噛ませ犬でも頑張りたい   作:とるびす

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薄味戦闘回。
ホント薄味。



宙の花火と地上の花火◆

 よう、俺ヤムチャ。

 

 只今の戦況、一言で言うと…ベジータ強し。

 こんな小さい体でよくもこんな馬力が出せるもんだ。カルシウム足りてないとか言ってごめんな?

 

 今現在、俺とベジータどっちが優勢かと聞かれると…誠に残念だがベジータだと言わざるをえない。やはり素の戦闘力と界王拳という名のドーピング戦闘力じゃ使い勝手が違うのだ。

 あいつの戦闘力は18000だったよな。それに対し俺の通常時での戦闘力は8000、絞り出して9500ぐらいだったと思う。

 界王拳を使えば戦闘力的にはベジータと拮抗することはできる。だがね…場数が違うんだよ、俺とベジータは。

 そりゃ俺も何度か修羅場を乗り越えてきた。そしてその度にめぐるましいパワーアップを遂げてきたもんだ。だがベジータはそれを遥かに凌駕するほどの戦闘経験がある。だってこいつの人生=戦闘だからな。流石サイヤ人だと褒めてやりたいところだ。

 

 子供の頃から修羅に身を置いてきたこいつと、本格的な戦いを始めて14年の俺とじゃ基礎経験値が違う。全くもって厄介な奴だ。オマケにセンスの塊らしいし…。だからといってなぁ…戦闘力を上回る方法ならあるんだが…うーん…。

 ホント、色んな意味でいけすかん奴だ。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「地球人にしては中々やるじゃないか。戦闘力8000というのも嘘だな?軽く見積もって…15000かそれ以上…。もっとも、オレの戦闘力は18000だがな」

 

「なんだ、自慢か?」

 

 軽口を叩き合いつつも両者ともに構えを崩さず、双方を見やる。

 ベジータはかすり傷一つない、無傷の状態。対してヤムチャは既にボロボロ、体のあちらこちらから血を流していた。

 一見ベジータが圧倒しているように見える二人の戦いだが、実際は全然そんなことはない。ヤムチャにとってはそれまでの戦いは様子見のようなものだ。しかしベジータとてそれは把握している。

 

 ヤムチャはまだ2倍までしか界王拳を使っていない。それ以上の倍率は可能ではあるが、リスクが桁違いに高い。ヤムチャにとっても、ベジータにとっても。

 慣れない倍率での界王拳は気の制御が疎かになる。それゆえ気脈が一気に流れ出し半自動的にヤムチャ流界王拳が同時に併発する形で発動してしまうケースが多々あるのだ。

 

 そうなるとヤムチャの体への負担は5倍界王拳どころの話ではない。恐らくもって10秒程度だろう。そして洩れなくその後には爆発する。仙豆を食えばどうにかなるがそれが許されるのは口に含んだ仙豆による一回のみ。とてもじゃないがベジータが仙豆を食べるような隙を与えるとは思えない。

 それに今ベジータに仙豆の存在を感づかれるのはあまりよろしくないだろう。

 

 次にヤムチャが危惧しているのはベジータを殺してしまうということである。

 3倍界王拳とヤムチャ流界王拳が併発した場合、ヤムチャの加減は効かなくなる。その時の戦闘力は5万を確実に超え、ベジータをうっかり殺してしまいかねないほどだ。加減もできないため迂闊に発動するのは是非とも避けねばならない。

 

「そろそろお遊びは終わりにしようか…あっち(ナッパ)の方でも何かがあったみたいだしな」

 

「…そうしたい気持ちは山々なんだがな」

 

 ベジータが地を蹴るとともに其処は陥没し、どれだけの推進力が込められているのかが一目でわかる。グングンとスピードを上げヤムチャに迫った。

 ヤムチャは舌打ちし、ベジータへと真っ向から立ち向かう。ベジータの若干小柄な体躯から繰り出される連撃はそれに見合わず強力で、なおかつテクニック、スピードともに優れている。殆ど同じ戦闘力で相手するにはどうしても手に余る戦闘能力であった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 ヤムチャも負けじとベジータの連撃を次々に捌いてゆくがどうしても攻撃に転じることができない。なんとか突破口を開こうと変則的な狼牙風風撃・改を繰り出すがベジータはそれを一瞬で見切り、ヤムチャへと手痛い反撃を与えた。

