碧く揺らめく外典にて   作:つぎはぎ

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GWを期に久々に連日投稿。活動報告にアンケート実施しました。よければ見てください。

では、どうぞ。


歪みの歩み

  地獄は終わっていた。

  薄暗い近代の建築物は無くなり、肌が立つ寒さも眉を顰める異臭もすでに消え去っていた。周りには夜を迎えたトゥリファスの街並み。

  通りには“黒”のアサシンの影響で倒れこむ人々がおり、そして路地裏には三者がいた。

 

  ジャンヌ、ヒッポメネス、アタランテ。

 

  地獄に巻き込まれたのは彼らだけではなくジークもいたが、今は何処にいるのかも分からない。

  ジャンヌはそれも気になったが、今気にかけなければならないのはアタランテ(赤のアーチャー)だ。

  本来ならばシロウ側と“黒”の側は敵対関係。そして、先ほどの幻影のなかでも相対していた。

  アタランテは蹲り、体を震わせる。そして、その近くに居るヒッポメネスが彼女を見下ろしていた。

 

「アタランテ」

 

  ヒッポメネスは膝をついた。何と声をかけるべきか、何を口にするのかとジャンヌはヒッポメネスの言葉を待つ。

 

「僕が殺した」

 

  ーーー刹那、顔を上げたアタランテの顔は涙と怒り、殺意に染められていた。

  夜の街に響くのは獣の咆哮に似た女の絶叫。アタランテはヒッポメネスに掴みかかり、馬乗りになって彼の顔に拳を叩きつけた。

  ジャンヌはすぐ助け出そうと駆け出したが、アタランテの殺気に比肩する敵意を殴られているヒッポメネスにぶつけられた。

  アタランテの拳が風を切る度に鈍く、潰れた音が鳴る。何度も何度も、振り下ろされ、彼女の拳には血が付き、地面に筆を振った後のような形の血痕が撒かれる。

  何秒か、いや何分かそれが続いた。ジャンヌは何度も止めようとしたがヒッポメネスの敵意は変わらず、一歩踏み込むごとに向けられる。彼自身がジャンヌに静止を呼びかけていて、ジャンヌは救おうにも救えなかった。

 

「何故だ!何故だ!!」

 

  息を切らし、両手は余す事なく殴り下ろした青年の血に汚れた。

 

「何故なんだ!!何であの子達を救えなかった!!」

 

  涙が流れ、噛み締めた唇から血が流れる。子供達を救えなかった。子供達は切り捨てられた。子供達の命は踏みにじられた。

 

「なんで、なんで救う手段がない!?万能の願望機があればあの子達ですら助かるはずなのに、それすらも叶わないというのか!?」

 

  振り上げられた拳は力なく降ろされ、ヒッポメネスの胸へと落ち着いた。

 

「ならどうすればよかった!?子供達を、アステルを母の腹の中へ返せばよかったのか!?」

 

  母の腹へ戻るだけなら再び同じ事が繰り返される。しかし、受肉させればその身自身が災厄となり近づく者を不幸とする。結局は母の腹に戻る事と大差ない、その身を否定されるのだから。

 

「あの地獄を生み出した根元を無くせばいいのか!?さすればあの子たちはーーー」

 

「また別の誰かがその責を負うこととなる」

 

  ずっとされるがままの男の腫れ上がった瞼の隙間から覗いた瞳が泣き叫ぶ彼女を写す。

 

「歴史の否定は現在の焼却だ。幸せを享受する誰かを犠牲に不幸である誰かを救うことに意味はない。また犠牲にして結果が出ては繰り返す。それが大人であろうと子供であろうと負の連鎖は永遠に続く」

 

「黙れ!!」

 

  拳が破壊音を生み出す。ヒッポメネスの頭の横の石畳が破砕し、粉々となった破片が転がる。

 

「お前はあの子達を殺した!偽りの聖女と共にあの子達を!救われなければならぬ子供達を殺した!」

 

「そうだ。僕が殺したんだ」

 

  また、拳を振り上げた。拳を振り上げて、怒りのまま身を任せようとした。だけど…。

 

「…なぜ、お前は泣いていた!」

 

