私の幼なじみはルーピー   作:アレルヤ

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私の幼なじみとゼクシィ

 幽州に戻ってからいろいろあった。主にルーピー関係で。

 

 「徐庶ちゃんッ!一緒に新しい服を買いに行こうよッ!」

 

 「店員が貴方の着せ替えに夢中になり、私が空気になるのが目に見えているので嫌です」

 

 「じゃ、じゃあ一緒にご飯でも食べに行こうよッ!」

 

 「貴方のご飯にだけおまけつけられるから嫌です。私は平等を尊ぶので」

 

 「……じゃ、じゃあ遠乗り」

 

 「ごめんなさい、明日の天気を考えるのが忙しくて無理です」

 

 ルーピーがやたらと襲撃をかけてきたのだ。まるで強引なセールスマンや宗教勧誘の如く、笑顔で襲来してやれ一緒にご飯食べようだの、やれ一緒にお出かけしようだの。

 

 お前、隣に美少女連れて歩く女の気持ち考えた事あるのかと言いたい。

 

 誰が好き好んで弁当の黒豆を見るような視線を、男共から受けなければならんのだ。男共から「ほら、みろよ。あの可愛い女の子の方」と言外に除外される発言を貴様は受けたことあるのか。キツイんだぞ。泣くぞ。

 

 ルーピー係の北郷は一体何をやっているのだ。お前の仕事だぞ。サボるんじゃない。

 

 そんな北郷は「俺にも出来ることがあれば」と、最近は漢文を覚えて必死に内政を覚えようとしているようだ。

 

 そんなん求めてないのだ。さっさとあのピンク脳を誑かしてほしいのだ。ズッコンバッコンしていてほしいのだ。それともお前はゲイなのか。男が好きなのか。もうみんな滅べばいい。

 

 最近の私が思うに、もうあいつは妊娠して長期休暇にぶちこむしか無いのではないだろうか。そうしないとあいつ止まんない。

 幽州に来てから、あいつの勢いが恐ろしいことになっているのだ。

 

 これまでノホホンとしていたのだが、最近のあいつは飢えている。

 何を焦っているのかわからないが、これまで嫌いだった竹簡の整理等事務的なことの他に、自らも兵法や戦術、内政の勉強にも寝る間を惜しんで精力的に身を尽くしている。

 

 この前廊下ですれ違った時に、目にクマをこさえながら私に向かって「私、頑張る」と宣言された。意味が解らないが、見た目はゴール寸前だ。そのまま過労でぽっくり逝くのではないかと感動した。

 

 が、その状態で書かれた書類は案の定酷いものであり、結果的に立場的上司にあたる私の負担が増えた。

 私の激おこプンプン丸が超新星爆発した。テメェマジでふざけんな。

 

 無理やりくっそ苦い漢方を飲ませて、ベッドに顔面から放り投げる。ルーピーは鼻血流しながら、笑顔ですぐに夢の世界へ旅だった。そのまま二度と帰って来ないで欲しかった。翌朝には帰ってきた。畜生。

 

 また、戦場においてもルーピーは変わった。

 

 戦場に出るだけで、戦場の流れが一気にルーピーへと流れるのだ。あいつが剣を掲げるだけで兵の気勢が爆発。演説や宣揚等の言葉を掲げれば、全員が静かな興奮状態に突入して戦気満々。

 

 そして一人だけ冷めている私は、取り残されているという孤独感を味合わされている。

 気分は修学旅行の組み分けで一人余って、既存のウェーイ班にぶち込まれたそれである。内心で賊を応援した自分は悪くない。

 

 そんな兵士達が関羽や張飛といった武力お化け、そして孔明鳳雛の知力お化けに率いられていくのだ。賊退治は賊側にとって、酷いクソゲーである。毎度、賊がまるでゴミや羽虫のように散っていくのだ。人権擁護団体発狂モノの光景だ。

 というかあいつら応援してやってるんだから、お前らもう少し頑張れよと言いたい。

 

 もう戦場での癒やしは、馬の上で吐きそうになっている北郷くんぐらいのものである。

 「この光景に、俺は慣れていかなくちゃいけないんだよな」と言っているが、優しく背中を撫でて「そんなことはない」と言ってあげる。

 

 言っちゃ何だが、あれに仲間入りしたら人間として終わりである。いや、だってあいつらやべぇもん。

 

