目が覚めたら何故かユクモ村に居たのでハンター生活をエンジョイする事にした   作:勇(気無い)者

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地獄の軍団(仮)とイビルジョー。

 魔理沙と勇儀を連れて集会所へとやって来た。俺はリーサ対策として魔理沙を抱きながら辺りを窺う。

 

「……居ない?」

 

 珍しい事に、リーサの姿が見当たらなかった。いつも集会所に居て、俺ににじり寄って来るのに。というかさっきまで居たのに。

 まぁ、いいか。いや、寧ろいいか。

 魔理沙は抱っこしたままで受付へと向かう。ササユさんが笑顔で迎えてくれた。

 

「お待ちしておりました、ハンター様」

「ええ、手続きお願いします」

 

 ササユさんが依頼書を出してくれる。

 

 狩猟クエスト

恐怖と暴動の孤島

 

 クエスト内容

イビルジョー2頭の狩猟

 

報奨金 21600z

契約金  1800z

指定地 孤島

 

 契約金を払い、手続きを済ませる。

 ……しかし、報奨金高いな。確か、大連続狩猟の『四面楚歌』━━黒ディア、アグナ亜種、ティガ亜種、ジンオウガ━━と同じ金額じゃないか? まぁ、それだけイビルジョーが危険視されているという事だろう。

 

「それではハンター様、クエストの達成をお祈りしています」

 

 ササユさんの言葉を背に受け、クエスト出発口へ━━━向かう前に、ハンターズストアで強撃ビンと麻痺ビンをそれぞれ最大まで購入する。使えるのに使わないのは愚か者の所業である。特に強撃ビンは。

 次に、クエスト出発口の横に設置されているアイテムボックスからアイテムを引き出す。

 鬼人薬グレート、硬化薬グレート、落とし罠、シビレ罠をそれぞれ一つずつ。他はいつも通りのアイテムを持っている。

 

回復薬 10

回復薬グレート 10

強走薬 5

クーラードリンク 5

ホットドリンク 5

秘薬 2

いにしえの秘薬 1

力の護符 1

力の爪 1

守りの護符 1

守りの爪 1

ペイントボール 99

閃光玉 5

こやし玉 10

モドリ玉 1

ピッケルグレート 5

 

 上記のものが、ゲーム時代から常備している物だ。

 そして、忘れちゃいけない肉焼きセット。これが無いと力が減ってお腹が出ない状態になってしまうからな。……いや、逆だけどね。とりあえずアイテムはこれでオッケーだな。

 魔理沙や勇儀の装備も整えてある。魔理沙はニャン天装備で、武器は無し。元々攻撃に爆弾しか使わないので武器は必要無いと言っていたが、最近はネコボーンピックすら持っていかなくなった。

 いや、俺がオトモボードから装備変更しない限りそのままなので俺が変更させたのだが、まさか武器が外せるとは思わなかった。

 勇儀の方はというと、防具は以前と変わらずアカムセットだが、武器はハンター用の大剣━━王牙大剣【黒雷】━━を担ぐように持っている。

 当然ながら、勇儀の装備もオトモボードから変更しなくてはならない。その際、武器の一覧が表示されるのだが、勇儀だけハンター用の武器まで表示されるのだ。

 無論、表示されるのは彼女が装備出来る物のみに限られる。ランスや弓、ボウガンや太刀など、装備に明らかな無理が生じるものは一覧に表示されない。

 その中には、アイルーの身の丈に合わない大剣も含まれる。しかし、王牙大剣【黒雷】だけは何故装備出来るのか。

 それは恐らく、王牙大剣【黒雷】が弓と同じで折り畳み式の大剣であるからだろう。構えていない時は、刀身が半分程になるのだ。それだけで持ち運びが楽になる。

 ……それでも重量は変わらないのだが。一体、この小さな身体のどこにそんな力があるというのか。もう星熊勇儀だから、と納得するしかない。

 

「とりあえず、これで準備オッケーだな。行くぞ」

「了解だぜ!」

「任せな、大将!」

 

 俺たちはクエスト出発口の外へと踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 孤島のエリア2番━━━右方には土壁から葉のない巨大な樹が生えており、左方には水が上から流れていて小さな滝とも言えるものが存在する場所。

