噛ませ犬でも頑張りたい   作:とるびす

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激突、桃白白です。難産でございました。
あと1話から読み直したんですが、最初の頃の文がかなり酷いですね…。少々の改稿を考えております。


噛ませ犬&主人公vs桃白白①

 よう、俺ヤムチャ。

 

 状況を見てみよう。

 まず俺のやや後方にボラの死体。胸を槍で貫かれ死んでいる。

 テントの前にウパ。石をぶつけられたのだろう、痛がっている。

 カリン塔側に悟空。死んではいないが胸にドドン波を受けて再起不能に陥っているようだ。

 そして俺の目の前に桃白白。この状況を作り出した元凶。

 

 アカン、これはアカン。見れば結構分かるんだ。今の俺では桃白白には勝てない。修行が完成していたのなら分からないが、その修行はまだ中途半端にかじった程度にしかやれてない。

 まずだ、俺のこれからの予定に桃白白と戦う予定は無かった。そしてこれからもだ。こいつは修行を終えた悟空に倒してもらう。そのためになんとか引き取ってもらわなくては。

 

「え、えと…おじさんたち何をやってるのかなー。どんぱちごっこかな?あはは…」

 

「貴様、舞空術を使っていたな?何者だ」

 

 ひいぃぃ⁉︎わ、忘れてた、桃白白は鶴仙流の始祖、鶴仙人の弟だ。舞空術は鶴仙流の技、一般人が使ってたらそりゃおかしい。なんとかして誤魔化さないと…。

 

「じ、実は空を自由にとびたいなーって毎日思ってたらとべちゃいまして……。調子に乗ってとんでいたらここに落ちちゃったんです。はい」

 

 間違ったことは言ってないぞ。全部本当のことだ。

 

「ふん、嘘をつけ。舞空術をそんな簡単に習得できるものか。私を欺けると思ったか?貴様、それなりに鍛錬を積んだ者だな」

 

 ぐぬぬ…。墓穴を掘ったか…?

 

「私に嘘をついたところを見ると、貴様は鶴仙流に新しく入った者でもない…。まあ、私にはどうでもいいことだが」

 

 お?おお⁉︎み、見逃してくれるのか…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし無駄に舞空術が広まるのも兄者には目障りだろう。消しておいてやるとするか…」

 

「ッ⁉︎」

 

 だ、駄目だ‼︎戦いを回避できない‼︎おい、本格的にやべえぞ…!

 ていうか舞空術って宇宙でかなり普及してるからな?広まる以前に勝手に広まってるんですがそれは…。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ヤムチャは尻餅をついた状態からすばやく起き上がり構えると、先までのオドオドした雰囲気を一変させ闘気を溢れださせる。

 

「ほう…やはり只者ではなかったか。しかしせいぜい先ほど私が殺した小僧と同レベル。恐るに足らんな」

 

 ヤムチャはちらりと悟空の方を一瞥すると腰に付けていた巾着袋から仙豆を二粒取り出す。そしてその内の一粒を自分の口に放り込む。

 

「ウパ!この豆を悟空に食わせてやってくれ!早く‼︎」

 

「えっ?」

 

 ヤムチャはウパに仙豆を投げつけると再び桃白白に向き直ろうとした。

 しかしヤムチャが正面を向いた瞬間、腹部に強い衝撃を受ける。

 

「ぐッ⁉︎が…ッ⁉︎」

 

 桃白白がヤムチャの腹部に拳をめり込ませていた。内臓まで届くその重い一撃にヤムチャは膝をつき、腹を抑える。

 

「ふん、よそを向きおって。馬鹿め」

 

 さらに追撃の足蹴りがヤムチャの顎を蹴り抜く。なす術なくヤムチャは水平に吹っ飛び体を強く木にぶつけた。

 

「ゴフッ…、い、いってぇ…!」

 

 今までに受けたことのない痛みに震えながらも、ヤムチャは片膝を地につけ立ち上がる。

 

「ほう、頑丈なやつだ。大抵ならここらで死ぬんだがな」

 

 桃白白は素っ気なくそう言うとヤムチャに近づいていく。ヤムチャは再度構えるが、いかんせん先ほどのダメージがかなりでかい。口からは血を流し、目は半開きになっている。

 

