転生して脱ヤンデレ清姫を目指そうとしたらヤンデレに狙われた。 作:ヘタレ蛇
もうね、クラスの壁なんて軽く超えてませんか?
石がぶっ飛ぶよ。
次はこれ以上なの?
次は幾つ飛ぶんだろ。
結局、僕は気絶して再びエリザベートさんに叩き起こされてしまいました。
気付けばエリザベートさん、タマモキャットさん以外の他三人は既に居なく、其々の持ち場に戻ったそうです。
中でもカーミラさんは掃除係で文句を言っていたみたいですけど。
そして今……
「ぅ■■■■ぎゅぅ■■■■んっ……。」
椅子に縛られエリザベートさんの第二次
意識が飛ぶとタマモキャットさんが手の肉球で何度もビンタされます。一瞬の幸せな感触から首がもげそうな激痛に襲われます。
「貴様!キャットに黙って何時気絶していいと言った!こっちを見ろ!目を離すな!諦めるな!諦めたら其処で終了だ!頑張れ頑張れできるできる絶対にできる!ワン!」
何故か鬼教官のような事から熱いスポーツ選手の声掛けをされて肉球ビンタをされ続けている。何でこのタマモはこんな言葉を知ってるんだろうか。
最早エリザベートさんの激不味料理で味覚と嗅覚がもう殆ど機能しているか分からなくなってきた。
料理を口にする度に意識が飛び言葉も発声しづらくなる。
「■■ぉ、■■■むぃ■■■■す…。」
それどころかタマモキャットによる肉球ビンタで感触による幸せと衝撃で意識が薄れていく。
どんどん自分の意識が飲み込まれていく感じがする。ウラド三世が言っていた通り、気が狂いそうになるとはこういう…。
「■■ぅう■■■、■■■ゥァ■■■…。」
もう、駄目だ。
そして僕はまた再び意識を手放…
「…そんなメンタルで大丈夫かワン?」
「大丈夫です。問題ありません!…あっ。」
しまった!つい昔のノリに乗ってしまった!
「よし、では次に参るぞ!はい、あ~ん、だワン!」
「い、嫌ムグッ■■■■!?■ぅ■■■!!」
ホントに料理で内部崩壊して死んじゃうよ…………。
その後、僕の意識はガリガリ削られていき、最後に覚えてる料理は美味しい料理だったような気がする。
…なんか意識がボヤける。意識が途切れそうで途切れない感覚がする。体が全然動かない。ここは何処だろう?
「………ぅして……ここ………うん、完璧ね。」
エリザベートさんの声が聞こえる、何処だろ?顔を横に向けると目の前にハートの形の何かがゆらりゆらり………というよりエリザベート(キャスター)さんの
ゆらりゆらりゆらゆらり、ゆららゆらりゆらゆら……鬱陶しいですね。
掴みましょう。にぎりっ。
「ひゃっ!?誰っ!?ちょっと、ド田舎リス!何私の尻尾を掴んでるのよ!離しなさい!!」
鬱陶しいので掴みました。反省する気もなりません。というより力が入らないので振りほどくならどうぞ御自由に。それにしてもエリザベートさんの尻尾の鱗って初めて触れたけど…すべすべだ。ちょっとなぞってみよ、ツ~…
「ちょっ!?止めて!ムズムズするじゃない!今飾りで手が…」
一つ一つ鱗が良い形をしてて滑らかな感触がする。ちょっと癖になりそう。今度は両手でスリスリ…
「止め…止めて、ってば!ぅ…力が入ら…。」
うん、ちょっとhighになってきた。尻尾の先端のハートマークはどうだろ?顔に寄せて頬にスリスリ…
「うきゃっ?!…んン……ヤァ…。」
あー…すべすべ天国です。最高にハイって奴に…
「……いい加減に…。」
するとすべすべ
「しなさいぃぃぃ!!」
そして僕の方に急接近…って、えっ!?
