新・ギルガメッシュ叙事詩   作:赤坂緑

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第四次聖杯戦争編開始につきまして文章の形態を少し変えていきたいと思います。
なにせ群集劇なのでいちいち誰視点とか書いてられないな~と思いまして。


......いや別に面倒になったとかじゃないからね!勘違いしないでよね!

(それでも時々は入ると思います。)


「第四次聖杯戦争編」
召喚


冬木市の中でも一際歴史を感じさせる洋館、遠坂邸の自室で遠坂時臣は目の前にある古めかしい箱に目をやりながら立派な顎鬚に手を当てて思考に耽っていた。

 

「.......どうしたものか。」

 

深刻そうな顔の彼の前に並んでいるのは博物館かどこかで管理されていてもおかしくないような、というか展示されていた一個人が所有しているのはおかしい重要な品である。

しかし、博物館に展示させておくには惜しいものであると時臣は断言する。何も知らない一般人たちの衆目に晒されるぐらいならば、自分が崇高な目的のために使用するべきだと......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー今からおよそ50年前、世界に名高い大英博物館で大事件が起こった。なんと厳重に保管されていた「ギルガメッシュ法典」の原本の一部が盗まれたのだ。

これには世界中が大騒ぎになった。今でもギルガメッシュを信仰している国の人々は激怒し、ギルガメッシュ法典に則り罪人に死を与えるべきだとまで主張し始めた。

しかしその後、監視カメラに映っていた犯人と思われる男が死体で発見され、人々の怒りは他所に事件は鎮静化していった。

 

 

 

しかし、先代の遠坂家当主にはこの一連の事件の黒幕が分かっていた。

アインツベルンという魔術師の名門である。その目的は間近に迫っていたとある戦争のことを考えれば一目瞭然だった。

彼らは欲したのだ、考えうる限り最強のサーヴァントを。

 

 

 

 

 

しかし、口封じに実行犯の男を殺してまで強奪した聖遺物での召喚はなされなかった。

最強の英霊はアインツベルンの声に応えなかったのだ。

 

当然のことだろうと時臣は思う。かの英雄王がそのような薄汚い手段によって入手された聖遺物の召喚に応じるわけがない。

 

結局アインツベルンはわけのわからないイレギュラークラスのサーヴァントを召喚し、初期の段階で早々に聖杯戦争から脱落した。

 

 

 

 

 

 

 

......と、まぁここまでの話ならばアインツベルン馬鹿だな~

 

で済むのだが残念ながら馬鹿だったのはアインツベルンだけではなかった。

 

今、『時臣の前にはギルガメッシュ法典の一部がある。』

 

そう、つまり先代遠坂家当主もまたアインツベルンの動きに敏感に反応し、盗まれた法典の一部を実行犯の男から金で少しばかり分けて貰っていたのだ。(勿論先代の召喚も成功しなかった。)

 

 

これには時臣も頭を抱えた。なにせ自分の父が知らぬうちに露骨な表の犯罪に手を染めており、尚且つ未だに捜索が続けられている法典の一部が自分の目の前にあるのだから。これがもしも見つかってしまえば自分は間違いなく刑務所送りだろう。

 

時臣は聖杯戦争を前に刑務所送りになりかねない未来に真剣に悩んでいた。こんなことならば父からの怪しげな宿題など解くべきではなかったという後悔と共に。

 

 

 

しかし、暫く悩んだ後時臣は開き直った。そうだ!これはきっと天が自分に与えた聖遺物に違いない!と。

一見すると自信過剰というか頭の中メルヘン過ぎだろという感じだが遠坂時臣はこれが運命だと信じてやまなかった。

 

開き直れば後は早かった。璃正神父に急いで連絡を取り、触媒が決まったことを知らせた。念のため以前から頼んでいた触媒の発送も続けておいてもらう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーそして時は流れ、魔術師の夜がやって来る。

 

 

「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する。」

 

運命の夜がやって来た。これから始まる戦いのためだけに研鑽を積み重ね、苦渋と刑務所送りにされかねない微妙な恐怖に耐えてきた。

 

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

 

祭壇の上に乗っているのは小さな石板の欠片。一見するとただの文字が刻まれた石だが、あの石板の欠片なくしてこの儀式は成功しない。

 

 

「ーー告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよーー」

 

 

かの王が召喚されるとしたらセイバー、アーチャー、ライダーのいずれか一つ。伝説を考えればセイバーが望ましいがこの際なんでも構わない。

 

 

「ーー誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者ーー」

 

先代が失敗した王を呼ぶ儀式に不安はなかった。

父が少々汚い手段で手に入れたものの、息子の自分に残した聖遺物。

そして今日までの鍛錬とその成果が時臣に自信を与えていた。

自分こそが選ばれし者であると.....

