今回もあまり話進みません。
代わりと言っては何ですが、後書きで原作のギルガメッシュに勝てない理由を説明しています。
「........キャスターか。」
教会からキャスター討伐の件について聞かされたウェイバーは使い魔との視覚共有を切って自身のサーヴァントを見た。
「うーむ。」
そこには図書館で借りてきた本に顔を埋め、時折顔を本から浮上させて考え事に耽る征服王イスカンダルがいた。
「......なぁ、一体いつまで読んでるつもりなんだ?その『ギルガメッシュ叙事詩』。」
実は倉庫での戦闘の後、ライダーは再び図書館に不法侵入を果たし、白目を向くウェイバーを尻目に『ギルガメッシュ叙事詩』を持って帰宅したのだ。
「折角敵サーヴァントの真名が分かったのだ。調べるのは当然のことであろう?」
「........なんか意外だな。お前はもっと考えなしに笑いながら突っ込んでいくのかと思ってた。」
「うむ。.......まぁ他のサーヴァントが相手ならそうしとっただろうが流石に『英雄王ギルガメッシュ』が相手となるとそれなりに対策をしておかんとな。人間本当に大きな壁にぶつかった時は大体力任せよりも知恵に任せてその壁をぶち壊すもんだ。」
明らかに脳筋な見た目のサーヴァントの口から放たれた理知的な意見に内心ウェイバーは驚いていた。
しかし、同時に理解できない点もあった。
「でもその本が本当に役に立つのか?わざわざ本を読まなくてもギルガメッシュのおおよその情報は聖杯から与えられているんだろう?」
確かに敵サーヴァントについてよく知るためにその伝記を読むというのは一見するとなかなかいい案のように思えるが伝記に書かれてあるような目立つ情報は既に聖杯から渡されているはずなのだ。
よってウェイバーにはライダーがわざわざ本からギルガメッシュについて知ろうとする非合理的な行動が理解出来なかった。
「ふむ、そうさなぁ........ま、理由は色々あるがまずは簡単な文章にまとめられて目に見える形で文字が並んでいることだな。これは非常にいいもんだぞ。なにせ情報の整理がしやすいからな。例えば....ギルガメッシュが戦ってきた敵をまとめていくと......ほれどうだ!」
図書館で借りてきた本にペンで書き込みをしていくライダー。その奇行に頭を痛めながらもウェイバーは本を覗き込み、ライダーが言わんとしていることが何となく分かった。
「......対人戦の経験が少ない?」
ドラゴン、魔物、神、どれも伝説上の存在だがその中に「人」はあまりなかった。あると言えばキシュ族の虐殺ぐらいのものだ。
「その通り!英雄ってのは大体戦争とかで人を多く殺してなるもんだがギルガメッシュにはそういった逸話はない。もしかしたらそこに記載されていないだけで戦争を経験しているのかもしれんがバーサーカー戦の時、奴は間違いなく『人の形をした敵は久しぶりだ』と呟いていた。結論としてギルガメッシュは対人戦の経験が浅く戦争の経験もないため、大軍で攻められれば対処を誤る可能性があると推測できるわけだ。」
"なるほど”とウェイバーは内心で呟いた。思えばバーサーカーとの戦闘においても素人目ではあるもののギルガメッシュはバーサーカーにかなり押されていたように思える。もちろんアーチャーが接近戦を行っているだけでも脅威なうえにそれ自体が演技の可能性もあるが圧倒的な技量を持っているのなら小細工などせずにあっさりとバーサーカーを倒していただろう。
「.......でも大軍を用意するって言ったって......」
「まぁまぁ、そこは余に任せておけ!.....というかもうここで教えておくか、後々驚かれても面倒だしな。よいか?余の宝具はな........」
◇◇◇◇◇◇
「ふぅ。」
璃正神父との連絡を終えた時臣は椅子に深く腰を掛け、考え事に集中し始めた。
今のところは全て順調に事が進んでいる。いくつかイレギュラーはあったものの、バーサーカーを撃破し令呪を一つ追加できる機会も手に入れた。
胎盤にされる寸前だった桜も救えた。最近では自分から凛や葵に話しかけることもあるそうだ。........何故か自分には一切ないが。
「......ともかくまずはキャスターを討たなければ。どうやってギルガメッシュを動かすべきか......」
桜のことは取り敢えず頭の隅に追いやって聖杯戦争について考えることにした時臣。