「クブゥッ?!」
一気に降り下ろされた重い一撃は無防備な僕の腹部へと直撃し、再び僕は意識が飛んだ。
「ぅう……いたっ!?…うくぅぅぅぅ………ここは?」
目が覚めるとお腹の激痛で踞りながら周りを見渡す。簡単な家具が置いてある真っ白な壁の部屋にカボチャやコウモリ、黒猫といったハロウィングッズの飾りがされている。つか、ここカルデアのマスターの部屋じゃん。ハロウィンイベント通りじゃん。
「あら、起きたかしら?それと…」
頭の上からエリザベートさんの声がする。天井を見るように顔を向けると、僕の見下ろすエリザベートさんと手に持つカボチャが…
「これはプレゼントよ!」
突如エリザベートさんの手から離れて急接近するカボチャが…
バシッ!
「甘い、ですね!同じ手が二度通じると思ってるんですか?」
落ちてくるカボチャを両手を重ねて受け止める。人間一度食らえば対処方法なんて考えるですよ。手がピリピリ痛いけど、二度なんて…
「あらそっ。」つんッ。
「ほんぎゃぁぁ!いたっ!?っぅぅぅぅぅ~!!」
両手でカボチャをガードして無防備な今も痛いお腹をエリザベートさんは無慈悲に突っつかれた。お腹から走る強烈な痛みに無意識に手の力を抜いてしまい、受け止めていたカボチャが額に落ちて更に痛みが走る。これは二度食らっても痛い!
「ふん、本来なら串刺しだけど今回は許して上げるわ。私の料理をあまりの美味しさに悶絶しながら食べてくれたから…。」
・・・・・いや!違うから!?
と言ったら本当に串刺しになりそうだから飲み込んでおく。
「…で、何でうちのマスターの部屋がハロウィンパーティになってるか訊いてもいいですか?」
「うん?聞きたい?それは仔イヌにサプライズライブをするからよ!1発目は貴女に邪魔されたけど、これはこれで良い趣向だわ!貴女が居ればあの仔イヌは是が非でも貴女を救いにくるわ!そして戦いの末、この部屋に入ったらサプライズ!首謀者はサーヴァント界のキャスターアイドル!そして疲れきった彼に癒しのサプライズライブを送るの!完璧ね!」
「はぁ…是が非でもって、いくらなんでも過剰ではないですか?」
「…正直仔イヌに同情するわ。」
「解せぬ…。」
まぁマスターはこのイベントを知ってると思うし、エリザベートさんが2通目を出したならいずれ此処に来るし、でも是が非でもって言うのはやっぱりオーバーですね。いくら清姫好きって言っても怒り心頭でこの部屋に突撃するわけが…
「もと主人、もと主人!準備はオーケイ?ハーリーハーリー!」
扉からタマモキャットの声が聞こえる。でもなんか、妙に急かしているような…
「えっ!?もう!?待って待って!よし…よし…此処もよし!」
「赤トカゲよ!早くするのだぞ!悪魔より恐い鬼が側に居る故、尾っぽの毛穴がピリピリするぞ。」
「誰が赤トカゲよ!竜でしょ!竜…悪魔より恐い鬼?」
ま、まさか…
「キャットは退散するぞ!」
扉の外からスタスタ…と足音が遠ざかる音が響く。そして扉がゆっくりと開いた。否、ゆっくりに見えたのかもしれない。正直、ゆっくり所か僕的には開いて欲しくなかった。
其処にマスターの笑顔が目に入るまでは。
「ぁ…。」
そう笑顔だ。にっこり。と微笑んだ優しそうな笑みだ。只の笑顔だ。だけど不気味だ。
ゆっくりとマスターが部屋に入る。1歩、1歩と歩み寄っていく。近付いてくる度に心が締め付けられた。例えていうなら、テストで赤点を取って親に叱られる前の状況という訳じゃない、況してや二人の上司から命令による板挟みの心境でもない。そう単純な言葉で表すなら、心を鷲掴みされてるような、そんなイメージの恐怖を思い浮かばせる。エリザベートさんは、何だか固まってる。マスターがエリザベートさんの方に向かってるのに気付いてない。扉の方にマシュがまるでマスターから目を話すように此方を見ないでいる。これは、駄目なパターンしか思い付かない。
「…はっ!何なの今の、ハートを射ぬかれるような、絞られるような感覚は、まさか今のは、恋!?」
エリザベートさん、後者は当たりだけどその結論は可笑しい。それと前方の鬼に気づいて。射線上に巻き込まれてるこっちは辛いんだけど。
「…相変わらずの恋愛脳ですね、ドラバカ。」
「ドラバカ!?」
マスターからのドラバカ宣言にエリザベートさんは急激に反応した。本来なら呆れ顔をするだろうがマスターは微笑み顔のままだ。うん、恐い。
「仔イヌの癖に生意気よ!それにサプライズなんだから準備中に入ってくるなんてタブー何だから!」
「あら?ならば誘拐はタブーではないのですか?