 君までそうなったら、もうまともなのは私一人しかいなくなってしまう。だから君は変わらず吐きそうになる君でいて、と伝えると複雑な顔をされた。

 

 そうして賊討伐の日々が続き、最近ではルーピーや関羽達の武名を知らぬ者は殆どいないまでになった。世の中にルーピーという恥を晒すことになった私の苦悩は大きい。陸遜、早くこいつを燃やせ。

 

 まだ見ぬ陸遜さんに思いを寄せて、ルーピーが大炎上する日を願う日々を送った。

 そんな事を願っていたら、見事に燃えたのである。……漢の大陸全体が。そっちじゃねぇよ。そういう意味でもねぇよ。

 

 地方太守の暴政に耐えかねた民が、民間宗教の指導者に率いられて武装蜂起。官庁を襲撃したのだ。

 官軍に制圧されて終わるかと思われたが、鎮圧に向かった官軍は反撃を受けて全滅。もう一度言おう、全滅した。どうやらこの国において、官軍とはただの給料泥棒の事を指すらしい。

 

 それに調子に乗った暴徒は、周辺の街へと侵攻を開始。

 あっというまに大陸の三分の一は暴徒たちに乗っ取られてしまい、動乱の時代を迎えたのだ。

 地方の反乱と多寡を括っていた漢王朝は、討伐軍全滅に大混乱し恐慌に陥ったらしい。

 

 そして地方軍閥に討伐を命じたのが、つい昨日の話。私の手元には洛陽の知り合いの宦官から、そのことが竹簡として届いている。ちなみに内容が嬉しげであったのは、あいつがドMだからだろう。やっぱこの国もうダメだわ。

 

 「と、いうわけで官軍があまりにも弱すぎたので、私達にしわ寄せが来ました」

 

 「その、お前、怒ってるのか?」

 

 王座に座る白蓮が、恐る恐るといった様子で尋ねてきた。

 下陣のルーピー達も目を丸くしている。どうやらここまで怒気を発する私に驚いたらしい。

 当たり前ですと鼻を鳴らして口を開く。

 

 「ええ、これも全て民の苦しみが浮き出たようなものです。多くの馬鹿な指導者が、民達から搾取することばかりを考えてこうなったのですから」

 

 歯なりを噛み締め、手を握りしめる。

 他の面々も沈痛な面持ちで私の言葉に同意した。

 

 私も本当に馬鹿な事しやがったと思う。

 

 搾取というのは、バレないようにするものなのだ。嫌悪や憎悪の対象を他に向けさせ、煽り、先導して根本的な原因から目をそらさせるのだ。そうすれば馬鹿で学の無い連中なんざ、自分が搾取されていることすら知らず、不満の矛先を他に向けて吠えるばかりになる。

 

 なのに自分に矛先を向けさせたまま搾取するとか、自殺志願者としか思えねぇ。搾取することばかり考えてて、足元が疎かになっている。

 馬鹿なのだろうか。馬鹿なんだろうな。私を見習ってもっとやるなら上手くやれよと言いたい。

 

 おまけに戦争だ。ふざけるな、私は戦いが大っ嫌いだ。ろくに金になりやしない。

 もっと平和に民は搾取されるべきなのだ。気がついたら全人類一パーセントに富集中とか、私の心が豊かになる。

 

 目指せ平和、目指せその富裕層一パーセント。

 

 「そうだな。そして多くの民が苦しむことになった。まったく、やりきれない」

 

 「うん、きっとまた多くの人達が悲しい涙を流すんだろうね」

 

 白蓮と劉備がそう言って暗い顔になった。私も暗い顔になる。気がつけば全員が悲痛な面持ちだ。

 

 「戦いは、いつも虚しいばかりです」

 

 何人かが私も同じだと、同意を表す視線を送ってくる。が、私は無視した。

 何故に虚しいのか、簡単だ、そんなん金が飛ぶからにきまっている。

 

 「それで、私は既に参戦することを決めているのだが……」

 

 白蓮が唐突に言葉を区切り、何かを迷い躊躇う素振りを見せる。

 数秒の後、やや緊張気味に白蓮は口を開く。

 

 「これは、桃香達にとって好機だと思うんだ」

 

