(*このギルガメッシュ叙事詩も胡散臭いこの本も史実とは一切関係ありません。)
「(新)ギルガメッシュ叙事詩」
ギルガメッシュ叙事詩とは、実在したとされる古代ウルクの英雄王ギルガメッシュの墓の内部に記されていた物語である。
その人類最古の英雄伝記とされているギルガメッシュ叙事詩が後世に与えた影響は凄まじく、後の英雄物語の大部分はこのギルガメッシュ叙事詩がモデルとなっている。
その明確で分かりやすいストーリーからは多くの派生作品が生み出され、それらの系統の作品をひとまとめにしてギルガメッシュロマンスという。
さて、ギルガメッシュ叙事詩の解説に入ろう。
物語はギルガメッシュが産まれたところから始まる。ギルガメッシュは人間の父王ルガルバンダと女神ニンスンの間に産まれた半神半人だがその血は2/3が神という人間よりは神よりの血筋であった。
ギルガメッシュ叙事詩を語る上で欠かせない存在がいる。ギルガメッシュの妻の美しき女神イシュタルである。
彼女とギルガメッシュの出逢いはかなり早い頃であった。ギルガメッシュがおよそ5歳の頃に神殿を訪れた時に2人は出逢った。
5歳の頃のギルガメッシュ王子は日々剣の稽古に励み、帝王学を学んでいたという。
そんなある日、ウルクにドラゴンが迫って来た。女神イシュタルと神殿にいたギルガメッシュ王子は兵士たちだけに戦わせることを良しとせず、この危機を前に自ら剣を取って立ち向かう。
そんなギルガメッシュ王子に女神イシュタルは加護と自らの随獣を貸し与えた。
天を舞うドラゴンへと立ち向かうギルガメッシュ王子。巧みに剣と神獣を操り、見事ドラゴンを退治せしめた。これが人類最古のドラゴン退治である。
やがて時は流れ、ギルガメッシュは「王子」から「王」へとなった。
ここからギルガメッシュの歴史は加速する。
王になったギルガメッシュはまず最初にウルクに襲いかかって来る人食い狼に凶暴な猪などの魔獣たちから民を守るために巨大な城壁を築き上げた。この城壁の一部はまだ残っており、世界遺産に登録されていることは諸君も知っていることと思う。
さらにギルガメッシュが成した偉業の中でも一際大きな功績として讃えられているのが「学校制度」の設置である。
これは帝国が滅びるまで続けられた制度で、再び学校ができるのはこれから2000年も後になる。
ギルガメッシュが王になって数年が経ち、遂に物語は動き始める。
なんと森の神フンババがウルクに迫ってきたのだ。
この危機に再び剣を取り立ち上がるギルガメッシュ。
彼は天空神アヌと太陽神シュマシュから加護を授かりさらに女神イシュタルからも再び加護と随獣を受け取って意気揚々と神退治へ出掛けた。
森の神フンババは強かった。
その吐く息は死。
その身体は森の化身にして恐怖の体現。
しかし、ギルガメッシュは諦めない。
何度も何度も立ち向かい、やがてイシュタルの随獣が作った隙を突き、剣を思いっきり振り下ろした。
森の神は滅びた。ギルガメッシュは上機嫌でウルクへと帰還する。
しかし、帰還した先で聞かされたのは長年懇意にしていた女神イシュタルが敵対しているキシュの者たちによって攫われたという知らせだった。
ギルガメッシュは激怒した。そして怒りのままにウルクを飛び出し、一直線にキシュへと向かった。
3日は掛かる道のりを半日で走破し、キシュの長エンメバラゲシによって穢されようとしていた女神イシュタルを寸前で救い出した。
そしてそのままの勢いでギルガメッシュは女神イシュタルに愛の告白をする。
「ああ、美しき女神イシュタル様!私は貴方のことをずっと思っていました。どうか私と添い遂げていただけませんか?」
ギルガメッシュを受け入れる女神イシュタル。
この連れ去られた美しい女を男が救いに来るというのは昔からよく使われる手法である。
キシュを新たな領土に加え、妻を手に入れたギルガメッシュは意気揚々とウルクに帰還する。民たちはギルガメッシュを讃え、イシュタルとの婚約を祝福した。
やがて2人は結婚式を挙げ、正式な夫婦となった。
幸せ絶頂のギルガメッシュにしかしまたしても危機が訪れる。
エンリル神の力を奪ったギルガメッシュの宿敵エルキドゥがウルクの城門すら軽く上回る大洪水をウルクに向かって放ったのだ。
死の恐怖に怯える民たち。しかし、ギルガメッシュは恐れない。
ギルガメッシュは迫りくる大洪水の前に立ちふさがり、手に持つ剣を振り下ろした。
すると洪水は真っ二つになり、ウルクは絶滅の危機を回避した。
さらにギルガメッシュの放った一撃の余波で地面が裂け、洪水の水が流れ込んで川となった。
これがティグリス川、ユーフラテス川に並ぶ三大河川、「ギルガメッシュ川」の名前の由来とされている。
この迫りくる大洪水は後の旧約聖書に出てくる「ノアの箱舟」の元になったエピソードとされている。
