新・ギルガメッシュ叙事詩   作:赤坂緑

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今さら言うのもなんですが、この小説は作者の願望と日頃のストレスによって生まれた自己満小説です。つまりはやりたい放題書きたい放題なわけですが…まぁ、是非もないよネ!


真・英雄無双≪前編≫

 古今東西「主人公」とは、勝利し続ける者である。

 何度心を砕かれ絶望と敗北を味わおうとも、その度に敗北から学び、過去の自分を乗り越えて立ち上がる不屈の英雄である。

 そんな英雄の起源とされているのが人類最古の主人公であるギルガメッシュである。

 

「ギルガメッシュ叙事詩」が後世の人々に親しまれている理由はいくつかあるが、その最たるものはギルガメッシュという英雄の戦い方や生き様にあるだろう。

 

 まず、彼の戦いの舞台が魅力的だ。

 メソポタミアを離れ、時には異国の海で、空で、砂漠で、果ては宇宙まで進出し、彼は戦い続ける。まさに世界を股にかけた大冒険である。

 

 また、ギルガメッシュという英雄は伝説上において、敵に合わせて武器や戦闘スタイルを切り替える多芸な戦士だった。海を切り裂く剣や、5つに分かれる槍、さらには炎を放つ弓も扱って見せ、光の舟も所有していた。

 時に剣で切り結び、時に弓を扱う。この戦闘スタイルの柔軟性と数多の武器を駆使する応用力が万人受けしているのかもしれない。

 

 しかし、そもそもなぜ彼はこれほどまでに武器を持つことになったのか?

 

 これもまたギルガメッシュという英雄の特性になるのだが、彼は新しい敵、即ち神が現れ交戦する度におおよその確率で()()()()退()()()のだ。そして手元の武器を破壊され肉体と精神を打ちのめさて悲嘆にくれてしまう。しかし、最後には必ず新たな武器を手に入れ、戦いの中で技を覚えて敵を打破するのだ。

 

 この敗北から学び、新たな武器や技を手に入れるスタイルは現代の仮面ラ〇ダーやジャ〇プの主人公に通じるものがある。

 

 残念ながら最初の方で出てきた武器や技は、後半になるとほとんど登場しないものの、マンネリ化を防ぐ戦い方が人気な理由の一つだと思われる。

 

 

「ギルガメッシュと神々の戦い」より抜粋

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

「…む?」

 

 聖杯問答から一夜明け、遠坂邸にて朝から晩まで居間にて読書にいそしんでいたギルガメッシュは唐突に手元の蔵書から顔を上げた。

 

「王さまどうしたの?ジャンプ読み終わったなら私に貸して欲しいんだけど~?」

「いや、周囲を警護していた宝具が一機潰されたようだ。雷ということは…ライダーか?」

 

 ギルガメッシュの愛読書、ジャンプへと伸びてくる凛の手を叩き落としながら王の財宝(ゲートオブ・バビロン)を開く。

 

(奇襲か?だが、それにしては雑だな…)

 

「ライダーの奇襲だ!総員速やかに避難せよ!!」

 

 屋敷に巡らせてある防御宝具を全て起動させ、屋敷を揺らすほどの大声を張る。

 すると、すぐさま屋敷の中はドタバタと慌ただしくなった。

 

 時臣は結界を増強するためギルガメッシュが無理矢理作った結界部屋に籠り、葵はすぐさま地下の工房へと二人の娘を連れて避難する。桜も凛も心得たもので何も言わずに母の後についていく。(凛は何故か耳を押さえていたが)

 雁夜おじさんは最初から安全な部屋へと隔離済み。

 

 これこそが日頃ギルガメッシュが行ってきた聖杯戦争避難訓練の賜物である。昼夜問わずに何度も不意打ちで訓練をした甲斐があったというものだ。

 

 満足そうに頬を緩めたギルガメッシュだったが、すぐさま顔を引き締めると武装を纏い霊体化。一瞬で屋根上へと現れ、その眼を凝らした。

 すると、数キロ先から雷を纏った戦車がこちらへ馬鹿正直に真正面から突っ込んでくるのが見える。

 

「来るか…征服王よ。」

 

 数キロ離れているにもかかわらず、英雄王と征服王の視線が交じり合った。

 イスカンダルの眼光を読み取ったギルガメッシュの眼が喜悦に染まる。四肢に血が通い、犬歯をむき出しにして笑う。

 

 王の財宝(ゲートオブ・バビロン)開門。装備転換。

 

