新・ギルガメッシュ叙事詩   作:赤坂緑

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遂に、念願の..........!



勇者は..........

◇ギルガメッシュ◇

 

なんか、ものすごく柔らかくてスベスベしたものが俺の頭の下にある。こんな感触はこれまで味わったことがない。しかもなんか落ち着く。

 

しかし、名残惜しいがそろそろ目覚めなければならないだろう。確か「エア」の特訓の途中だった気がするので..........ん?..........あっ!あの俺がぶつかりそうになった人影はどうなったんだ?

 

急いで目を開き、頭を持ち上げると、あの柔らかい物体の正体が分かった。

 

 

ーーイシュタル様の膝枕..........

 

 

マジか!なんてこった!目を覚まさなきゃよかった!というか、これ歴史的快挙だろ!俺の「真・ギルガメッシュ叙事詩」に記載されるべきだろう!

あたふたと慌てる俺をイシュタル様は優しい目で見てくる。

 

..........思えば、ここ数年で随分とイシュタル様も丸くなったもんだ。

最初のうちはどこか冷たいというか、冷めた目で俺のことを見ていたが、最近ではもう本当に近所のお姉さんって感じだ。

 

 

ーーそういえばなんでイシュタル様がここに?

 

俺とイシュタル様のお茶会は基本的に午後からだ。

 

午前中はダモスの変態剣技指導に「エア」の特訓をしている。その後お昼ご飯を食べて父上もしくは家庭教師による帝王学の勉強会を終えてからおやつの時間位にイシュタル様がやって来てお茶会が始まる。なのでここにイシュタル様がいる訳が分からない。

 

そんな俺の心境を読み取ったのかイシュタル様が隣に置いてあった籠を持ち上げて口を開いた。

 

「実は、とある男神から果物の贈り物がありまして、一人では食べきれなかったので、ここ最近周囲を破壊しながら特訓を繰り返しているギルガメッシュ王子の見物がてら、差し入れとして持ってきました。」

 

 

..........あぁ、なるほど。つまりもう少し自重しろとおっしゃりたいんですね。

 

自重するかどうかは置いておいて、丁度お腹が空いていたので朝飯代わりに頂くとする。

 

 

..........というか、イシュタル様に届けられたプレゼントを俺が食べてしまっていいのだろうか?

 

 

..........まぁ、いっか!

 

深く考えるのを止めて黄金のように輝くリンゴに口をつけ........

 

 

「イシュタル様!俺が手に握っていた剣はどこです!」

 

リンゴを持つ手を眺めると「エア」がないことに気が付き、慌ててイシュタル様に詰め寄る。

 

「剣?あの妙な鈍器ならそこの木に立てかけてありますが.......」

 

後ろを振り向くと確かに「エア」があった。

 

「よかった~!」

 

リンゴを籠に戻して「エア」を手に取る。

 

「..........ギルガメッシュ、それはいったいなんです?禍々しい気配を感じるのですが..........」

 

俺の手に持つ「エア」を見て警戒した態度を見せるイシュタル様。

流石は「エア」そこに在るだけで女神様を警戒させるとは.......

 

俺は自慢気に「エア」を手に入れた経緯とその力を説明する。すると、

 

「なるほど。世界を切り裂く鈍ゲフンゲフン、剣ですか.....

しかし、そんな危ないものを持ち歩くのは関心しませんね。まぁ、鞘がない以上仕方ないのでしょうが..........」

 

俺にとってはもはや相棒であり、主戦力なので持ち歩くことに抵抗はないのだが、確かに危ない気がする。

 

「せめて、物を出し入れする空間でもあればよいのですが........」

 

本当に「王の財宝」が欲しい。いや、ホント、マジで。

 

「空間ですか........私に権限はありませんが、お父様なら余った空間の1つや2つ持っているかもしれませんね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

....................え?

 

 

 

 

 

 

◆イシュタル◆

 

お父様に余った空間の譲渡をお願いすると、あっさり通った。

空間を欲しがっていた筈のギルガメッシュは何故か神殿の床に膝をつき、

 

「..........伝え方が悪かったのか?」

 

なにやらブツブツ言いながら項垂れている。さらに、

 

「空間が欲しかったのか?それならば太陽神のやつが黄金の立派なやつを持っておったが、わしの余りでよいのか?」

 

神殿の床に頭をぶつけ始めたギルガメッシュ王子。兎に角、怪我をしたらいけないので押さえておく。

 

「....................もう、それでいいです。」

 

疲れ切った顔でつぶやくギルガメッシュ。

 

 

....................喜んでくれると思ってお父様に頼んだのにこの落ち込みよう。何があったのか知らないが、........面白くない。

 

 

「ふぅ、灯台下暗しってやつか。仕方ない俺が間抜けだっただけか。

イシュタル様!ありがとうございました!」

 

小声で何かを呟いた後、いつも通りの彼に戻って元気一杯にお礼を言ってくるギルガメッシュ。..........それだけで許してしまいたくなるのだから、随分と単純になった自分が嫌になる。

 

 

だが..........これもまた、心の奥底で願っている「変わること」なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

ーー???????--

 

ギルガメッシュとイシュタルが立ち去った後、その場に黒いローブを纏った人影が音もなく現れた。

 

置いてけぼりにされた籠をチラリと一瞥すると、中のリンゴを一つ手に取り、弄びながら誰に聞かせるでもなく静かに語り始めた。

 

 

 

「結局、あの王子はリンゴを食べなかったか。しかし、まだ手は残っている。..........次は『森の番人』でも使ってみるか。しかし、準備に時間が掛かるな..........まぁいいさ、時間はたっぷりある。せいぜい苦しめよ王子様?そして..........覚悟するがいい「人間」次こそは、滅ぼしてくれる!」

 

 

形容し難い声を上げながら人影は音もなく消えた。

 

 

 

 

 

ーー後に残ったのは一つだけリンゴの減った果物籠だけだった。

 

 

 

 

 

 




はい、「王の財宝」入手。
ぶっちゃけ原作の陛下がどうやって宝物庫と空間を繋げているのか不思議だったので、こんな形にしました。
そう、太陽神からのプレゼントだったのさ!

ーー今作の「王の財宝」ーー

原作みたく黄金の波紋が現れるわけではありません。なんていうか、空間がそのまま捻じれる?みたいな感じです。だから、初撃を防ぐのは結構難しいかも?

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