やはり、冷酷さあってこその「ギルガメッシュ」ですね!
「英雄王万歳!」「ギルガメッシュ万歳!」
◇ギルガメッシュ◇
キシュから結婚を申し込んだイシュタルと一緒にウルクに帰ってきた俺。
イシュタルをライオンさんの背中に、俺は徒歩でウルクの城門をくぐると
「ギルガメッシュ様!万歳!」
「イシュタル様!お帰りなさい!」
「流石は我らが王だ!」
「然り!然り!然り!」
ウルクの民たちが大歓声とともに俺たちを迎えた。
どういうことだ?俺は何も知らせずに一人で突っ走っていたつもりだが?
.......まぁ、いっか!
俺は兎に角疲れていたので深く考えずにこのパレードを楽しむことにする。
そうだ!どうせなら.........
「聞け!俺はこの女神イシュタルを自分の妻にすることを決めた!........王命である!我ら夫婦を祝福せよ!」
一瞬静まり返り、次の瞬間ドッと先ほどよりも大きな歓声が沸き起こった。
「やっと結ばれたのですね!おめでとうございます!」
「ギルガメッシュ夫婦万歳!」
「これでウルクは安泰だ!」
俺は真っ赤な顔のイシュタルをお姫様抱っこしてウルクの街道を歩いて行った。
「お帰りなさいませ。ギルガメッシュ王」
取り敢えず、イシュタルを神殿まで送り届けた俺は王宮に戻った。するとそこには久しぶりに見るシェムが頭を下げて待っていた。
「あぁ、ただいまシェム。.......ところでこの騒ぎはお前の仕業か?」
「いえ。それがギルガメッシュ王が神退治に出かけた後、アヌ様が天空に現れておっしゃったのです。『お前たちの王はこのウルクに迫りくる邪悪なる神フンババを退治しに森へ出掛けたのだ。お前たちは自分たちの王を信じ、いつも通り国の発展に努めよ。』と。」
なるほど、アヌ様が........おそらく、急進派の神々への牽制でもあったんだろう。自分は神退治などに出掛けていない。行ったのは国を守るために立ち上がったギルガメッシュであると........
「そう言えば、アヌ様がギルガメッシュが帰ってきたら自分の神殿まで来るようにと言伝がありました。」
フンババ退治の労いか、それとも........
まぁ、行くしかないか。
◇イシュタル◇
お父様の神殿まで呼び出された私。取り敢えず出向いてみるとそこには丁度ギルガメッシュがいた。
「イシュタル様!........じゃなかったイシュタルお前も呼び出されたのか?」
「そういう貴方も呼び出されたのですか........呼び出されたの?ギルガメッシュ。」
実は、これまでの口調や呼び方では以前と何も変わらないと思ったらしいギルガメッシュが急に私のことを呼び捨てかつ、少し乱雑な素に近い口調で話しかけてくるようになった。よって私も素に近い口調で話すことに決めた
.........まだお互い全然慣れていないが。
少しぎくしゃくしながらも私とギルガメッシュは神殿の中に入って行った。
「イシュタル!無事だったか!」
神殿に入った瞬間、お父様の顔がドアップで現れた。
その顔を見るにかなり心配してくれていたようだ。
「アヌ様。ギルガメッシュ並びにイシュタル様帰還しました。」
ギルガメッシュが話し出すとお父様はすぐに真剣な顔になって頷いた。
「うむ。フンババを退治するどころか我が娘を『人間』どもから取り戻すとは、大義であった。」
少し違和感を覚える。お父様はあんなに憎悪のこもった声で『人間』と言ったことがあったろうか?