  泣いていた。双眸から溢れる涙を堪えもうとしても濁流のように涙が溢れていた。ジャック・ザ・リッパーを殺すことを是として、冷血な判断を下した。なのに、最後まで悔しさと悲しみに表情を歪ませていたのを見てしまった。

 

「間違いだ。正しくあるはずがない。あんなもの、受け入れてはいけない!」

 

「…それは、ダメだ」

 

  涙で濡れたアタランテの頬をヒッポメネスの指が撫でた。

 

「…あれを受け入れなくてはならない。あれが間違いだというのなら。君が望むものは…その先なんだ」

 

「…なに?」

 

「君が望む循環は世界平和と等しい。人類が未だ…なし得てない領域だ」

 

  だから、と血と折れた歯を吐き出しながら応えた。

 

「考えを止めるな。愛を決めつけるな。人類の救済が……君の願いの一部と思うな…アタランテ……」

 

  その言葉、その思いやりに似た声音に頭の奥で、ぎしりと噛み合わない歯車が軋んだ痛みと不快感が広がる。まただ、また何かが私を苦しめる。

  頭が痛い、なんだこれは、私を苦しめるこれはなんなんだ…!?

 

「…アタランテ?」

 

  はっ、と意識を取り戻す。怒りがある。憤りが胸を狂わせる。この青年とあの偽の聖女は己の魂を傷つけた。

  その事実を忘れてはならない。ヒッポメネスの首を掴み、石畳に押し付けて頭を砕いてやろうとした時。

 

「猛々しきは神なる鉄槌なり」

 

  魔力を帯びた矢が飛来する。瞬時にヒッポメネスから離れると矢が床へと着弾する。

  放ったのは建物の屋上に立ちそびえる“黒”のアーチャーだった。

  状況は不利、既にこの場は包囲されかかっている。彼女が取るべき行動は決まっている。

 

「…っ!!」

 

  地面に仰向けに倒れながらも苦しげに体を起こすかつて夫であった青年を睨みつけた。苦悶が思考を沸きだたせる。思いのまま叫んでやろうとした。

 

 

 

  ーーーばいばい。なきむしなおにいちゃんをゆるしてあげてね、やさしいおねえちゃん

 

 

 

  言葉が詰まった。吐き出そうとした怨嗟が固まる。

  別れ際、消え去る直前に亡くなった少女、アステルの手向けの言葉を思い出す。

  憎くて、恨めしく、殺してやりたいほどの男をあの娘は許した。

  その少女の言葉の真意を解き明かそうとするが、その度にギジリと軋み頭痛が増強される。なんなんだ、これは!?

 

「お前を…許してなるものか。許していいはずが…ない!」

 

  頭痛に苛まれながらアタランテは後退する。

  数多の男が追いつけなかった俊足は“黒”のアーチャーの追撃を許さない。

  街を抜け、夜の暗闇に紛れながら疾走は潰えない。ただ、全力で闇の中を走る。

 

  そうしていれば、痛みが軽くなっていく気がするから。

 

 

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 

 

「大丈夫ですかバーサーカー」

 

「はい、大丈夫です…」

 

  顔の熱と痛みは引いてないが気を失うほどのものではーーーいや、少しでも気を緩めればそのまま沈んでしまいそうだった。

  ヒッポメネスは“黒”のアーチャーに支えられながらも立ち上がると周囲を見渡した。ルーラーはジークを探しにいき既にいない。アタランテは逃げたためにもう気配がないことは分かっている。あとは、“黒”のアサシンにより傷つけられた人々が通りに倒れていた。

 

「街の人々は重症でしたが命に関わる者はいません。マスター達が後は対処してくれます」

 

「そう、ですか」

 

「…“黒”のアサシンは終わったようですね」

 

「…はい」

 

  “黒”のアーチャーはヒッポメネスとアタランテの様子、そして“黒”のアサシンの能力から大体の事情は察していた。そして、二人に何かしらの亀裂が生まれたことも。

 

「その右手はどうするつもりですか?」

 

  “黒”のアーチャーの目はヒッポメネスの右手を向いていた。彼の右手には黒く侵食され、怨霊が取り憑いていた。この怨霊はヒッポメネスの意思次第ですぐに消滅、排除できるのだがヒッポメネスは頭を振った。

