この悪神、なんか軽い   作:大小判

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戦闘描写って難しい!! グロ注意かもです


悪神、龍の神と激突す

 

 

 

 

 

『『『ええええええええええええええええええええええええええっっ!!?』』』

 

 学園を覆う結界を突き破り、キラリと輝くお星さまになったオーフィスを見上げて驚愕の悲鳴を上げる十代の若手たち。その中には眷属の救出に向かった一誠とリアス、そして無事に救出されたギャスパーも含まれており、事情を知らない彼らの眼にはアンリマユが幼女を殴り飛ばしたようにしか見えなかった。

 

「ちょっ!? あ、あの人幼女をお星様にしちゃったんですけど!? 倫理的には完全にアウトですよね!?」

「チッチッチッ。違うな、赤い龍の小僧。あれは幼女じゃあない。それ以前に性別の概念すらない。おとなしく秘境に引きこもっておけばいいのに人の世に出しゃばってきた害獣だ。なれば俺が徹頭徹尾躾てやらねばなるまい? まぁ、俺の前で調子こいた奴は幼女だろうが何だろうがぶち殺すけどな! ひゃははははははははははは!!!」

 

 ゲラゲラと嘲笑うアンリマユを余所に、ロスヴァイセはかの悪神の力に驚愕を隠し切れなかった。

 見た目こそ幼女の姿だが、彼女は無限の名に恥じぬ神の権能と龍の原種としての肉体強度を両立させる世界でも1,2位を争う人外不倒の怪物だ。そんな彼女とまともに戦える者など世界に数えるほどだというのに、ましてやブッ飛ばす事が出来る者など一体この世にどれだけいるのか。

 

「大体、あの駄竜はこの程度じゃビクともしな――――」

 

 瞬間、今度はアンリマユが天から落ちてきた極光の柱に飲まれた。厚雲に空いた大穴を縫うように降り注ぐその光は紛れもなくオーフィスの反撃。物質界に存在する万物を融解させ、気流すら打ち消す龍神の息吹だ。

 圧倒的なエネルギーの余波に顔を覆いながらもオーディンの守護しようと目を凝らして戦況を見極めようとするロスヴァイセは奇妙な現象を目撃する。

 

(地面が……無事?)

 

 眼前の光は容易に星を穿つことは一目瞭然。にも拘らず、地面には焦げ目一つついていない。これの意味するところは唯一つ――――アンリマユが地面への直撃を防いでいる。

 

「駄竜め、俺の言葉を遮るか……!」

 

 獣のような唸り声と共に、極光の柱はゾッとするような蒼い焔に逆に飲まれ、徐々に押し返して相殺する。

 拝火教とはその名の示す通り火を敬う宗教で、それ属する神霊や信者は総じて炎神の神格、または加護を得る。神話群を構成する全ての神が最上位の炎神であり、それら全ての宗主であるアンリマユの炎は太陽神すら焼き尽くすという。

 

「遠くからビームとか俺にビビり過ぎワロス………って、あああああああああああああああ!? 俺の一張羅がああああ!」

 

 かくしてアンリマユは五体無事だった。それどころか、自身の傷よりも一張羅……甚平だが……一張羅の上衣とサンダルがオーフィスの一撃によって燃え尽きてしまったことに憤慨している。半裸になったことで露わになった筋肉質な褐色の体から蒼炎を吹き上げながら、校舎全体を揺らすような怒鳴り声を雲の上に向かって吠えた。

 

「赦さんぞ駄竜!! あの柄気に入ってたんだぞ!! 今からボコして剥製にした後、ケンタッキーの巨大カーネルおじさん人形とトレードしてやる!! ケンタッキー駒王支店の屋根の上で未来永劫醜態を晒すがいいわぁぁっ!!!」

 

 軽いジャンプ。それだけでオーフィスがいるであろう大気圏内へ突入したアンリマユを呆然と見上げながら、一誠はポツリと呟いた。

 

「あ、あれだけの攻撃を受けて感想が服を燃やされたことだけって……」

「呆けている場合じゃないわ。佑斗たちはもう戦っている。私たちも行くわよ!」

「は、はい!」

 

 上空の転移陣から降りてくる敵をヴァーリが撃墜し、それでも取りこぼした魔術師を祐斗、ゼノヴィア、イリナ、そしてギャスパーが解放されたことで復活した朱乃、小猫、ソーナ、椿姫が校舎から離れられない首脳陣に代わって迎え撃っている。リアスと一誠がそれに続くように戦闘態勢に移行した時。