 ズシン、と。目の前の黒く巨大な体躯の恐暴竜が倒れる。尻尾は既に斬り落とされており、少し離れたところで転がっている。

 

「━━━よし。これで残りはあと1匹だな」

 

 そう言いながら、俺は額の汗を拭った。

 クエストを出発し、孤島へとやってきた俺たちだが、まず支給品を取りベースキャンプを出て、イビルジョーを探すべく行動を開始した。

 エリア1番を経由し、2番━━━つまり、今俺たちが居るところに出たら、早速イビルジョーに遭遇した、という流れである。そのまま戦闘を開始し、凡そ10分ほどで恐暴竜は物言わぬ死体と化した。

 いやー……分かってはいたが、勇儀さん強すぎ。たった2分ほどで尻尾を斬り落とし、身の丈の数倍に匹敵する大きさの大剣を振り回しながら上手く立ち回り、執拗に足を狙ってゆくスタイル。あのイビルジョーが転びまくっていた。

 そして、魔理沙の小タル・大タル爆弾による攻撃。執拗に顔を狙い、爆発で視界を遮ってゆくスタイル。あのイビルジョーが何も出来ず、閃光玉を使った時のようにただ暴れるだけしか出来ない状況に追い込まれていた。

 ほんと、こいつらチートだわ。

 因みに、俺は麻痺ビンを使ってイビルジョーを麻痺させた後、強撃ビンは使わず適当に溜め3の貫通Lv4と放散型の曲射を臨機応変に撃っていただけだった。

 ただ単に安全な距離から適当に矢を撃っていただけである。いや、勿論全く狙われなかったとかそういう事は無いのだが……何か、2人に申し訳ない気分だ……。

 

「やったな、ご主人!」

「流石は大将だねぇ」

 

 うん、ありがとう。流石なのはお前ら2人であって、俺は殆ど何もしてないよ……。

 こんな事なら、俺も剣士で来ればよかったかな。……いや、それだと間抜けを晒すだけか。立ち回りとか分からないし、今以上に恥をかくだけだな。うん。

 

「じゃあ、剥ぎ取りして次のイビルジョーを探しに行こうか。周囲の警戒お願いね。どこからかリオレウスやリオレイアとかが襲ってくるかもしれないし」

 

 魔理沙と勇儀に指示を出し、胴体と尻尾から剥ぎ取りを終えた頃━━━遠くの方から咆哮が聞こえてきた。イビルジョーのものである。

 

「どうする、ご主人?」

「勿論、狩りに行く。イビルジョーを2頭討伐するのが今回の仕事だからね。それで、今のはどっちの方角からだったか分かる?」

「こっちだぜ」

「こっちだな」

 

 魔理沙と勇儀が同時に西の方角━━━エリア3番へと繋がる道を指差す。

 

「よし、じゃあ行こう」

 

 エリア3番を目指して走り出す。緩やかな傾斜が続いており、7メートルはあろうかという岩壁に挟まれている。

 2、3分ほど進むと、左手側の壁がなくなり、切り立った崖が広がった。下は川が流れており、恐らく落ちたら助からないであろう高さはある。

 しかし、それも少し進むと景色が更に変わり、今度は見渡す限りの大海原が広がった。青い海に青い空。どこまでも続く水平線。

 

「……いい景色だな」

 

 思わず呟いてしまう程、目の前に広がる景色は絶景であった。日本では内陸部に住んでいた為、こういった景色はテレビなどでしか見た事がなかったのだ。エリア1番での景色も充分絶景だが、こちらはまた違った趣がある。

 しかし、今は景色に見惚れている場合ではない。止まっていた足を動かし、再び走り出す。

 少し進むと、またイビルジョーの咆哮が聞こえてきた。

 だが、それだけではない。何やら、大人数の人の雄叫びのようなものも聞こえてくる。かなりの数で、少なくとも数十人は居ると思われる。

 孤島には村があると聞いていたが、その住人か? いや、だとしてもイビルジョーが徘徊しているような場所に人が来るだろうか?

