噛ませ犬でも頑張りたい   作:とるびす

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遅くなりましたです。真夜中にガーッと書いたのでどうかな…?取り敢えず眠いです。


RR軍?そんなことより仙豆が食べたい
そうだ、カリン塔に行こう


「そうだ、カリン塔に行こう」

 

 よう、俺ヤムチャ。

 京都のノリでこんな事を言ったのにはそれなりの理由がある。

 

 天下一武闘会終了後、俺は武天老師様(敬称で呼ぶことにした)とクリリンをカメハウスまで送り、西の都へ帰った。

 その道中で俺は今日負けた要因をずっと考えていた。なにぶん時間は相当あるからな。

 

 敗因については色々ある。しかし最もその比重が重かったのは技の粗さという点だ。

 身体能力は今回申し分なかったと思う。あの武天老師様と互角以上に張り合うことができたのだ。上出来と言わずしてなんと言う?ただそれだけに技の残念さが一層目立ってしまったな。

 

 さてここで問題。技術の向上には何が必要か?

 答えは経験だ。幾度となく繰り返し、練磨され、実践されてきた技こそが光る。

 武天老師様の無駄を完全に排除した一撃はとても素晴らしかった。あのような動きができたのなら少しの戦闘力の差など簡単にひっくり返すことが出来てしまうだろう。

 

 俺が今回目指すのはその領域……とまではいかないが、近いレベルを目指すことにする。

 中途半端はダメだ。小手先だけの技術じゃ天津飯には到底通用しない。奴に勝つには武天老師様と同じ…いや、それ以上のクラスを目指さなくては。

 

 さて、技術の向上という新たな目標を掲げたわけだが…。最初に言った通り、技術の向上には幾多の経験が必要である。

 しかしそんな悠長に戦闘を繰り返すような時間は俺にはない。天下一武闘会はまたすぐに始まるのだ。よって短期間での鍛錬が必要になる。

 幾多の経験を短期間で経験する。それすなわち矛盾だ。

 どうすれば良いのだろうかと俺は途方に暮れた。西の都に帰還してからも途方に暮れ、重力室での修行中にも途方に暮れていた。

 そんなある日、調子に乗って4Gに挑戦し勢いあまって頭をぶつけた時閃いたのだ。カリン塔ならそれが可能じゃないかと。

 超聖水(ただの水)をカリン様から奪い取る修行。あれならば無駄を省いた動きの修行が出来るのではないか。

 悟空は現にそれを実践してさらなるパワーアップを果たした。それなら…俺でも…。

 こうして冒頭…というわけである。

 

 仕方ない。ブルマに話してしばらく留守にしよう。ただでさえカリン塔までは結構な距離があるし、いつになったら超聖水を盗れるか分からないからな。

 こう考えると俺ってほんとクソみたいな紐野郎だな…。タダ飯を存分に食らって生活費は彼女の親に丸投げ、学校にすら行かずひたすら体を鍛え続け思い立ったらすぐ旅に出る…。あれ、俺ってベジータとほとんど変わらない…?

 

 

 

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「えーー‼︎旅に出るーー⁉︎」

 

「ああ、なるべく早く帰ってくるつもりだ」

 

「どこに行く気よ⁉︎」

 

「聖地カリンだ。ちょっくらカリン塔に登ってやろうと思ってな」

 

 ブルマに旅のことを話すとやはり驚いていた。まあそりゃそうだよな。天下一武闘会が終わったのはついこの前のことだ。少しは休んでもいいんじゃないかと自分でも思う。

 だが今頃悟空はシルバー大佐を倒してホワイトキャッスルにでも突撃しているのではないだろうか。いや、下手したらもうホワイト大佐を倒してしまっているかもしれない。レッドリボン軍との戦いが悟空をさらに強くしているのだ。

 

 俺は妥協なんてしないぞ。原作に最後まで食らいついていくって決めたのだから。ならばこれ以上悟空との差は作らない。作らせない。

 

「あんた生き急ぎすぎよ!何を目指しているの⁉︎」

 

 何を……か…。そりゃ当然噛ませ犬にならないことなんだが…そんな説明じゃブルマは理解できないだろう。なら…

 

「置いていかれないためだ。時代の波にな‼︎」

 

