おかしいなぁ......
こんなにうっかりしたキャラにするつもりはなかったのに......
◇ギルガメッシュ◇
うっかりで見落としていた「王の財宝」も拾いあげて1年が経った。
つまり俺は今14歳だ。
今日は大事な日である。大きく息を吸って......
「我が名はギルガメッシュ。今日からお前たちの『王』になる男だ!これから先どのような困難が待ち受けていようとも、お前たちを守り導いていくことを............この『剣』に誓おう!」
エアを天に向かって突き上げる!
「............それ、止めたほうがいいと思いますよ?」
微妙な顔をしながら戯言をほざく我が侍女シェム。
「なんで!?かっこいいじゃん!」
個人的にはこれ以上ない程の出来前だった。
「演説自体は良かったのですが.......それ、『剣』じゃなくて『鈍器』ですよね?」
.......やれやれ、どうやらシェムは働き過ぎで疲れているらしい。
「なにを言ってるんだシェム?どっからどう見たって『剣』じゃないか!見てごらんこの切れ味良さそうな刀身を!」
うむ、今日も「エア」は美しい!
「それが『剣』に見えるのは王子だけです!..........もしかして王子緊張なさってます?」
またまたおかしなことを抜かす我が侍女
「べ、べべべべ別にき、きききき緊張なんかしてねえし!」
............ちょっと噛んだだけだし!
「............やれやれ、王子。こちらへ。鈍器はそちらに置いて下さい!」
呆れるような顔をしつつも笑みを浮かべながら俺を呼ぶシェム。
俺が素直に『剣』を置いて近づいて行くと、シェムは俺を包み込むように抱きしめた。
「私は......いえ、『私たち』は皆王子が立派な王になるために努力を積み重ねてきたことを知っています。朝早くから剣の稽古に励み、怪我だらけで帰って来たあなたをどれだけ心配したことか.....さらに、午後からはルガルバンダ様たちから帝王学について学び、この国の未来を熱く語っては疲労困憊になっていましたね?......あの女神とのお茶会は未だに承諾しかねますが......ともかく、すべてが貴方によって続けられてきたことです。自信を持って下さい王子。貴方は間違いなく私たちに必要な王です。」
............この世界に生まれて14年。確かに俺のことをずっと見ていてくれたのはシェムだった。
いや、シェムだけではない。父上もイシュタル様も民たちも......ダモスも......みんなで日常を過ごしてきた。
もうすぐ日常は終わる。俺は「王」になる。
少しだけ寂しいが、みんながいてくれるのならば、勇気を出して一歩踏み出すことにする。
「ありがとうシェム。これからもよろしく。」
無意識のうちに震えていたらしい手はもう正常に動く。
「はい。いってらっしゃいませ。ギルガメッシュ王子。」
人生最後の『王子』を聞きながら俺は一歩を踏み出した。
ーー王宮前の広場ーー
ウルクに住むすべての人々が集まっている。大抵の場合、多くの人が集まれば会話の1つや2つ自然と起こりそうなものだがこの広場は不思議な緊張感に満ちており、誰一人として口を開かない。
今日は王位継承式。彼らの新たな「王」が誕生する日だ。
やがて彼らの視線が一斉に上を向く。そこには王宮の奥から姿を現した、
現国王ルガルバンダがいた。彼は民たちを一通り見渡すとよく通る声で語り始めた。
「皆の者、よくぞ集まってくれた。この度、天に君臨する神々より神命が下った。曰はく『ギルガメッシュを新たな王にせよ』と。」
ここで一旦言葉を切り、ルガルバンダはもう一度自分が治めてきた民たちを見つめ、再び語り出した。
「よって、これより先は我が息子ギルガメッシュがお前たちを治める『王』となる。......これまでよく私についてきてくれた。感謝する。」
ーー黙って聞いていた民たちの中から拍手の音が聞こえ始めた。
最初は小さかったその音はやがて全体に広がり、ルガルバンダを労わるように鳴り続けた。
こうして一人の王がその役目を終えて、新たな王が生まれる。
ーー拍手が止んだ頃、ルガルバンダが横に逸れ、王宮の奥から少年が姿を現した。
少年はルガルバンダが立っていた場所に立ち、美しい声で語り始めた。
「我が名はギルガメッシュ。偉大なる王ルガルバンダの息子だ。俺はこの世に生まれ出でた瞬間から『王』になることが決められていた。」
あらかじめ決めていた内容と違うことを話し出すギルガメッシュに驚きを隠せないルガルバンダが思わず息子の顔を見つめてしまう。
しかし、息子の堂々とした立ち姿を見てそのまま息子に任せることにしたようだ。
「だが、俺はそのことを運命だからといって安易に受け入れることも、仕方がないことだと割り切って考えることを放棄したことは一度もない!」
静かに始まったギルガメッシュの語りに熱が入り始めた。
「今日まで『王』とはなにか?どうすればこの国を守ることができるのか?ずっと考え続けてきた!」
真剣に耳を傾ける民たち
「答えは全く出てない!」
誰かがずっこけた気がした。
「だからこそ、この答えは皆で探すものなのだろう。
人によって求める『王』は異なる。しかし、俺の身体は一つだ。よって一人一人の『王』になることはできない。だから、俺はお前たち全員にとっての理想の『王』の姿を生涯考え続け、『王』としての役目を果たそう。
この国には大きな危機が迫ったことはない。だから守り方など分からない。だから、皆で意見を出し合って危機に備えよう。」
少年はここで一旦言葉を切り、自分の民となる者たちを見つめ、宣言した。
「我が名は『ギルガメッシュ王』お前たちを守り導くものだ。」
ーー拍手の音が鳴り響く。先代の王を労わった音にも負けずとも劣らない大きな音が........
「エア」は絶対に『剣』として認識されない!
乖離剣は『鈍器』はっきりわかんだね
ちょこちょこ抜けている1年間などは、番外編にする予定です。