「(ま、まずい…少しでも勝てるかもしれないと思っていた俺はかなり甘かったっ‼︎こ、殺される…!)」

 

 ヤムチャ、万事休す。

 だがその時、

 

「のびろ如意棒!」

 

「む?」

 

 桃白白に向かって一本の赤い棒が高速で伸びていく。桃白白は難なくそれを躱すが、ヤムチャと距離をとる。

 桃白白は棒が伸びてきた方向を見ると少し驚いた様子を見せる。

 

「ほう小僧。貴様生きていたか」

 

「おうよ!オラがあんなので死ぬわけないだろ!」

 

 赤い棒…如意棒を伸ばしたのはもちろん悟空。ヤムチャの仙豆によって回復し、復活したのだ。

 

「ご、悟空…助かった…。あのままだと俺は間違いなくあいつに殺されていた…」

 

「なんでヤムチャがここにいるのかはしんねえけど、会えてよかった!」

 

 悟空はヤムチャとの再会を喜ぶが、そんな暇はない。目の前に自分たちの力を遥かに超える敵がいるのだから。

 

「なんだ、貴様らは仲間か?まあ関係ないことだがな。纏めて殺してくれる」

 

 桃白白は再び二人に歩みを進めていく。身構える二人。

 

「…なあ悟空。俺たち二人でやればあいつを倒せると思うか?」

 

「へへ…どうだろうな、オラにも分かんねえ。けどあいつは今まで戦ってきた誰よりも強え…多分オラ一人じゃひっくり返っても勝てねえと思う」

 

「…俺もだ。こいつはまずいことになったな…」

 

 二人の脳裏に浮かぶのは天下一武道会で凌ぎを削り、自分たちを敗った強敵ジャッキー・チュン。実力は桃白白と同じくらいだろう。しかしこの二人の決定的に違う部分、それは桃白白が殺すつもりで攻撃を仕掛けてくることだ。

 殺る気のある攻撃は重みと鋭さが違う。桃白白はどんな手を使ってでも勝ちに来るだろう。そういう点での総合力はジャッキー・チュンよりも桃白白に軍配があがる。

 

 ヤムチャは自分の安易な行動に若干後悔していた。

 最悪自分が殺されても悟空が生き残っていれば後に桃白白を倒してくれていただろうし自分も生き返ることができたはずだ。

 しかし悟空に仙豆を与え戦闘に復帰させてしまったことにより、それは無くなった。自分と悟空が生き残るには桃白白を倒す以外にもう方法がない。

 

 しかし今頃後悔しても遅い。今はとにかく桃白白を倒す方法を考えなくては。

 

「…悟空、俺があいつに攻撃を仕掛ける。様子を見て少しでも隙ができれば、そこを思いっきり叩いてくれ」

 

「ああ、わかった!」

 

 短いコンタクトを済ませるとヤムチャはハイスピードで桃白白に肉薄し激しい連打を浴びせる。

 しかし桃白白はそんなものなど何処吹く風というようにヤムチャの攻撃をただ淡々と捌いていく。ヤムチャは完全に手玉に取られていた。

 

「(クソがッ、全く堪えた様子がない!まだ…スピードが足りないのか⁉︎)」

 

 ヤムチャは冷静さを失っていた。窮地だからこそ冷静さを発揮しなければならないのにだ。実はヤムチャ、桃白白からの攻撃を恐れていた。先ほどの桃白白からの殺すつもりで放たれた攻撃がかなり堪えたのだろう。初めての命のやり取り、それはヤムチャの精神にかなりの負荷をかけていたのだ。

 

「ふんっ」

 

 桃白白からカウンター気味の一撃がヤムチャの攻撃をかいくぐり、顔にはいる。ヤムチャは堪らず後ずさり、鼻を拭う。僅かに血が流れ出していた。

 

「ヤムチャ!大丈夫か⁉︎」

 

「だ、大丈夫だ…。くっ…」

 

 先ほどの一撃で脳が揺れたようだ。ヤムチャはふらふらしている。

 

「くそ、よくもやりやがったなー!」

 

 悟空が桃白白に飛びかかる。それに対し桃白白は平手打ちを真下に振り下ろし悟空を地に叩きつけようとした。

 そしてその平手打ちは悟空を捉える。しかし、その攻撃はから振ることになった。悟空を透過したのだ。

 

