『セイバーウォーズ ~ Fate of Flower ~』   作:歌場ゆき

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スマホからご覧のかたはごめんなさい。

完全にPCから読むことを想定した改行や見せ方をしていますので、
PC閲覧推奨です。
たぶん、スマホ読みは玄人向けです。

全体で二万文字を少し超える程度のものになります。
それほど長くはありませんので、最後まで読んでいただけると幸いに思います。


では、どぞどぞ。





「鼻につく、花の香り」

どうしてこうなった。

そんなことを今更思う。

 

おかしい。本当におかしい。

こんなはずではないのだ。

 

だって自分は諦めたのに。

やっぱりいいか、と考え直したのに。

 

それなのに。

なんだこの結果は。

なんだこの結末は。

 

―――なんで。

―――どうして。

 

自分以外のセイバーが抹消された世界。

 

この出来事の引き金を引いた当事者は自嘲気味に空を仰ぐ。

 

そんなことはわかりきっているのだ。

なんで、どうして、なんて。

自分が一番よく知っている。

 

私が余計なことをしたせいで。

私が馬鹿なことをしたせいで。

――このザマだ。

 

可能性でしかなかった少女に手を差し伸べた。

その未来に祝福を与えてしまった。

 

だから。

 

 

 

 

私はその責任を取らなければいけない。

“彼女”を――――、止める。

 

 

――――――たとえこの命と引き換えにしても。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

“彼女”と最初に出会った場所も既に

“彼女”が訪れた後なのだろう。

 

酷い有り様である。

 

 

 

――――マスターのお役に立ちたいのです!

 

 

 

そう言って一心不乱に剣を振っていた少女。

そのマスターと仲間たち。

 

とても幸せそうだった。

 

少し羨ましかった。

なんて言うと怒られてしまうだろうか。

 

誰かのために、と迷いなく剣を振れる“彼女”が眩しくて。

そう思える者たちに囲まれている“彼女”が羨ましくて。

 

だから、つい。

“彼女”にちょっかいをかけてしまっただなんて。

 

ダメだろうか。

 

 

思えば、

あのお節介のような修行の最後には――、

“彼女”と剣を交えたのだった。

 

 

その焼き直し、とでも言うのか。

 

 

あのときと違うのは

今度は、一対一だということ。

 

 

 

 

ふいに、

強い風が吹く。

甘い香りを運んでくる。

 

 

――――鼻につく、花の香り。

 

―――これは、百合だ。

 

 

正面から暗黒に身を染めた“彼女”がゆっくりとこちらにやってくる。

 

かつて『セイバー』であった少女が。

今では『アサシン』となった少女が。

 

これでは、

本当に、これではあべこべだ。

 

「やはり――、貴女が“本当の“最後のセイバーですか」

 

初めにかけられた言葉に対して、

表情には出さないものの苦笑してしまいそうになる。

 

たしかに、私こそが最強のセイバーだと

名乗っていたこともあるけれど。

ある意味、最初のセイバーである“彼女”に

そんなことを言われる日が来るとは。

 

――随分と皮肉な話だ。

 

「なにか言い残すことは……?」

 

そっとかぶりを振る。

事ここに至って言葉は必要ない。

 

「――――そうですか」

 

無機質な声でそう言って、“彼女”はかつて白く輝いていた剣を抜く。

今やその剣は目の前にいる黒い騎士姫の身と同じく暗黒に染まっている。

その剣で“彼女”は自らの原点ですら葬ったのだ。

本来、決して届くはずのない未来に刃を突き立てた。

 

ゆえにーー

“かの王”はもういない。

 

自らの原点であり未来を殺した瞬間に真白な“彼女”は暗黒に染まった。

そこが“彼女”にとっての分水嶺。

そこでダークサイドに堕ちたのだ。

 

 

 

 

――絶望の花は咲き乱れ。

――香り漂う狂気を振り撒く。

 

 

 

「セイバー狩り」を行った張本人。

 