 

「…このままにしておきます」

 

「そうですか」

 

  何も聞かず、“黒”のアーチャーはヒッポメネスを支えてルーラー達の元へと向かう。その間、ヒッポメネスは申し訳ないなと思いながら弱々しく歩いていった。

 

 

 

  ルーラーを見つけた時にはジークも共にいた。あの通りから少し離れた場所にジークは倒れていたらしい。“黒”のアーチャーはルーラーを見つけると、ヒッポメネスの事を任せ先にマスターの元へ戻っていった。

  じんじんと意識を薄れさせる鈍痛を自前の魔術で少しずつ治癒しているなか、ヒッポメネスにジークが歩み寄ってきた。ジークの顔は優れず、今にも折れてしまいそうなほどに青かった。

 

「バーサーカー」

 

「…どうしたいんだい?」

 

「彼女は、“赤”のアーチャーは“アレ”を見た事がなかったのか」

 

  ジークの後ろにいたルーラーは愁いに似た顔をしていた。バーサーカーはルーラーとジークに何があったのかは深く問わない、しかしジークも恐らく“黒”のアサシンの幻影に巻き込まれ…地獄を見たのだろう。

 

「そう…だね。僕達が見たアレは彼女にとって最も見たくなかった現実、知らなかった歴史だ」

 

「歴史…か」

 

  人の歴史は立ち位置から正義と悪は入れ替わる。当事者にとってそれは善だと信じていた。だが、遥か未来ではその行いは悪と見做されていたことは多々ある。歴史とはその多々あるものを収束した出来事でしかない。

 

  「アタランテが見た地獄とは絶対的な強者による圧政、資源の不足による飢餓、自然の猛威による疫病、神々による断罪…分かりやすくするとこんな感じだろうね。だが」

 

「誰も…悪くなかった。誰も正しくなくて、誰もが…虚ろのようだった」

 

  地獄はあった。だが、それを生み出した主体がなかった。

  誰が邪悪で、それを打ち倒す正義の味方で、その悲劇に嘆く者さえもいなかった。

  全員が傍観者であり、地獄を強いられる被害者だった。

  彼女が知る地獄には倒すべき主体は常にあり、それを救う手段は存在した。筋道ができていたからだ。分かりやすいほどの原因があれば、分かりやすいほどの打倒策は生み出される。

  しかしーーー原因が霞であれば、導く光も薄れ、届かない。

 

「あの地獄は既に終わっていた、だが残された者がいた。それが“黒”のアサシン…ジャック・ザ・リッパー」

 

  サーヴァントを召喚することはそういうことなんだろうと呟く青年の姿は何処か遠くを見据えていた。諦観というよりも達観しているような物言いに、ジークは疑問を覚えた。

 

「なら…なぜ彼女は知らなかった」

 

  彼が知っていたのなら、彼女が知り得ぬはずがない。何故なら夫婦で共にいた。語り、伝える機会など幾らでもあったはずだ。

  それを知っていればアタランテも、あの地獄をーーー

 

「知ろうが知ってなかろうが関係ない」

 

  ジークの思考を読み取ったようにヒッポメネスは彼の目を見て言った。

 

「地獄を知ろうが関係ない。如何あっても彼女は子供達の悲劇に泣き叫ぶ。それが…彼女がアタランテである所以だから」

 

 

 

 ○ ○ ○ ○ ○

 

 

 

 

「…なるほど。斥候の任、ご苦労様でした」

 

  アタランテ(赤のアーチャー)“黒”のアサシン(セミラミス)の宝具『虚栄の空中庭園』へ帰還すると、シロウと“赤”のアサシンに“黒”のアサシンを討ち取ったことを報告した。

 

「できれば“黒”のアサシンにもう少し後方で撹乱して欲しかったのですが」

 

「どちらでもよかろう。いずれにせよ、連中は間違いなく我らを追ってくる、総力戦になる以上余計な動きをされても困る」

 

  ふん、と退屈そうに応える“赤”のアサシンは“黒”のアサシンについてどうでもいいようだ。それよりも悠然と玉座へ座る女帝が気になったことが、というよりもシロウも気になっていたのが。

 