 

「君の相手は俺だ。兵藤一誠」

「な、何……!?」

 

 白銀の鎧と光の翼を身に纏う男――――先代魔王の血を引く歴代最強の白龍皇、ヴァーリ・ルシファーが一世の前に立ちふさがった。

 

「当然だろう? 赤と白、それは戦う運命にある。こうして敵同士(・・・)として相対したのなら、戦うのは必然だ」

 

 

 

 

   -----------------

 

 

 

 地上で起こる戦いが激化する中、大気圏内は圧倒的な力のぶつかり合いが渦を巻き起こし周囲の雲や塵を巻き込んでいた。

 武とは人類が肉体的に超越した相手を屠るために生み出した技法。故に真の怪物は武を持たない。彼らは己が肉体、己が爪、己が牙で敵を食らい、勝利を競う。 

 仮の姿である少女から本来の姿である翼を持つ蛇(ワイアーム)のような(なり)に戻ったオーフィスはそれを体現するかのように、圧倒的巨体と際限の無い龍気(オーラ)で悪神の肉体を破壊する。地表で身じろぎをとれば、それら全てが災害となる龍の原種の猛攻は人間大の体長しか持たぬ相手には本来過ぎたるものだろう。

 そんなオーフィスと互角に戦う絶対悪の化身。彼は人とほぼ同一の肉体を持ちながら、己が怪物性を高めるために一切の武技を用いない。洗練さの欠片も無い握り拳と大ぶりな蹴りは星を揺るがす一撃となって甲殻を砕き、太陽を呑み込む蒼炎は血肉を炭に変える。 

 如何なる武技も知恵も塵芥のように磨り潰す圧倒的な暴力。血肉と内臓を撒き散らし、その度に再生して更に荒れ狂う意志持つ2つの天災は咆哮をあげる。

 

『『GYEEEEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAEEEEEEEEEEEEEYYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!』』

 

 超龍と悪神は天地を揺るがす。オーフィスの突進を真正面から受け止めたアンリマユだったが、そこは踏みしめる大地の無い雲の上の天空。そのまま宇宙空間まで飛翔し、月面に叩き付けて摩り下ろすように悪神の背中を月ごと削っていく。

 本来、翼を持たぬ彼と飛翔できる龍神では空中戦の優位は体格差と共に明白だ。殴り飛ばしたオーフィスを追って大気圏という戦場に飛び込んだ彼は戦いが始まった時からすでに不利な状況へと陥っている。

 

 だからこそ、絶対悪は相手の優位を正面から打ち砕こうとする。

 

 月面で摩り下ろされながらもオーフィスの顎を両手両足で抉じ開けると、アンリマユの腹が胸にかけて縦に裂ける。それは刃の如き乱杭歯がギッシリと並んだ猛毒の溶解液を撒き散らす口腔だ。

 変化はそれだけに留まらない。今度は元々あった顔の口を中心に、悪神の顔が十字に裂ける。腹の口と同じように乱杭歯が並んだその姿は生理的嫌悪感を激しく刺激する。もしこの場に少し気の弱い人間がいれば思わず失神していただろう。

 

「死ね、駄竜が」

 

 2つの口腔の奥から青い光が溢れ出し、灼熱の炎となってオーフィスの体内に向かって放射される。口から全身の内臓を蹂躙する蒼炎は龍神の強固な甲殻に阻まれ、体内で蓄積されて見る見るうちに丸く膨らんでいく。瞬く間に限界を超えたオーフィスの体は風船のように蒼炎を撒き散らしながら破裂した。その勢いのまま宙へと放り出される龍の神。……だが、彼女もまたこれで倒れる怪物ではない。

 

「へぶっ」

 

 追撃を掛けるように、またしても不利な空中戦へと挑んだ悪神の頭蓋を上半身ごと龍気で消し飛ばすと同時に破かれた胴体を復元する。

 傷一つなく(・・・・・)宙に浮かぶ剥き出しの心臓を目に移し、オーフィスは再生の隙も与えないと言わんばかりに残った下半身も消し飛ばすために口腔にエネルギーを蓄積、瞬時に放出した。

 如何なる再生能力を持つ怪物でも、頭部を破壊すれば僅かながら時間を稼ぐことができる。全身を吹き飛ばし、残った心臓を厳重に封印すればとりあえずの目的は果たせる(・・・・・・・)。即席の息吹とは言えども、その威力は無防備な下半身を吹き飛ばすには十分すぎる。

