あなたもわたしも今日からブラッド!   作:ごみごりら

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part1:全然全く大丈夫じゃなかったです

『···············当にこの娘が**の····?』

 

 

女の人の嘆く声が聞こえる。どこかで聞いたような、懐かしい、声。

どうやら、その人はまた別の誰かと話しているみたいだ。

 

 

『 ············間違い無········彼女はや········選ばれ·····』

 

さっきから、会話があまり良く聞き取れない。というか、内容が入ってこない。ただ、とても切羽詰った状況なのは分かった。

 

『·····うして·····どうしてこの娘が·········?!』

 

 

会話を聞いていると、少しずつ、篭って聞き取りずらかった声が鮮明になってきた。

 

『······申し訳ないが······こればかりは私にも·······』

 

 

『嗚呼、ごめんなさい、ごめんね。私の所為で、貴女は·········!』

 

 

 

 

 

 

 

 

『初衣········!』

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

ふと、目が覚める。

自分の部屋の天井じゃない、ピカピカで汚れ一つ無い天井が見える。

 

ああ、私···········

 

 

ここに至るまでの経緯を説明しよう。

 

 

 

私は、フェンリルからゴッドイーター······通称、神機使いの適合候補の通知を受け取った。

その後、親に説得して直ぐに適合試験を受けに行った。此処、“フライア“へ。

 

しかし、その時私は全く予想だにしていなかった。

適合試験とは、神機が適合候補者を受け入れるか否か、というもの。(後から知った)

適合したら、その神機は私と一生添い遂げる事を意味する。

そりゃ、神機だって反発しますって。

私は、神機の反発(主にドリル)から来たのであろうトンデモナイ痛み(主にドリル)によって、適合直後、一瞬で気を失った、と······

 

 

よし、状況は把握出来た。私は今、フライアのどこかに居るのだろう。多分病室あたり。

 

体がだるい。どんだけ寝てたんだ自分·····

ずきずきと痛む頭を抑えながらゆっくり起き上がる。起き上がると、そこには·······

 

 

 

「ああ、やっと目覚めたのか。」

 

 

 

「 」

 

 

 

 

めちゃカッコイイ男性が、目の前に、座っていた。

 

 

「 大丈夫か?起きたばかりでまだ体中痛むだろう?もう少し安静にするといい。」

 

 

 

「······え····いや、あの····

 

 

 

 

 

 

誰ですか····?!」

 

 

私の友達にこのような美しい男性は居ない。うん、確か、居なかった筈だ·······!

 

 

目の前の彼は、少し考えて、思い出したように、ああ····まだ名乗っていなかったな·····と小さく呟き、更に続けた。

 

 

「俺の名前は、ジュリウス=ヴィスコンティ。お前がこれから配属されるであろう部隊、ブラッドの隊長を務めている。」

 

 

 

「これからよろしく頼むぞ、初衣。」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「あの·····本当ごめんなさい·····貴方のような人に私なんぞの服選びに付き合ってもらうなんて···」

 

 

 

「ん····いや、別に構わない。大した用事も無かったからな。·····仲間が困っているのを見捨てるなんて出来ないだろう?」

 

何だこの容姿だけでなく人格まで出来上がった人間は····!

 

 

 

 

 

······あの後、私は3日ほど病室で過ごした後、無事?退院した。その際、制服を着て退院したのだが、此処フライアでは式典以外では制服をわざわざ着る必要無いんだとか。

 

ただ、その事を知らなかった私は制服と家から着てきたジャンスカ&ブラウスしか持ってなかった訳で····

 

その事を知ったジュリウス隊長は、直ぐに別の衣服を調達しよう、とフライア内に在する小さなショッピングモールへと案内してくれた。

 

 

女物の衣服売り場へと行く。うお····思っていたのよりずっと良さげ·····もっと軍隊みたいな服が沢山あるのかと思ってたけど、フリルの付いたセットアップや、ワンピース等、女の子らしい可愛い衣服が沢山あった。

 

 

ただ。

 

「たっっっっっっっっか·······?!」

 

信じられないような価格に思わず本音が零れる。

これでも中の上あたりの家庭で育ってきた筈なんだが······

 

……よし、これは諦めよう。制服で悪い訳じゃないし、私服も一着·····ある。

 

そう自分に言い聞かせ、店を出ようとする。

しかし。

 

 

「何だ、何も買わないのか?」

 

 

 

 

そうだ、この人連れて来てたんだった······

 

 

「あ、あはは·····ちょっと予算が足りてなくて·····制服で過ごすので、やっぱ大丈夫でーす···」

 

 

「なら俺が払おう。何なら後で返してくれれば良い。」

 

は······?何言ってるんだこの人······?!

 

 

 

「いや、駄目ですって·····お金の貸し借り駄目って学校で教わりませんでしたか?!」

 

 

「いや俺はもう20なのだが·····」

 

「そ、それに」

 

「このような大金ポケットマネーで払える訳····!」

 

 

「今日は少し持ち合わせていた」

 

 

「何でえ?!」

 

てな感じで、どうにか留めて頂こうと説得したのだが、無理だった。どう言っても普通に論破されてしまう。

 

 

 

 

「さて、どれにしようか。」

 

ううううう·····と情けない呻きを上げながら店内へ引きずり戻される。

 

 

 

「もういっその事、ジュリウス隊長が選んでください······私に選ぶ権利などありませぬ·····」

 

隊長は分かった、と一言返し、ゆっくりと店内を見て回る。

 

 

超絶イケメンエリート隊長が私の衣服を選んでくれていると思うと、悪い気はしなかった。むしろ、少し嬉しいくらい。

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

 

ここからが、長かった。

 

 

隊長は二時間ほど品定めをした後、私を容赦なく試着室へ放り投げ合計2、30組み程の試着をさせられた。

 

店に入って、約5時間後。

選抜された衣装達がジュリウス隊長のポケットマネーで支払われていった。

 

 

「なかなか良い買い物が出来たな····」

 

 

 

「そう、ですね······出来ればもう2度と服屋には行きたくないですね·······」

 

 

満足げな隊長をよそに、私は長く重い溜息を吐いたのだった。

 




遅くなってしまった...!
次回はあのふたりが出ます

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