「その“血”はどうしたのですか?」

 

  アタランテの手に着けている革製の籠手、翠緑の衣、秀麗の顔には乾いた血痕が張り付いていた。指を動かす度に落ちる乾いた血の塵は、この王の間に至るまでの道に後を残している。

  それにアタランテの表情は幽鬼めいていた。困惑と憤り、そして苦痛が混ざり合ったその顔には多くの男が求めていた気高さはなく、常に陰が落ちていた。

 

「…報告は以上だ」

 

  シロウの質問を取り合わず、そのまま王の間を去ろうとする。これに“赤”のアサシンは引きとめようとしたが、シロウの目配せに口を閉ざす。

  王の間に出るまでの僅かな距離でもアタランテが通った道では乾いた血の塵が残った。

 

「なんなのだあやつは? “黒”のアサシン…というよりも」

 

「ええ、“黒”のバーサーカーと何かあったのかもしれませんね」

 

  シロウと“赤”のアサシンは内心ではアタランテが裏切ることを想定していた。アタランテの願いが子供達の救済と互いの利益が一致していたからシロウをマスターと認めているが、“黒”の陣営には彼女をよく知る人物がいた。

  “黒”のバーサーカー(ヒッポメネス)による説得があるかもしれない、何かしらの警戒はしておくべきだと考えていたが…。

 

「どうする。アーチャーに監視をつけておくか?」

 

「いえ、こちらに不信感を持ってもらうのを避けておきたいので構いません」

 

  何よりもシロウの“啓示”が告げている。彼女は裏切らない、と。根拠がないが、それは確かなものだと確信するものがある。

  シロウは頭の隅に置き続けておくべきだと判断し、近づく決戦の日まで勝利の為の過程を空想することとした。

 

 

 

「おや?まるで帰り道を見失い彷徨う童のようですな」

 

「…どけ、キャスター」

 

  疲れた。酷く疲れた。頭痛は既に収まったものの頭痛の後遺症は精神の疲労。斥候の任を終わらせたことをあの主従に報告し、私室に戻り横になりたかった。サーヴァントには睡眠などいらない、だが今は心を落ち着かせるために微睡みに落ちたかった。

  なのに道を遮るように現れたのは戦わないサーヴァント、“赤”のキャスター。何時もと変わらない巫山戯た笑みは酷く勘にさわる。

 

「私は疲れた。疲れているんだ。お前に構っている暇などない」

 

  横の道を通り過ぎようと体をズラし、

 

「『昼の善良な者たちは項垂れ、微睡み、黒き夜の化身が餌食を求めて蠢きだす』…夜の闇に囚われましたかな?尊き駿足の狩人よ」

 

  服の襟を掴んで壁に押し込んだ。

 

「黙れ道化師。それ以上口を開くとその油の乗った舌を引き抜くぞ」

 

「やけに疲れているご様子。ですが斥候如きで疲れる貴女ではありませんでしょう。そう、貴女はただ…怯えているのでしょう?」

 

  言葉より先に手が出た。女性の身では考えられない力が背丈の高い男の首をへし折らんと掴んだが、キャスターだった者はいつの間にか無味な木偶人形に成り代わっていた。恐らくは作家であるキャスターの魔術、もしくは宝具である。

 

「何をご覧に?過去の残骸か、はたまた地獄の一端か。もしくは無知を見たのですか?」

 

  ーーー無知?

  ピタリとアタランテの怒りが止まる。

 

「何も知らない。何も知ろうとしない。己が未開の領域、いや捨てて置いていったはずの影が今頃陰ってきたのですかな」

 

  浮き彫りになって眼を隠したがっているのかもしれませぬな、と語る。何処にいて、どんな顔で語っているのかなど、どうでもいい。

  無知。知らなかった、確かに何も知り得てなかった。あの地獄が、神も人も獣も全てが失った、完璧な機構が存在していたことを。

  知っていれば何かできたのかもしれない。知っていれば考えて対処できたのかもしれない。それも後の祭り、全ては終わったこと。過去を幾ら悩もうとも変えることなど、できない。

 

「…知っていて、何もできなかったのか」

 

  思い出すのは子供達を葬った偽りの聖女とーーーそれを許し、子供達を見送った平穏な、悪賢い男。

 

