目が覚めたら何故かユクモ村に居たのでハンター生活をエンジョイする事にした   作:勇(気無い)者

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浮きが沈んだら竿を引くだけの簡単なお仕事。

「エクシアさん、お隣良いですか?」

 

 俺が外道━━釣り用語で本命以外の魚の意━━ばかり釣り上げていると、リリーが声を掛けてきた。ジャギィの剥ぎ取りは終わったらしい。彼女の手には、俺が椅子にしているものと同程度の大きさをした岩。

 ……人を撲殺するのに丁度良さそうな大きさである。それを持っている人に近付かれるのは、若干の恐怖を覚える。いや、リリーがそんな事をする訳が無いのは解ってるんだけどね?

 

「うん、いいよ」

「やった! ありがとうございます」

 

 俺の左隣に岩を置えてその上に座り、釣り竿を取り出すリリー。

 ……にしても、近過ぎる。ぴったりくっついてきている。おまつり━━釣り用語で自分や他の人同士の釣り糸が絡まり合う事━━状態にならないか心配なのだが……。

 サニーも此方へやってきた。

 

「…あの…私も…」

「私もお隣良いですか!?」

 

 何かを言おうとしたサニーの言葉を遮り、レベッカ登場。

 

「あ、うん…良いけど…」

「やったぁ!」

 

 嬉しそうハシャぎながら、手頃な岩を持ってきて俺の右隣にレベッカが座る……って、だから近い近い。何でそんなにピッタリくっついてくるねん。釣りにくいやん。

 ところでサニーはさっき何を言おうとしたんだろうか。それは解らないけど、彼女は暫くウロウロした後、リリーの隣に落ち着いた。

 ……何がしたかったのだろうか。

 と、そんな事やってる間に魚がヒットした。釣り上げたのは、ハリマグロ。

 すぐさま新しい魚がポップするが、矢っ張り黄金魚ではない。何でや。いい加減出て来てもええやろ。このまま釣り続けたら、アイテムポーチに入らなくなるぞ。

 確か、それぞれの魚の最大所持数ってキレアジが20、サシミウオが10、ハリマグロが30、はじけイワシが40、小金魚が99だったかな。古代魚と白金魚は知らんけど。

 

「流石です、エクシアさん!」

「え? あ、うん…」

 

 外道だから喜べないけどね…。というか、いつもリリーからヨイショされてる気がする。気のせい?

 

「実は、私は釣りが苦手でして…。良ければ釣りのコツとかを教えて頂けませんか?」

 

 つ、釣りのコツですか…。リアルの釣りは知らんけど、このモンハン世界の釣りのコツは、浮きが沈んだら引く事。それから……、……それからー……。

 ……それだけじゃね?

 ………。

 いや、いくら何でもそれだけじゃアドバイスとはいえないよな。浮きが沈んだら引くんだよーとか言ったら、当たり前過ぎて呆れられちゃうよ。

 何か無いか?

 考えろ俺。

 こじつけでも何でもいいアドバイスっぽい言葉を何かしかし余り時間は掛けられないぞ間が開きすぎて変な空気になってしまうそれだけは避けなければ何でもいいから閃け頑張れ俺の脳みそ━━━

 

「釣りのコツはね、浮きが沈んだ時に引く事だよ」

 

 ダメでした。そんなすぐに適当な言葉が思い浮かぶ筈もない。結局、当たり前の事が口から出てきた。

 うぐぐぐ…間違いなく好感度は下がってしまった…とか思っていたら、

 

「そうなんですか! 簡潔で解りやすい説明です、流石エクシアさん!」

 

 ……えっ、何その好意的な解釈。おおよそ誰に聞いても同じ答えが返ってくるであろうと思われる事を言っただけなんだけど……。

 ま、まぁいい。兎に角、ここで更なるフォローを入れておくべきだ!

