目が覚めたら何故かユクモ村に居たのでハンター生活をエンジョイする事にした   作:勇(気無い)者

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強化人間とは何ぞや?

 渓流に到着しますた。いつものベースキャンプである。

 ゲーム時代は上位クエストだった場合、ランダムで違うエリアに放り出されていたが、こちらの世界に来てからそういった事は一度も無かった。更に言うなら、支給品ボックスに支給品が入っていなかった事も無い。

 ……これはどういう事なのだろうか。下位とか上位とかいう括りは無いという事なのだろうか。それとも、上位クエストであっても最初から支給品が届けられているという事なのだろうか。

 クエストの依頼書には(ランク)が書かれていないので、これに関しては検証が出来そうにない。

 まぁ、そんな事は置いといて。

 隣のセツナがキョロキョロと当たりを見回した後、俺の腕を引っ張りしゃがませて小声で話しかけてきた。

 

「エクシア、強化人間って知ってる?」

「強化人間?」

 

 強化人間……ガンダムかな? 人為的にニュータイプを作り出そうとしたっていう……。

 とりあえず思い当たる節は無いので首を横に振る。

 

「……そう」

 

 セツナは真剣な面持ちで顔を伏せ、顎に手を添えて考え込む。

 ……何だか思い詰めている様に見える。大丈夫だろうか。

 少しして彼女が顔を上げる。

 

「いい?これから私が話す事は本当に誰にも言わないでよ」

「……ああ、誰にも話さない」

「……じゃあ話すわね。強化人間っていうのは、モンスターの性質を遺伝因子レベルで取り入れた人間の事よ」

「………」

 

 ……ん?

 今、セツナさんは何て言ったのかな? 何か遺伝因子がどうのとか聞こえた様な……。

 

「すまん、もう一度言ってくれ」

「だから、強化人間はモンスターの性質を遺伝因子レベルで取り入れた人間の事!リオレウスとかジンオウガとかのね!」

 

 ……遺伝因子ってのはそのまま遺伝子の事だな。モンスターは彼女が言った様にリオレウスとか。

 つまり、そのモンスターの遺伝子を人間にぶち込んで強くなった人間が強化人間って事……?

 

「……改造人間みたいだな」

「改造人間なのよ、強化人間っていうのはね。爪や牙が伸びたりするそうよ」

 

 それもう怪人じゃね?

 やめろショッカー! イーッ!

 

「で、その改造人間改め強化人間がどうかしたのか?」

「……強化人間の殆どは拒絶反応とやらを起こして死んだそうだわ」

「へぇ……。……、()()は?」

「ええ。殆どは、ね」

「……まさか」

「そのまさかよ」

 

 殆どが拒絶反応を起こした。()()ではなく、()()が。

 

「居るのよ、この渓流に。その強化人間がね」

「……マジかよ」

「マジよ」

 

 ……なんと、遺伝子操作を受けた人間がこの渓流に居るのだという。おったまげー!

 何だかバイオハザードみたいな話だな。いや、アレはウイルスだったか。

 

「それで、その強化人間さんとやらが目的なのはわかったが、どうするんだ?」

「意思疎通が出来そうなら私たちの手で保護するのよ」

「保護、ねえ……意思疎通が出来そうにない場合は?」

「その時は……、その時よ……」

 

 セツナがバツの悪い表情を浮かべながら顔を逸らした。

 つまり討伐する、という事だろう。仕方のない事だが、決して気分の良いものではない。それは殆ど人殺しと同義なのだから。

 ……セツナが躊躇した場合は俺がやろう。決意と覚悟を決めて立ち上がると、俺たちは近くの傾斜を下り傾斜へと足を踏み入れる。

 数分ほどしてエリア1番に到達した頃、俺は歩きながら口を開いた。

 