 

『え?』

 

 だがその目論見は、下半身だけの状態で放たれた蹴り一つで崩壊した。

 ありえない。そういう思考が一瞬だけオーフィスの脳裏を埋め尽くす。肉体の司令塔たる脳が破壊されれば体は動かせない。それはどんな超常の存在であっても同じこと。にも拘らず、この悪神は脳の無い状態で龍の息吹を蹴りで弾き飛ばしたのだ。

 

「クカカカカ……危ないところだったぞ」

 

 疑問符を浮かべるオーフィスの耳に、アンリマユの声が響く。よく見ると、向う脛に出来た顔が喋っているではないか。それを見て幾星霜の時を生きた龍神は答えをはじき出す。

 彼が絶対悪の試練として顕現していた時代、何かにつけて邪魔者扱いされては戦いを繰り広げてきたオーフィス。その時から彼は肉体の改造に優れてはいた。だが本来頭部にあるべき脳を脚に移動させる(・・・・・・・)など常軌を逸脱しているにも程がある。

 思わず呆れかえるオーフィスを尻目に上半身を完全に復元したアンリマユは肩を鳴らしながら残虐で獰猛な笑みを浮かべる。完全に自分を滅ぼすまで止めるつもりはないのだと、他人に関心の薄いオーフィスをして理解できるほど濃密な殺意だ。

 このまま戦い続ければ、勝つか負けるか分からない上に、悪戯に霊格を消耗する可能性が高いことを理解したオーフィスはあまり期待せずに悪神に問いかける。 

 

『アンリマユ』

「なんだよ?」

『我、グレートレッドを倒したい』

 

 真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)、グレートレッド。オーフィスと対を為す夢幻を司る龍神であり、かつてアンリマユとも激戦を繰り広げたことのある聖書の赤き真龍。

 本来、人類や神霊の事情に興味のないオーフィスがテロリストである禍の団(カオス・ブリゲード)に協力する理由は故郷である次元の狭間をグレートレッドに占拠されているからに他ならない。妨げられることのない静寂を求める彼女にとって真龍は極めて邪魔な存在であり、彼を倒そうにもオーフィスとグレートレッドでは相性が悪い。故に、グレートレッドと同格であるアンリマユに協力を持ちかけたのだが――――

 

「あぁ、昔もそんなこと言ってたな。………だから? それで?」

『協力して』

「プギャーーーハッハッハッ!! まさかこの俺にお前みてぇな害獣の頼みを聞けと!? もし叶うと思ってんならとんだロマンチストだなオイ!! ひゃははははははははははは!!!」

『………』

 

 一切の遠慮のない嘲笑にイラァッと、オーフィスは静かにムカついた。こんなに笑われるならやっぱり言わなければよかった。

 

「昔言ったことを忘れたか? 忘れただろうなぁ、お前興味のあることしか覚えねぇし。ならもう一回言ってやるよ」

 

 指を五本立て、アンリマユは哀れみさえ含む目で告げた。

 

「俺はこの世で嫌いなもんが5つあってなぁ。ハーレム、凶信者、性善説、青臭い餓鬼、そしてケダモノってのが一番嫌いなんだよ。テメェみたいに人の言葉を解す分なお気持ち悪い。それでもお前とグレートレッド、どちらかを選べと言われれば、当然後者だろうよ」

『??? なぜ?』

「人里に降りてこないケダモノと、人の領域を荒らさんとする害獣。駆除するならどっちにするかって話だよ。出血大サービスだ、この俺手ずから霊格(存在)を丸ごと吹き飛ばしてやる。()くと()ぬがいい、古の龍」

 

 交渉決裂。コミュニケーションが大の苦手な龍神と共戦を嫌う悪神とでは当然と言えば当然の帰結である。

 背中から生えた2本の巨腕がオーフィスの体を掴み、ゴムで弾き出されたかのような推進力で突貫する。対する龍神は己の目的のためにもこれ以上戦いを長引かせて消耗したくはない。無数の光弾を雨のように浴びせるが、アンリマユは肉が抉れてもそれを介さず懐に飛び込む。

 

「ヒャァアッハァ―――――――っ!!!」

 

 焔を纏った一撃はオーフィスの腹を焼き、勢いをそのままに背中を突き破る。血濡れで背中から這い出た悪神は両翼を掴むと、そのまま力任せに引っ張り始めた。

 

