目が覚めたら何故かユクモ村に居たのでハンター生活をエンジョイする事にした 作:勇(気無い)者
とりあえず書いた分だけ投稿します。
溶岩の煮えたぎる火山。辺りには白い岩が乱立し、それらは一定以上の攻撃を加えると爆発する。
そんな場所で俺が相対するのは、金色の毛並みを持つ大きな猿。ラージャンである。しかも、バチバチと黄金のオーラを纏っている。
どう見てもスーパーサイヤ人2です。本当にありがとうございました。
ラージャンの突進を回避しながら『崩弓アイカムルバス』の溜め段階4である『連射Lv4』をケツに叩き込む。
そして、一定の距離を保ちながらラージャンを中心として時計回りに移動し続ける。余程のヘマをしなければ、この方法でラージャンは倒せる━━━なんて言いながら壁に引っかかっちまった!?
「オウフ!」
ラージャンの突進を受けてしまい、吹き飛ばされて地面をゴロゴロと転がる。起き上がったらすぐに弓を納刀。ラージャンから距離をとりながら回復薬グレートを使用する。
「やべ!」
そんな事をしている間にラージャンがジグザグ移動しながら突っ込んできた。回復のモーションはまだ解けていない。
このままだと……いや、ギリギリ回避が間に合う!
モーションが解けた瞬間、緊急回避を行って横に跳ぶ。するとラージャンは火山岩にぶつかり、
【目的を達成しました】
【あと1分で村に戻ります】
━━━岩の爆発でラージャンは力尽きた。
「………」
……こんな事あるのか。
━
━━
━━━
目が覚めた。目の前には、最早見慣れた天井が広がっている。
今の夢は……2ndGをプレイしていた時のものだな。何とも懐かしい夢である。
2ndや2ndGの時は結構面白い事があったものだ。
ティガレックスにやられて1乙した次の瞬間、ギアノスの爪がティガレックスを倒してしまい、報酬画面で自分のキャラクターが倒れてる上にティガレックスの死体が重なった事とか。
逃げたフルフル亜種が眠っている隙に大タル爆弾Gを設置して起爆したらそれでフルフル亜種が力尽き、報酬画面では丁度アイルーがドヤ顔決めていた事とか。
ゲリョスがフラッシュした瞬間に太刀で尻尾を斬ったらそれでゲリョスが力尽き、報酬画面が真っ白だった事とか。
うん、色々あったなぁ。まぁ、そんな事はどうでもよくて。
隣に眠るセツナに視線を移す。昨日、スキルの説明にかなりの時間を要した為、すっかり日が沈んでしまったので家に泊めたのだ。今は幸せそうな表情を浮かべながら安らかな寝息を立てている。
「……セツナ、か」
夢のお陰で漸く思い出した。何年も前の事だったうえに、2ndG時代はローマ字名だったのですっかり忘れていたのだ。
「……昔のプレイヤー名じゃねぇか」
Setsuna。それが2ndG時代のプレイヤー名であった。
★
セツナを起こした後、俺たちは温泉で汗を流し、たった今集会所から出てきたところである。
「で、渓流ってどこにあるんだ?」
「私は知らないわよ。っていうか、その口振りだとエクシアも知らないように聞こえるんだけど?」
セツナの言うとおり、俺も渓流がどこにあるかなんて知らない。クエスト以外で村の外に出た事なんて無いのだ。知っているのは村から徒歩で約1時間程度の距離という情報だけである。
何故そんな事を気にしているかというと、フェルトを迎えに行くためである。前にも述べた通り、クエストを受けて渓流に行くと、俺とセツナだけクエストクリア時に村や集会所へ強制的に戻されてしまうのだ。それではフェルトをセツナの家に送る事が出来ない。
……本当はセツナが自分の家の場所を口頭で伝える事が出来れば良かったのだが、如何せん彼女は説明が下手だった。ナンテコッタイ。
村に連れてくるというのも出来れば避けたい。研究所が潰れたとはいえ、関係者が他に居ないとは言い切れない。
例えば、何かしらの所用で研究所に居なかった、とか。可能性の話でしかないが、用心するに越した事はない。
「エクシアさん、セツナさん」
不意に背後から声を掛けられ、振り返ってみればそこにリリーが立っていた。今日もジンオウ装備がばっちり決まっている。
「やぁリリー。……サニーは居ないのかい?」
