噛ませ犬でも頑張りたい   作:とるびす

18 / 71
胸をどどん波によって貫かれてしまったヤムチャ!仲間を失った悟空は桃白白に勝てるのか⁉︎


噛ませ犬&主人公vs桃白白②

 熱い。体から燃え上がるように何かがこぼれ出している。

 徐々に力が抜けていって、ついには立つこともままならなくなった。

 

 ああ、そっか。俺、胸を撃ち抜かれたんだっけ?なんだ…案外痛くない……いや痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ⁉︎

 死ぬのか⁉︎俺は死ぬのか⁉︎嫌だ……嫌だっ‼︎俺はまだ何もしていない‼︎ここで死んだら悟空も死ぬ、それ即ちドラゴンボールの終わりだ!俺が勝手に介入した所為でドラゴンボールが終わるなんて、死んでも死に切れねえ!

 

 こんなところで死んでるわけにゃ…いかねんだ‼︎そう、そうだ、腰についている仙豆を食べることができたら、復活出来る…!

 けど、体が一ミリも動かん…!駄目だ、意識が…遠く…。

 

 誰か……っ!

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ヤムチャーーッ‼︎」

 

 悟空の叫び声が聖地カリンに木霊する。

 ヤムチャの胸は桃白白のどどん波により抉られ、ぽっかりと風穴が開いていた。胸から真っ赤な鮮血が吹き出し、ヤムチャの体を紅に染めていく。

 

「あ……が……」

 

 そしてヤムチャは血濡れた大地に膝をつき、うつ伏せに倒れた。そしてピクリとも動かなくなる。そう、それはまるで…

 

 悟空はヤムチャの元へ駆け寄ろうとした。

 だがそれも桃白白の目論見通り。冷静さを失った悟空の後頭部を後ろから蹴り上げ吹っ飛ばす。

 

「ち、ちくしょう…!」

 

「ふん、一人消してしまえば楽なものよ。さて小僧、貴様も死のうか。安心しろ、抵抗しなければひとつきだ」

 

 桃白白の言う通り、ヤムチャと二人で戦ってやっと戦いになったほどなのだ。悟空一人で桃白白に勝つのは望みが薄い。だが引くわけにはいかないし引くこともできない。ボラを…ヤムチャを殺した桃白白を許すことなどできるわけがない。

 

「でやぁぁぁぁ‼︎」

 

「ふん」

 

 桃白白が脚を振っただけで吹き飛ぶ悟空。どうしようもない力の差というものが確かにそこにはあった。だが悟空は諦めない。

 吹き飛んだ先にあったカリン塔を足場にし跳躍、桃白白に再び攻撃を仕掛ける。

 

「くらいやがれぇー‼︎」

 

「無駄に面倒だな。小僧、苦しむ時間が増えるだけだぞ?」

 

 力も、技も、速さも、リーチも、全てにおいて勝る桃白白には単純に突っ込んでくる悟空を対処することなど容易なことであった。桃白白は腕を振り下ろし悟空を地に叩きつける。あまりの衝撃にバウンドしながら地面を転がる悟空。

 

 それでも立ち上がった悟空に対し、桃白白はハイスピードで悟空に近づくと拳と蹴りによる連続攻撃を繰り出し、上に蹴り上げると上空で両腕を振り下ろし地面に叩きつける。そして仰向けに転がった悟空に止めの膝蹴り。鶴仙流暗殺術の一つ、満漢全席だ。

 

 桃白白は悟空に近づくと胸倉を掴み、自分の目線を無理矢理合わせる。

 

「タフな小僧め。先ほどはなぜかどどん波をくらっても生きていたようだが、今回はそうは行かんぞ。あの男のようにちゃんと胸を貫いてやる」

 

「ぐ…ぎ……が…」

 

 桃白白は悟空の胸に人差し指を向ける。そして今まさにどどん波を放とうとした瞬間であった。

 

「かめはめ波ッ‼︎」

 

 ーーボンッ

 

「ぐおおぉぉ⁉︎」

 

 桃白白の背中が爆発する。流石の桃白白もこれには堪えたようで悟空を地面に落とし背中を押さえる。

 

「お、おのれぇ…!誰だ⁉︎」

 

 桃白白は自分にこんな真似をした者の姿を確かめるべく後ろを振り返る……と同時に顎を拳で撃ち抜かれる。

 