 ……分からん。兎に角、急いだ方が良さそうだ。

 

「急ぐぞ!」

 

 魔理沙と勇儀に指示を出し、俺は強走薬を飲んで走り出した。効果が続く限り、俺はスタミナを消耗する行動を行い続けても息切れせず、走り続ける事が出来る。とっても便利。

 そうこうしている内に開けた場所へと出た、丁度その時。

 右手奥の方から、黒い巨体が体当たりでもするようにヌッと姿を現した。イビルジョーである。

 だが、それだけではない。全身黒タイツの人間━━本当にタイツなのか分からんが━━も数名、イビルジョーの体当たりをくらったように吹っ飛んできた。

 ……どちら様? 何でイビルジョーと戦ってるの? これはどういう状況?

 あ、また奥の方から黒タイツの人が数人出てきて、イビルジョーに飛び掛かったりしている。それぞれ片手剣を持っているようだ。盾は何故か無いが。

 ……もしかして、孤島の村に住む人なのかな? それにしては、全員ショッカーっぽいというか、その、悪の組織めいた格好をしているが……。

 ふと、ショッカー軍団(仮)の1人が俺に気付いたらしく、此方に駆け寄ってきた。

 

「貴女はまさか、ユクモ村のハンターさんですか⁉︎」

「えっと、そうですが……」

「良かった! ハンターさん、力をお貸し下さい!」

「あっ、はい」

 

 ショッカー(仮)が再びイビルジョーへと向かっていく。が、ものの見事に「グワーッ!」とか叫びながら吹っ飛ばされる。

 しかし、すぐに起き上がり回復薬と思しき物を飲んで、再びイビルジョーに向かっていく。

 タフだな。というか、よく死なないな。あんな防御力皆無に見えるぴっちりタイツで……いや、それ言ったら2ndのキリン装備やセツナのドーベル装備とかもそうか……あんなに肌を露出しているのに、防御力は高いという謎。

 いや、そんな事よりも。

 

「勇儀、魔理沙。頼りにしてるよ!」

「任せろ、ご主人!」

「任せな、大将!」

 

 魔理沙と勇儀の返答は同時だった。何とも息ピッタリである。

 2人の存在を頼もしく感じながら、俺はまだ使っていなかった強撃ビンを装填した。

 

「よし、行くぞ!」

 

 矢を番えて弓を引き絞り、走り出す。

 

「私はユクモ村常駐ハンター、エクシア! みんな、イビルジョーから離れて!」

 

 叫びながら、曲射を放った。上空へと放たれた一本の矢は、イビルジョーの頭上で分散し、幾つもの矢の雨が降りそそぐ。それらはイビルジョーの身体に突き刺さる度に青い雷を発する。

 更に勇儀がイビルジョーの近くで大剣を展開し、遠心力を利用するように振るって足に一撃。それだけに留まらず、その勢いのまま飛び上がって尻尾に一撃。見事な連撃である。

 そして、魔理沙の小タル爆弾乱舞が執拗にイビルジョーの顔面へと投げ込まれる。

 そんな戦いぶりに、ショッカー軍団(仮)達から「おおっ!」と声があがる。

 ふっふっふ……。どうやら、魔理沙と勇儀の見事な立ち回りに驚きを隠せないようだな。どうか「あのハンター、ショボくね?」とか思われませんように……!

 

「ぅおっと⁉︎」

 

 そんなどうでもいい事を考えていると、イビルジョーが俺を狙って飛び込んできた。それを慌てて横に飛んで避ける。

 が、俺の方を向き直り、更に噛み付かんと突っ込んできた。それも難なく回避。

 しかし、それでも諦めず、執拗に俺へと向かってくる。

 ……俺狙いか? 魔理沙も勇儀もアイルーなので、イビルジョーからすれば小さ過ぎて狙いづらいだろう。

 

「ふっ、そういう事ならつきあうさ……。鬼さん此方〜、手の鳴る方へ〜!」

 

 イビルジョーの突進を闘牛士の如くヒラリと躱し、貫通Lv4の矢を叩き込む。

 それでも諦めずに突っ込んでくるイビルジョー。だが、俺はその攻撃を(ことごと)く躱す。

 当たらない。当たらない。当たらない。イビルジョーの攻撃を掠らせもしない。

 ふふふ、いいぞ。今日は絶好調だ。

 