いつも彼女と一緒に居るが、今日は姿が見当たらない。
「サニーちゃんは帰省中なんですよ。何でも従姉妹の方が結婚するらしいので、それにお呼ばれしたみたいですよ」
「へぇー……」
リリーはお呼ばれされなかったのだろうか。サニーの幼なじみなのだし、呼ばれてもおかしくはないのだが。
……何か込み入った事情があるやもしれんし、無闇に聞かない方がいいかな。
あ、そうだ。
「ごめん、ちょっとそこで待ってて」
「え? あ、はい……」
リリーをその場に残し、セツナの腕を引っ張って少し離れる。
「何、どうしたのよ?」
混乱するセツナをよそに、顔を近付け小声で話し掛ける。
「渓流への道のりだけど、いっその事リリーに渓流まで案内してもらうのはどうだろう?」
「はぁ!?……それ、本気で言ってるの?」
「本気も本気、大マジだよ」
リリーならば信用出来るし、どうせゲームシステム関連の事を説明してしまおうと思っていたところだ。丁度いい機会である。
しかし、セツナはこの意見に賛成ではない様子だった。顎に手を添え、じっと考え込むように地面を見詰めている。
「……駄目かな?」
「……そうね、ちょっと賛成しかねるわ」
結論は反対だったらしい。何故だ。
「私もあの娘の事は好きだし信用してるけど、フェルトの立場から考えてみれば知らない人間を勝手に連れて来られたら困惑すると思うの」
「……そうか……、そうだな」
確かにセツナの言うとおりだ。知らない人間が増えたとなれば、気のいいものではないだろう。
……フェルトは性格的に気にしなさそうな気もするけど。
「じゃあ、渓流の場所は地道に探そうか。村から割と近いらしいしな」
「ええ、そうしましょ」
最悪、渓流に辿り着く事が出来なかったら俺が一度セツナの家まで赴き、その場所をフェルトに口頭で伝えよう。それならばクエストを受けて渓流に向かっても問題ない。
俺たちはリリーに用事があると告げてその場を後にした。
★
2時間後。
「……やっと着いた」
ユクモ村を出てから、約2時間。俺たちは漸く渓流へと辿り着いた。
何て言うか、俺もセツナも方向音痴なんだなっていうのがわかった。大体1時間近くは同じところをぐるぐる回っていた。近くにリンゴォ・ロードアゲインでも居るのかと思ったわ。漢の世界へようこそ……。
S・B・Rネタは置いといて。
俺たちが今いる場所はエリア1番である。横の茂みからここに出たのだ。いつもならガーグァかケルビのどちらかが居る筈だが、今日は見当たらない。
「意外と掛かったわね……」
「まぁ、迷子状態だったからな。とりあえず、フェルトを迎えに行こう」
左手にある急勾配な短い坂を登り、そのままエリア2番方面へと向かう。ぐねぐねと登りになったり下りになったりと鬱陶しい道を暫く進んでエリア2番に辿り着き、そのまま真っ直ぐ進んで特産タケノコの採れる竹林地帯のエリア3番方面を目指す。
……この辺りの崖は相変わらずタマヒュンものだ。いや、タマ無いんだけどね。
エリア3番に辿り着き、橋の前に到着したところで異常に気付いた。
「……橋が、無い……?」
そう、渓流で最も高く最も西に位置するエリア9番へと続く、木の枝が幾重にも重なって出来た一見すると脆そうな橋が無くなっているのだ。
はて、これはどういう事だろうか。モンスターにでも破壊されたのか……いや、よく見ると僅かに残った橋の部分が焼け焦げている。もしかしたら落雷でもあったのかもしれない。
「仕方ないわね、回り道しましょう」
「だな」
どうしようもないのでセツナの案に異論なし。エリア2に戻り、すぐ左手にある下り坂を下りてエリア6番へ。俺が初めてフェルトと出会った場所だ。
そこを経由して北の細道からエリア7番へ出たところで、視界の右端に赤い影が映った。
何かと思い、視線をそちらへ向けると━━━そこに巨大な四足獣が立っていた。
百獣の王ライオンを倍以上大きくして、赤く塗ったかの様な見た目をしており、頭には立派な一対の角。背中には竜種のような一対の羽。
3rdでは出されなかった筈の、テオ・テスカトルがそこに居た。
この話を書いたのは一年前なんですけどね。