 ギルガメッシュの手元と腰元に黄金の波紋が波打つ。

 瞬きもせぬ一瞬で手元に弓が握られ、腰には洗練されたデザインの矢筒が装備された。

 真っ白な柄が美しく、先端には発射口のような奇妙なものが取り付けられた神秘的なその弓こそは、古代インドの大英雄アルジュナが炎の神アグニから賜ったこの世に打ち落とせぬもの無き神の弓、その原型である。

 

 その名を炎神の咆哮(アグニ・ガーンディーヴァ)

 

 ギルガメッシュが混沌とした火の国にてメソポタミア神の残党狩りをしていた際に割り込んできたどこかの神。

 恐ろしく強いその神から逃走を図るため、敢えてそいつの懐に飛び込んで隠れていた際に偶然発見し、そのまま拝借。適当にぶっぱなしながら最後には無残に破壊されたといういわくつきの逸品である。後に改善を加えた新品がアルジュナの手に渡ったらしいがギルガメッシュは結構この弓のことを気に入っていた。

 

「――吠えろ炎神の咆哮(アグニ・ガーンディーヴァ)!!!」

 

 簡易ながらも真名解放。

 数ある弓の中でも最上級の名器から放たれた一矢は蒼白い炎を纏ってミサイルのごとくライダーへと迫る。一見すると彗星のように映る幻想的なその一撃は、このまま的の頭蓋を柔らかく砕くこと必然だった。

 

 だが、黙って見ているライダーではない。即座に剣を引き抜き、気合い一閃。

 矢の直弾を避けることはできた。しかし、それだけだ。

 軌道を逸らすことしかできない矢の威力に戦慄する中、絶望がさらにライダーを襲う。

 

「なにっ!?」

 

 視界を埋め尽くす蒼い炎。意識の合間を縫う神速連射である。

 それが何かを認識するよりも早くライダーは全力で手綱を引いていた。

 

「おォォォォォォ!!」

 

 戦車の角度を一気に傾け、急激なGに耐える。矢のカバーしきれていない部分を狙った離脱だ。

 ()()、それでも誘導弾じみた精度で矢は追ってくる。追撃を振り払うべく、イスカンダルは縦横無尽に戦車を引き回す。戦車の底を焼きながら矢が通過し、戦車の装甲を抉る。

 冷や汗を流しながらもギリギリ耐えたライダーの目の前がまたしても蒼に埋め尽くされた。

 

 千里眼

 

 過去、現在、未来を見通す眼を持ってすればライダーの動きを読み切るなど容易いこと。

 弓兵のクラスで召喚され、神々との戦いで鍛え上げられたギルガメッシュの弓術を前にして無事でいられる英雄は少ない。

 

(ここまでか…すまんな坊主。あまり粘れなかったわい。)

 

 心の中で一言己のマスターに謝ったライダーことイスカンダルは目を閉じ、一言呟いた。

 

「来い。」

 

 ――そして、世界は砂漠に塗り替えられる。

 

 

 

 

 ◇◇◇◇◇

 

「…やられた」

 

 英雄王ギルガメッシュは珍しく苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 屋根の上から周囲を見渡せば一面の砂漠と、()()()を取り囲む無数の兵士たちが見える。

 

「まさか固有結界の中に遠坂邸ごと取り込むとはな…」

 

 上手い策である。これでギルガメッシュは考えなしに暴れることができなくなってしまった。もしも加減を忘れてしまえば己のマスターとあの可愛らしい少女たちは肉片一つ残さずこの世を去るだろう。

 

「征服王も健在、か…」

 

 ここからそう離れていない位置でイスカンダルの戦車は宙に浮かんでいた。

 先程命を刈り取る予定だった矢は世界を塗り替える際、狭間に飲み込まれたのだろう。

 ()()()()()()()()()、と賛辞を送っておく。

 

 だが、賛辞は送ってもこの世界は認められない。さっさと切るに限る。

 王の財宝(ゲートオブ・バビロン)の深奥に手を伸ばす。ありとあらゆる事象を切り裂く最強の剣、乖離剣を抜こうとする――

 

「させんぞォ!」

 

 が、それは名も知らぬ猛者による槍の刺突によって防がれることになる。

 

 ――乖離剣エアをキャンセル。絶世の名剣(デュランダル)へと変更。

 

 鎧を纏っていない今の状態では並みの一撃でも、当たり所によっては致命傷になりうる。

 確かな修練によって磨き上げられた一撃を躱し、懐に接近。王の財宝(ゲートオブ・バビロン)から抜刀した絶世の名剣(デュランダル)でその身体を切り裂いた。

 英霊の座へと還っていくイスカンダルの盟友。しかし、それを見て安堵する暇はなかった。

 

