新・ギルガメッシュ叙事詩   作:赤坂緑

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イシュタル様視点です。
ちなみに、何時からセイバーがヒロインだと錯覚していた?
(一応ヒロインの予定です。)


女神様の未知なる思い

◆イシュタル◆

 

私は美しい。これは自惚れでも何でもなく、れっきとした事実である。

この世界の男たちは皆私の美しさに見惚れ、自分のものにしようと蝿のように群がってくる。私は性愛を司る女神。こういう男たちが自分から迫ってくる分には困らなかったし、自尊心も満たされた。

 

しかし、暫くすると気づくのだ。男たちの浅ましさに........

 

彼らは言うまでもなく私の身体が目当てだった。聞こえのいい綺麗な言葉を並べて私にすり寄ってくる。私の話を聞いてくれることなどほんの数回しかなかった。

 

「愛」のないその行為に飽きて別れを切り出すと、決まってその男たちは怒りをあらわに私を自分の所有物にしようと襲いかかってくる。私は仕方なく女神の権能を使い、彼らを撃退する。この繰り返しだった。

 

そんなことを繰り返していれば周りの神々からの評判が悪くなるのは当然のことだった。最近ではお父様のお説教も優しく諭すものから厳しく怒鳴り散らすものへと変わっていった。

 

ーー仕方がないことだ。確かに私が悪い。しかし!私の話も聞いて欲しい。そんな思いを抱えながら最近では人間たちの所に行くことが多くなった。

 

「人間」はいい。無条件に私を敬ってくれるし、何より常により良いものを求める姿勢とその行動力を好ましく思っていた。

 

 

 

..........いや、はっきり言うと私は彼ら「人間」に憧れていた。女神が人間に憧れを抱くなどおかしな話だが、それでも私はいつまでも間違いを繰り返し、変わることのできずにいる自分よりも彼らのほうがよっぽど強く、美しいと感じていた。

 

 

 

ーーそんな私の前に最近になって小さな「王子様」が現れた。

 

彼の名は「ギルガメッシュ」。神々によって作られ、運命を決められたかわいそうな御子。

 

しかし、そんな印象は何度か会って話をするうちに塗り替えられていった。

 

彼はなんというか、私のよく知る「人間らしさ」に溢れていた。

 

神の血が2/3も流れている筈なのに残る1/3の人間の血がそうさせているのか、それとも「彼」が特別なのか..........

 

 

ともかく何故か始まったギルガメッシュ王子とのお茶会は予想以上に楽しいものだった。

 

彼は私の話に真剣に耳を傾け、頷きながら話を返してくる。大人のような顔で考え込むこともあれば、年相応に無邪気によく笑う。安易に私の容姿を褒めることをせず、ふとした瞬間に「しかし、イシュタル様の髪の毛は本当に綺麗ですね!太陽の光を浴びて黄金のように輝いています!」などとよく使われそうな口説き文句でありながら何故か赤くなる顔を抑えられないような言葉を紡ぐ。

 

また、以前に一度剣の稽古を覗いたときは、髭顔の男に何度も何度も立ち向かっていく姿に限界を知らない「人間らしさ」と、「男」を感じさせられた。

 

 

ーーそんな日々が2年続き、ある日のお茶会の途中でドラゴンの襲撃があった。私の数少ない楽しみを邪魔してくれたドラゴンに思わず苛立ちを隠せない。さらに、ドラゴンは空中から「人間」を狙っており、私の随獣が必要だという。まぁ、それで解決できるならば仕方ないと思いながら随獣を召喚しようとしていたところ、思いもよらないところから声が上がった。

 

 

「俺に行かせて下さい!」

 

 

ーー思考が停止した。なぜ?.....なぜギルガメッシュが?

 

すぐに停止した頭を動かしてその行動の意味を考える。

 

まさか..........自分の力を試したいと考えている?

 

だとしたら、それはとてつもなく愚かなことだ。

 

確かに彼は強かった。髭の男との戦いではまるで剣が来る場所が分かっているかのように斬撃を避け、反撃を繰り出していたが、それでもドラゴンと戦うには早過ぎる!

 

しかし、それは私の思い違いだった。彼は言ったのだ。

 

「自分の心に従いたい!」と。

 

身体はおろか、その魂すら神々によって作られた彼が自分の心に、民をそして私を守りたいと願う心に従いたいと..........

 

その姿はまさしく「人間」

 

 

ーー私は気がつけば安易に与えることの許されない戦いの加護をギルガメッシュに与えていた。またお父様に怒られるかもしれないが、知ったことか!!

 

 

 

 

 

私の随獣を見事に操り、無事ドラゴンを退治したギルガメッシュを森で見つけた瞬間、思わず安堵のあまり彼を抱きしめてしまった。

今までこうしたスキンシップをとることはなかったため、彼も少し照れているようだ。

 

彼が少し苦しそうにし始めたので一度身体を離すと、彼は顔を真っ赤にしながらも私にお礼を言ってきた。曰はく「イシュタル様の随獣と加護のおかげでドラゴン退治を果たせました。ありがとうございました。それから、ドラゴンの死体は何故か消えてしまったので探す必要はないかと........」

 

思えば、こうして面と向かってお礼を言われたことなど何時ぶりだろうか?暖かい気持ちが胸に広がる。

 

ーーそれにしてもドラゴンの死体は消えてしまったのか........残念だ。見事ドラゴン退治を成し遂げた彼にそのドラゴンの鱗と牙でできた鎧を作らせてプレゼントにしようと思っていたのに........

 

 

ドラゴン退治を成し遂げたというのに、あまり嬉しそうな顔をせず、何かを考え込んでいる彼を気にしながらも私たちは帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は美しい。これは自惚れでも何でもなく、れっきとした事実である。

そして..........「変わること」を恐れている。

 

しかし、小さいながらも強くなろうとあがいている「王子様」を見て思うようになった。

 

この子の歩む道を見つめ、たどることができたのならば、「私」も今よりも多少はましな自分に「変われる」のではないのかと。

 

 

 

 

..........なぜか吹き飛ばされながら岩にぶつかって気絶している「王子様」の頭を膝に乗せ、サラサラの金髪を撫でながら、これから先の未来に思いを馳せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想が増えた!やったー!
だが、まだ足りぬ。この俺を満足させたければ、この3倍は持ってこいというものだ!!

..........すいません調子に乗りました。

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