噛ませ犬でも頑張りたい   作:とるびす

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農耕戦士ラディッツの怒り◆

 膝を着き、血を拭うピッコロはターレスのあまりの戦闘力に驚愕していた。

 

「な、なんという力だ…これがサイヤ人なのか…!?とてもじゃないがラディッツとは比べものにならんぞ…」

 

「ラディッツ?ああ…バーダックの倅か。あんなやつと一緒にするな。オレは最強戦士ターレス、サイヤ人の域を超越した者だ!」

 

「ぬかせぇッ!!」

 

 ターレスに力負けしたピッコロだったが、それでも負けじと果敢に飛びかかる。しかしターレスは余裕の笑みでそれらを捌きピッコロの体を強打してゆく。

 二人の間には圧倒的な能力の隔たりがあった。

 

「ピッコロさん…頑張って…!」

 

「…!!」

 

 だがそれでもピッコロは決して引かない。自分の後ろには悟飯がいるのだ。

 勝てないのは腹立たしい。だが今ばかりはそれでもいい。ここにはピッコロ以外にも地球の戦士たちが集結している。自分がターレスを倒せなくとも他の誰かがターレスを倒せればいい。今ピッコロがすべきなのはターレスに地道にダメージを与えつつ時間を稼ぐことだ。

 

「爆力魔波ッ!!」

 

「チッ、虫けらが!」

 

 ターレスは片手でピッコロのエネルギー波を弾き飛ばしてしまう。その衝撃は流石に準備なしの防御を突破したらしく、ターレスは腕を痛そうに抑えていた。そうだそれでいい。

 

「まだまだいくぞっ!ぜぇやッ!!」

 

「虫けらが調子にのるなッ!」

 

 

 

 *◆*

 

 

 

 ところ変わってレズンvs天津飯。

 序盤から天津飯に対し優勢に戦いを進めていたレズンだったが、ここでとある違和感に気付き眉をひそめる。

 天津飯は途中より反撃を完全に止め、なすがままにレズンからの気功弾に晒されていた。戦意を失ったのかと思ったが天津飯の目を見ればそんなつもりは毛頭ないことがよく分かる。

 しかしこのような状況で一体何が出来るというのだろうか。天津飯に勝ち筋はないのに。レズンはそう確信していた。

 確信していた…だからこそ天津飯という戦士の真の強さに気がつくことができなかったのだ。

 

「…なるほど、分かった」

 

 天津飯はそう呟くと気合砲を発し、レズンの気弾幕を強引に掻き消す。そして何事だと見下ろすレズンを尻目に言い放った。

 

「全てが分かったぞ。貴様の攻略法も、貴様への勝ち筋も!」

 

「…はぁ?てめえ何を言ってやがる!」

 

 レズンの目には天津飯が粋がっているようにしか見えなかった。状況も、戦闘力も、バトルスタイルも、全てにおいて勝っている自分がどうして負けるのだろうか?

 つまらん戯言だと一蹴し再び攻撃を開始しようとしたレズンだったが、直後に天津飯が放ち始めた凄まじい気迫にギョッとする。

 天津飯は全身の気を背中へと集中させる。するとみるみるうちに背中の肉が盛り上がり…やがて二本の手となった。お久しぶりの四妖拳である。あまりに異形すぎる変則技に数々の宇宙人を見てきたレズンでさえも困惑した。

 

「て、手が増え…!?」

 

「ふっ…これで単純計算で手数2倍だ。もはや貴様に遅れをとることはない!喰らえい、連続どどん波ァッ!!」

 

 天津飯は四本の人差し指から高速どどん波を連続して放つ。慌てて迎撃するレズンだったが、攻撃スピードは元来のレズンのものと比べれば明らかに天津飯の方が上であった。

 しかしレズンは序盤こそ天津飯に押されるものの、やがてどんどん気弾スピードを上げてゆく。そして打って変わり再び天津飯が押される展開となった。先ほどまでの彼もまた本気ではなかったのだろう。

 

「ヘッヘッヘ!手が四本に増えたからなんだァ!オレ様が少し本気を出せばこの通り…」

 

「…それが、貴様の本気なんだな?」

 

 レズンの勝鬨に対し天津飯は不敵な笑みを浮かべる。そして血管が張り裂けんばかりに力を込めると、叫んだ。

 

「界王拳ッ!」

 

「ッ!!?」

 