『GYEEEEEEEEEEEEEEEEYAAAAAAAAA!!!!』

 

 絶叫をあげるオーフィス。両翼の骨は万力で砕け、根元から引き千切られる。戦場は宇宙空間。翼を捥がれ、飛翔能力を失ったとはいえすぐさま引力に引っ張られる形で地表に叩き付けられることは無いが、逆に言えば三大勢力や神話勢力と中立関係を結んだアンリマユにしてみれば周囲の被害を殆ど気にせずオーフィスを滅するに絶好の機会。

 人の世の営みを初め、あらゆることに関心の薄いオーフィスだが、彼女は決して頭が悪いというわけではない。傍若無人で知られる悪神が十全の力を発揮できる地表や月面から離れたのは、彼が訳あって神霊や怪物の脅威を人々から遠ざけようとしているからだと理解していた。

 このままでは長期戦は必須。地表に戻って仕切りなおす必要がある。だが飛翔能力を取り戻そうにも、翼の再生は傷口を悪神の炎で焼かれてすぐには出来ない状態。オーフィスは悪神の怒りを更に買うことを理解した上で、策に出た。

 

「ごぶっ」

 

 鋭利な先端を持つ龍の尾がアンリマユの背中から腹を突き破り、そのまま雁字搦めにして拘束する。そしてすかさず地球に向かって極大の息吹を放った。

 

「ちょっ!? おまっ!?」

 

 大陸一つを丸ごと吹き飛ばしかねない、無限の権能によって放たれたドラゴンブレス。流石に焦ったアンリマユはオーフィスの尾を切り離そうとするが、尾全体を龍気で覆ったそれを千切るには時間が掛かる。

 仕方なしといわんばかりに、アンリマユはオーフィスの体そのものを足場に地球に向かって跳躍。オーフィスを引きずる形で地球に迫るその速度は第四宇宙速度にまで高まって龍の息吹の前に躍り出た。そこはすでに地球の雲の中である。

 

 目の前に迫る極光の柱は、今回の戦闘で受けたものとは比較にならない威力を秘めている。生半可な一手では全身を吹き飛ばされることは必須。アンリマユはすかさず切り札を切った。

 

「アヴェスター起動。相克して廻れ、善悪二元論……!」

 

 熱源は灼熱の太陽よりも尚熱い。

 双掌に圧縮された炎球を掲げて龍神の息吹を受け止めた。手の平大の炎球はすぐさま打ち消されるかと思いきや、より激しい灼熱を放って鬩ぎあい始めた。

 反発しあう度に力を増していく炎球はやがて蒼い光球となり、光を捻じ曲げるほどの力の渦を生み出す。息吹と灼熱の衝突は数十トンはある雲を蹴散らし、気流の流れを変えていく。

 

「この程度……やはりお前はドスランポス……いや、ブルファンゴにも劣る駄竜だったな!!」 

 

 無限の龍気と蒼炎の星は同時に砕け散る。

 余波の直撃を受けた龍神と悪神は、その身を宙に舞わせた。地表へ真っ逆さまに落ちる中、雲を突き破るアンリマユの超聴覚が地表……正確には駒王学園のグラウンドから聞こえる叫び声を捉えていた。

 

『ヴァーリ! テメェを野放しにしてたら、部長どころか他の皆のおっぱいまで半分になっちまう!! これは、部長のおっぱいの分!!!』

 

 おっぱいと、確かにそう聞こえた。これは間違いなくあの赤龍帝の小僧の声。

 

『これは朱乃さんのおっぱいの分!! イリナのおっぱいの分!!』

「……んー」

 

 『誰だ、人が珍しく真面目に戦ってる時に』。アンリマユは基本的に軽い性格をしていて、戦闘中でもフザけていいのは己の特権と言い放つ自分勝手な性格である。

 

『これは成長途中のアーシアのおっぱいの分!! ゼノヴィアの分!!』

 

 こんな雲の上まで突き破るような大声でおっぱいと連呼し続けるあの小僧をどうするべきか。

 

『そしてこれが、半分にされたら丸っきり無くなってしまう小猫ちゃんのロリおっぱいの分だぁぁぁぁああ!!』

 

 悪神はうん、と一つ頷いて呟いた。

 

「あの赤い龍の小僧、地表に戻ったら殺そう」

 

 

 

 




疑似創星図までは出さない。めんどくさくなるので

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