 全員が「好機」という言葉にそれぞれの反応を見せた。

 そんな空気を読み取ってか、自身の考えを白蓮は述べていく。

 

 「黄巾党鎮圧で手柄を立てれば、朝廷より恩賞を賜ることになるだろう。桃香達がその気になれば、きっとそれなりの地位になれるはずだ。そうすれば、もっともっと多くの人達を守ることが出来るだろう?」

 

 ルーピーが権力を手に入れる。

 すごいな、猫に小判だ。小学生に核爆発のボタン持たせたほうが、まだ安眠できるレベルだ。震えてきやがったぞ、おい。

 

 「残念ながら、今の私の力はそれほど強くない。……そりゃもちろん、もっともっと力をつけて、この動乱を収めたいとは思っているけど」

 

 思うだけならタダである。

 ニートだって、フリーターだって思うだけならタダだ。つまりそういうことである。

 

 「でも今すぐは無理だ。そんな私に桃香を付き合わせる訳にもいかない。時は金よりも貴重なんだから」

 

 「ようするに白蓮さんがここまで長々と話したのは、『お前ら邪魔だからとっとと出てって』ってことです。最近、ルーピー人気が激しくなってきてついに尻に火がついたのだと思います」

 

 「ちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!?」

 

 話が長い。

 

 要するにルーピーの人気が大爆発して、反対に白蓮の不甲斐なさが対比されるようになったのだ。

 実際、白蓮さんは無難に統治を行っている。この時代に無難にやりこなす事のなんて難しいことか。

 普通に考えれば充分なのだが、それはある一定の視界を持つものだからこそ解ること。民衆は解りやすく、派手な結果を出す者を好む。

 

 そんな民衆からみて白蓮さんはどうその姿が映るのか。

 平穏な時代ならともかく、今は世が乱れて人々の心は不安に揺れている。減点法では100点満点だが、加点法だとゼロ点な白蓮さんでは、その精神的支えには成り得ないらしい。

 

 悲しいことにステータスをオール70で振っている白蓮が、魅力特化型で様々なスキル持ちのルーピーと比べられたら敗北は決定的に明らか。

 

 悲しみで白蓮の必死さは有頂天になっていたのだ。おかげでここ最近の夜は絡み酒が非常に多かった。寝させろよ。明日も仕事があるんだぞ。体壊すぞ、早く寝ろ。

 

 おまけにルーピーの悪口は一切言わず、自身の身の至らぬさを嘆く辺りまだ人が良いいのだろうが、私としてはこれっぽっちも楽しくない。

 ルーピーの悪口ガールズトークだったら、一晩中語り尽くせる。むしろこっちが寝かせないぐらいだ。

 

 「え、えーと。その、ご、ごめんね?」

 

 流石はルーピー、無自覚による素晴らしい追い打ちだ。

 そこで謝ることで、白蓮さんのプライドはバッキバキだ。粉しか残らない。

 

 白蓮が笑顔になってるが、あれは人間が精神的に追いつめられた末の笑顔である。目尻にうっすらと涙が湧き出てきた辺り、それがはっきりとわかんね。

 

 「いろいろ、白蓮さんには辛い思いをさせてしまったんだね。本当に、本当にごめんね」

 

 が、私は知っている。

 ここで終わるのはタダの空気読めないやつだが、あいつは空気よめない魅力チートだ。

 

 「……いや、これはこっちの勝手な言い分なんだ。私は、私は自分が桃香にお願いしておきながらこんなことをしている。ははは、本当に、なんだろうなぁ」

 

 「違う、違うよ白蓮ちゃんッ!」

 

 ルーピー劇場、開幕。

 

 最初に思いっきり心を折っておき、相手を肯定してあげて言葉を引きずり出し、そこから欲しい言葉を与えて共感させて自分色に染めていく。最後には仲直りと言う名の「さすルピ信者」の完成だ。

 

 色を覚え始めた村の少女達が、ネトゲ姫状態のルーピーに激怒。嫌がらせや言葉による攻撃を行ったことがあった。思春期の女の情念は恐ろしい。私はその少女達を応援していた。

 

 しかし、その時にもこのルーピー劇場が開幕したのだ。

 