「意味わかんないわよ‼︎」

 

 ………ダメか。うん、ダメだよな。ごめんブルマ。

 

「俺さ、ぶっちゃけ世界一強いって思っていたんだ。けどこの前の天下一武闘会で俺は別に大したことないってことを嫌という程思い知らされた。このままじゃ終われねぇ。次の天下一武闘会でこそ、このヤムチャ様は一回戦で終わるようなタマじゃねえってところを見せてやりたい‼︎もっともっと強くなりたいんだ‼︎」

 

 無難な感じで言った。まあ、間違いではないよな。万年一回戦ボーイ脱却も俺の目標の一つだ。

 するとブルマはしかめっ面で俺をじっと見つめた後、プイッと後ろを向き、大声で言った。

 

「ヤムチャの馬鹿‼︎もう知らない‼︎どこにでも行っちゃえばいいじゃない‼︎」

 

 そう言うとブルマは奥の部屋へ消えていった。

 俺……本物のクソ野郎だな。はは…。

 ……………ごめん。

 

 

 

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 出発当日。見送りにウーロンとプーアル、ブリーフ博士にパンチー婦人が来てくれた。うん、ブルマは来ていない。当然だな。

 

 プーアルは俺と一緒に付いて行くと前日までごねていたが、カリン塔を登るという旨を聞くと観念した。飛行のスペシャリストであるプーアルでもカリン塔は厳しいようだ。

 

「おいヤムチャー、お前帰ってきたらちゃんとブルマと仲直りしろよ!」

 

「ヤムチャさまーー‼︎どうかご無事でー‼︎」

 

「その新型飛行機の乗り心地を教えておくれよ」

 

「またいらしてね、ヤムチャちゃん」

 

 それぞれから暖かい言葉をもらい準備は十分。ブリーフ博士からもらった新型飛行機に乗り込みエンジンをかける。

 ここで俺は一度目を閉じ、息を整える。そして一気に息を吸い込み目を見開かせ、叫んだ。

 

「ヤムチャ、いっきまーすッ‼︎」

 

 掛け声とともに発進。一度やってみたかったのだ。

 超スピードで飛び出した飛行機はぐんぐんと高度を上げていき、徐々に小さくなっていく西の都を尻目に俺はカリン塔へと飛び立った。

 

 

 

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 丸一日飛行機で飛び続けただろうか。街はなくなり、人はいなくなり、荒野もなくなり、あたり一帯が森で埋め尽くされる。

 さらにしばらく飛び続けると遥か先に天を突き刺す塔が見えてくる。カリン塔だな。

 

 カリン塔の麓にはとある親子がいる。へたに刺激すると危ないのでカリン塔から少し離れた場所に着陸することにした。ここからは徒歩で密林を歩くことになるが、俺にとっては特に関係はない。適当に走って麓に到着する。

 そこには仲睦まじい親子がいた。ウパとボラだ。

 

 ボラの戦闘力はかなり高い。なんせマシンガンをものともしない強靭な体を持っている。力はともかく防御力ならこの頃の悟空や武天老師よりも上だろう。とんでもない埋もれた傑物だ。

 そして彼はこの聖地カリンを無法者から守っている。問題はそこだ。俺……元盗賊だけど大丈夫だよな?RPGとかじゃ「問答無用‼︎キエェェェッ‼︎」ってなるパターンだぜこれ。悪い人間ではないんだが、意思の疎通はとれるのだろうか…。

 まあ、うじうじしてても始まらない。とりあえずできるだけ友好的に声をかけてみよう。そうしよう。

 行くぜ…3…2…いーーーー

 

「おうおうおう‼︎さっさとボールを寄越しやがれ‼︎そうすれば痛い目に合わずに済むぜぇ‼︎」

 

 むむ……?ウパとボラを挟んで反対側からならず者がいっぱい出てきたぞ?ああ、レッドリボン軍か。ならイエロー大佐かなんかが近くに来てんのかな。

 

「……ここは聖域だ。汚すことは許さん。早々に立ち去れ」

 

 ボラが槍を掴み戦闘態勢にはいる。強い、この人マジで強いぞ…!