 再びの殺気。振り向きざまに剣を振るい、いつの間にか屋根上まで来ていた兵士の首を狩る。

 次は左からだった。上段から放たれた一撃を、下から振り上げた絶世の名剣(デュランダル)で力尽くに粉砕する。砕け散った刃に唖然としている顔を尻目に槍を射出して串刺しにする。次は…とここで征服王の作戦を理解した。

 

(なるほど、乖離剣を使わせない魂胆か。)

 

 ギルガメッシュをこの場で釘付けにし、隙を見せたところでイスカンダルが止めを刺すつもりなのだろう。

 

「乖離剣さえなければ恐れるに足りぬと?まったく…舐められたものだな。」

 

 槍の刺突を剣の腹で受け止める。並みの剣ならへし折れているだろうが、生憎とこれは絶世の名剣(デュランダル)だ。そのまま剣先まで槍を滑らせて大きく下から弾く。致命的な隙をさらした兵士を切り伏せ、原罪(メダロック)を空いてる左手に呼び寄せ背後から迫っていた斬撃を弾いてそのまま蹴り飛ばす。次!と顔を上げれば辺りは無数の兵士で固められていた。むさ苦しいことこの上ない。

 

「ハァッ!」

 

 裂帛の気合いと共に手に持った双剣を煌めかせ、その場でクルリと大回転。空気が唸り、見るも鮮やかな剣技が周りを囲む10人の兵士を切り裂いた。

 悲鳴を上げる間もなく霊子となる英霊達。それらを一瞥したギルガメッシュは、鋭い眼光で下に群がる兵士たちを眺め、その数を見て思わず呟く。“面倒だな”と。

 

 まさしく蟻のように遠坂邸に群がる筋肉隆々の男たちは余りにも絵にならなさ過ぎた。

 

 どうしたものかと傲岸不遜に兵士達を眺めていたギルガメッシュだが、唐突にいいことを思いついたとばかりに笑みを浮かべ、手元の双剣を宝物庫へと収納した。

 怪訝な顔をする兵士達をよそに英雄王は美しいその人差し指で空を指差した。

 

 

「――()()()()!」

 

 思わず空を見上げた彼らの眼に映ったのは真っ青な空に現れる幾つもの黄金の波紋。

 空が黄金に染まっていく神秘的な景色を啞然と眺める兵士達。

 何十、いや何百という武具が黄金の砲門からその顔を覗かせている。魔剣があった。聖剣もあった。呪いの槍が、灼熱の剣が、雷の槌が、王の号令を待っていた。

 

「全員まとめてかかって来い!英雄の格の違いを教えてやるッ!!」

 

 ありふれた台詞だが、英雄王から放たれた言葉は重みが違った。まるで言霊の一つ一つに重力が宿っているのではないかと錯覚するほどに重く、心を圧迫してくる。

 

 恐れをなしたのか?伝説の英雄王に――

 

 ()、と征服王イスカンダルは、その盟友たちは答える。

 寧ろ血が滾る。これから起きる神話の戦いに身体が武者震いで震えている。興奮を抑えるために噛みしめている奥歯は今にも砕けそうで、握りしめた拳はすでに青白くなっている。

 

 “戦うしかあるまい”

 

 征服王は傍観ではなく、皆の期待を感じ取り、呟いた。

 大声で呟いたわけでも無かろうに、皆が武器を構え、王の号令を待つ。

 

 世界が静まり返る。緊張が高まり、誰も声を発しない。

 

 始まりの合図は何だったか。

 誰かが唾を飲み込んだ音か、足を一歩進めた音か、それとも僅かに動いた英雄王の人差し指か――

 

「突撃ぃぃぃ!!」

 

 おおおおおォォォォォォ!!

 

 何であれ、ここに戦いの火ぶたは切って落とされた。

 

「砂漠に雨は降らぬが…なに、今宵は特別だ。存分に、雨に濡れよ!」

 

 剣の雨が降る。黄金の王によってもたらされた血と恐怖の雨が。雨粒の一つ一つが超級の宝具で出来たその雨は触れるだけで肉を抉り、骨を砕くだろう。兵士たちは濡れぬよう(かさ)をしているが、雨粒の大きさによっては盾ごと貫通してくるものもある

 だが、それに恐れをなして足を止める者は一人もいなかった。剣に肉を切られ、骨を断たれようともその歩みを止めることなく、ただただ眼前の敵を倒すためだけに進み続ける。

 