 翌日には全員が洗脳完了し、仲良く鬼ごっこしていたのは今でも忘れねぇ。

 翌朝に「劉備ちゃん、すごくいい子だよッ!」とか言い出した少女達から、果てしない疎外感を覚えて精神的に孤立していった。この壮絶なトラウマを持つ私は思い出すだけでむしゃくしゃして胃が痛い、訴えたら勝てると思う。

 

 そしていろいろとルーピーパンデミック後。

 

 「……うん、やっぱり、桃香は器が大きいなぁ」

 

 こうなる。ひゃっほい、世界が滅べばいい。

 

 これを幼少期から見せられ、周囲が侵食される過程を見続けた私は、よく精神を保ったものだ。今の私は邪神降臨しても、SAN値チェックする必要がない精神力があると自負している。ただしルーピーは除く。

 あと白蓮さん。その器は100円ショップ中国製陶磁器ルーピー印だぞ、白蓮。呪いの品だ、割っちまえ。

 

 「せめて、せめて私にできることはないか?」

 

 「……そんな、これ以上の迷惑は」

 

 「友人への餞別だ、遠慮せずに持ってけよ」

 

 「え、いや、白蓮さん?」

 

 「止めるな花琳、いいんだ」

 

 結果として義勇軍の募集させてとか頼まれて、そんなものでいいのかと白蓮は了承。私は頭痛。知ってた。

 

 後日、涙になって私をチラチラ見てきた白蓮。ノリと勢いによる完全な自業自得であるが、私は聖人君子だ。

 博愛主義な私は「口頭での約束なんざ、クソです。勝手に徴兵し民心を乱したとして、あとなんか黄巾党と通じていた大罪人とか、デッチあげて都の素敵なお部屋に梱包してあげましょう」と提案した。

 

 却下された。何故だ。

 

 沢山の義勇兵を見てテンションを上げるルーピー達。私のテンションは急下降だ。吐き気がしてきた。

 と、和気あいあいと姦しい女性達の中から、北郷が私に近づいてきた。何やら緊張した面持ちだ。

 

 「ええと、徐庶さん」

 

 「……何ですか」

 

 「FXで破産した人の顔みたいな顔をしてるっていうか、いや、何でもないです。その、大丈夫?」

 

 お前、死体蹴りの趣味でもあるのかと睨む。視線をそむけて、冷や汗たらすぐらいなら、放っておいてもらいたいなこの野郎。

 

 「そ、そういうわけにも行かないだろう。徐庶さんも一緒に俺達と行くわけだからさ。これからの方針もみんなで話さなくちゃいけないと思うし……」

 

 「え?私は行きませんけど」

 

 「……え?」

 

 「……え?」

 

 呆けた顔をしている北郷と白蓮。

 数秒後に我を取り戻したのか、二人が慌てて私に詰め寄ってきた。

 

 「ちょ、徐庶さんッ!?それってどういうことだよッ!?」

 

 「そ、そうだぞ花琳ッ!い、いや、嬉しいけどさぁ」

 

 顔に滲ませる感情は違えど、何故どうしてという疑問は同じらしい。

 

 「白蓮さん、私、漢から爵位もらいましたよね?」

 

 「爵位……?あ、ああそう言えば確かに」

 

 この幽州は統治に問題はなく、極めて平穏そのものである。

 また、史実の公孫サンは『異民族絶対許さないマン』だったが、白蓮さんはそこまで悪感情を持っているわけではない。そのため異民族とうまい具合に交渉が勧めているのも、ここの平和の要因としてあげられる。

 

 窓口は勿論、提案実行締結させた私オンリー。

 

 それ以降はほぼ顔パスにより、異民族との交友が育まれている。

 おかげで間抜きし放題、着服し放題。懐がガッポガッポ。やっぱり清貧とかクソだと思う。毎日フカヒレ定食バンザイ生活だ。最近は一周回って、野菜炒め定食が食べたくなってきたぞ。

 

 それはともかく、私はそこで稼いだお金を洛陽に送っていた。

 内政官として一定の間、洛陽に滞在していたことがある私は、特別なツテを持っている。

 

 ドMな宦官、趙忠との縁もその一つ。

 何が悲しくて、書きたくもない罵倒を凝らした文の遣り取りを書かなければいけないのだと思ったが、我慢して交友を続けた成果が実ったのだ。

 