 天津飯の体から赤いオーラが弾け飛ぶと同時に気弾の攻撃力もスピードもが段違いに跳ね上がる。そしてそれらは相対する気弾を全て打ち消し、レズンへと殺到した。

 そして元々から貫通力の高いどどん波はレズンのプロテクターを容易に破壊し、貫いた。

 

「そんな…馬鹿…な…」

 

 その言葉を最後にレズンは蜂の巣となり息絶えた。天津飯はふぅ…と息をつくと腰から仙豆を取り出し、咀嚼した。

 

「餃子は無事だろうか…すぐに行かなくては」

 

 

 

 *◆*

 

 

 

「ヘッヘッヘ…やっと追い詰めたぞチビ!」

 

「はぁ…はぁ…」

 

 ラカセイの気弾の嵐を数分にわたって回避し続けた餃子だったが、ついに背を神精樹に阻まれてしまった。もはや袋のねずみと言わんばかりにラカセイは徐々に餃子との距離を縮めてゆく。

 ふと、ラカセイが体を捩る。その瞬間、先ほどまでラカセイのいた場所を多数の木杭が通過した。何本かはラカセイに突き刺さったが大して気にとめるまでのものではない。餃子は真下にある枯れ木を粉々に砕き、ラカセイの背後に忍ばせていたのだ。しかしそれはラカセイには通用しなかった。

 

「味な真似をしてくれるじゃねえか。けどこれで万策は尽きたな!大人しく死んで、神精樹の栄養になりなァ!!」

 

 掌にエネルギーをかき集めトドメの一撃を放とうとする。しかしそれは餃子の超能力によって中断された。ラカセイは頭を抑え、苦しそうに喚き回る。

 目は充血し、その形相は必死そのものだ。

 

「あ、ぐあぁぁぁああッ!?」

 

「へ、へへ…やっと効いた…」

 

 古代種ビーンズ星人は超能力への耐性を持っていない。しかしそれは彼らの高い技術力が作り出した対超能力カプセルの効力によって封殺することができる。

 だが餃子は外部へのサイコキネシスによる圧力によってラカセイの傷口から血液ごと効力を霧散させたのだ。

 もはや餃子の超能力はラカセイの神経にまで達した。界王拳を使えば二人の間にそれほどまでの力量の差はない。よって餃子はラカセイの体の全権を掌握することができたのだ。

 

「えい!」

 

「たわばっ!」

 

 そして爆発。

 奇妙な断末魔を上げ、ラカセイの頭部は弾けた。頭部を失ったラカセイの体は下へと落ちていき、神精樹の養分となったのだった。

 

 餃子は勝利に強くガッツポーズをすると近くに感じる天津飯の気の元へ移動を開始した。

 

 

 

 *◆*

 

 

 

 アモンドは豪快なパワータイプでありながら同時に頭も切れる、まさに文武両道の戦士だ。即座に界王拳の弱点を見抜きそれに対処していた。対するクリリンは気の扱いに長けた気功術のエキスパートである。最近はさらに気の操作という技能を身につけ、技がさらに多彩かつ強力なものとなった。

 アモンドとクリリンの攻防はほぼ互角であった。いや、界王拳という諸刃によって戦局を繋ぎ止めているクリリンの方が若干不利か。

 しかし潜在的な戦闘力自体はクリリンの方がかなり上なので一概には不利有利とは言い切れない。

 

「だあッ、ハッ!」

 

「こなくそォ!!」

 

 互いの拳がぶつかるたびに大気が震える。巨漢のアモンドへと果敢に挑む小柄なクリリンの姿はなお際立つ。クリリンの小回りの効く立ち回りは着実にアモンドをイライラさせていた。

 そしてついに堪忍ならなかったのかアモンドは唸り声をあげるとフルパワーで必殺のエネルギーを放出する。

 

「プラネットボムッ!!」

 

 瞬間、神精樹の根元は爆発に包まれた。その威力や地球の形を変えるほどである。そして爆発が収まると同時に辺りを濛々と煙が覆う。

 フルパワーのプラネットボムに力を使いすぎたのかアモンドは、はぁ…はぁ…と肩で大きく息を吸う。しかし自身最高の一撃だ。あのチビは間違いなく吹き飛んだだろうとアモンドはニヤリと笑い前方の煙を見やる。そこには…

 

「へへ…ちょいとばかし危なかったかな」

 

 前方に気のシールドを展開しているクリリンの姿があった。無論クリリンも無傷ではなくそれなりのダメージを負っているが、アモンドの消費に見合うものではない。

 これにはアモンドも唖然とするしかなかった。

 

