オネェ料理長物語   作:椿リンカ

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執筆を始めて六時間、六行の文章が完成した


ウェイブは叱られ、ラバックとタツミは遠足の準備をする

惨憺たる有り様に厨房の主である料理長アンは頭を抱えた。このところ、予定していたレシピを変更することが増えている気がする。

気がする、というよりはトラブルによって変更せざるえなくなっているが正しい。

 

彼はウェイブに冷ややかな視線を浴びせながらも、厨房に飛び込んできた言い分を聞いていた。

ラバックやタツミ、シュラは片付けを手伝いながらも話をかいつまんで聞いている。

 

「それで、クロメがアカメの指定した場所に行くって・・・だから俺・・・」

「ウェイブのバカ!何も厨房になんか・・・」

 

クロメの言葉に料理人たちが視線を向けるものの、料理長が制止した。

 

「おやめなさいな。この子にとっては厨房より、姉のところに行くほうが良かったんでしょ」

「・・・」

「ここは自治権がある。だからクロメを止める時間稼ぎだって」

 

できる、と言いかけたであろうウェイブに、アンは軽く頭をチョップした。

軽く、というよりはほとんど痛くもないものだ。

 

「このお馬鹿。アンタ、それはこの子にとっては大きなお世話よ。邪魔する覚悟もその責任をとる覚悟もあるの?」

「なっ・・・お、大きなお世話って」

 

「女の信念をかけた戦いを止めるつもりなのってことよ。それなりに責任持ちなさい。」

「っ、俺はクロメに無理なんかしてほしくないだけだ!大事な仲間を見殺しになんかできるかよ!」

 

「・・・呆れた。惚れた女のために止めたいならまだしも、仲間だから助けるの?」

「ほっ、惚れ・・・」

 

「あたしはてっきり、ウェイブちゃんとクロメちゃんは恋人かと思ってたけど」

 

恋人という言葉にウェイブは呆気にとられ、クロメは状況を少し忘れて頬をほんのり染めて視線を逸らした。

 

「恋人、って・・・」

「ウェイブと恋人・・・」

 

「あらやだ薮蛇?クロメちゃんを庇ってウェイブちゃんがシュラを殴り飛ばした噂聞いてからてっきり」

 

「こここ、恋人って、俺はその、クロメを守りたくて、それで・・・!」

「・・・」

 

クロメの様子に気が付いた料理長筆頭に料理人たちは目をつけた。

 

「あらやだ~!青春?青春なの?あまずっぺぇ香りがしてきたわね~!」

「ちょっとちょっとぉ!はっきりしなさいよ、守りたいとかかっこいいこと言っちゃって~」

「ウェイブちゃんにそんなの言われたら普通に大興奮よね。羨ましいわ~」

 

その様子にタツミは苦笑し、ラバックは血の涙を流しながらウェイブの肩に手をおいた。

 

「お前も・・・」

「えっ」

 

「お前もタツミみたいにモテてんのか!無自覚とか腹立つから殴らせろ!頼む!一発だけでいいから!」

「なんだいきなり!?」

 

完全に私怨である。

 

シュラはというと・・・

 

「なんだよ、惚れてるのか?薬漬けされてる女だぞ」

 

・・・という有り様である。

なお、料理長が即座にビンタをかまして黙らせた。

 

「まぁいいわ。厨房に入ったならあたしの管轄よ。クロメちゃんとアカメちゃんの決闘は許可するわ」

「!」

「料理長・・・」

 

「ただし、ウェイブちゃんの意向も汲んであげなきゃね」

 

その言葉に場が静まった。

 

「あたしとウェイブちゃんがクロメちゃんについていくわ。その上であたしがアカメちゃんと交渉してあげるから」

「交渉って・・・」

「それは後よ。あと、ウェイブちゃんはこの間にしっかり考えときなさい。本当にクロメちゃんを助けたいなら、責任の取り方ぐらい・・・わかるでしょ?」

 

そこまで言って、料理長は料理人たちに今後の指示を出していた。

駄目になった食材のチェックや明日以降のレシピ変更などの通達である。

 

そして・・・

 

「タツミちゃんとラバックちゃん、あとついでにシュラもついてきなさい」

 

「俺達も、ですか」

「はぁ!?なんでシュラの旦那まで連れてくんだよ?!?」

「俺を巻き込むな!あのアカメに殺されたらどうするつもりだ!?」

 

落ち着くタツミとは反対にラバックとシュラは料理長に抗議する。

 

「まずタツミちゃんとラバックちゃん、アンタたちのお仲間のこともあるでしょ。顔見せぐらいはさせたいし、ウェイブちゃんが暴走したときに止めれるでしょ?」

 

「それはまぁ、帝具があればそれなりには。俺もアカメがクロメと決着をつけるなら見届けたいし」

「そりゃあそうだけど・・・シュラの旦那は?」

 

「放置したら逃げるでしょ?」

「「なるほど」」

 

「納得すんじゃねーよ!」

 

シュラはタツミとラバックに舌打ちし、アンへと掴みかかる。

 

「こいつらを逃がすつもりじゃねぇだろうなぁ?俺が折角追い込んだんだぞ」

「あらやだ。逃がすわけないでしょう?物覚えのいい新人二人なんだから」

 

「んなこと言って・・・」

「ちなみにあんたも帝具は持っておきなさい。後で返してあげるから」

 

「よし、乗った」

 

シャンバラを返すという言葉にシュラは直ぐ様乗り気になった。

もちろん、アンとしては一時的に返すという意味合いなのはシュラもわかっている。

ただし・・・返されたら是が非でも返却するつもりはないわけだが。

 

「じゃあ軽くお弁当とおやつでも作るわ。ウェイブちゃんとクロメちゃんも準備して。ほら、タツミちゃんたちも」

 

 

かくして、アカメとクロメの戦いに遠足気分でアン料理長が行くことになったのであった。

 




※前書きのはネタではありますが酷いときは六行も進まないのはザルにあるという現実

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