 その窓口から賄賂を送りまくり、私は爵位を買った。あとその他任命等々、十常侍からいろいろ優遇してもらったのである。この国、本当に腐ってるな。

 

 「で、簡単にいえば。私、この幽州の文官として国の為にいろいろ働かなくちゃいけないんですよねー。国の宦官さんも、私が幽州で働いてくれたら安心だって言ってくれるんですよねー。つらいわー、ルーピーと別れるのつらいわー」

 

 二人が頬を引き攣らせて私を見ている。

 

 あの盧植先生も、国自体には太刀打ち出来ない。ましてや水鏡門下生がルーピーの家臣に入ったため、本分に戻ると言えば無理も言えまい。というか、十常侍が言わせねぇ。

 こうなれば公的な立場から、義勇軍という名の野良犬についていく訳にはいかないのだ。どれだけ周りが声を上げようが、こうなればもう私はルーピーについていけないのである。

 

 しかしルーピーと離れるだけでは、結局のところ問題の先送りだ。

 これでは幼少期と同じ過ちを犯す事となってしまう。

 

 「と、言うわけで北郷くん」

 

 「は、え?」

 

 「私は貴方を応援してます。うん、頑張ってね。これあげる」

 

 手渡した皮の袋に入っているのは、いくつかの小瓶。

 そこには鮮やかな色をした液体が入っている。

 

 「これは?」

 

 「媚薬」

 

 「ブホォッ!?ゴフ、ゴホッ!?」

 

 咽ている北郷くんの抗議の視線を受け流しながら口笛を吹く。

 何やらわからんが、私がルーピーと一緒にいれば、ルーピーは何故か私と一緒に居続けようとし、胃の壁を破壊してくる傾向が最近特に多い。

 

 これでは北郷くんとの間が深まらず、北郷くんはルーピーにエメラルドスプラッシュ、じゃなくてホワイトスプラッシュできないだろう。

 若い北郷くんにはかなり辛いはずだ、男子高校生とか私も猿だったからな。

 

 解っていると慈愛の視線を北郷くんに送ると、首を必死に横に降っていた。解っている、解っているさ。恥ずかしいもんな。

 

 ルーピーにはとっとと産休に入ってもらい、その間に孫策やら曹操に天下をとってもらうしか、最早私ができるルーピーを止める方法は存在しないのだと私は気がついた。

 気が付かされるぐらいに、ルーピーの最近の向上は恐ろしいのだ。なんていうか、キモい。

 

 幸いにもこの世界は歴史の流れと展開が早い。であれば妊娠期間中にあまり動けないルーピーは、曹操や孫策に大きな遅れを取るだろう。それこそ取り返しがつかないほどに。

 私がもう止めれないと判断する以上は、こうして少しでも孫策や曹操にチャンスを与えるしか無い。

 

 私の悲痛な覚悟に北郷くんも胸を打たれてくれたのだろう。

 必死に首を横に振っていた。まだ横に振ってるのか。おっちょこちょいな北郷くんのために、正しく縦に首を振らせる。何か変な音がなったが気のせいだろう。

 

 ルーピーには涙ながらに己の立場を伝える。勿論歓喜の涙だ。

 ルーピー達も涙し、最後に抱きついてきたが優しく受け入れた。大切な母体だからな、前みたいに避けて子宮がやられたら大変なことになってしまう。

 

 北郷くんならみんなを預けられると、彼が気絶している間に勝手に私が考えた『天の御遣い~イケメン!抱いてエピソード』を披露。

 みんなが魅力的な素敵な女の子だ、とか意識させる発言をしていた等捏造満載。存在自体がゼクシィなルーピー達の頬を染めて、全てが準備完了である。

 

 頑張るぞと手を振るルーピー達に、(子作りを)頑張れと手を振る。

 人生の墓場に向かうとは気が付かずに、のんきに気絶している北郷くん共々。私は笑顔で送り出したのであった。




北郷「ウソダドンドコドーン」


気がついたら8月中旬とか、焦る。時間が流れるのが早い。変わらないのは仕事忙しいことだけとかなにそれ怖い。

夏はソーメンが美味しいですね、私の家にはソーメンしかありません。
前話でハンダクという新単語を作ってたみたいで、気がついて先ほど直しましたが、真面目にハンダクってなんだと私自身が悩みました。

毎度誤字報告の方、ありがとうございます。

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