「むっ⁉︎」

 

「へっへー!くらいやがれー!」

 

 いつの間にか桃白白の後ろにいた悟空が蹴りを仕掛ける。悟空は残像拳を使っていたのだ。

 だが桃白白はその場で垂直に飛ぶことによって悟空の攻撃を回避。空中で体勢を整え悟空を蹴り飛ばす。

 悟空を蹴り飛ばした桃白白は着地するがその瞬間、

 

「はいやァァ‼︎」

 

 着地直後の無防備な桃白白を狙ったヤムチャの一撃が通る。流石の桃白白も無防備な状態で叩き込まれた一撃には耐えられず地面に叩きつけられた。

 

「こ、この…小癪な!」

 

 どうやら攻撃を当てる事ができればまだ勝算はあるようだ。

 ヤムチャは悟空の元に移動し合流する。

 

「二人でいけば攻撃は通るぞ!」

 

「ああ、そうみてぇだな」

 

 ヤムチャはこの時点でかなり冷静になった。悟空とともに戦えているという事実がヤムチャに勇気を与えたのだ。

 

「一回攻撃が当たったくらいでいい気になるなッ‼︎」

 

 桃白白は激昂し二人に向かって走り出す。ヤムチャはそれを迎撃しに向かい、桃白白の正拳突きをしゃがんで躱すと足払いをかけた。桃白白は難なく足払いを飛び跳ねて躱す。しかし直後に繰り出された悟空のハイキックに顔を蹴り抜かれ、僅かに口から血を流す。

 

 好機と見たヤムチャは倒れこんだ桃白白にエルボーを仕掛ける。だが桃白白は一瞬で起き上がって復帰し、ヤムチャの腹を蹴り上げる。

 ヤムチャは少量の血を口から吐き出すが、間も無く起き上がり悟空と合流する。

 

 即興のコンビとはいえ悟空とヤムチャはおおむねよく連携が取れていた。

 その厄介さに桃白白は少々の焦りを感じた。

 

「(思った以上に厄介な奴らだ。このままただ肉弾戦を続けるのは流石に骨が折れるな。しかし片方を潰せばすぐに終わる。ならば…)」

 

 桃白白は再び攻撃を仕掛ける。しかし今度は完全に悟空狙いであった。

 桃白白はローリングソバットを悟空に叩き込んだ。悟空は腕をクロスさせガードするが衝撃により森の方へ吹き飛ばされてしまう。

 

「(片方を潰しに来たか⁉︎そう上手くいくと思うなよ!)」

 

 ヤムチャはローリングソバットによってまだ態勢の整っていない桃白白に追撃を仕掛けようとする。だが桃白白は立ち上がらず、その場で回転しヤムチャの足を引っ掛ける。

 

「くっ⁉︎」

 

 予想外の攻撃にヤムチャは対応できず、尻餅をつく。ヤムチャは急いで立ち上がり桃白白の攻撃に備えた。桃白白はそんなヤムチャにまたもや正拳突きを繰り出す。

 

「(ここにきて捻りのない正拳突き…だと?勝負を焦ったか…?なんにせよ好機だ!)」

 

 ヤムチャは桃白白の腕を掴み、ピタリと正拳突きを静止させる。

 

「へっ、捕まえたぜ!このままへし折ってーーーー」

 

「ああ、よく捕まえてくれたな。これでお前はさよならだ」

 

 桃白白はヤムチャの胸に向かって人差し指を開く。

 

「⁉︎ヤムチャ、あぶねえ‼︎」

 

「ッ‼︎しまっーーーー」

 

 悟空の叫びによって桃白白の狙いに気づいたヤムチャ。しかし既に時遅し。

 

「ドドン波‼︎」

 

 桃白白の人差し指から放たれた光線がヤムチャの胸を貫いた。




次回、「ヤムチャ死す!恐るべき桃白白!」
ぜってぇ見てくれよな!

桃白白
世界最高の殺し屋。性格は非常に冷酷で残忍。この人あたりからインフレが始まったと思う。ブルー大佐を殺したシーンは中々のトラウマ。この小説での桃白白の強さは若干強めです。違和感がある場合は都合により強化されたと思ってください。

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