最近では自宅でも凛の視線が痛く、地下の工房で聖杯戦争について考えを巡らせる時が唯一の心休まる時間となってきた時臣は真剣な表情でギルガメッシュを動かす手段を考える。酒か、漫画か、幼女か
「邪魔するぞ時臣。」
そんな時臣の前にタイミング良く黄金の光片と共にギルガメッシュが姿を現した。
......何故かフライドチキン片手に
「.........これは英雄王ギルガメッシュ、丁度いいところにお越し下さいました。実は........」
時臣は何時の間にか身に着いたスルースキルを発揮してフライドチキンを無視し、令呪を新たに一つ追加するという本来の目的を除いて全てをギルガメッシュに話した。
「.......なるほどな子供をさらって玩具にするサーヴァントとマスターか。そやつらを俺に退治させようというわけか。」
キャスターたちの凶行、アサシンたちによって発見された拠点、聖杯戦争の一時休戦。
全てをフライドチキン食べながら黙って聞いていたギルガメッシュに時臣はさらに畳みかける。
「奴らは見境もなく幼い子供らを自分たちの玩具にする外道です!御身の庭を汚す害虫です!どうか英雄王手ずからの鉄槌をお与え下さい!」
「......いいだろうお前の口車に乗ってやろう。お前の要求通りに
令呪を取ってきてやろう。」
「っ!」
部屋と時臣の温度が一気に低下した。
"教会での会談を覗かれていた!?”
だが英雄王の力を持ってすれば使い魔など用いずとも遠見の宝具を使って覗き見をするくらい簡単なことだろうと直ぐに納得した。
まだ本来の目論見がばれたとは思えないが令呪の追加については言い訳をしておかないと後々怪しまれることになるだろう。
「......実は、私は私なりに多大な慈悲を下さる王に報いることができないかと考えた結果、令呪によるサポートが現時点における最も「俺は俺の戦いに介入を許した覚えはないが?」っ!」
どんどん墓穴を掘ってゆく時臣は追加令呪のことを隠したことに後悔していた。
「......まぁよい。これ以上追及するのは止めておこう。取り敢えずキャスターの工房まで赴けばよいのだな?」
「......はい。」
大幅に寿命を削られたような心境の時臣はしかし、動揺をほとんど面に出さずに神妙な顔で頷いた。
「あぁ、言い忘れていたが俺の召喚したあの神獣だがな.......好みは人の肉でな、特に俺に従わぬ者の腐った肉が好みだそうだ。おいおいどうした?顔が真っ青だぞ?誰もお前のことだとは言っておらんぞ?.....だがここ最近は腹を空かせているようだからな。気を付けたほうがいいかもしれんな?さもなくばこの骨のように肉を全て削がれることになるやもしれんぞ?」
最後にとんでもない爆弾とフライドチキンの骨を落としてギルガメッシュは去って行った。
≪原作のギルガメッシュに劣っている部分≫
・千里眼の性能:原作のギルガメッシュは並行世界を覗いて自分が負ける要因をあらかじめ潰せるそうです(この時点ですでに敗北)
・ネイキッドモード:主人公は習得してません。フンババ戦でやったじゃないかって?あれは普通に脱いだだけです。
・友達の数:主人公0人に対して原作は性格も容姿も完全に作者好みの親友もち。
・王の財宝:今作の主人公のバビローンはそのほとんどをエルマドゥスが集めたので本人が集めた本家のバビローンには若干劣るそう。
・精神:そもそも生きた年数が原作と比べて圧倒的に劣っているので経験値など色々と若い主人公。
・頭脳:主人公も頭は悪くないのですが、流石にラニをチェスで負かす原作の天才っぷりには敵いません。さらにもしも本家が策略を巡らせようものなら主人公の勝ち目はゼロになります。
≪原作のギルガメッシュに勝っている部分≫
・戦闘技術:近、遠で圧倒的に主人公が勝っており、完成された戦闘スタイルを持っています。また格上との戦いが多かったので危機に陥っても落ち着いて対処できます。しかし、近づいても狙撃しても勝てる未来が想像できない......
・知名度:ちょっと頭おかしいくらい知名度が高いので、比較的生前に近い能力を発揮出来ます。ぶっちゃけ川作りはやりすぎた。
≪結論≫
接近戦なら勝てそう!と思われがちですが慢心しているギル様ならともかく慢心していない状態では近づくことすら不可能だと思います。
そうして接近しようと躍起になっている間に弱点がばれて殺される。
こんな感じだと思います。
つまり、慢心してなきゃ勝てません!