなくなってしまえば、これ幸いと上位グループが秋山に報復を仕掛けかねないと、志郎は懸念していたのだ。

 

「そ、それは向こう側も反省していると・・・。」

 

「あのような連中は口先だけでは恭しくしておりますが、あなた方が忘れたころに必ず奴らは同じことを繰り返す!秋山が報復される可能性だってありますし、自害する者が出てからでは遅いんですよ!!」

 

「その辺に関しては考えてある。向こう側の生徒もかなり問題を起こしてるらしいね。故に彼らにも追って処分を出すようにしている。」

 

「なるほど、奴らを無罪放免にする気は無いと分かりました。しかし、転校するとはいえ、受け入れてくれる場所なんてあるんですか?」

 

「それは心配しなくてもいい。君は音ノ木坂学院を知っているかね?」

 

「音ノ木坂学院ですか?確か地元の近くにあるのは知っていますがって、あそこ女子高ですよね!?」

 

「うむ、だがこれを見てほしい。」

 

校長は一枚の紙を志郎に渡した。

 

「共学化に向けた研究生の募集?」

 

「そう、音ノ木坂学院は年々生徒数が減っていき、廃校の危機を迎えていると噂になっているんだよ。」

 

「ですが、校長がそれにかかわる理由は無いのでは?」

 

「理由ならあるとも。なんせそこの今の理事長は私の昔の教え子だった人だからね。」

 

「え、じゃあ校長は音ノ木坂にいたことが・・・!?」

 

「あるとも、女子高だからといって男の教員がいないわけではないからね。最も、一人か二人ほどしかいなかったから肩身は少し狭かったがね。」

 

「そんなことが・・・。」

 

「わしも数年だけとはいえ過ごした思い出深い場所が無くなってしまうのは残念でならないんだ。君を利用するようで悪いが、どうか頼まれてくれないか?」

 

「・・・分かりました。そこまでおっしゃるならその話に乗りましょう。ですが、俺を追い出したからには俺の分までこの学校に蔓延る奸物どもをなくしてより良い学校にしてくださいよ!」

 

「ああ、約束しよう。君のような真っ直ぐな心を持った生徒を追い出してしまったことへの償いは何としても果たしてみせるよ。」

 

「では、校長先生。今までお世話になりました。」

 

 

 

そして志郎は通っていた高校を去り、音ノ木坂学院の理事長に挨拶をするためにここまで来たのである。

 

(ええい、男は気合いだ!今の俺に退路はない、突き進め!俺よ!)

 

こうして自分を奮い立たせて、彼は校門に足を踏み入れていった。

 

 

 

 

そして志郎は理事長室の前にたどり着き、

 

(いよいよここまで来てしまった・・・。勢いに任せて入り込んできたはいいが、大丈夫だろうな?ここに来て不審者呼ばわりされて通報されたら笑えんぞ・・・?いやいや、校長先生からは話は聞いているだろうし問題は無かろうて。)

 

志郎は覚悟を決めてドアをノックする。

 

「どうぞ。」

 

ドアの奥から女性の声がした。

 

「はい、失礼します。」

 

そういって志郎は理事長室に入る。奥にはグレーに近いベージュの髪をした女性が座っていた。

 

「あなたが、諏訪部志郎くんね。音ノ木坂学院にようこそ。私はこの学院の理事長を務めている南といいます。」

 

「初めまして。自分はこの度研究生としてこの学院に転入することになりました諏訪部志郎です。」

 

「そこまで堅苦しくしなくてもいいのよ?さあ、そちらに座ってください。」

 

「あっ、は、はい。では失礼します。」

 

理事長に促されて、少し慌てながら志郎は椅子に座った。

 

「あなたの話はそちらの校長先生から聞いています。とても真っ直ぐな生徒だとおっしゃっていたわ。」

 

「はあ、それは光栄ですね。ですが、私がこの学校に来ることになった理由も存じているのでは?」

 

「・・・ええ、諏訪部くんのいう通りあなたがここに来ることになった理由も聞きました。」

 

「こんなことを言うのは無礼極まりないと存じますが、それを知っていてそのように言われるのは少し嫌みのように聞こえてしまったんですが。」

 

「それは悪いことをいってしまったわね・・・。でも、私も嫌みで言ったわけでは無いのよ?」

 

「・・・。」

 

「確かにあなたのとった行動は良いものとはいえませんが、それは友達のことを第一に考えてのことだったと私は考えています。」

 

「また同じような事を起こすかもしれませんよ?」

 

「この学院にはそんなことは起きないし、私が起こさせないわ。だからそんなことを心配する必要はないわ。」

 

「そうですか・・・。失礼なことを言ってすいません。」

 

「いいのよ、そんなことは気にしないで。自分の意見をはっきりということが出来るのはいいことなんだから。」

 

「・・・ありがとうございます。」

 

「そうそう、研究生についての話をしましょうか。」

 

「そういえば研究生といってもいったい何をすればいいんでしょうか。」

 

「特にこれといって特別なことはしなくていいわ。あくまでも共学化に向けた実験のようなもので男子が入学しても問題ないかを調べるだけだから。」

 

「なるほど。あくまでも普通の生徒と同じということでいいんですね?」

 

「ええ、そのとおりね。それともう一つ、実は研究生はもう一人いるのよ。」

 

「もう一人、ですか?」

 

「ええ、いくらなんでも男の子一人だけじゃ過ごしにくいんじゃないかと思って二人募集していたの。その子はまだ挨拶には来てないんだけどね。」

 

「そうですか。流石に自分も男一人でやっていく自信がなかったので心強いです。」

 

そんな話をしながら志郎は、入学についての手続きやその他諸々の説明を受け、それが終わるのに、大体1時間ほどかかった。

 

「ふう。たった一時間ほどしか経っておらんというのに・・・、おっといかんいかん。口調が昔のものに・・・。少し疲れたなぁ。」

 

志郎は少し背伸びをして、あくびを一つして歩き出した。

 

「しかし研究生がもう一人か。どんな奴なんだろう。」

 

そうつぶやき、音ノ木坂学院で上手くやっていけるかといったとりとめのないことを考えながら彼は帰り道を進んでいく。

 

志郎はまだ知らない。この音ノ木坂学院に新たな物語が生まれ、自分もまたその物語の一部になることを・・・。




今回は主人公、志郎がどうして音ノ木坂学院にやってくることになったのかと、初めての音ノ木坂学院でのことりの母こと理事長との邂逅を書きました。

プロローグを含めると2話目なのにまだμ'sのメンバーが誰も出てきてないという・・・。もちろん次回からはちゃんと出てくる予定です!!

次回もどうぞよろしくお願いします!!

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