  出会ったときから、私を手に入れるために私に近づいてきたあの青年。こそこそと遠くから見入り、ふと会ってみれば馬鹿げたなことで無様に転げ回っていた。

 

  森で狩りをし、父に目をつけられていた。

  父の話で王になれることを唆されーーーあの林檎を使って私に勝利した。

 

  そして、私は■■■■■

 

「……っ!?」

 

  ガリガリガリガリガリガリガリガリガリ

 

  頭の中を引っ掻き回すような不快な音と痛み。痛みが吹き返しはじめた。片手で頭を抑えた。幾ら力で押さえ込もうとこの痛みは消えない。

  痛い、痛い、痛い、イタイ、イタイ。この痛みは何なのか、考えれば考えるほどに痛みは強さを増して思考を掻き乱す。

 

「どうなされましたかな?」

 

  いつの間にかキャスターが後ろに現れた心配するような素振りを見せる。だが、笑みを隠そうともせず顔に張り付いたままだった。

 

「…黙れ。もう黙ってくれ」

 

  これ以上は付き合っていられない。アタランテはキャスターを振り切り庭園の通路を突き進む。キャスターは物足りなさそうに肩を竦めた。

 

「…ふむ。かの狩人の物語に不可欠なのは“黒”のバーサーカー。悲劇と転ぶか、喜劇と転ぶか…悩ましげですな」

 

「そこはてっきり楽しみと言うかと思ったな」

 

  キャスターが振り返るとそこには面倒臭そうなものを見る目でキャスターを睨む“赤”のライダーが立っていた。

 

「おお、ライダー殿。てっきりアーチャー殿を慰めにいくのかと思いましたぞ」

 

「姐さんを慰めたところで俺の言葉は雑音にしかならんだろう」

 

「ほう、ならば貴方はアーチャー殿が何にお悩みかお分かりで?」

 

「いや、知らん」

 

  きっぱりと言い放ったライダーにキャスターは意外と言いたげに微笑む。ライダーはその様子にふんと鼻を鳴らした。

 

「人間だろうと獣だろうと踏み込んではいけない領域があんだろうが。その領域に土足で踏み込んだのか、あるいは」

 

「その領域の境界が崩れかけたか、ですかな?」

 

  ちっ、と舌打ちをするとライダーは踵を返してアタランテと逆の道に向かい始めた。

 

「あちらで何があったかは知らんがバーサーカーが関わってんのは確かだろう。ったく、あながち狂戦士ってのは間違いじゃないのかもな」

 

「暴れるだけ暴れて戦場を掻き乱す。ははは、実に良い。吾輩が何をしなくとも展開が開かれ続けてくれる。彼には是非ともアーチャー殿と相対して貰いたいものですな!」

 

「姐さんに悩み続けろってか?」

 

  大英雄の睨みはそれだけで敵意を削ぎ、殺意を屈服させる。そんな視線の暴力に晒されてもキャスターは磨きかかった芝居仕草で弾き飛ばす。

 

「何を仰られるか!()()してくれなくては困りますぞ!主役も脇役も完結してこその物語、一人だけ未完などと作家に仕事をするなと暴挙を押し付けるようなものだ!それに何より…彼女の物語には必ず彼が付随する!既にそう書き始めてしまったのですから!」

 

「…そうかよ」

 

  なんだかもう付き合っていられない。付き合えばこちらの調子を崩して突っ切ってしまう。戦場では出会わなかった強敵に退散を選んだ大英雄は霊体化して消えてしまった。

 

「さて!物語は終幕へと踏み入れられた。貴方達がどのような悲劇喜劇茶番劇を演じようともこのシェイクスピア、傑作を残してみせましょう!!」

 

 




Q.座にいる時、仲がいい英霊はいる?

A.
ヒッポメネス「えっとラーマ君やオジマンディアスさん…」

セミラミス(どういう縁で仲がいいのか分かるな…)

ヒッポメネス「あとメディアさん、タマモさん、ブリュンヒルデさん、清姫ちゃん、最近ではスカサハさんやメイヴさんとメル友に…」

セミラミス「もういい」

ちなみに座ではセミラミスとメル友なヒッポメネス。

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