 

「ぐっ、ちく…しょうが!多連繰気弾ッ!!」

 

 ヤムチャはジャグリングのように次々と繰気弾を生み出し空中に展開すると、それをベジータ目掛けて一気に投擲してゆく。

 だがベジータはそれらを全て連続エネルギー波(グミ撃ち)で撃墜し、ヤムチャへと殺到させた。

 まともにくらえばただじゃすまないだろう威力をその一発一発が秘めていた。ヤムチャは避ける暇もなく一つに被弾し、それに連鎖して次々と気弾が連鎖爆発を起こしてゆく。

 端から見ればヤムチャの原型すら残っているのが怪しいほどの威力であったがベジータは油断なく土煙を見据える。

 一迅の風が吹き、土煙が晴れる。そこには…

 

「ヤムチャは地球にて最強…覚えておけ!」

 

 不動の構えを保ち続けるヤムチャの姿があった。

 ヤムチャは気をドーム状に展開し、それを高速回転させることによって気弾を弾いたのだ。台詞は恐らくノリである。

 

「チッ…随分と小細工がきくじゃないか。お前の持ち技を一つずつ披露させて、それを真っ向から叩き潰してやるのも面白そうだ」

 

「好き勝手言いやがって…。余裕でいられるのも今のうちだぜ…!」

 

 ここでヤムチャは賭けに出た。ついに3倍界王拳を発動するのだ。しかし少しでも調節を誤ればヤムチャ流界王拳が発動してしまう。一瞬も気は抜けない。

 

「あああぁぁぁぁッッ……!」

 

「…なに、戦闘力が…ッ!?」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 めまぐるしくスカウターの数値が変動する。そして、叩き出した数値は…

 

「27000…ッ!?」

 

「ズェヤァァッッ!!」

 

 ヤムチャの気合い砲とともにベジータの足場となっていた岩が崩落する。その一瞬のスキ、それだけの須臾があればベジータへの接近は容易かった。

 

「デェアリャァァ!!」

 

「ふごぉっ!!?」

 

 ベジータの顔を殴り抜ける。錐揉み回転をしながらベジータは天然の岩山を突き抜けてゆく。そして地面へ。

 だがヤムチャの攻撃はこんなものでは終わらない。

 

「波ァーーッ!!」

 

 ベジータが堕ちた付近の岩場へとかめはめ波を放った。その何倍にも強化された一撃は地球をガリガリと削ってゆく。

 だがヤムチャの索敵はベジータの気を捉えていた。そう、ベジータはまだまだ元気だ。そしてその推測通り、己の気を爆発させることによってベジータはかめはめ波から逃れた。

 

「はぁ、はぁ…くそ、なんだ今のは…!?」

 

 額を滴る血を拭いながら遥か前方にいるだろうヤムチャへと目を向ける。そこには………誰もいなかった。

 

「なぁ…っ!?」

 

「オラァッ!」

 

 瞬間、ベジータは再び顔を地へと着けることとなった。背後よりヤムチャがベジータの後頭部を蹴りつけたのだ。今のヤムチャのスピードであればその程度の距離を詰めることなど容易なことである。

 地面に頭を埋めることとなったベジータだったが、痛みに悶える暇はなかった。彼の戦闘センスが訴えかけているのだ。()()()()()()()()()()

 急いで横へと転がった、その直後、先ほどまでベジータがいた場所をヤムチャの足が貫く。ベジータは急ぎ寝転んだ状態ではあるが態勢を立て直すと、ヤムチャへと気弾を放った。

 そしてその気弾は確かにヤムチャを捉えた……のだが、それがどうしたと言わんばがりにヤムチャは土煙を掻き消し、ぬっと手を伸ばしてベジータの足を掴んだ。

 

「は、はなせぇ…!」

 

 ベジータは顔面へと次々に気弾を放つがヤムチャには通じない。いや、通じてはいるのだろうが、ヤムチャは気にしない。

 ベジータの足を掴んだまま空中へと飛び上がると、思いっきり地面へとハンマーの要領で叩きつけた。足元の岩盤は砕け、ベジータは三度地へと顔を着けることとなった。

 そしてヤムチャはさらに思いっきり振りかぶり空中へとベジータを放り投げる。ベジータはすぐさま空中で静止するが、

 

「キッ!!」

 

「ぐほぁぁ!!」

 

 ヤムチャの気合い砲によってさらに上空へと押し上げられた。

 ここでベジータは、ブチ切れた。なぜサイヤ人の王子である自分が、こんな地球人などという下等民族に遅れを取らねばならないのだ。

 ふざけるな、オレは(将来的には)最強なんだ!(将来的には)宇宙一なんだ!