「狼牙風風拳ッ‼︎ハイッハイッハイッハイッハイッハイッ‼︎」

 

 繰り出された高速のラッシュは桃白白の顎、首、鳩尾などを的確に突き、桃白白の体力を確実に奪っていく。

 そして…

 

「ハイヤァァァァァァァァッッ‼︎」

 

 最後の一撃により桃白白は木々をなぎ倒しながら森に突っ込んだ。

 かめはめ波、狼牙風風拳…この二つの技を使える武闘家などこの世にはこの男しかいない。

 

 そう、ヤムチャだ。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 よう、俺ヤムチャ。

 

 死にかけちまったぜ。

 恐らくあの一撃は致命傷だった。仙豆がなかったらと考えるとゾッとする。カリン様様だな。

 一瞬だけだが三途の川が見えちまった。神様が手を振ってたような気がする。あ、俺(ヤムチャ)disりの神様ね。

 

「あ、あり…?ヤムチャ…なんで…」

 

 まずは悟空に仙豆を食わせねえとな。全く、あの悟空をここまでのしちまうとは…桃白白の恐ろしさがよく分かる。

 

「悟空、取り敢えずこれを食べろ!」

 

 仙豆を悟空の口に入れしっかりと咀嚼させ飲み込ませる。

 すると先ほどまでボロボロであった悟空の体はみるみるうちに回復していき…

 

「な、治っちまった…」

 

 見事完治した。そうだ、これから悟空も大いにお世話になる仙豆だ。説明しといてやろう。

 

「それは仙豆と言ってな、どんな怪我も一瞬で治しちまうんだ。ついでに栄養も豊富だから腹も満腹になる。すっげえ豆だろ?」

 

「あ、だからヤムチャは生きてんのか⁉︎」

 

「そうだ。ウパが食べさせてくれなかったら正直まずかったけどな」

 

 まじウパ様様。命の恩人と言っていいほどだ。後でお礼を言っておこう。

 っと、そんなことダベっている時間はなかったな。桃白白が森の中から現れた。かなり激昂しているようだ。効いてるようで何より何より。逆に言えば、あれだけやってこんだけしかくらってないんだけどな…。

 

「貴様…確かに殺したはず…!どういうことだっ⁉︎」

 

 おお、なんか混乱していらっしゃる。

 まあ確かにあの一撃は致命傷だったからな。混乱するのも無理はない。それに俺たちにとっては好都合!一気に決めさせてもらおうか!

 

「くそ、まあいい!何度甦ろうと何度でも殺してやる‼︎」

 

 桃白白がこちらに向かって走り出す。だが

 

「でやァァァァァァ‼︎」

 

 ーードガァッ

 

「グボォ⁉︎」

 

 悟空の一撃によって吹き飛んでしまう。いや悟空さん…強くなりすぎ…。

 

「す、すげぇ…!パワーもスピードも前より上がった気がする!この豆ってすげえな‼︎」

 

 仙豆にそんな効果はない。

 悟空はサイヤ人の特性が発動したようで、パワーアップした自分に戸惑っている。ホント、サイヤ人って奴らは…。

 こりゃ…勝ったんじゃないか?

 

「この、世界一の殺し屋である私が…!こんなはずがない!」

 

 もう何が何だかって感じになっている桃白白。

 若干憐れにみえるがこいつのやってきたことは救い難いことばかり。しかも俺は殺されかけた。そんなこいつを葬るのに、罪悪感なしッ!

 

「は、はは…!少し手加減してやっていたらいい気になりおって‼︎本気のどどん波で吹き飛ばしてくれる‼︎」

 

 そう言うと桃白白は指先に気を込め始めた。あ、これアカンやつや。

 

「死ねぇぇぇぇッ‼︎」

 

 そして放たれたのは極太のどどん波。しかも俺狙い。

 あー…仙豆用意しなきゃ。

 

「こんなものオラが受け止めてやる‼︎でぇやぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 と思っていたら悟空が受け止めてしまった。なんていうか……この先ついていける気がしねぇ……!

 桃白白も鼻水垂らしてピクピクしている。意味分かんねぇよな。その気持ちよく分かる。

 まあ、桃白白が惚けている今がチャンスだな。

 

「悟空、一気に決めるぞ!」

 

「おう!」

 

 まず悟空が駆け出し、桃白白に連続攻撃を仕掛ける。突然パワーとスピードが上がった悟空に対応しきれていない。防御で精一杯といったところだ。

 そこに俺が下段攻めを繰り出す!桃白白の動きを封じるためだ。逃げ道から無くしていくんだ!