 ━━━なんて調子に乗っていたらイビルジョーが怒った。身体を赤くし、咆哮をあげる。

 距離が余り離れていなかった為、思わず耳を両手で塞いで蹲ってしまう。ゲームの時は何してんだよ、とか思っていたけど、実際に聞いてみると耳を塞いで蹲るのは仕方がない事なのだと理解した。

 本当に煩いのだ。耳を塞がなかったら、鼓膜が破れるんじゃないかと思うぐらいには。

 咆哮が終わり、次の攻撃に備えて立ち上がり━━━

 

「うぉわっ⁉︎」

 

 ━━━いきなり、何の前触れもなくイビルジョーが突っ込んできた。慌てて横に飛び、ギリギリで回避に成功。

 

「……ああ、成る程」

 

 起き上がり、先程までイビルジョーが居たところに視線を移して納得した。

 そこにあったのは、イビルジョーの尻尾。勇儀が斬り落としたらしく、それで吹っ飛んで来たのだ。心臓に悪い。

 そして、ショッカー軍団(仮)から大きな歓声があがる。尻尾斬ったぐらいで嬉しそうにしてんな。

 ……いや、待てよ? あのタイミングで尻尾を斬り落としたって事は、勇儀はイビルジョーの咆哮にも平然としていた……?

 …………考えるのはやめよう。何が起こっても不思議じゃないさ。勇儀だもの。

 起き上がったイビルジョーが今度は勇儀に狙いを定めたらしく、あちらへと向かってゆく。

 そこへ隙ありとばかりに俺と魔理沙が畳み掛ける。そして、イビルジョーの攻撃は勇儀に全く当たらない。

 焦れたのか、今度は魔理沙に狙いを変えた。が、やっぱり全然当たらない。そうしている内に俺と勇儀が攻撃を叩き込む。

 あ、転んだ。隙を逃さず、3人で攻撃を叩き込む。

 そんなリンチめいた攻防が数分ほど続き、遂にイビルジョーは物言わぬ死体となった。

 

「ふぃ〜」

 

 弓を畳んで背負い、額の汗を拭う。

 いやぁ、イビルジョーは強敵でしたね(笑)

 何つーか、クエストに行く前はマジで嫌だなとか思ってたけど、終わってみれば呆気ないもんだったな。イビルジョー大した事なくね? って思ってしまうぐらいだが、実際のところ魔理沙と勇儀の働きが大きい。多分、3人の中でダメージソースは俺が一番低いんじゃないかな……。

 

「いやいや、流石はユクモ村の伝説と言われるハンターさんですな」

 

 ショッカーAが話し掛けてきた。顔まで覆面で隠してるのはどうかと思うよ、ホント。

 

「いえ、魔理沙と勇儀……私の自慢のオトモアイルー達のお陰ですよ。私は余り大した事はしていません」

「そんな事はないぜ、ご主人」

 

 背後から魔理沙の声。視線を移せば、魔理沙と勇儀が足元までやって来ていた。

 

「そうさね、大将。あたし達の与えたダメージより、大将の与えたダメージが一番大きいんだ」

「……そうなの?」

「そうだぜ。悔しいけど、私たちアイルーじゃあご主人みたいに大きなダメージは与えられないんだ」

 

 ……そういうものなのか? いや、だって魔理沙の小タル爆弾とか、ダメージ固定の上に火属性のダメージが乗るんじゃ……あれ? 武器の一撃より、小タル爆弾の一撃の方が強いんじゃないのか?

 ……ん? よく分からん。まぁ、いいか。

 

「まぁ、そうだとしても2人の援護が無ければ、これほど早くイビルジョーを討伐する事なんて出来ないよ。ありがとう、2人とも」

「ご主人……!」

「よせよ大将、照れちまうよ」

 

 ふふふ、照れてる魔理沙と勇儀……可愛い。

 

「さて、剥ぎ取りして帰ろうか」

「あ、ハンターさん」

「はい? ━━━うっ⁉︎ ゲホッゲホゲホッ!」

 

 ショッカーAが、いきなり粉のような物を振りまいてきた。それを吸い込んでしまい、咽せる。

 

「いやいや、ありがとうございますハンターさん。貴女のお陰でイビルジョーの死体が手に入りました」

 

 な、何を……い、いかん……意識が……薄れて……。

 

「安心してお眠り下さい、ハンターさん」

 

 ━━━そこで俺の意識は途絶えた。


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