「その首貰うぞッ!」

 

 ――そして遂に英雄王の元までたどり着く者たちが現れる。

 

 何百という王の財宝(ゲートオブ・バビロン)を開門し、その制御に神経を割いている現在の英雄王にとって接近戦は鬼門だった。それを知って知らずか、右腕を吹き飛ばされながらも突撃して来たその兵士の顔には笑みがあった。

 

「甘いわッ!」

 

 だが、満身創痍の兵士を相手に手間取る英雄王ではない。先程までと同じように難なく切り伏せて見せる。だが、()()()()

 

「なにッ!?」

 

 それは執念か。肩まで食い込んだ刃を両手でつかみ、名も知らぬ兵士は不敵に微笑んだ。

 ――そして背後から迫る殺気。その数5。

 

貫き焼き尽くす五尖槍(ブリュナーク)

 

 しかし、それでも英雄王には届かない。王の財宝(ゲートオブ・バビロン)から矛先を露にした太陽神ルーの槍。その5つに別れた穂先から放たれた五条の光が兵士たちの体を蒸発させた。声を上げることもできず死に絶える仲間達、その消えゆく屍を見てもなお進むことを止めない愚直な王の軍勢。

 

「――見事だ。だが、それでは足りん。」

 

 遠方より飛来した30の投槍を再び手元に呼び出した炎神の咆哮(アグニ・ガーンディーヴァ)の連射で一息に落とす。

 さらに、上空に展開している王の財宝を遠坂邸の周りを囲むように配置し、周りを牽制。

 そして、()()()()()()()()()――

 

 

「AAAAALaLaLaLaLaie!!」

 

 その瞬間、これまで沈黙を保っていた征服王がもはや我慢ならぬとばかりにアドレナリン全開で黄金の雲から降り注ぐ殺戮の雨へと乗り出した。

 

 ザシュッ!!

 

「グぅ…」

 

 空から降り注いだ鋭利な短剣が肩に突き刺さる。

 

 ヒュッ!!――ガキンッ

 

 槍が降る、剣で弾く。斧が降る、剣で弾く。大剣が降る、弾く…が体勢を崩す。剣が降る、刺さる。剣が降る、刺さる。槍が降る、刺さる。剣が降る、刺さる。槍が降る、刺さる。斧が降る、弾く。

 

 その体はたったの数秒で死に絶えの満身創痍。自慢の戦車は傷つき、神牛たちも、ゼウスが視ようものなら雷による鉄槌は免れぬほどに血みどろの悲惨な有様だ。だが、それでも彼の顔に浮かぶのは少年のような笑顔。――そんな彼を見て英雄王が小声で何かを呟く。

 

「ハァ、ハァ、彼方に…こそ…栄えありィィィィィ!!」

 

 遥かなる蹂躙制覇(ヴィア・エクスプグナティオ)

 

 ギルガメッシュまでの距離は500mもない。満身創痍ながらも英雄王の姿を視界に納めた征服王イスカンダルは高らかに真名解放を行った。

 主の思いにこたえるべく、二匹の神牛『飛蹄雷牛(ゴッド・ブル)』が死力を尽くす。

 

 戦車が纏う雷電はこれまでにないほどに苛烈に輝き、その熱量は大気を焼くと共に迫りくる宝具の幾つかを払いのけてまで見せた。

 

(行ける!!)

 

「おおおおォォォォォォ!!」

 

 暴れ狂う雷が迫りくる。傲岸不遜に王の軍勢を眺める黄金の王を、地に引きずり落とさんと。――だが、征服王の命をかけた特攻を前にしても英雄王の余裕は崩れない。それどころか、どこか澄んだ眼でイスカンダルを視ていた。

 

「…見事だ。これを見せられてはこちらも手を抜くのは失礼だな。」

 

 ――弓の弦へと手がかかる。

 

 

 伝承に曰く、英雄王ギルガメッシュは神々との戦いの中で数々の技を習得している。特に有名な技は、宇宙にてギルガメッシュが自ら異国の神に教えを請い、苛烈な修行の末手に入れた必殺奥義。

 

 梵天よ、不滅を祓え(ブラフ・マーストラ)

 

 古代インド叙事詩の戦士たちが使用するこの技は本来、ブラフマー神の力を宿した武器という意味で、ブラフマーの力を宿した武器は全てブラフ・マーストラである。そして、ブラフマーとは宇宙の根本原理を人格化した神格。即ち、()()()()()である。