 

 自由に動けなくなった桃白白は徐々に悟空の攻撃を捌けなくなり、重い一撃を受け始める。

 

「こ、この私が…!こんな奴ら如きにぃ…‼︎」

 

 今だっ!

 

「ハイィィィィィィィッ‼︎」

 

「ぐふぅ⁉︎」

 

 桃白白の腹に俺の両掌底をぶち込む。この一撃を待っていた!

 衝撃により空高くまで飛んでいく桃白白。

 この角度、この距離、パーフェクトだ。

 

「悟空、いくぞ!」

 

 俺がかめはめ波の構えをとると悟空は俺が何をしようとしているのか察したようだ。「おう!」とうなづくとかめはめ波の構えを同じくとる。

 

「か…め…」

 

 罪のない人々を殺し、静かに暮らしていたボラを殺した桃白白。

 

「は…め…」

 

 到底許されるような奴じゃない。

 この世の警察機関じゃ殆ど人外であるこいつを裁くことはできない。

 だから、俺たちが裁くッ!

 

「波ァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッ‼︎」

 

 俺と悟空の全身全霊、フルパワーのダブルかめはめ波はまっすぐと桃白白に伸びていく。

 桃白白は途中でそれに気づいたようで正面から受け止めようとした。しかしかめはめ波の勢いに押し出され、光に飲み込まれていき、遥か彼方へ消えていった。

 死んでないかもしれないが、タダでは済まなかっただろう。

 

 俺たちの、勝ちだ。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 晴れて桃白白を倒した俺たちは情報交換をしていた。というより俺がここにいた理由だな。

 

「へぇー。ヤムチャはこの塔に登ってたんか。それでそんなに腕上げてたんだな」

 

「まあな。ま、お前ほどじゃないよ。そんでドラゴンボール…ボラさんを生き帰らせるのに使うんだろ?」

 

「ああ!2こ集まっているところがあっからそこに行こうとおもってる!」

 

 うーん…今の悟空にはカリン塔に登る必要がないからな。修行無しになるんだが…いけるか?早く行かないとボラさんの死体が腐っちまうし…。

 サイヤ人の特性が発動したからな…まあ大丈夫だろう。

 

「このタイミングでドラゴンボールを集める連中なんぞレッドリボン軍に他ならない。お前なら大丈夫だろうが気をつけるんだぞ。俺も準備が出来次第すぐ駆けつける!」

 

「ああ!ありがとなヤムチャ‼︎」

 

 そう言うと悟空は筋斗雲に乗って飛んで行ってしまった。さて俺は……

 

「ウパ。万が一に備えてボラさんの遺体は冷やして保管しておこう。腐っちまったらいけない」

 

「はい!ヤムチャさんありがとうございます!」

 

 いいってことよ。ボラさんにはよくしてもらったからな。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 ちょうどボラさんの遺体を掘り起こして保管した時だった。

 

 ーーprrrrrrr

 

 カプセルの中に入れている飛行機に無線の連絡が入ってきた。発信主はもちろんブルマ。

 

「よーブルマ。久しぶりだな。どうした?」

 

『どうしたじゃないわよ!あんた今までどこいたのよ!いくら電話を掛けても出やしないし!』

 

 まあ…成層圏にいたからな。仕方ない。

 

「ははは、悪い悪い。そんでどうしたんだ?」

 

『もう…!孫くんがレッドリボン軍に殴りこもうとしてるのよ‼︎助太刀に行くからあんたも来なさい‼︎』

 

 ぶっちゃけ行かなくてもいいんだけどな。まああっちは心配だろうし、念には念を入れて行くとするか。

 

「了解。ちょうど軟弱な修行には飽き飽きしてたんだ。プーアルとウーロンを回収してから武天老師様のところに向かう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤムチャ現在 4勝2敗




というわけで仙豆ゴリ押しによるvs桃白白勝利回でした。
悟空のパワーアップは=超聖水の修行と思っていただければ。
ちなみにちょっとした伏線があるんですが……まあ気づかなくても大丈夫です。

満漢全席
鶴仙流暗殺術の一つ。しかしどう見ても暗殺用の技じゃない。


ただいま作者新しい小説を書きたい病を発症中の模様。噛ませ犬の執筆すら遅いというのに…。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。