 

「口で言うよりも身体で覚えた方が早いよ。早速やってみよう」

 

 言って膝の上に居る魔理沙を下ろして立ち上がり、後ろからリリーの身体を抱く様に両腕を回し、彼女の手の上から釣り竿を握る。

 フフフ、釣りを教えるついでに、さり気なく密着する事が出来たぞ。我ながら完璧な作戦だ。

 でも、難点が2つ。

 まず、俺もリリーも鎧を着込んでいるからゴツゴツした感触しかなくて、密着しているありがたみが薄い。でもまぁ良い香りがするので、これは良しとしよう。

 2つ目は、リリーと比べて俺がチビだという点。背が低いという事は、腕も短いという事。

 ただでさえリリーの方が身体の大きさは上だというのに、更に鎧を纏っているので腕が回しづらいし、前が見づらい…。

 だ…だが、こんな事でへこたれないぞ……。女の子と密着出来る、数少ないチャンスなんだ…。ちょっと体勢がキツいぐらい屁でもないぜ…。

 出来れば、魚も暫く釣れなくていい。

 ━━━何て思った時に限って魚は食い付いてくる。

 

「今だ」

「は、はい!」

 

 勢いよく竿を上げて暴れる魚を岸際に引き寄せ、竿を手放しリリーに預ける。俺はそのまま彼女の前でしゃがみ、水の中へ手を突っ込んで魚をすくい上げた。少し大きくて黒い魚。ハリマグロだ。

 

「………ッ! やりました、エクシアさん!」

「わっ!?」

 

 リリーがいきなり抱きついてきた。魚が釣れたのが余程嬉しかったのだろうか。危うくハリマグロを落とす所だった…。

 

「こんなに簡単に釣れたのは初めてです! ありがとうございます!」

「う、うん…」

 

 ハリマグロを釣り上げただけで、こんなに嬉しそうに…。もしかして、彼女は釣りの方も完全な素人だったのだろうか。苦手とか言ってたし、それなら俺のショボいアドバイスに好意的な反応を見せたのも頷ける。

 

「あー! 逃げられちゃいましたー!」

 

 今度はレベッカ。魚に逃げられたらしい。

 

「エクシアさん、私にも釣り方を教えてもらえませんかー?」

 

 凄い良い笑顔で聞いてくる。

 ……何となく、わざとらしい声に聞こえるのは俺の気のせいなんだろうか。

 とりあえず「いいよ」と了承し、岩をレベッカのすぐ後ろに移動させて後ろから抱く様に座る。レベッカは身体が小さいからチビの俺でもすんなり収まるな。セツナより小さい。何というか、アイルーに通ずる可愛さがあると思う。

 リリーの時と同様、レベッカの手の上から竿を握る。

 もしも俺が元の男の身体だったら、完全に事案。通報される事、間違いなし。女で良かった…。

 さて……。

 ……魚が掛かりません。今、リリーとサニーの方に掛かったけど、レベッカの方には全く魚が寄り付かない。何でだ。

 

「掛かりませんねぇ」

「うん…そうだね…」

 

 ……おかしい。おかし過ぎる。

 餌を放ってから、10秒もあれば魚が食いつく筈なのだ。現にリリー達の方は入れ食い状態。何でレベッカの方に食い付かないんだ…?

 試しに上げてみる事に。

 

「あっ」

「……あ」

 

 ……餌が付いてない。針だけだ。

 ……そりゃあ釣れねぇよ…。

 

(…もうバレちゃいました…)

「ん? 何か言った?」

「何でもないのです!」

 

 ……?

 よう解らんけど、とりあえず餌を付けてもう一度投下。すると、魚はすぐに食い付いたので、竿を引く。そこからはリリーの時と同じ流れで釣り上げる。はじけイワシだ。

 

「やりましたー!」

 

 レベッカもぎゅっと抱きついてくる。うんうん、よしよし。早くはじけイワシを仕舞ってくれ。コイツは絶命時にはじけると説明文に書いてあった。ハレツアロワナとかカクサンデメキンとかも同様。

 それってつまり、死んだ瞬間に破裂するって事だよね? 見た事は無いけど。いつも手早く仕舞ってたから。

 ……アイテムポーチ内で破裂しないって事は、まだ生きてるって事だよな…? アイテムボックス内の魚も一緒。何で生きてるんだろうか。ハチミツとかも、ずっと入れっぱなしだけど腐らないし。アイテムポーチやアイテムボックスには、現代日本には無いオーバーテクノロジーが使われているに違いない。

 

「…エクシアさん…」

 

 今度はサニー。

 彼女はもじもじしながら、

 

「…私にも…教えて下さい…」

 

 君、さっき普通に釣ってなかった?

 ……なんて勿体無い事は言わない。女の子とのスキンシップタイムを無為に投げ出す程、俺は愚かではない。

 サニーの後ろに回り、同じ様に釣りを教えるのであった。

 




ここまで毎日投稿を続けてきましたが、ちょっと辛くなってきたので更新ペースを少し落とそうと思います。
無理に書いてて話がグダついてきたというのもありますし……。
申し訳ありません。でも、なるべく更新していこうと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

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