「さて、今度はオレからやらせてもらうぞ!か…め…は…め…!!」

 

「ま、まてーーーー」

 

 クリリンはアモンドの必死の制止に耳を貸さず、界王拳を使用。そして自身最高のかめはめ波を放った。

 

「波ァァァァァッッ!!!」

 

「うごぁぁぁぁ………」

 

 アモンドはなす術なくクリリンのかめはめ波に飲み込まれ、消滅した。クリリンは後味悪そうにその最期を見届けると辺りを見回す。すると近くで戦っていたヤムチャとカカオの戦闘が今終わったところだった。

 

 

 

 *◆*

 

 

 

 狼牙風風拳とカカオの連撃。お互い譲らぬその攻防は一旦両者が距離を取り合うことで幕を降ろす。ヤムチャはまだ少しも消耗していないが、カカオはサイボーグである。疲れなどあるはずがない。

 

「チッ…素の状態とはいえここまで食らいついてくるとは…。こうなったら界王拳を使うほかないな…!!」

 

「ンダ…?」

 

 いざ気を解放し、界王拳を使用しようとしていた、その時だった。ヤムチャの頭に電流が走る。

 ヤムチャは急いで界王拳を止めにすると、奇妙な構えを取り始めた。両手の掌を合わせると顳顬に青筋を立てるほどに力を集中させてゆく。やがてヤムチャの掌は発光を始め、その光は電流へと変化する。眩いスパークがその危険度をカカオに知らせていた。

 

「へへ…機械だっていうんなら…電気に弱いんじゃないか?『萬國驚天掌』ッ!!」

 

「ン、ンダ!?」

 

 ヤムチャから放たれたのは輝く電撃。文字通り、電光石火の速さでカカオに迫る。

 そして命中した。

 輝く電撃はカカオを飲み込み、一切の自由を奪う。そしてカカオの機械の体にとてつもない負荷を与えていくのだ。その威力の凄まじさはカカオの体から立ち上がる黒い煙が立証している。

 

「オラァァァァァッッ!!」

 

「ンダ、ンダダダダダダ…ダ…………ダ」

 

 しばらくはもがくなりして抵抗を見せていたカカオだったが、体より青白いスパークが飛び出し、やがて動かなくなった。

 ヤムチャはその姿を見届けると萬國驚天掌を解除する。気の性質変化に興味があって亀仙人にこの奥義を習っていたが、役に立ったようで満足げである。

 

 するとそこへ各々クラッシャー軍団を撃破したZ戦士たちが合流する。皆一様に互いの顔を見合わせ、無事を確認すると大きく頷いた。

 

「中々手強かったが…これで全部か?」

 

「いや…確か悟空の方に…」

 

 そう言って悟空の方へ目を向けると…ちょうど悟空がダイーズにエネルギー波でトドメを刺したところだった。クラッシャー軍団の中でも二番目に強いダイーズといえども一度界王拳を使用した悟空相手では歯が立たなかったようだ。

 

 悟空も皆と合流し、情報交換に努める。

 そして目の前に現れたクラッシャー軍団を全員やっつけたことを確認し終わった、その時であった。

 悟飯を残してきた辺りで凄まじい爆発が起こった。

 

「な、なんだ今のは…」

 

「ご、悟飯ーーっ!!」

 

 いち早くその場へと飛んでいった悟空にZ戦士たちは続く。そしてその現場に到着するのだが…そこには目を疑うような光景が広がっていた。その光景にZ戦士たちは言葉を失った。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 ピッコロがボロ雑巾のように転がっていたのだ。そして悟空そっくりのターレスは悟飯を掴み上げ何かをしようとしている。

 悟空は一目散にターレスへと飛び掛った。

 

「やめろーーッ!!」

 

「ん?カカロットか…ふん!」

 

 悟空は一撃で地に伏せた。あまりのダメージに起き上がることすらできない。苦しそうに地でもがき苦しむ。その姿を見下ろすターレスは愉悦に浸るように笑った。

 ターレスの圧倒的な力の前にクラッシャー軍団を倒し、勢いづいていたZ戦士たちは蛇に睨まれたカエルのように動けずにいる。ヤムチャもターレスがここまでとは予想だにしていなかったのだ。

 

「ほう…貴様ら、あいつらを倒したのか。地球人にしちゃ中々やるようだな…」

 