「.........実は、そのことでお話があります。今回の黒幕と思われる『黒いローブの人影』についてです。」
そうして真剣な表情でギルガメッシュが語ったのはドラゴン退治や神殺し、そして私の誘拐に至るまで、何者かが人間を滅ぼそうと策略を巡らせているというものだった。そしてその人物はおそらく急進派内部にいると。
「...........その話は確かか?ギルガメッシュ。」
「間違いありません。実際に今俺が言うまでアヌ様はキシュの者だけでなく、『人間』そのものに憎悪を抱いていたご様子。もしそのままだったらアヌ様率いる穏健派は空中分解していたでしょう。」
「............確かにそうかもしれんな。」
「何者かが影で蠢いています。『人間』をウルクを滅ぼさんと。早急に手を打たねば取り返しのつかないことが起こる気がします。」
......思えば、あの私を攫った時のエンメバラゲシとキシュで私の身体に襲って来たエンメバラゲシは若干雰囲気が異なっていたように思える。
そのことを伝えると2人して考えこんでしまった。
やがてギルガメッシュは何かを思い出したような顔をすると未だに思案顔をしているお父様に向かって言った。
「あのアヌ様。イシュタルと結婚したいので貴方の娘さん俺にくれませんか?」
「ん?結婚?おめでとう。...............はっ?」
その堂々とした物言いは好きだけれど、もう少し空気を読んでほしかった。
ーー??????--
そこは「急進派」の神々の集う場所。そのどこか陰険な空気の場所に一人だけこの場にいるのが不思議なほどに強烈な神気を放つものがいた。
その人物に周りの神々がしきりに話しかけている。
「人間どもの増長は増すばかりです!この世界が自分たちのものであると錯覚し、好き勝手に振る舞っている!」
「我々がいるからこ生きながらえていることすら忘れ、神々への信仰も薄くなってきている!」
「最近では森に住む動物たちを意味もなく殺しまわっているとか!」
「そればかりか奴らは女神イシュタル様を我が物にせんと攫い、その身体を弄ぼうとしたのですぞ!」
「人間を諫めようとした我らが同胞森の神フンババさえも人間たちの王ギルガメッシュによって殺されてしまった!」
「次は我らかもしれませんぞ!」
「『エンリル神』!どうか今再び、あの『天の宝具』で人間に鉄槌を!」
どうやらしきりに話しかけられている神の名を「エンリル」というらしい。
これまで黙って聞いていたエンリル神はやっと口を開いた。
「..........うぬら、そのような幼稚な手で儂を味方にできると思うてか?」
予想と違った反応だったのか静まり返る神々。
「どうせすべてうぬらの策略であろう?実に下らん。そのようなものに儂の宝具を貸せとは、えらく大きくでたものだ。第一儂は裁定者じゃ。貴様らのような有象無象の神々の意見に耳を傾け、裁定を間違えるなどありえん。儂がかつて宝具で人間を間引いたのは儂がそうするべきだと裁定を下したからじゃ。今の人間たちを見て宝具を使う気になどなれん。ギルガメッシュはよくやっているではないか?よって貴様らの側につくなどありえん。会議はしまいか?ならば儂は帰るぞ。」
去って行くエンリル神。
しかし、その目の前に黒いローブの人影が現れた。
「なんだ貴様?」
エンリル神の問いかけにも答えない。
「..........エンリル神よ我らに『天の宝具』はお貸いただけないのですね?」
黙していた神々の一人が口を開く。
「そう言うておろうが!それよりもなんだこいつは!」
それには答えず神々は己の武具を具現化させる。
「っ!なるほど、貸してもらえぬのなら力ずくで奪うと?だがそれは浅はかだな。この儂にうぬらが勝てると?」
客観的に見れば明らかに不利な状況にも関わらず獰猛な笑みを浮かべるエンリル神。それはこの場にいる全ての神々を相手にしても勝てるという証明だった。
「いいえ。我々だけでは無理でしょう。しかし、残念です。貴方なら我々に賛同してくれると思ったのですが........仕方ありませんね。やれ、『天の鎖』よ!」
瞬間、黒いローブの人影から鎖が飛び出し、エンリル神を締め上げた。
「ぐっ!これは!」
身動き一つ取れないことに驚くエンリル神。やがてその身体を多数の武具が貫いた。
「『天の宝具』は我々が有効活用させてもらいます。さらばだ、かつて人間を滅ぼさんとした偉大なる神エンリルよ......」
こうしてあっさりとエンリル神は消滅し、かつて人間に襲い掛かった『天の宝具』は人間を滅ぼそうと画策する神々の手に渡った。
エンリル神のキャラがどっからどう見ても原作のギルガメッシュになってしまった件について。
まぁ、神様側にもこういう感じの人がいたってことで.........
本当にすいません。