新・ギルガメッシュ叙事詩   作:赤坂緑

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更新の早さだけが取り柄の作者なのに最近遅れていてすいません。
えっ?なんで遅れているのかって?
それはネーミングセンスを鍛えていたからさ。(今回は自信あり)


滅びの日

◇ギルガメッシュ◇

 

朝起きると隣には全裸のイシュタル。つまりいつも通りの朝だった。

 

さらにいつも通りの挨拶と朝食を済まし、いつも通りにシェムと仕事に取り掛かる。暫くすると、いつも通りにイシュタルがかまってオーラを醸し出す。いつも通りにシェムがイライラし始める。いつも通りに俺の胃がムカムカし始める。

 

そう、いつも通りの優雅な午前だった。

 

 

ドオォォォォォォォォォン

 

 

「っ!」

 

 

ーー強大な魔力の動きを感じ、思わず立ち上がる。なんだ今の!?まるで海の底から響いてくるような魔力の波動だった。

 

イシュタルを見ると青ざめた顔でこちらを見ている。

 

「こ、これは......エンリル神の.........」

 

エンリル神?確かアヌ様と並ぶ強大な神様だった気がするが......

 

「ギルガメッシュ!な、何かこちらに迫ってきていませんか?」

 

イシュタルがあまりにも怯えた様子で尋ねて来たので千里眼を発動させて遠方を見る。すると、そこには........

 

 

「................嘘だろ?」

 

 

 

 

 

ーー?????--

 

このエンリル神から奪った『天の宝具』......流石は神の宝具というべきか、扱えるようになるまで一年も掛かってしまった。さらに扱えるといってもエンリル神が発動させたものとは比べものにならないほど威力は低い。しかし、あのウルクを滅ぼすには十分だろう。

 

さて、始めるか。

 

ーー終末裁定槍エンリル起動

 

ーー滅びの火は満ちた

 

ーー裁定の時だ

 

ーーいざ来たれ!滅びの水よ!

 

ーー人智滅す壅閉の蛇(エンリ・シュティム)

 

 

◇ギルガメッシュ◇

 

それは巨大な水の蛇だった。全長何メートルあるかどうかも認識できないほど長く、その胴体はウルクを飲み干して余りあるほどに巨大だ。あんなのが直撃したらウルクは瞬く間に滅びるだろう。

 

「っ!兵士長を呼べ!」

 

急いで兵士長を呼び寄せて指示を出す。

 

「兵士を二手に分担し片方に城壁の起動を、もう片方にはこのウルクの中心地までの避難を誘導させよ!」

 

くそっ!ここ一年はアヌ様たちと連絡が取れなくなっている。つまり神々の援護は期待できない。自分たちの力で乗り越えるしかない。

 

「イシュタルは城壁へ守りの加護を頼む!」

 

「ええ!分かったわ!」

 

あの蛇が何かは分からないがこうなった以上は妻の手も借りたい。

 

「ギルガメッシュ!あの宝具はかつて人間を間引いたエンリル様の()()()()よ。エンリル様は訳もなくあの宝具を発動させたりしないわ。何者かがエンリル様を誑かしたか、考えられないけれどエンリル様からあの宝具を奪った者がいると考えたほうがいいわ。気をつけてねあなた。」

 

触れ合うだけのキスを交わしてからイシュタルはライオンさんにまたがって城壁へと向かって行った。

俺も黄金の鎧を身に纏ってこのウルクで一番高い建物であるこの王宮の天井へと登り、再び千里眼を発動させる。

 

見れば見るほど巨大だ。

しかし、その巨体ゆえに術者はその制御に苦労しているようだ。

今のところは直ぐに襲って来るという気配はない

 

「ギルガメッシュ王!城壁起動の準備が整いました!後は王の号令で起動します!」

 

兵市長が俺に報告をしに来た。よし、

 

「起動せよ!王の城壁(ガーデン・オブ・バビロン)!」

 

城壁に魔力が流れ、ウルク全体を覆う巨大な結界が形成される。

この結界は一度魔力を流し込めば暫くの間は起動し続ける。

さらにこの城壁にイシュタルの加護が加われば大抵の敵は諦めざるをえない。

 

 

 

王宮の下に住民たちが避難してきているのが見える。皆一様に困惑した様子で走っているがあれを見たら困惑は驚愕へ変わるだろう。

 

「さてと、皆の者聞け!今このウルクにかつてないほどの危機が迫っている!だが心配することはな『ピシャァァァァァァァァ!』い?」

 

演説の途中で城壁の上から襲って来る巨大な蛇。

当然民たちの間から悲鳴が溢れる。

 

「落ち着け!この城壁はお前たちが今日この時のためにこの城壁を築き上げてきたのだ!この城壁さへあれ『ピシッ』ば?」

 

亀裂が走る結界。どういうことだ!?

再び千里眼を発動させてよく見てみると分かってしまった。

 

あの水蛇の宝具はおそらく粛正宝具というやつだ。()()を排除する際に最も力を発揮する。

人間を守るための城壁とは相性が悪い。

 

「くそっ!どうすれば........」

 

ふと、視線を感じたので下を見てみると民たちが不安そうに俺のことを見ていた。

そうか、王が動揺を見せちゃ駄目だよな......

 

俺は真面目な表情を作って前を見据えた。

 

しかし、どうするかな。エアをぶっ放そうにも今発動させてしまうと結界ごと破壊しかねん。

そうなるとあの顔は破壊できても残りの水がウルクに降り注ぎ、この都市は水で満たされてしまうだろう。

それにエアの出力でもあの蛇全てを吹き飛ばせるとは到底思えない。

 

 

 

ーーどこからか聞こえてくる嘲笑を聞きながら俺は打開策を考えていた。

 

 

 

 




王の城壁(ガーデン・オブ・バビロン)

名前の通りのなんのひねりもない防御宝具。城壁の下に設置された箇所から魔力を流し込むことで都市全体を覆う結界を形成する。
英霊となったギルガメッシュが使えるかどうかはお悩み中。


終末裁定槍エンリル

本作オリジナル宝具。エンリル神がかつて人間を滅ぼすために使った宝具。
槍というよりはほとんど杖の形をしている。先端に七つの穴が開いており、そこに一日ごとに火が灯りそれが七つとも満たされた時、真の力を発揮する。


人智滅す壅閉の蛇(エンリ・シュティム)

終末裁定槍エンリルを地面に叩き付けることで発動する。発動すると全長3000キロメートル、ウルクよりも巨大な顔の水の蛇が出現し、洪水の如く押し寄せる。

元ネタは皆さんご存知のPrototypeギルガメッシュの宝具と旧約聖書の記述を合わせたもの。作者の自信作。

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