 つまり、宇宙の真理を学び、ブラフマーに由縁のある武器を扱うことができるのならばギルガメッシュにも使用可能ということになる。

 

 如何に不屈の意思を持つ者であろうともこの光を見てもなお、戦意を保てる者はいない。

 肉体も、精神も、この世から解脱させる神秘の奥義。並みの英霊ならば肉片一つ残さず浄化させる英雄の一撃である。生き残れる道理はない。現にイスカンダルの姿はどこにも見当たらない。

 

 ――だが、

 

「固有結界が消えないだと…?」

 

 術者を失った以上、その結界は崩れ去るものだ。しかし、砂漠の世界が鉄とコンクリートの現代に戻ることはなく、兵士達も健在である。

 

(なんだ?何が起きている…?あの体勢、体力でブラフを避けれるはずがない。奇跡でも起こらない限りは…)

 

「ちょっと待て…まさかッ!あの少年!ウェイバー・ベルベットの()()かッ!」

 

 それは、普段の英雄王から考えるとあまりにも察しが悪すぎた。後から考える様々な要因が浮かんでくる。だが何にせよ、英雄王ギルガメッシュは致命的な隙をさらした。この隙を逃さぬ歴戦の猛者がこの固有結界に紛れ込んでいた。

 

破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)ッ!!」

 

 地上から投擲された紅蓮の流星がギルガメッシュに迫る。咄嗟の思考で回避は不可能と判断。王の財宝(ゲートオブ・バビロン)より盾を取り出し、防御を試みる。

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!」

 

 しかし、直ぐにこれは悪手と悟る。このランサーの槍は魔力の流れを断つ槍。常に魔力だけでその形を成しているアイアスとは最高に相性が悪い。

 

「ッチ!!」

 

 1枚、2枚、盾が剝がされていく。

 取り敢えずこの場を離脱しなければならない。

 

 そして悪寒

 

約束された(エクス)―――」

 

 ようやっと理解する。これまでの攻撃の意図するところを全て。

 であればこそ、今放たれようとしている聖剣は、間違いなく()()()だろう。

 この俺を殺すためだけに用意されたシナリオの幕引き。完全なるフィナーレだ。

 

 ―――斬り抉る戦神の剣(フラガ・ラック)

 

「グッ!?」

 

 だが、それをさせる英雄王ではない。突撃してくる征服王を見て念のため仕込んでおいた迎撃宝具を発動させる。

 これは、「後より出でて先に断つもの(アンサラー)」の詠唱によって待機状態に入り、相手が切り札として認識する攻撃を発動させることで後から追従して動く後出し宝具である。そのくせ相手の切り札を潰し、こちらの宝具を先に発動させるという因果の書き換えを可能にする出鱈目能力を持っているのだ。

 

 完全に英雄同盟の作戦を真正面から叩き潰した英雄王。しかし、その顔に笑みはない。

 

「…やられた」

 

 切り札を潰し、その心臓を抉られて霊子に還ったと思われたセイバーだが、何故か既に復活し、剣を構えてこちらを睨みつけている。可愛い。

 さらには何故かライダーもきっちり復活し、剣を構えてこちらを睨みつけている。

 後ろには槍を回収したランサーが双槍を構えてこちらを睨みつけている。

 

 つまるところ、状況はあちらに有利ということになる。

 

 

(にしてもセイバーとランサーはどうやって…あぁ、そういうことか)

 

 恐らくあの二人はライダーに俺が気付いた時点で既に遠坂邸の近くで待機していたのだろう。そして固有結界に取り込まれ、俺が疲弊し決定的な隙をさらすまで風王結界(インビジブル・エア)で身を隠していたということか。

 

 説明されるでもなく一人で事情を把握した英雄王は自分を打倒するために集まった英雄同盟を見て一言呟いた。

 

 

 

「…俺にも声かけて欲しかったなぁ」

 

 

 

 

 




梵天よ、不滅を祓え(ブラフ・マーストラ)

男なら一度は憧れるインドの必殺奥義。主人公のオリギルは亀仙人に会いに行くテンションでブラフマー神を宇宙で発見し、悟空のようなさわやかな笑顔で弟子入りを頼んだ。元々のハイスペックな肉体と、宇宙の不思議なコズミックエナジーで瞬く間に習得した。本人曰く、いつか宝具名をかめ〇め波に改名し、髪を逆立てて撃つのが夢らしい。

貫き焼き尽くす五尖槍(ブリュナーク)

正確にはケルト神話にこの名前の槍は存在しないのだが、この名前を転生前から気に入っていた主人公は勝手にこう読んでる。

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