 あの地球人だけはどんな手を使ってでも殺さねばなるまい。

 

「クソッタレがァァァァッ!!!地球がどうなろうが知ったことかァァァァァァッ!!この星もろとも、木っ端微塵にしてくれるわァァァッッ!!!」

 

「…まだドラゴンボールで願いを叶えてないだろうに…。キレてるなあいつ」

 

 逆上したベジータは掌へとエネルギーを集中させてゆく。奇しくもそれは、かめはめ波とほぼ原理を同じくした技だったのだ。

 対するヤムチャもこれに対抗すべくベジータと似た構えを取り、エネルギーを集中させてゆく。これから放つのはギャリック砲と原理を同じくした技である。

 

「ギャリック砲ォォーーッッ!!!」

 

「かめはめ、波ァァーーッッ!!!」

 

 ほぼ同時に二人から同質のエネルギー波が撃ち出され、衝突した。

 かめはめ波とギャリック砲は、二人を結ぶ線上で衝突した瞬間に衝撃波を生み、周囲の地形を粉々に粉砕してゆく。その超パワーと超パワーのぶつかり合いは地球を揺るがし全世界へとその余波を広げ、浸透させてゆく。

 

 状況は…なんとベジータ優勢であった。その理由はひとえに二人の意志の違いにある。

 地球を粉々にしてでも相手を殺したいと思っているベジータと、ベジータを殺さないようにと思っているヤムチャとでは根本的な威力が異なる。いくら戦闘力に差があろうが意志がなければ意味がない。

 

「く、くそ…!(このままじゃ殺られちまう…それどころか地球まで…どうすれば…!!)」

 

 このヤムチャによる一瞬の迷いの思考。

 この思考が命運と勝敗を分けた。

 

 この瞬間ヤムチャが緻密に、緻密に体内で練っていた気が意図せず爆発したのだ。つまり、ヤムチャ流界王拳の暴走。

 ヤムチャが最も危惧していた事態が起きた。

 

「しまっーーーー」

 

 ヤムチャから放たれていたかめはめ波が数倍に太くなる。そのエネルギーの強大さはベジータのギャリック砲を遥かに上回った。

 

「なぁッ!?お、押され…ッ!!」

 

 ベジータの眼前にかめはめ波が迫る。

 当たる直前にベジータのスカウターが弾き出していた戦闘力数値。それは表示できる規模ではなかった。

 

「ば、かなぁ……!」

 

 ベジータは奔流に呑まれた。

 

 そして、地上と空中で汚い花火がほぼ同時に咲いたのだった。

 

 




ーーーその頃、悟空たちーーー

悟飯「魔閃光ーーッ!」

バイオマン「ぎええぇぇええ!!?」

悟空「4倍界王拳ッ!!」

バイオ戦士「ぐあああぁぁぁああ!?」

ピッコロ「よくもオレ様を操りやがったな!死にさらせい、魔貫光殺砲ッ!!」

Dr.ウィロー「の、脳が…(ガクッ)」



ドラゴンボールZ この世で一番強いヤツ、完

*◆*

Dr.ウィローは強敵でしたね(白目)
なんかはしょりまくってるような気がする。なんであの頃の私は3話も戦闘に使うことができたんだ…?

ていうかカラァァですよみなさん。カラァァ!
カミヤマクロさんは神か何かで? そうだ、ここにカミヤマクロさんを奉る神殿を立てよう…


たくさんの感想ありがとうございます!暇があるときにちょくちょく返してるのですが間に合わなくて…!
全ての感想読ませていただいてます。ありがとう…その感想の一つ一つが作者の血となり肉となるのだ…!!

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