「ところで、その強化人間ってのはどんな見た目をしてるんだ? というか、何でこの渓流に居るって知った?」

「いえ、さっきは居ると言ったけど本当にそうなのかはまだわからないのよ。昨日の夜、ジンオウガの狩猟クエストを受けて渓流に来たんだけど、ターゲットであるジンオウガを見つけた時にそのジンオウガと争っている人影が見えてね。最初はハンターなのかと思ったけど、そいつ武器を持ってなかったっぽいのよ」

「武器を持っていなかった?」

「ええ。更に言うなら防具も腕と脚だけしか装備してなかったわ。暗くてはよく見えなかったから何の防具かまではわからなかったけど」

「……それでジンオウガと闘り合ってたって?」

「そうよ。というかジンオウガを押してたわね」

 

 ……素手でモンスターと渡り合うとか、それもう強化人間じゃなくてガンダムファイターとかじゃないのか。

 更にセツナが続ける。

 

「で、その時はエリア5番の森の中に居たんだけど、私の姿を見るなりエリア6番方面へ逃げていったわね」

 

 ……逃げていったとは、また不思議だな。別にハンターが現れたからといって逃げる理由は無いだろう。普通の人間だったのならば。

 

「それからジンオウガを手早く片付けて探しに行ったんだけど、すぐに集会所へ戻されちゃってね。それでもしかしたらアイツが強化人間なのかもと思って確認に来たって訳」

「成る程。で、私を誘った理由は?」

「1人だと逃がす危険があるからよ。それに、二手に別れて探せば早く見つかるだろうし」

「いや、それならギルドに話して手伝」

「ギルドは駄目よッ!!」

 

 急にセツナが大声を出したので、思わずビクッとなり足を止める。そんな俺の様子を見たセツナが顔を逸らして「ごめん…」と小さく謝ってきた。

 

「……ギルドは、信用出来ないから駄目」

「……、そうか」

 

 何かギルドで嫌な目に遭ったのだろうか? 気にはなるが、彼女の落ち込んでいる様子を見ると、どうにも聞こうとは思えない。

 それから俺たちは暫く無言で歩き続け、漸くエリア5番へ辿り着いた。が、それらしき人物は見当たらない。ブルファンゴが1頭闊歩しているのみだ。

 

「どうする?」

「二手に別れて探しましょう。見つけたら……とりあえず話をしてみて、意思疎通が出来そうなら保護を。暴れるようなら捕まえて頂戴」

「了解」

 

 俺は早速エリア6番方面へと小走りで駆け出す。セツナはエリア2番へ戻り、北のエリア7番を経由してそのまま東のエリア9番へと向かう手筈だ。俺はというと、エリア6番を経由して飛竜の巣であるエリア8番を目指す。そこで一旦落ち合うのだ。

 とりあえず此方の存在に気付き、突進してきたブルファンゴを辻斬りしながらエリア6番に移動。そこに居たジャギィとジャギィノスを全滅させる。そうしないと、コイツ等はエリアを越えてまで追ってくる場合があるのだ。

 さて、それでは滝の裏にある洞窟を潜って飛竜の巣へ向かおうかと振り返った、その時。

 

 ━━━滝の中から一人の女性が姿を現した。

 

 背丈は恐らくリリー達より少し高い程度。少々距離があるので、正確にはわからない。蒼く美しい髪をしているが、数年ぐらい切らずに放置したかの様な長さになっており、その様子はまるで某ホラー映画にてテレビから出てくる幽霊の様。

 そして、服装はというと━━━スッポンポンだった。いや、正確には腕と脚だけジンオウガの甲殻の様な装備を着けているのだが、それ以外はインナーすらも纏っていない。

 それはつまり、何というか、その、長すぎる髪で多少は隠れているが、それでも大事な部分が殆ど丸見えという訳で。

 

「ハァッ!? ハッ、へ…ッ、ヘェアッ!?」

 

 それを目の当たりにした俺は、自分でもよくわからない全く以て意味不明な奇声をあげていた。

 


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