 

「へっ!知ったことか!出さねぇってんなら殺して奪い取ってやるぜ‼︎」

 

 ならず者達は一斉にボラに飛びかかった。しかしこの人数でもボラの前には無力。殴り、蹴り、槍を振るい、槍を投げ、片っ端から撲殺していく。

 そしてならず者の集団は1分と持たず全滅した。

 必要とあらば参戦しようと思ったが余計なお節介だったようだ。

 

 ボラはならず者達の死体を哀れな目で見ると、一人づつ抱え丁寧に埋葬していく。

 声かけても大丈夫そうだな。いや、けど今行ったらレッドリボン軍と間違われるんじゃ…。

 

「ハッハー‼︎隙ありィ‼︎」

 

「あっ⁉︎ち、父上ー‼︎」

 

 あ、残党がまだ一人残っていたようだ。ウパを人質にとりボラを脅す。なんか厄介そうだな。

 

「くっ…卑怯な…!」

 

「へっへっへ…動くんじゃねぇぞ?動いた瞬間この小僧はバラバラだからなぁ‼︎」

 

 ……助けてやるか。あんぐらいなら一気に近づいて一発叩けばいけるだろう。

 

「ハイヤァァッ‼︎」

 

「グヘェッ⁉︎」

 

 というわけで茂みから飛び出してワンパン。無事ウパを救出することができた。

 

「む…?お前は…?」

 

「俺は格闘家のヤムチャってもんだ。カリン塔を目指してここまで来たんだがこんな場面に居合わせてな。じっとしてはいられなかったんだ」

 

「なんと…そうか。礼を言う」

 

 ボラが俺に頭を下げる。ファーストコンタクトは図らずともレッドリボン軍のおかげで成功したようだ。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 その後ボラと色々なことを話したんだが、ここにレッドリボン軍が来たのは初めてだそうで、勿論悟空は来ていない。

 あのレッドリボン軍の連中の中には虎型のアニマルタイプ……イエロー大佐がいなかった。悟空とボラ、ウパが出会うのはイエロー大佐がここを襲撃してきた時だったから悟空がここに来るにはもうちょっと時間があるらしい。

 悟空が来る=桃白白襲来だからな。気をつけないと。

 

「して、ヤムチャはカリン塔を登るらしいが…悪いことは言わん、止めておけ。お前のような武闘家が何人もここで転落し、死んでいった。お前は私達の恩人だ。お前の墓は作りたくない」

 

 ボラが勧告を出す。恩人は言い過ぎなような気がするが…。まあなんにせよ、やめるつもりはない。

 

「忠告ありがとうよ。だが俺は強くならなければならないんだ。すまないが忠告は聞けそうにない」

 

 それだけ言うと俺はカリン塔にしがみつく。さあ行こうか…………っと、忘れてた。

 

「ボラ、もし俺が落ちて死んでいたら、いずれここに来るだろう赤い道着を着た悟空という子供にヤムチャは死んだと伝えておいてくれ」

 

「……ああ分かった。だが…死ぬなよ」

 

 よし、保険完了。これで下手して俺が死んじまっても悟空が生き帰らせてくれるだろう。

 あとボラさん…ごめんな。絶対ドラゴンボールで生き帰らせてやるから。今見捨てることを許してくれ。

 

 さて、行くか!

 

 




ヤムチャ、カリン塔を登るの回でした。現在、悟空はペンギン村にいます。カリン塔にやってくるのは2日後です。


レッドリボン軍
世界最悪の軍隊。基本はギャグ集団だが、意外にポテンシャルはかなり高い。ブルー将軍はかなり強いし、Dr.ゲロは本当にやばい。

シルバー大佐
第一被害者。咬ませ犬。クビにされた。

ホワイト大佐
第二被害者。案外善戦。部下が中々使える。

イエロー大佐
虎型アニマルタイプ。原作では唯一格闘描写がなかった。ヤムチャに時計として使われた。

ウパ
カリン塔を守る一族の少年。Zでの対魔人ブウ戦にて彼が成長した姿で出てきた時不覚にも涙した。クリリンよりも使える節がある。

ボラ
カリン塔を守る一族の長。鍛え抜かれた鋼の体を持っており、この人多分めちゃくちゃ強い。ただ相手が悪かった。劇場版にて実はヤムチャを撃破している。

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