そして水を真っ二つに分断したというギルガメッシュの技はこれまた旧約聖書に登場する「モーセ」の海割りと似ているため、これも旧約聖書の元になったとされている。
洪水を防いだギルガメッシュは泥から造られた神々の兵器エルキドゥと対峙する。
2人の力は拮抗しており、お互いに何度も剣を持ち替えながら戦い続けた。
ギルガメッシュは自分に匹敵する力の持ち主であるエルキドゥとの戦いを心の底から楽しみ、かつてないほどの戦いを讃えエルキドゥを宿敵として認めた。
しかし、2人の決着はつかなかった。
大洪水を起こしたエルキドゥの身体には限界が訪れていたのだ。
泥へと還っていくエルキドゥの身体。
ギルガメッシュはそんなエルキドゥにたいそう悲しんだ。
しかし、再び対峙し決着をつけることを互いに約束しギルガメッシュは宿敵の最期を見届けた。
やがてギルガメッシュはウルクを滅ぼそうとした神々の罪を償わせるために自ら神々へと戦いを挑んでいった。
これは神を信仰していた時代においては到底考えられないことである。
しかし、ギルガメッシュは時代に流されることなく自分で考え、この決断をしたのだろう。
長きに渡る神々との戦いについてはこの本ではなく、私が書き下ろした本
「ギルガメッシュと神々の戦い」に書かれてあるのでそちらを読んで頂きたい。
神々との戦いを終えてウルクに帰還したギルガメッシュは天空神アヌから正式にこの地上を統治する権限を与えられた。
アヌ神は現世を去り、全てはギルガメッシュに託された。
まずギルガメッシュは法を作った。人類最古の法だ。
単に人類最古というだけではなくその内容も近代とは時代背景が異なるので参考になるものではないものの、大変こと細かく素晴らしいとされている。
現在でも「ギルガメッシュ法典」の原本は大英博物館に展示されている。
書店に行けば分かり易くまとめられた本があると思うので諸君も一度手に取ってみるといい。
さらにギルガメッシュは川をきちんと整備し、民たちの生活の役に立てようとした。
これまで語ってきたようにギルガメッシュとは武力、知力の両方に優れた王だったということが分かる。
武力のほうは人間とは思えない逸話が多いためおそらく後世まで伝説が伝わるうちに歪められてきたものと推測できるがその知力のほうは紛れもなく本物であると考えられる。
なにせ3000年経った今の我々がようやっと教育の大事さに気づき始めたというのにギルガメッシュは生きるのに精一杯だったであろう紀元前の世界でもう国を発展させるうえで重要な教育の大事さに気がついていたのだ。
彼こそまさしく名君といえるだろう。
名君とは国の外にも内にも目を配り、その国を発展させた王のことを指す。
武力で他国を押しつぶすだけではいけない。
内政ばかりで外の危機に目を向けないのもいけない。
広い視野でもって世界を見渡し、国を守り発展させた者にだけ名君の称号が与えられるのだ。
ーーしかし、皮肉なことに名君というのはあまりこの世には留まっていられないものだ。
ギルガメッシュは神々との戦いの最中に受けてしまった呪いによってその命を蝕まれ、早々にこの世を去ってしまった。
おそらく26歳ほどだと思われる。
ギルガメッシュの葬式は悲しみに包まれたウルクの中で行われた。
せめて王のことを忘れぬようにと民たちは巨大な墓を作った。
そしてその中に王の遺体と王が生前集めていた財宝が収められた。
この巨大な墓もまた世界遺産に登録されていることはご存知だと思う。
もしも彼がもう少し生きていられたのならばきっと歴史は大きく変わっていただろう。
ギルガメッシュの死後王位についたのはギルガメッシュの実の息子である
『エルマドゥス』であった。彼の名を知らない人もまたいないだろう。
偉大なる父から国と民を受け継いだエルマドゥスはウルクの威信を知らしめようと他国に遠征を繰り返し、遂に世界をウルク改め「バビロニア帝国」の下に一つにした。
父のギルガメッシュを大変尊敬していたとされるエルマドゥスは屈服させた国のあちこちにギルガメッシュ王の像を建てさせ、その逸話を崇めさせた。
また支配した国も全て父ギルガメッシュのものであると言い続けた。
全ての国を支配下に置いたエルマドゥスだがその政治手腕はお世辞にも優れているとは言えず、孫の代であっさりと帝国は崩壊してしまった。
ーー神々に代わって地上を治めたギルガメッシュ。
「神」という一つの旧い神話に終止符を打ち、現代でも通じるような法、学校などを整備したその在り方はまさに「革新者」と呼ぶに相応しいだろう。
伝説の真偽はどうあれ諸君も常に広い視野を持つことを忘れないでほしい。
そうすればきっと君たちも時代に流されない「革新者」になれるはずだ。
これが後世まで伝わっている伝説(笑)
所々端折られたり改変されていますが、歴史なんてそんなもんですよね?
ギルガメッシュ「............なんぞこれ?」
次回は人物設定などです。