 Z戦士たちの姿を見つけたターレスが感心したかのように誉めたたえる。仲間を殺されてもこの態度…ターレスの冷酷さが窺い知れた。

 

「どうせ貴様らもオレの勧誘に乗る玉じゃねえんだろ?さて…どいつから殺してやろうか…!」

 

「…!ち、ちくしょうがァァ!!」

 

 弾けたようにヤムチャが飛び出す。それに続いて天津飯、餃子、クリリンも飛び掛った。皆が既に界王拳を発動している。

 だがそれらもターレスにとってはただの小石に変わりない。自分に近い者から順番に叩き潰してゆく。一番最初に地に叩きつけられたヤムチャは急いで復帰しターレスへと攻撃を仕掛けようと右腕を振り上げるが、ターレスは無情にもその腕を踏み砕いた。

 

「ぐっ…!!がぁぁ…!!」

 

「へっ、所詮は下等種族…無様なもんだ…」

 

 ターレスはヤムチャを蹴り上げ神精樹へと叩きつけると周りの戦士たちを体から展開したエネルギーによって吹き飛ばした。

 

 まるで相手にならない…ターレスは圧倒的すぎた。痛みから復帰した悟空がターレスへと気弾を放つが、それは簡単に弾かれお返しのエネルギー波によって悟空は神精樹の地下空間へと落ちていた。

 

「はっはっは!圧倒的だなオレは。しかもまだあれだけの神精樹の実が実っている…!オレはまだまだ強くなるぞ…!!」

 

 通行上に倒れ伏していたピッコロを興味がないと言わんばかり蹴り転がし、ピッコロもまた地下空間へと落とした。

 そして絶望に顔を歪ませる悟飯を掴み上げ、言い放った。

 

「お前には…サイヤ人としての本能を思い出させてやるよ。はぁぁ…!」

 

 ターレスが掌上に輝く光の玉を作り出した。

 不気味に輝くそれは悟飯にも見覚えがある。

 

「そ、それは…」

 

「そう…お月様さ。さあ本能を目覚めさせろ!でないとその立派な尻尾が泣くぞ!」

 

 ターレスは上空へとその玉を投擲した。そして掌をグッと握ると叫んだ。

 

「弾けて、混ざーーーー」

 

 ーーボウン!

 

 ターレスの投擲したパワーボールは、その効力を発揮する前に何者かによって撃ち落とされた。

 ターレスは忌々しそうにパワーボールを阻止した気弾が飛んできた方向を見やる。

 そこには…同族がいた。

 いつもの農家服を着込んだラディッツが険しい目つきでターレスを睨む。

 

「…誰かと思えば、ラディッツじゃねえか。クックック…確か王子様と一緒に難を逃れたんだっけな。元気にしてたか?」

 

「ふん、確か貴様はターレスだな。親父とよく似ていることで評判だったサイヤ人…だろ?」

 

「ご名答だ。それで?なぜオレ様の邪魔をした。まさかこのオレに楯突こうって気じゃないだろうな」

 

「楯突く?バカを言うな。オレは貴様を殺しにきたのだ!」

 

「ほう…なぜ?」

 

「人様の畑をめちゃくちゃにしやがって!!覚悟はできてるんだろうなァ!!」

 

 農耕民族、ラディッツの怒りが爆発した。

 




カミヤマクロさん……この人修正版まで描いてくれたんだぜ? ありがてぇよ……!


クラッシャー軍団の戦闘力は1万前後だと予想しています。ターレスは…3万から53万の間かな?幅ありスギィ!
なおラディッツの畑は見るも無残に破壊されました。


ダイーズ
カボーチャ星の王子なんですと。ターレスの勧誘の際にはさぞかしドラマチックなことがあったに違いない!戦闘力は15000あたりが無難かな。
No.2なのに出番少ない…

アモンド
ジャコかなんかに捕まってナッツ星送りにされたらしいです。ターレスの勧誘の際にはさぞかし人情溢れることがあったに違いない!
戦い方がナッパ様に似てて好き。なお気円斬は通じない。

カカオ
イコンダ星で作られたんだと。サイボーグらしいですけどターレス味方の選別見境いなさスギィ!
ところでンダって可愛くないですか?

レズン&ラカセイ
古代種ビーンズ星人らしいです。ターレスが復元させたらしい…なんだそりゃ。
クラッシャー軍団が無駄にハイテクなのはこいつらのおかげ!こいつらに天津飯が負けた時は心底驚いたなぁ…!
クラッシャー軍団ってホントに変わり者ばっか!

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