白百合の騎士姫は、黒百合の騎士姫へと成り果てた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

対面の“彼女”は剣を下段に降ろし、後ろに持っていく。

 

――――――ああ、わかる。

 

“彼女”がセイバーであったころの特攻の構え。

 

アサシンに身を墜としても正々堂々の

真っ向勝負をしてくるなんて――――。

 

 

『まだ“彼女”のどこかに“かつての少女“がいるのではないか』

そんなくだらないことを考えてしまう。

 

 

余計な思考に回した意識を切り替える。

臨戦態勢を整えなければならない。

 

 

 

 

こちらも両手剣を抜く。

 

そして、二対の剣を重ね合わせる。

 

柔らかな光を放ちながら互いに混じり合い、剣は形を変える。

 

と同時に――――、

 

――持ち主の姿をも書き換えていく。

 

 

 

 

【創造理念】

 

ワタシ――――

 

       【基本骨子】

 

      ワタシガ―――――

 

             【構成材質】

 

           ――――――ヘンヨウスル

 

                   【制作技術】

 

                   チカラ――――

 

                        【成長経験】

 

                       チカラヲ―――――

 

                             【蓄積年月】

 

                          ――――――ココニシメス

 

 

 

 

指先にまでかかっていたモノを掴んで、

 

自らの所有物とするように。

 

 

過去と未来を否定するのではなく、

 

許容し受け入れる。

 

 

私を私たらしめていた全てのプロセスを

 

瞬間的に分解し、また構築し直す。

 

 

ただ存在に存在を上書きするのではなく、

 

存在に存在をかけあわせる―――。

 

 

本来、許されるはずのない越権行為。

 

私と“かの王“のつながりを以ってして成せる禁じ手。

 

 

あらゆるセイバーを殺し尽くした目の前の“彼女”を凌駕する力を――、

 

 

―――今、ここに。

 

 

 

 

そして、

 

―――――伝説は成立し、常勝の王が顕現した。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「…へぇ」

 

まるでおもしろい玩具を見つけた子どものような笑みを浮かべる黒い騎士。

 

「おかしいと思っていたんですよ。

最後のセイバーを殺したと思ったら、

それまで存在しなかったはずのセイバーが

その後に出現したんですから」

 

――細かい中身こそ違えど…。

――その聖剣……、疑うまでもないでしょう。

――なるほど、“そういう”ことですか。

 

そう言って一層笑みを深める。

それから、

 

「お披露目はもういいですか? どうぞ構えてください」

 

そう言葉で促される。

 

やはり正面きっての斬り合いをご所望らしい。

アサシンらしからぬ言動だ。

 

少し出遅れた形ではあるが、

相手と同じように特攻の構えを取る。

 

 

 

点対称に自分を見ているようだ。

相手にもそう見えているのだろうか。

 

 

 

そして、

一瞬の静寂。

 

唐突に口を開く相手。

 

「以前、師と仰いだ貴女に尋ねてみたかったのです」

 

来る。

そう直感が伝える。

 

剣を握り直し、グッと体を沈みこませる。

 

 

―――きっと、少女は己の行く末をどこかで知ってしまったのだろう。

―――神の創る絶望に彩られた世界の果てを。

 

そして――、過去の私と同じ結論に至った。

 

 

 

 

「弟子に殺される気分はどうです、かッ――――――!!」

 

と言い放ち、突っ込んで来る。

 

 

 

――この少女は、私だ。

 

 

 

だからこそ、けりをつけるのは自分以外ありえない。

 

‟彼女”の師として。

‟自分自身”として。

 

なによりも―――

 

セイバーとして。

 

 

 

 

私は

この娘に出会って、

セイバーを皆殺しにすることを

 

――――――――――諦めることができたのだから。

 

 

 

 

親愛なる弟子の名を叫ぶ。

 

「リリィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!」

 

魔力を放出し、特攻をかける。

 

瞬く間に接近する相手に対して、全く同時に斬りかかり、

 

 

 

 

――――そして。

 

 

 

 

 




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