「そ、それは、貴方へのサプライズの為であって、あ、アイドルの特権ですもの。驚いたかしら?」
「…ええ、驚きました。それはもう度肝を抜かれたように。」
「そ、そうでしょ!当たり前よね!」
エリザベートさん、そんな嬉しそうにしてないで気付いて!マスターがさっきよりも殺気が強くなってるから!
こっちにもザクザクと突き刺さってるから!
「…ですが!」
「!?ちょっ、と、何でどんどん近付いて!?まさか、駄目!ファンとの恋愛は禁止っ!?」
マスターはどんどん近付き、エリザベートさんは急接近するマスターに怖じ気づき後ろに下がる。そうしている内にエリザベートさんの背中が壁にぶつかり、マスターとエリザベートさんの距離が急激に縮まる。
うん、ラブコメだったら良かったなー、の展開だよね、これ。
「ま、待って仔イヌ!早い!早いってば、こんなこと」
バンッ!!
「ひっ!?」
「…何を勘違いしてるのですか?」
バンッ!!
「ひきゃっ!?」
頬を真っ赤に勘違いしながら恥ずかしがってる所を顔の横にマスターは壁ドン、もう反対側も壁ドンして、エリザベートさんは立って逃げ場を無くした。
「何故関係の無い彼女を拐う必要性は無いじゃないですか。それにあの招待の仕方は危険だと気付かなかったのですか?奇跡的にも彼女も私も無事でしたが、カルデアの指令室が半壊する程の被害で私が死んだらどうするつもりです?衝撃的なサプライズ?それで人理の修復に問題が起きたらどうするつもりでしたか?そんな事になったら責任を取れるのですか?そしたら貴女のアイドル人生は終わりですね。人理が崩壊したら貴女を応援するファンは消滅、それよりもカルデアという名のスポンサーが無くなれば終了ですね。でどうするつもりなのですか?」
「そ、そそれは……えっ…と…そんな、つもりは…。」
どうやらエリザベートさんはマスターの余りの気迫に漸く気付いてマシンガントーク並の質問、というか脅迫に圧され大量の質問の波に困惑の渦に呑まれ頭を抱えている。
「無かった、ですか?そんな軽い気持ちで実行しようとしてたのですか?貴女はアホなんですか?」
「…クビよ!クビ!クビ!クビ!クビ!クビ!きゅび!?……兎に角、貴方はプロデューサー、ク・ビ・よ!早くこの城から出ていきなさい!」
エリザベートさんはアホ発言にカチンっと来たのか、顔を真っ赤にしてマスターを押し退かせクビを何回も言った後、ビシッ!と擬音がなりそうなマスターへの指差しを決めた。そして壁側を向いて腕を組んで拗ねた。それに対してマスターは全然動じず微笑み顔のままだ。
「そうですか、それなら彼女を連れて出ていきましょう。」
マスターはエリザベートさんに背を向け真っ直ぐ僕の方へ歩いてくる。そのまま僕の前に止まると屈んで目線を合わせた。
「御待たせしました清姫、さぁ行きましょう。」
そしたら急に襲ってくる浮遊感、そして肩と足に暖かさを感じる。
うん、またお姫様抱っこ、うんざりします、いい加減、はい。
「マシュ行きますよ。」
「え、宜しいんですか?エリザベートさんは。」
「向こうから出てけと言われたのだから宜しいでしょう。それにあのような輩はほっといた方がいいと思います。」
「…それが良いんでしょうか。」
マスターはそのままエリザベートさんの方を見ずに部屋から出ようと歩き出す。マシュはエリザベートさんを気にしながらマスターの後を追う。