 

 

「ーー汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」

 

 

逆巻く荒々しい風に目を焼き潰さんばかりの閃光が迸る。様々な魔術を扱ってきた時臣だがここまでの規模の大魔術は初めてだ。

 

 

風が止み、ようやっと目を開けた時臣の前に立っていたのは......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『問おう。貴様が俺のマスターか?』

 

 

それは人間とは思えないほどの美貌を持った青年だった。

スラリと伸びた長身を所々に黄金の装飾がなされた白く上等そうな古代衣装と軽装が包んでおり、さらにその衣装を鮮やかな赤い布マントが覆っている。

 

肩甲骨辺りまで伸ばされた男にしては長い黄金の髪はしかし、その艶を失うことなく光を放っている。

 

顔はぞっとするほど整っており、冷たさを感じさせるほどだった。

しかし、そんな冷たい印象を与える美貌の中で神性を表す紅い瞳だけが強烈な熱を放っていた。

 

 

間違いない。『英雄王ギルガメッシュ』だ。

 

 

 

 

なにも時臣はその人外の美貌だけで目の前の青年をギルガメッシュと断定したわけではない。

 

その身体から迸る魔力、そして今すぐにでもひれ伏したくなるような圧倒的な王としての威風。

 

気がつけば自然と頭を垂れていた。自分のサーヴァントにするにはあまりにおかしな動作をしかし、時臣はあっさりと受け入れた。

 

「はい、私が貴方をお呼びした者です。王よ、貴方様の降臨を待ち望んでおりました。」

 

ギルガメッシュは臣下としての礼をとる時臣を暫く眺めた後、

 

「いいだろう、此処に契約は成った。貴様を現世の拠り所として認めよう。」

 

 

時臣をマスターとして認めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー契約を済ませた時臣とギルガメッシュは地下から居間へと場所を移してそこで協力者の言峰親子と合流し、今回の戦争の方針を話し合うことになった。

 

「さて、俺のクラスだがこの軽装を見れば分かると思うがアーチャーだ。ほう?残念そうだな時臣とやら。」

 

王の探るような言葉を否定しながらもほんの少し、落胆の気持ちを持ったことは否定できない。

 

「だが、それは表向きの話だ。俺にクラスの縛りなど全く関係ない。俺の宝具は全て宝物庫の中に収納されている。無論あの『剣』もな..........ほう?嬉しそうだな時臣。」

 

今度は否定できなかった。なにせ時臣の脳内ではすでに6体の英霊に組体操の人工ピラミッドを作らせ、その頂点に腰掛けて酒を煽るギルガメッシュの姿が映し出されていたからだ。

 

やはり、この戦い我々の勝利だ!

 

「して、貴様らは俺をどうやって使うつもりだ?」

 

随分と皮肉った言い方だがどうやらこちらの策を知りたいようだ。

そこでこちらも勝利をより確実にするためのアサシンを総動員した策を王に説明する。

 

「.........なるほど、姑息だが悪くない策だ。」

 

この戦争に勝つために編み出した必勝策だ。当然褒められて嬉しくないはずがない。それも英雄王ギルガメッシュ直々の賛美となればなおさらだ。

 

「しかし、それは俺が現世に舞い降りた理由に反する策だ。残念ながら承諾しかねるな。」

 

 

........そうだ失念していた。ギルガメッシュとてなにか目的があってこの戦争に参加したのだろう。

 

 

 

 

「俺がこの戦争に参加した理由は.....まぁ、色々あるが神々の手から離れた人間たちの世界がどうなっているのか気になったというところか。それに俺に代わって英雄を名乗る者たちの力を試してみたくなったのだ。」

 

 

なるほど、人類最古の英雄にして旧き神々の神話を終わらせたギルガメッシュらしい参戦理由だった。確かにそれではアサシンは邪魔でしかないだろう。

 

 

「それに他のマスターたちがアサシンを警戒しているが時臣、お前は何も心配することなく戦争に挑めるのだぞ?.......まぁ、最もそこの綺礼とやらが裏切らなければの話だが........」

 

 

確かにそうだ。ギルガメッシュほどの強力な英霊を倒そうと思うにはマスターを潰した方が手っ取り早い。もしも他の陣営がアサシンのマスターと手を組んでいたならば、他のサーヴァントによってギルガメッシュが足止めを食らっている隙に気配遮断によって近づいてきたアサシンによって令呪を使う間もなく殺される可能性もある。

そういう意味においてもやはり綺礼にアサシンを召喚させておいてよかった。

 

ちなみに綺礼が裏切るというあり得ない話はスルーした。

 

 

 

「そうなると......すまないが綺礼、君には正式な形で聖杯戦争に臨んでもらう必要がありそうだ。もう教会にも立ち寄れないだろう。急いで住む場所を探してもらえるかい?」

 

作戦を変更することに決めた時臣たちの行動は早かった。直ぐに綺礼の新しい住居を決め、作戦を練り直し、アサシンにもっとこと細かく役割を振って分断させた。

 

 

 

いきなり予定が狂ったものの時臣に不満はない。

 

『常に余裕をもって優雅たれ』が遠坂の家訓なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.......だから人間観察と主張しながら遊び歩き、図書館で借りた自分の叙事詩を見ては爆笑しているギルガメッシュについては見て見ぬふりをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」

生前ギルガメッシュが完成させようと頑張ったものの結局未完成のままだった.......ものを息子のエルマドゥスが図らずも完成させた宝具。

中にはギルガメッシュが神から奪った神造宝具も幾つか入っている。またライオンさんも呼び出せる。

一方で未来の宝具を狙って出せるのかと言われると厳しい。
だが例えば敵によって宇宙の彼方に放り出された瞬間に光の舟の存在を認知してカウンターのような形でその瞬間だけ使用することは可能。


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