二重真祖様の幻想生活   作:エントさん

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 はい、私は文章力を身に着けて(昔よりは)帰ってきました!
 久々に一話を見たんですが酷すぎて書き直しを決心しました。

 一話を消そうと思ったんですが、なんだか思い出深くて消せなかったので《改》として一話から書かせていただきます。

 自分の黒歴史作品を一般作品並みにさせたいの精神でやっていきます。


改『物語はプロローグから始まる』
改一夜『ブラッド・レイヴンの憂鬱』


 曰く、彼はヴァンパイアの頂点であり。

 曰く、彼は圧倒的な強さを持ち。

 曰く、彼は『孤独』である。

 今から読んで頂くのはそんな彼の物語。

 

『アハハ‼お兄ちゃん!私と遊ぼう!!!』

 

「...(いいいいいいいいいいいやあああああああああああああああああああ)」

 

 そんな、彼の物語……。

 

 

 ※ ※ ※

 

 

「静に、暮らしたいなぁ……」

 

 とある山の中、吸血鬼でありながら太陽に肌を晒している少年が呟いた。

 

 __ガサガサッ

 

 そんな少年の前に一人の男が現れる。

 その男の頭上には暗雲が浮かんでいる。

 

「__貴方が真祖様か?」

「……」

 

 少年は返事を返さない。

 しかし、体から出てくる魔力が暗雲を浮かべた男に悟らせる。

 

(やはり、このお方が真祖様……)

 

 無言の威圧に愚問をしてしまったと男は後悔する。

 男は、この少年の濃密で圧倒的なまでの力量さを感じさせる魔力を見て『このお方が真祖様でない訳がない』と悟らせた。

 

「やはり、真祖様なのですね……」

 

 男は涙を流す。

 

「__お会いできて光栄にございます!!!!!」

「……」

 

 男は目にも止まらぬ速さで頭を地面に付ける。

 

「お前らも出てこい! このお方は真祖様だ!!」

 

 男が横の草むらを見て言った瞬間、草むらから隠れていた十数人の吸血鬼が出てくる。

 少年も出てくる吸血鬼達を見ている。

 

「「「ようこそ、私達の領地にお越しくださいましたぁぁぁ!!!!」」」

「……」

 

 ある者は高揚した顔をし、ある者は涙を流し、ある者は見惚れながら少年の方に頭を下げる。

 

「し、真祖様……、よろしければ私の血を吸ってくださいませんか……?」

「こ、こらっ! 何を大それた事を言っている!!!」

「あっ、す、すみません!! 真祖様に会えた喜びのあまり!!」

 

 吸血鬼の女性が少年の事をトロンとした顔で見ている。

 その顔に理性はなく、自分の欲望を口にしてしまう。

 それを横にいた男吸血鬼が注意すると女性ははっとし深々と頭を下げ謝罪する。

 

「別に、いい」

 

 少年は初めて口を開いた。

 

「な、なんと慈悲深い……」

「流石真祖様」

「我々の頂点に立つお方……」

「あんな無礼を働いた私を許してくださるなんて……」

 

 吸血鬼達は先程よりも深々と頭を下げ敬意を示す。

 それはまるで、子供が親に気に入られたがっている様な光景だ。

 

 

 ここで、一つ思い出して欲しい。

 この吸血鬼達が現れてから少年が喋ったセリフは『別に、いい』だけである。

 それ以外は周りが勝手に盛り上がっている状態だ。

 実際、少年の内心は

 

(な、なにこの人達!? なんで頭下げてるの!? それに血を吸ってくださいって、それじゃあ吸血鬼じゃなくて吸血され鬼じゃないか! ……ゴロ悪ッ!)

 

 なんてことを思っていた。

 そう、少年は俗にいう『コミュニケーション障害』。__コミュ障だった。

 人前では話すどことか、表情を変える事すらほとんどできない。

 重度のコミュ障だ。

 

「真祖様! よろしければこれから私の屋敷に来ていただけませんか?」

「……先を、急いでいる」

「……ッ!!?」

 

 屋敷に招いた男は地面に頭を擦りつけた。

 

(えっ、断ったのそんなに悪かった!?)

 

 男は涙を流す。

 

「まさか、先を急いでおられたとは……ッ! そうとは知らず、真祖様の足を止めてしまうなんてッ! 誰か! 私の首を切り落としてくれ!!」

(えぇ!? だ、ダメだよ! 命を粗末にしたら!!)

 

 少年は涙を流し、地面に頭を擦りつける男の肩を掴む。

 すると、男は顔を上げ少年の顔を見る。

 

「命を、粗末にするな……」

 

 少年はそう言うと、そそくさと逃げるようにその場を離れた。

 少年の影も見えなくなったころ、涙を流していた男は立ち上がり少年の向かった方を向く。

 

「真祖、ブラッド・レイヴン様……。なんと、慈悲深くお優しい方だ……。勝手ながら、私は貴方様に忠誠を誓わせていただきます」

 

 男は自分の胸に手を当てそう呟く。

 こうしてまた、真祖『ブラッド・レイヴン』の噂が広がっていくのであった。

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 ブラッドはしばらく歩き、溜息をついた。

 

「最近、あんな人たちが増えてきてるよ……。僕、一体どんな噂されてるの?」

 

 ブラッドが木の陰に座り、憂鬱な気分になる。

 

 __ガサガサ

 

 ブラッドが憂鬱な気分になっていると近くの草むらから何かが向かってくる音がする。

 

(も、もしかして、またさっきの人達!?)

 

 しかし、ブラッドの予想は外れる。

 茂みの奥から出てきたのは、現代では珍しく腰に刀を差した武士風の男だった。

 

「貴様、何者だ!」

 

 男はブラッドを見るなり叫んだ。

 

(な、なにこの人……)

「その濃密で膨大な魔の力。ただのあやかしではないな……」

(もしかして、中二病?)

「答えぬのならいい!! 貴様は俺が切り捨てるッ!!」

 

 男がブラッドに刀を突きたてる__

 ブラッドは驚き、目を瞑った。

 

 

 ※ ※ ※

 

 

「__グハッ!?」

(えっ、何?)

 

 ブラッドが目を開けると、目の前には血まみれの男が倒れていた。

 

(……ファッ!?)

 

 ブラッドは驚きのあまり、目を見開いてしまう。

 

「最後の……、戦いには、良い戦いになった」

「そうか……」

 

 状況が全く分かっていないブラッドはなんとなくで返事をした。

 

「最後に、名前を……聞かせてはくれないか……?」

「ブラッド・レイヴン……」

 

 男はブラッドの名前を聞くと一瞬微笑み、死んでしまった。

 ブラッドは意味も分からず、男の死体の前に突っ伏している。

 そして、ブラッドは

 

 

 

「……取りあえず、埋めよう」

 

 

 

 男を土に埋めた。

 証拠隠滅である。


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