…正直、マシュ言うとおりだと僕も思う。これはエリザベートさんの自己満足で始めた事だ。エリザベートさん自身がそれを放棄したなら改めてそれを蒸し返すのは相手にも悪い、と僕は思う。でもエリザベートさんはこのハロウィンを楽しみ準備していた。それは子供が自分の誕生日が来るのをウキウキするような。そんな気持ちだったのに、簡単に諦めていいのだろうか?勿論これは僕のエゴだ。でもこんな後残りする終わり方で…。
僕は無意識の内にエリザベートの方を見て…
「……チラ…チラ…。」
うん、すんごい此方をチラチラ見てるよ。凄いなんか期待して待ってるよ!ってきりプンプン丸だと思ったら戻ってくるの待ってるよ!どうしよう黙ってようかな。
「!?……~~~~~~!」ウルリッ
あっ、このまま行っちゃうと思ってショック受けてるよ。
「まぁ!!今謝ればライブをやんない事はないわよ!?」
諦めないんですね。
「ほ、ほら!こんなことは一生に一度しか無いかもしれないわよ!もうやらないからね!やってやらないからね!?」
結構粘る上に貴女に関してはやらない事はあり得ないっていう事は分かります。でも後が恐いって事もあるから、しょうがないですね。
「あの、マスター?」
「…………。」
「あんなに必死に言ってるのですから、一曲だけ聞いていきませんか?流石に一曲聞いていけば聞かないよりかは彼女も気分良くなって後々面倒はないかと。」
「…………。」
マスターを立ち止まり無言のまま僕を見続ける。表情は真顔、その様子から『何で其処まで付き合うのか?』と質問されていると僕は思う。だって彼処まで粘ってるし、本人ホントに楽しみにしてたから、やるならやりきっちゃった方が良いでしょ。僕も正直ね、スカッとしたい訳ですよ。
「マスター、私も清姫さんの意見に賛成です。こうなったら本人が少しでも満足すれば良いんですし、もしもの時は止めに入れば良いと思います。」
「…二人が其処まで言うなら、どうなっても私は知りませんよ?」
そう言ってマスターは反対に向きを変えて歩き出した。エリザベートさんの前まで来て立ち止まった。てかお姫様抱っこを止めて欲しい。
「あ、あら仔イヌ、どうしたのかしら?私のライブを聞かずに帰るんじゃなかったのかしら?」
「…貴女の歌を聞くために戻ってきたですが?やっぱり自信がないのですね。」
「…ホント似てるわね、その蛇娘共々生意気よ。いいわ!貴方達をギャフンと言わせてあげるわ!」
此処で「ギャフン…。」って口で言ったら絶対に怒るから止めておこう。正直ふざけたくてしょうがない。だって現在進行形でお姫様抱っこなんて意識したくない。かなり切実。てかこのまま行くの?
「それじゃ一曲目!恋はドラクル_____」
そして目覚めた時はカルデアの自室のベッドで寝ていた。
「っ…結局、一曲処か最後まで止められませんでした。」
「うぅんっ!スッキリしたわ!」
視点変わりまして、どうもマシュです。言い出した此方が言うのは何ですが、かなり酷い物でした!!
さっきから耳がキーン!キーン!と鳴り続けています。
当の本人のエリザベートさんは憑き物が落ちたような、顔がツルテカと輝いています。何で本人は気付かないのでしょうか。
「…マスター、清姫さん、大丈夫…です…か?」
そんな事より二人の様子が気になり振り向くと、二人共が固まったように動かない。特に清姫さんは全身脱力してるようにマスターの腕の中です。羨ま……何でもないです。
「清姫さん…大丈夫です…っ!?
見れば分かるほどに気絶してます!」
白目を向いて口から泡を吹いてます。何時からそんな状態だったのでしょうか。
「大変です先ぱっマスター!清姫さんが気ぜっ!?
まさにそれは執念、そんなのを感じました。
次の予定はこの話の後日談。短いの一話
そしてローマの話を予定中。一話で納めたい。